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戦略記事

渡辺雄也の「リミテッドのススメ」

第6回:ナベの思考がドラフト戦略をおしあげる?グランプリ・パリ ドラフト編

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渡辺雄也の「リミテッドのススメ」

2011.02.28

第6回:ナベの思考がドラフト戦略をおしあげる~グランプリ・パリ ドラフト編

 どうもこんにちは、渡辺です。

 今回はグランプリ・パリの実戦編の後編、2日目のドラフトで考えたことをお伝えしたいと思います。前回を見ていない人はぜひ先週の分を見てからご覧ください。

 また、今回の文章の最後では、ミラディン包囲戦が入ってドラフトがどう変わったか、どんなカードが強くなったかを考察していますので、ぜひ参考にしてくださいね。


2日目ドラフト

 2日目はドラフトなのでプロツアーに向けて練習した経験値があります。

 戦略は先々週に紹介したプロツアー・パリで用いたものと一緒で、基本的に感染は避けて金属術を狙うというものです。


1stドラフト

 1パック目の包囲戦、初手は《堕落した良心》。カードパワー的に文句なしのスタートですね。

 また生体武器はリミテッドではかなり強い能力だと思っていて、アンコモン以上のものは初手級だと思っていたので4~6手目で流れてきた時は驚きました。

 アンコモン以上の生体武器はそれ単体で戦えるスペックを持っているのに加え、クリーチャーを対処されても修正値の高い装備品が場に残るのでかなり使い勝手が良いというのが練習で得た印象でした。
 個人的には1~3手目でピックするに値するカードだと思っていたのでこの巡目で取れたのは非常に嬉しいですね。

 3枚の優秀な生体武器が取れたので、そこから金属術に向かいつつ、《メリーラの守り手》で一応緑にも渡りをつけておいて1パック目終了。

 また10手目に取れた《鏡操り》は練習で使ったことがないので使用感が分からないカードなのですが、金属術で使うなら強いのではないと思い試験的にピックしておきました。

 1パック目「ミラディン包囲戦」ピック内容:

  1. 堕落した良心
  2. 病気の拡散
  3. ファイレクシアの憤怒鬼
  4. 縒り糸歩き
  5. 皮羽根
  6. 皮羽根
  7. 錆びた斬鬼
  8. メリーラの守り手
  9. 錆びた斬鬼
  10. 鏡操り
  11. ヴィリジアンの密使
  12. ニューロックの猛士
  13. 尖塔の海蛇
  14. 六角板のゴーレム

 2パック目の傷跡、初手は爆弾カード《執行の悪魔》。
 色も合っていてかなりかみ合いましたね。

 その後は1パック目からの指針通り金属術を意識してアーティファクト重視のピック。

 8手目で《空長魚の群れ》が取れて、卓の青が薄いことも認識できました。カードの強さを認識しておくことは、色の分布を読むためにも必要ですね。

 ただ、この時点でカードプールを見ると、2マナ域以下のカードがほとんどありませんでした。そこで、3パック目ではマナマイアの評価点数をできるだけ上げてピックすることにします。

 2パック目「ミラディンの傷跡」ピック内容:

  1. 執行の悪魔
  2. 錆ダニ
  3. 錆びた秘宝
  4. マイアの感電者
  5. 地平線の呪文爆弾
  6. 金属の駿馬
  7. 嵌め乗りの滑空者
  8. 空長魚の群れ
  9. 分散
  10. 刃の翼
  11. ニューロックの透術士
  12. 回復の三角護符
  13. 取り繕い
  14. 秘宝の腐敗


 3パック目の初手は本当に弱いパックで《銀のマイア》。他に選択肢が無いほど弱いパックでした。しかし、先ほどの方針には合っていると言えます。

 2手目は《感電破》《嚢胞抱え》《連射のオーガ》などのある強力なパックでしたが、どれも色が合っておらず仕方がないといった感じで再び《銀のマイア》を。3手目の《金のマイア》も《微光角の鹿》のような強力カードを流してのピック。

 とにかく低マナ域のカードがなかったので、優先してかき集めた感じです。こういうところで弱くても必要なカードを集めるか、強力なカードをタッチを視野に入れてカットするかは、それまでのピックの内容によるので、デッキの途中経過を把握しておくことが大事ですね。

 その後も金属術関係のカードを集めてドラフト終了です。

 3パック目「ミラディンの傷跡」ピック内容:

  1. 銀のマイア
  2. 銀のマイア
  3. 金のマイア
  4. モリオックの模造品
  5. ダークスティールの歩哨
  6. ルーメングリッドのドレイク
  7. 停止命令
  8. モリオックの肉裂き
  9. 屍肉の呼び声
  10. 水銀の縛め
  11. 水膨れ地掘り
  12. ニューロックの透術士
  13. エズーリの射手
  14. 主導権の奪取
渡辺 雄也
グランプリ・パリ2011 2日目1stドラフト[MO] [ARENA]
9 《
7 《

-土地(16)-

2 《銀のマイア
1 《金のマイア
1 《嵌め乗りの滑空者
1 《錆ダニ
1 《ファイレクシアの憤怒鬼
1 《モリオックの模造品
1 《マイアの感電者
1 《ルーメングリッドのドレイク
1 《金属の駿馬
1 《空長魚の群れ
1 《ダークスティールの歩哨
1 《執行の悪魔

-クリーチャー(13)-
1 《錆びた秘宝
2 《皮羽根
1 《縒り糸歩き
1 《取り繕い
1 《分散
1 《地平線の呪文爆弾
1 《停止命令
1 《病気の拡散
1 《堕落した良心
1 《鏡操り

-呪文(11)-

グランプリ・パリ2011 2日目第1ドラフト デッキ写真


 出来たデッキは青黒の金属術。

 アーティファクトの枚数も15枚ときちんと確保できていて、それなりにまとまっている感じです。

 細かいカードの選択としては、

 色の合っていない《地平線の呪文爆弾》は能力的にただの土地にしかならないものの、金属術の頭数にカウントできるので、このデッキなら土地を入れるよりは良いという判断から。

 メインから入っている《取り繕い》は生体武器を《粉砕》系のカードから守る役目として。デッキの中のカードが重いので、デッキの重いカードを出しつつ守れる役目が欲しいと感じての採用です。


 成績は2勝0敗1分け。
 2勝同士の最終戦で相手のデッキも強く、攻めきれずに時間切れとなりました。

 またこのドラフトで使用して《鏡操り》は金属術ならかなり強いカードだということが分かりました。

 自分のアーティファクトの展開量が倍になるのは思っていたよりもずっと強かったです。
 《マイアの感電者》をコピーして、先に出しておいたマナマイア2体から無限マナ、なんていう気持ち悪い動きもしましたね。
 実際に使ってみると想像以上に強いカードなので、皆さんも機会があったら試してみてください。


 では2ndドラフトに移りましょう。


2ndドラフト

 1パック目の初手は弱めのパックから除去である《不純の焼き払い》を選択。初手としては可も無く不可もなくといったラインのカードです。

 2手目も弱めのパックで、初手と色が合っている《オーガの抵抗者》か、《病的な略取》の2択。

 色を散らすのも考えたのですが、自分の開封パックには《回転エンジン》がありました。これが一周して帰ってくる可能性が高いと見たので、《オーガの抵抗者》を取ることにします。

 3手目の《ヴィリジアンの爪》も《病的な略取》との2択でしたが、まだ2色目に手を出すよりもその後のドラフトの受けを広くしたかったのでどんなデッキでも使うことのできる《ヴィリジアンの爪》を優先しました。

 しかし黒をあきらめることはせずに、5手目《ファイレクシアの憤怒鬼》、6手目《病的な略取》と、単純なカードパワー評価を前提にカードを取っていきました。

 1パック目「ミラディン包囲戦」ピック内容:

  1. 不純の焼き払い
  2. オーガの抵抗者
  3. ヴィリジアンの爪
  4. 縒り糸歩き
  5. ファイレクシアの憤怒鬼
  6. 病的な略取
  7. 皮剥ぎの鞘
  8. 災いの召使い
  9. 回転エンジン
  10. 銅の甲殻
  11. 眼魔
  12. 六角板のゴーレム
  13. 六角板のゴーレム
  14. 圧壊

 1パック目終了時点では何とも地味な感じ。
 次のパックで何かしらのきっかけが欲しいところです。


 2パック目初手は《伝染病の留め金》と《闇の掌握》の2択。

 ここでは前者を選びました。今後取れるかもしれない、増殖とシナジーのあるカードを期待しての受けの広いピックを意識したものです。

 3手目では緑参入も視野に入れつつ《地平線の呪文爆弾》を取っています。この段階でデッキがそれほど強くないと感じていたので、もし3パック目に色の合ってない爆弾レアを引いた時に備えて、何か強力なレアを引いたら無理やり使ってやろうという勝負手です。

 その後は6手目で《思考の三角護符》、10手目で《災難の塔》とピックして、長期戦狙いのデッキを想定。
 2パック目終了時点では明らかにデッキパワーが不足している状況だったので、3パック目の流れに期待です。

 2パック目「ミラディンの傷跡」ピック内容:

  1. 伝染病の留め金
  2. 燃えさし鍛冶
  3. 地平線の呪文爆弾
  4. 金屑化
  5. 絡み線の壁
  6. 思考の三角護符
  7. 刃族の狂戦士
  8. クローンの殻
  9. 選別の高座
  10. 災難の塔
  11. モリオックの肉裂き
  12. 魂の受け流し
  13. 媒介のアスプ
  14. ゴブリンの小槌打ち


 3パック目の初手では《エズーリの大部隊》《堕落の三角護符》《闇の掌握》とありました。

 ここでは《堕落の三角護符》をピック。

 強力レアである《エズーリの大部隊》を流すのは厳しいものがありますが、現状自分デッキで使っても金属術を達成できなさそう。それを無理やり使うよりは、安定した力を発揮する《堕落の三角護符》を選びました。2パック目で取れている《伝染病の留め金》とのシナジーも○です。

 2手目は《エズーリの大部隊》と《燃えさし鍛冶》の2択。先程1枚流していて嫌な感じが漂うも、初手と同じ理由で敬遠し安定志向で《燃えさし鍛冶》を。

 3手目でまた流れてくる3枚目の《エズーリの大部隊》!!
 何か楽しくなってきてしまい、これもスルーして《危険なマイア》をピック。
 後から冷静になって、これは流石にやりすぎだと思いました・・・。

「《エズーリの大部隊》3枚とか本当に大部隊だなー」

 なんてことを考えながら、結局その後に《シルヴォクの模造品》と《地平線の呪文爆弾》に手を出して緑にも触るという、上家にのみ許されたジャイアニズムを披露しつつドラフト終了。

 3パック目「ミラディンの傷跡」ピック内容:

  1. 堕落の三角護符
  2. 燃えさし鍛冶
  3. 危険なマイア
  4. シルヴォクの模造品
  5. 地平線の呪文爆弾
  6. モリオックの模造品
  7. 死体の野犬
  8. 剣爪のゴーレム
  9. 水膨れ地掘り
  10. 闇滑りのドレイク
  11. 屍気の香炉
  12. 炎生まれのヘリオン
  13. 岩滓の精霊
  14. こだまの飾り輪
渡辺 雄也
グランプリ・パリ2011 2日目2ndドラフト[MO] [ARENA]
8 《
6 《
3 《

-土地(17)-

2 《燃えさし鍛冶
1 《絡み線の壁
1 《危険なマイア
1 《ファイレクシアの憤怒鬼
1 《回転エンジン
1 《シルヴォクの模造品
1 《モリオックの模造品
1 《オーガの抵抗者
1 《剣爪のゴーレム
1 《炎生まれのヘリオン

-クリーチャー(11)-
1 《皮剥ぎの鞘
1 《縒り糸歩き
1 《ヴィリジアンの爪
1 《不純の焼き払い
2 《地平線の呪文爆弾
1 《伝染病の留め金
1 《病的な略取
1 《災難の塔
1 《金屑化
1 《堕落の三角護符
1 《思考の三角護符

-呪文(12)-

グランプリ・パリ2011 2日目第2ドラフト デッキ写真


 出来たデッキは赤黒ベースに、2枚の《地平線の呪文爆弾》と《シルヴォクの模造品》のために緑をスプラッシュしたもの。

 余っているカードを考えると、純正2色で組むことも出来ます。
 しかし、2枚の三角護符や《災難の塔》を使う長期的な戦法を取っているので、2色の安定性よりもアドバンテージが取れる《地平線の呪文爆弾》と相手のカードに対処できる《シルヴォクの模造品》を優先しました。


 成績は2勝1敗。殿堂プレイヤー、ガブリエル・ナシフの操る強力な感染デッキに負けてしまいました。
 正直3枚の《エズーリの大部隊》は勘弁、下家には当たらないことを祈るだけ・・・と思っていたのですが、当たらず。はたして彼は勝てたのだろうか・・・。

 2日目の総合成績は4勝1敗1分け。
 初日の成績と合わせると、BYE含み12勝3敗1分けとなりました。

 成績としてはそれなりの成績なのですが、参加人数が多すぎたためか、上位32位に一歩届かずの36位。
 グランプリは33位から64位までは同じ待遇なのでちょっと損した気分ですが、賞金とプロポイントが貰えただけ良しとしましょう。
 ちなみに何人かの友人に「グランプリで3敗1分けだったけど32位に入れなかったぜ!」と愚痴ってみたら「それは本当にクレイジーなグランプリだね」と慰めてくれました。皆の優しさに感謝です。


 こんな感じで、筆者のマジック・ウィークエンドは終わりました。

 プロツアー53位、グランプリ36位と「勝ってないけど負けてもいない」というような微妙な成績でしたが、今回の経験を次回以降のイベントにも生かしていきたいと思います。

 マジック・ウィークエンドは一回の遠征でプロツアーとグランプリ両方参加できるという、プロプレイヤー的には何ともお得なイベントだったので、機会があればまたやってほしいですね。
 もっとも、4日間フルタイムで脳みそを働かせるので普段の倍以上疲れますが・・・。今回は日本に帰ってきた日は丸一日動けなかったくらいです。
 ただ充実した疲労感というのは何とも心地よいものでした。


 最後に包囲戦が入ってからの傷跡ドラフトについて少々。

 練習でわかってきたことなのですが、包囲戦が入ってからは傷跡3つのときより「ゲームスピードが遅くなっている」と感じています。

 傷跡3つのとき、感染と金属術の2大アーキタイプは上手く組めたときのトップスピードはかなりの早さだったのですが、包囲戦が入ってからはこの2つのアーキタイプにそれほどスピードを感じなくなりました。

 包囲戦加入により感染は優秀な2マナ域(《疫病のとげ刺し》《胆液爪のマイア》等)が少なくなったことと、必殺技であった《荒々しき力》の出現率の低下が、理由として挙げられます。

 金属術もエースアタッカーである《金属の駿馬》の出現率の減少と包囲戦によるアーティファクトの絶対数の低下、また必須パーツであったマナマイアが以前よりも確保しにくくなったことも、多少ありますね。

 こういった点などから、環境の2大アーキタイプであった感染と金属術は、アーキタイプとしてパワーが下がったといえる状況です。それに伴い、包囲戦入りのドラフト環境は明らかに遅くなりました。

 ゲームが遅くなるということは重いカードに有用性が出てくるということです。

 傷跡3つの時では重くて間に合わないことも多かった《決断の手綱》は今では十分プレイできるようなゲームスピードになりましたし、今までデッキに入れるのを渋るくらいだった《最上位のティラナックス》もデッキに入るのを前向きに検討するようになりました。
 こういった重いカードたちが使えるほどに環境が遅くなったというわけですね。

 実際にグランプリ・パリとグランプリ・デンバーで優勝したデッキは感染でも金属術でもなく、カードパワーを重視したようなパワーカード単といえるようなデッキでした。

David Sharfman
グランプリ・パリ2011 決勝ドラフト / 優勝[MO] [ARENA]
9 《
9 《

-土地(18)-

1 《荒廃のマンバ
1 《生命鍛冶
1 《危険なマイア
1 《ヴィリジアンの堕落者
1 《テル=ジラードの堕ちたる者
2 《グリッサの急使
2 《吠える絡みワーム
2 《空長魚の群れ
1 《腐食獣
1 《飛行機械の組立工

-クリーチャー(13)-
1 《縒り糸歩き
1 《地平線の呪文爆弾
1 《ミラディンの血気
1 《分散
2 《水銀の噴出
2 《決断の手綱
1 《荒々しき力

-呪文(9)-
Gaudenis Vidugiris
グランプリ・デンバー2011 決勝ドラフト / 優勝[MO] [ARENA]
9 《
8 《

-土地(17)-

1 《煙霧吐き
1 《絡み線の壁
1 《危険なマイア
1 《ファイレクシアの破棄者
1 《ファイレクシアの憤怒鬼
1 《ヴァルショクの心臓焚き
1 《モリオックの肉裂き
1 《平和の徘徊者
1 《ドロスの切り裂き魔
1 《刃族の狂戦士
1 《先駆のゴーレム
1 《冷たき集いの吸血鬼
1 《ルーメングリッドのガーゴイル
1 《執行の悪魔

-クリーチャー(14)-
1 《恐慌の呪文爆弾
1 《圧壊
1 《感電破
1 《電弧の痕跡
1 《金屑の嵐
1 《試作品の扉
1 《病気の拡散
1 《金屑化
1 《アージェンタムの鎧

-呪文(9)-


 これからは感染や金属術のようなシナジー重視のドラフトではなく、パワーカードを重視した戦略が主流になるかもしれませんね。

 それでは今回はこの辺で。

 また来週お会いしましょう。

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