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渡辺雄也の「リミテッドのススメ」
第42回:境界線上のリミテッド?世界選手権 ドラフトレポート前編
読み物
渡辺雄也の「リミテッドのススメ」
2011.11.23
第42回:境界線上のリミテッド~世界選手権 ドラフトレポート前編
こんにちは。渡辺です。
今年のプレミアイベントの総決算である世界選手権が開催されましたね。
すでにカバレージを見て知っている方も多いと思われますが、今回の世界選手権は日本勢が大活躍したイベントとなりました。
予選ラウンドだけを見ればチャネル・ファイヤーボールが「選別作戦」を決行するほどの圧倒的なパフォーマンスを見せ付けましたが、結果を見てみれ彌永 淳也と日本チームがそれぞれ個人・団体を制するという、2005年の世界選手権を髣髴とさせるような結果になりました。
最近停滞気味といわれていた日本勢でしたが、久しぶりに強い日本を見られた気がしますね。
プロプレイヤー・オブ・ザ・イヤー(POY)レースは残念ながらレース上位の日本勢がTOP8に残れなかったことでアメリカ勢の中から選ばれることとなり、結果的にTOPのオーウェン(Owen Turtenwald)がリードを守って逃げ切る形に。
日曜日に残ったLSV(Luis Scott-Vargas)が準々決勝を勝利した場合はLSVが逆転POYだったのですが、残念ながらの1没。
唯一優勝で逆転の芽もあったPV(Paulo Vitor Damo da Rosa)も負けてしまい、今シーズンでコンスタントに成績を残していたオーウェンが事実上最後のPOYを獲得となりました。
ちなみにLSVやPVがTOP8に残った時は顔面蒼白でプルプル震えていたオーウェンでしたが、日曜日の正午くらいにはキャイキャイ騒いでドラフトしていました。
可愛い奴め(笑)
POYレースには絡めませんでしたが、プロクラブ最高ステータスであるプロレベル8を僕もなかしゅー(中村 修平)もヤソ(八十岡 翔太)も達成することができたのに加え、プロツアー・フィラデルフィアでTOP4入りを果たしているなかちかさん(中島 主税)も今回獲得したポイントで丁度プロレベル7を達成することができました。
僕とヤソはそうでもありませんでしたが、なかしゅーとなかちかさんに関しては各々TOP64とTOP32というかなり厳しい条件をクリアしてのレベル獲得。
個人戦もチーム戦も日本が制した上で各人の結果もかみ合うという、今回の世界選手権は日本勢にとってはかなり良いイベントだったと言って良いでしょう。
いやーめでたいめでたい。
世界選手権の報告はここまでにして、そろそろ本題に入りましょう。
今回は当然、世界選手権絡みの内容です。
というか皆さんお察しの通り、今回の世界選手権の実践編ですね。
いつものようにドラフトラウンドのレポートをお送りしていきたいと思います。
カバレージの方ですでに成績を知ってる方も居るかと思いますが、今回は2回のドラフトで5勝1敗という好成績を残すことができました。
観戦記事もいくつかあります。
やはり書く側としては、負けたドラフトよりも勝ったドラフトの方が書いていて気持ち良いので、今回は気持ちよく書けそうです(笑)
ちなみに今回の僕のドラフトの戦略は完全な受けドラフト。
特に何色に拘ったりせず、上家の色や流れを見て、空いている色をやるという基本に忠実なスタイル。
イニストラードの環境は白・緑・青が強く、赤と黒が弱いと言われています。
実際それには僕も同意見ですが、上の人やその上の人と色が被っている前者3色よりは後者の2色のほうが断然良いのは確定的に明らか。
なので今回は色の選り好みはせず、周りの状況に合わせて臨機応変に行くという、受けの広いドラフトの方針で挑むことにしました。
では早速1stドラフトから見ていきましょう。
1stドラフト
イニストラードのドラフトでは、パックの中身を見る前に自分が引いた両面カードを全員に提示する時間が設けられます。
全員がパックの中の1枚を見せ合っている構図はちょっと奇妙な光景ですが、周りの引いた両面カードを確認する貴重な時間です。
今回は僕の上の上のプレイヤーが《ルーデヴィックの実験材料》/《ルーデヴィックの嫌悪者》を引いていました。
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これにより、青はできるだけ避けようと思いつつドラフト開始。
1パック目
とか思っていたら引いてくる《大笑いの写し身》。
他の候補が《地獄の口の中》、《金切り声のコウモリ》/《忍び寄る吸血鬼》くらいのもので普通なら迷わずのレアピックなのですが、やはり上の上が引いた《ルーデヴィックの実験材料》の存在が重くのしかかります。
そして上の上が予定調和的に《ルーデヴィックの実験材料》をピックしたのを見て、決断を迫られます。
時間一杯使って僕が出した結論は《大笑いの写し身》。
やはり他のカードとのカードパワーが段違いなのと、上の上が青を主張したことにより上が青を避けるだろうから、最悪のパターンである「すぐ上との色被り」が発生しにくいという考え。
他のカードがもうちょっと強ければ、また違った判断をしていたかもしれませんが。
2手目は初手と同じく《大笑いの写し身》。
やはり上の上が《ルーデヴィックの実験材料》によって青を主張したことで、その真下である上家は青を避けた様子。
コモン抜けて流れてきたことを考えると、恐らくそういうことでしょう。
僕の初手ピックが上手く嵌った感じになりましたね。こうなったら上の上とは徹底交戦する構えです。
3手目は《ムーアランドの憑依地》。
《礼拝堂の霊》と一緒にあり、先にクリーチャーを確保するか悩みましたが、流石にレアパワーを優先。
最近スタンダードで良く見かけるこのカードは、リミテッドでも強力な1枚です。
4手目は《修道院の若者》と《神聖を汚す者のうめき》の2択。
カードパワーだけを見れば《神聖を汚す者のうめき》の方が断然強いですが、ここは先程の《ムーアランドの憑依地》のことを考慮して《修道院の若者》を優先。
せっかく取れたレアカードのためなら多少の我慢は必要です。
また、まだドラフト序盤なのでこの辺りで変身カードをピックして自分の色を回りに主張しておく意味合いもあります。
上家方面は最初の《ルーデヴィックの実験材料》以降両面カードを取っていないので分かりませんが、下家方面はこれで多少は意識してドラフトしてくれるでしょう。
5手目は《瀬戸際からの帰還》。
《ムーアランドの憑依地》との相性はこの上なく悪いですが、流石に単体のカードパワーが高すぎるので。
6手目は《修道院のグリフィン》と《神聖なる報い》の2択。
《ムーアランドの憑依地》《瀬戸際からの帰還》と取れているのにも関わらずクリーチャーが取れていないので、クリーチャーである《修道院のグリフィン》を優先しました。
ですが、さすがにここはやりすぎでした。
ドラフト後、レアを取っておけばよかったとかなり後悔。
状況は選びますが、やはりリミテッドで全体除去があるのとないのでは全然違いますからね。
今回のドラフトで一番悔やんだピックになってしまいました。
その後は特に目ぼしいカードは流れてこず《片目のカカシ》や《ゆらめく岩屋》といったカードを取ってお茶を濁しつつ、1周してきた自分のパックから《縫い師の見習い》を確保。
その後の遅い順手で《勇壮の時》と《無私の聖戦士》といった白のカードを確保でき、それなりに満足しながら1パック目は終了。
1パック目ピック内容
1 《大笑いの写し身》
2 《大笑いの写し身》
3 《ムーアランドの憑依地》
4 《修道院の若者》/《不浄の悪鬼》
5 《瀬戸際からの帰還》
6 《修道院のグリフィン》
7 《片目のカカシ》
8 《ゆらめく岩屋》
9 《縫い師の見習い》
10 《勇壮の時》
11 《無私の聖戦士》
12 《霧の中の喪失》
13 《ソンバーワルドの蜘蛛》
14 《夢のよじれ》
1パック目終了次点で既に青白2色。
最初に言っていた受けの広いドラフトとは全然違いますが、まぁ《ムーアランドの憑依地》が3手目で取れたので仕方ないですね。
ただ現状クリーチャーが全然確保できていないので、ここからクリーチャーを確保していきたいところ。
クリーチャーの数がある程度いないと《ムーアランドの憑依地》も《瀬戸際からの帰還》も使えないですからね。
ここからはスペルよりクリーチャー優先のピックを意識していきます。
では2パック目に移ります。
2パック目
2パック目は初手からいきなりクライマックスを迎えました。
《忌まわしきものの処刑者》と《カラスの群れ》という、白と青のトップアンコモンを同時に引いてしまい悶絶。
カード単体での評価なら若干の差で《カラスの群れ》に軍杯が上がるのですが、既に2枚取れている《大笑いの写し身》のことを考えると《忌まわしきものの処刑者》もそのシナジーの分評価が上がります。
非常に難しい2択でしたが、最終的に僕が選んだのは《忌まわしきものの処刑者》。
やはり2枚取れている《大笑いの写し身》の存在が大きかったですね。一応《瀬戸際からの帰還》とも噛み合うことも考慮しました。
また、もし同程度の価値のカードで悩んだ場合は「軽いほうを取る」という自分のドラフト理念に従った部分もあります。
《カラスの群れ》も単体でかなり強いカードですが、ここはシナジーの多さと自分の今までの経験を信じたピックを。
続く2手目は《声無き霊魂》。
他の候補は《スレイベンの歩哨》/《スレイベンの民兵》くらいで、ここは軽いフライヤーを優先。
とにかくクリーチャーが足りていないので低マナ域から埋めていきます。
3手目は《精鋭の審問官》。
1パック目の色主張が功を奏したのか、ここで強力レアが流れてきました。
低マナ域のクリーチャーが欲しいところだったので、これは文句無しにピック。
4手目はパックの中に欲しいカードがなく、しぶしぶ《旅の準備》をカット。
5手目は《幽体の飛行》。
クリーチャーが欲しい状況ですが、パックの中にクリーチャーがおらず、デッキに入るレベルのカードがこれくらいしかありませんでした。
続く6手目7手目で《修道院のグリフィン》《感覚の剥奪》とぎりぎりラインのカードを確保して、8手目で流れてきた《金切り声のコウモリ》/《忍び寄る吸血鬼》をカット。
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その後は10手目で《スレイベンの歩哨》/《スレイベンの民兵》が取れるラッキーがありつつも、それ以外は特にパッとせずに2パック目終了。
2パック目ピック内容
1 《忌まわしきものの処刑者》
2 《声無き霊魂》
3 《精鋭の審問官》
4 《旅の準備》
5 《幽体の飛行》
6 《修道院のグリフィン》
7 《感覚の剥奪》
8 《金切り声のコウモリ》/ 《忍び寄る吸血鬼》
9 《村の鉄鍛冶》/《鉄牙》
10 《スレイベンの歩哨》/《スレイベンの民兵》
11 《赤子捕らえ》
12 《ケッシグの狼》
13 《苛まれし最下層民》/《猛り狂う狼男》
14 《木の杭》
最初の3ピックまではよかったものの、それ以降はパッとせずに終わってしまった2パック目。
正直に言ってしまうとかなり不作でした。
1パック目と合わせて何とか枚数自体は確保できていますが、とにかくクリーチャー陣の細さが目立ちます。
現状で殴れるクリーチャーが片手で数えるくらいしか取れていないというかなり厳しい状況。
何とか3パック目で挽回したいところです。
では3パック目を見てみましょう。
3パック目
3パック目の初手は《悪鬼の狩人》。
除去兼クリーチャーという、今もっとも欲しいクリーチャーを引くことができました。
他の候補は《静かな旅立ち》《礼拝堂の霊》くらいで、流石に比較にならず。
《大笑いの写し身》のコピー元としても申し分なし。文句無しのピックです。
|
2手目は《礼儀正しい識者》/《人殺しの粗暴者》。
3パック目の最初の両面カード提示のときに上家が引いていて、流れてくるのを期待していたのですが、無事回ってきて一安心。
マナフラッド&マナスクリューを緩和してくれる「ルーター」の信頼度はいつの世も変わりません。
3手目は《声無き霊魂》。
堅実に低マナのクリーチャー域を埋めて行きます。
4手目は《絞首台の守部》。
とにかくクリーチャーを確保。
5マナのフライヤーとして優秀な部類ではありませんが、《大笑いの写し身》でコンバット中にタフネスをあげられるのは評価点。
5手目は《幽体の乗り手》。2マナ域も足りていなかったので、この順手で取れる2マナのアタッカーはかなり嬉しいです。
その後も6手目《深夜の出没》、7手目《幽体の乗り手》と確保できてクリーチャーの問題は解決。
8手目でサイドカード用の《緊急の除霊》を確保し、青白なら絶対にデッキに欲しい《戦慄の感覚》が残り5枚で取れたりと、大収穫の3パック目でした。
3パック目ピック内容
1 《悪鬼の狩人》
2 《礼儀正しい識者》/《人殺しの粗暴者》
3 《声無き霊魂》
4 《絞首台の守部》
5 《幽体の乗り手》
6 《深夜の出没》
7 《幽体の乗り手》
8 《緊急の除霊》
9 《残忍な峰狼》
10 《戦慄の感覚》
11 《血に狂った新生子》
12 《残忍な峰狼》
13 《幽霊の憑依》
14 《古えの遺恨》
大収穫となった3パック目。
クリーチャーの数の問題も解決できたのと、相手のクリーチャーに触るカードも取れて、デッキとしてグッと引き締まりました。
実は途中で上家が《秘密を掘り下げる者》/《昆虫の逸脱者》をピックして青だったことが判明したのですが、流石に3パック目の途中から軌道修正することもできず、白単気味にピックすることで事なきを得ました。
《幽体の乗り手》が2枚取れたので、白に寄ったのマナベースになりそうなので結果オーライです。
そんなこんなでできたデッキがこちら。
10 《平地》 6 《島》 1 《ムーアランドの憑依地》 -土地(17)- 1 《無私の聖戦士》 2 《幽体の乗り手》 1 《縫い師の見習い》 1 《精鋭の審問官》 1 《修道院の若者》 2 《声無き霊魂》 1 《悪鬼の狩人》 1 《片目のカカシ》 1 《礼儀正しい識者》 1 《修道院のグリフィン》 1 《忌まわしきものの処刑者》 1 《スレイベンの歩哨》 1 《絞首台の守部》 -クリーチャー(15)- |
1 《感覚の剥奪》 1 《勇壮の時》 1 《戦慄の感覚》 1 《幽体の飛行》 2 《大笑いの写し身》 1 《深夜の出没》 1 《瀬戸際からの帰還》 -呪文(8)- |
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できたデッキは青白の回避ビート。
回避持ちを出して殴るという、いつの世もある伝統的なアーキタイプです。
《悪鬼の狩人》と《忌まわしきものの処刑者》を2枚の《大笑いの写し身》で使い倒す、という分かりやすいシナジーもあり、それ以外の個々のパーツもそれなり強く、かなり満足のいくデッキができました。
若干マナバランスに不安が残りますが、《大笑いの写し身》は序盤に打つカードではないので、このマナバランスで概ね大丈夫でしょう。
マッチの方は3連勝と文句なしの結果。
懸念していた色マナで困ることが少なく、《大笑いの写し身》がいつも活躍してくれましたね。
このまま2ndドラフトの方に移りたい所ですが、紙面の都合があるのでそれはまた来週ということで。
では今回はこの辺で。
また来週お会いしましょう。
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