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渡辺雄也の「リミテッドのススメ」
第34回:基本セットのストラテジー The Basic
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渡辺雄也の「リミテッドのススメ」
2011.09.21
第34回:基本セットのストラテジー The Basic
こんにちは。渡辺です。
長かった海外遠征も終わり、ようやく日本に帰ってきました。
約1ヶ月ぶりの日本に帰ってきて最初に思ったことは、日本の食べ物を食べたい!(笑)
アメリカのパワフルな食事も悪くはなかったのですが、やはり慣れ親しんだ母国の味は別格です。
しばらくは久しぶりの日本の味を思う存分堪能したいと思います。
さて、そんな与太話はおいといて本題に入りましょう。
今回は基本セット2012(M12)リミテッドのまとめをしていこうと思います。
先週末に行われたグランプリ・モントリオールでM12リミテッドのシーズンは終了。
次のセットであるイニストラードのプレビューによるカード公開も進み、週末のプレリリースを待つ状態と言える時期ですが、
今までお世話になったM12リミテッドにお別れをする意味も込めて、今回はM12リミテッド環境のまとめをしていきたいと思います。
まずは先手後手の話から。
先手・後手について
M12リミテッドはシールドは後手、ドラフトは先手。
M12環境というよりも、各フォーマットの基本とも言えるようなことですね。
シールドのようなパックの中の強いカードに早くたどり着きたい場合は後手分の1枚が大きく、
ドラフトのようなデッキ全体で戦う場合は相手よりも早く展開したいので先手の方が有利。
こういった理由からシールドでは後手が、ドラフトでは先手が定石とされています。
何か特別な理由がない限りはこの定石に従ったほうが良いでしょう。
ただ、稀に特別な理由があって、先手デッキを組まなければならないシールドや、後手を選択するドラフトもあります。
良い例を上げると、僕がプロツアー・フィラデルフィアの1stドラフトで組んだデッキは後手を取るデッキでした。
13 《沼》 4 《島》 -土地(17)- 1 《縞瑪瑙の魔道士》 1 《薄暮狩りのコウモリ》 1 《血の求道者》 2 《組み直しの骸骨》 1 《貪る大群》 1 《グレイブディガー》 1 《漂う影》 1 《吸血鬼ののけ者》 1 《ゾンビの大巨人》 1 《地割れのドレイク》 1 《縫合グール》 -クリーチャー(12)- |
2 《肉体のねじ切り》 2 《ソリンの渇き》 1 《破滅の刃》 1 《小悪疫》 3 《精神腐敗》 1 《予言》 1 《災難の瀬戸際》 -呪文(11)- |
|
デッキに多数の軽量除去と《精神腐敗》が3枚入っていたので、カードのリソース数で勝ちに行く戦術を取るためです。
こういった序盤に攻めることを目的とせず、盤面をゆっくりとコントロールしていくデッキが組めれば、ドラフトでも後手を選択することがあります。
これはドラフト中に「後手を取る」という意識を持って「後手の時に強いカードを」優先してピックしていればできることなので、難しいことではありません。
このドラフトの2パック目初手で取った《小悪疫》なんかは完全に後手を意識したピックですね。
ただ、M12環境は守るカードが弱めに設定されていたので、後手を取るのはあまり良い戦略とは言えませんでした。
なので後手を取るドラフトは防御的なカードが上手く確保できそうな時にやるようにしましょう。
また、シールドで先手を取る場合ですが、これはカードプールに恵まれなかった時にやることが多いですね。
レアや除去に恵まれず、相手の強力カードに対処できないようなプールを渡された時は、開き直って軽量クリーチャーによるビートをするのが有効です。
どうせ相手と同じ土俵で戦っても勝てる可能性は低いので、ゲーム序盤から攻め立てて、相手の強力カードをプレイされる前にゲームを決めてしまえば良いのです。
普段はシールドでほぼ使うことのない《溶岩の斧》や《投げ飛ばし》といったカードも、この戦術なら上手く使うことができます。
これは、はっきり言ってしまうと弱者の兵法なのですが、いつでも強いカードプールを貰えるとは限らないので、弱いカードプールでの戦い方も知っておいて損はありません。
もらったプールが弱いからといって悲観せず、諦めずにカードプールの中でできる最大値を模索するようにしましょう。
先手後手の話はここまで。
次はM12のアーキタイプの話です。
M12ドラフトのアーキタイプ
赤黒狂喜
M12環境を代表するアーキタイプの1つ。
M12の赤と黒にはコモンに狂喜クリーチャーが複数いたので、基本セットにも関わらずキーワード能力のアーキタイプが存在しました。
特に《血まみれ角のミノタウルス》の強さはコモンとは思えないスペックで、こいつが4ターン目に狂喜して出せるかどうかでゲームの勝率に大きく影響しましたね。
他の狂喜持ちクリーチャーである《薄暮狩りのコウモリ》や《血のオーガ》などもコモンなので、狙いやすくかつ強力なアーキタイプです。
ちなみに、先週のグランプリ・モントリオール(リンク先は英語カバレージ)を制したリッチ・ホーエンが決勝でドラフトしたのもこのアーキタイプでしたね。
10 《山》 7 《沼》 -土地(17)- 3 《ゴブリンの投火師》 1 《ゴブリンの付け火屋》 1 《苛まれし魂》 1 《嵐血の狂戦士》 1 《血のオーガ》 1 《躁の蛮人》 1 《焦熱のヘルハウンド》 1 《出征路のグール》 1 《血まみれ角のミノタウルス》 1 《吸血鬼ののけ者》 1 《稲妻の精霊》 1 《骨砕きの巨人》 1 《ヴァーズゴスの血王》 -クリーチャー(15)- |
3 《ショック》 1 《破滅の刃》 1 《火葬》 1 《チャンドラの憤慨》 1 《溶岩の斧》 1 《火の玉》 -呪文(8)- |
青白飛行ビート
どの環境でも存在する伝統的なアーキタイプ。
当然M12環境でも健在です。
M12の青と白のコモンには各マナ域に優秀なフライヤーが揃っているので、これまた狙いやすく、かつ強力なアーキタイプでした。
このアーキタイプで使う《霜のブレス》や《石角の高官》はターンを稼ぐ役目でかなり重宝しましたね。
個人的にはできるだけ白に寄せてコモンのグリフィン達を固め取りし、《グリフィンの乗り手》を活用するのが好きでした。
黒系コントロール
黒を主軸としたコントロールデッキ。
軽量除去で序盤を捌き、《精神腐敗》のようなカードでアドバンテージを稼いで、フィニッシャーに繋ぐ。分かりやすいコントロールの動きです。
黒のコモンの《漂う影》は、このアーキタイプなら頼もしいフィニッシャーになってくれます。
また後手を取るアーキタイプなので、環境的に安い後手向きのカードを遅めに確保できるのが強みです。
先ほど例に挙げましたが、後手の時にプレイする《小悪疫》は強力でしたね。
2色目としては青か白が適しています。
青なら《マーフォークの物あさり》や《予言》などのドロー強化、白なら《貪る大群》+《ロック鳥の卵》のようなコンボがあるのが魅力でしたね。
緑恐竜
《ラノワールのエルフ》や《不屈の自然》などから緑のファッティに繋ぐ緑の基本戦略。
僕がグランプリ・上海の決勝ドラフトで構築したアーキタイプでもあります。
9 《森》 6 《島》 1 《山》 -土地(16)- 1 《極楽鳥》 1 《魅惑するセイレーン》 2 《ガラクの仲間》 1 《空回りのドレイク》 2 《棍棒のトロール》 2 《大蜘蛛》 1 《真面目な身代わり》 2 《地割れのドレイク》 1 《大いなるバジリスク》 1 《暴走するサイ》 1 《始源のハイドラ》 -クリーチャー(15)- |
1 《思案》 1 《不屈の自然》 1 《垂直落下》 1 《火葬》 1 《狩人の眼識》 1 《霜のブレス》 1 《予言》 1 《帝国の王冠》 1 《火の玉》 -呪文(9)- |
|
このアーキタイプはゲームの起点になるカードが重いので、序盤のマナ加速ができなかった時は厳しいですが、そのかわり一定のターンを過ぎてゲームが低速化すれば、緑の重量クリーチャー達でゲームを有利に進めていくことができます。
また《不屈の自然》や《マナリス》等のカードを使ってデッキの多色化が容易なので、遅いパックの強力カードを拾えるのも魅力ですね。
このアーキタイプなら3パック目で引いた色の合っていない強力カードを泣く泣く流すなんてことをしなくていいのです。いわゆる「受けの広いドラフト」ですね。
実際にグランプリ・上海では、3パック目で流れてきた《火の玉》を3色目で使うことができました。
他にもM12のアーキタイプはありますが、ここから先は相当細かい分類になってしまうので割愛します。
アーキタイプというものはドラフトならどんな環境でも存在します。
基本的にはそのブロックのテーマであるものが多いですが、そうでない場合もあるので、新しい環境になったらその環境のアーキタイプはきちんと把握するようにしましょう。
アーキタイプの話はここまで。
最後はデッキを組む際の注意点です。
デッキ構築時の注意
クリーチャーと呪文のバランス
デッキを組む際のクリーチャーと呪文のバランスは、クリーチャー14~17体、呪文が6~9枚を目安にするのが良いでしょう。
リミテッドの基本はクリーチャーでの戦闘なので、クリーチャーが少なくなりすぎないように注意してください。
またそのバランスによってカードの選択も異なってきます。
例えばクリーチャーの枚数が少なく10枚程度しかない時には、《墓暴き》のようなカードで擬似的にクリーチャーの水増しをしたり、《トロール皮》のようなクリーチャーにつけるためのエンチャントカードを使うのを避けたりと、本来とは違うカードの選択をすることになります。
デッキの構成によってきちんとカードの取捨選択をするようにしましょう。
マナカーブ
デッキの中のクリーチャーのマナ域が偏っていないかを見ます。
序盤に展開できる2~3マナ域に偏っているなら良いですが、4~5マナ域にカードが偏っているのはデッキが重い証拠なので、そこは適度な枚数に抑えるか、マナ加速を使うなどして調整しましょう。
またクリーチャーだけでなく、呪文もマナ域を別にして見ることをお勧めします。
除去カードなどはどのタイミングで打っても強いですが、カードによってはそのマナ域でプレイするのが最適な呪文もありますからね。
《不屈の自然》や《予言》などは、そのマナ域で打ってこそのカードなので、呪文枠のカードもちゃんとマナ域別に見るようにしましょう。
土地のバランスと適正な枚数
M12リミテッドは低マナ域に色マナ拘束が厳しいカードが多数用意されています。
《ガラクの仲間》や《鎧の軍馬》、《霊気の達人》などマナシンボルが厳しいカードが多いので、これらのカードを混合させずにデッキを組むのが好ましいです。そうすればマナベースの構築がぐっと楽になります。
できれば土地バランスは使っている2色のうちのどちらかに寄せた構成が好ましいです。
《ガラクの仲間》や《鎧の軍馬》を適正ターンにプレイするためには、その色の土地を10枚以上デッキに入れたいですね。
なのでメインの色の土地を10~11枚、補色の色の土地を6~7枚というのが理想ですね。
リミテッドの基本的な土地の枚数は、40枚のデッキに対して17枚が適正と言われています。
M12リミテッドもそれは変わらず、構成にもよりますがシールドなら17~18枚。ドラフトなら16~17枚が土地の適正枚数ですね。
シールドなら2色なら17枚、3色なら18枚が目安です。
ただ3色で《不屈の自然》や《マナリス》を使うなら、それらを土地としてカウントして土地を17枚にしてもいいですね。
ドラフトならデッキが軽い構成になっているなら16枚、重い構成なら17枚といったところ。
軽いか重いかの判断基準は「5マナ以上のカードが何枚あるか」を見るのが良いでしょう。
5マナ以上のカードが3枚以下なら全体的にデッキが軽いといえるので、16枚の土地でも問題なく展開できるでしょう。
逆に5マナ以上のカードが5枚以上あるようなら、それらをきちんとストレートにプレイするために17枚の土地を用意したほうが良いでしょう。
土地の枚数はデッキの構成によってその都度変わるので、そのあたりは経験して覚えていきましょう。
ちなみに先週の実践編でも書きましたが、僕はデッキが弱い時はデッキの土地を減らす構築をします。
デッキが弱い時に土地ばかり引いては勝負になりません。
なので土地事故のリスクを多少負ってでも土地以外のカードを引く確率を上げ、手数で負けないようにするためです。
マナフラッドとマナスクリューなら、まだマナスクリューの方が立ち直った時にゲームになりますからね。
この方法は僕の個人的な好みで、土地事故の要因を自分から作っているのであまりお勧めはしませんが、もしデッキが弱くてどうしようもないという時は試してみてください。
デッキが弱い時に勝とうと思ったら多少のリスクは背負わないと勝てないですからね。
今週はここまで。
今回はM12のまとめをするとともに、リミテッドの基礎的なことも復唱してみました。
何事も基本を疎かにしてはいけません。
マジックの基本セットはその名の通り、マジックの基本を詰め込んだセットです。
これはリミテッドにおいても同じで、基本セットのリミテッドで学んだことは、他のどのエキスパンションのリミテッドでも応用することができます。
週末は全国各地でイニストラードのプレリリースが行われます。
新しいカードと新しい能力を思う存分堪能しつつ、M12シーズンで学んだことを生かしていきましょう!
では今回はこの辺で。
また来週お会いしましょう。
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