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戦略記事

渡辺雄也の「リミテッドのススメ」

第4回:よりぬきパリ?速報!実践編?

読み物

渡辺雄也の「リミテッドのススメ」

2011.02.14

第4回:よりぬきパリ~速報!実践編~

 パリから皆さんこんにちわ、渡辺です。


 今回は先週行われたばかりの、プロツアー・パリのブースタードラフトのレポートを、「実践編」としてお送りしたいと思います。

 「実践編」は、以前の連載でもお送りしていました。
 僕が参加したイベントで実際に考えたことを中心に、ドラフト・シールドの戦略をお伝えする回ですね。

 ちなみに、「傷跡」だけのころはこんな感じでしたので、よければ参考にしてもらえればと思います。

 今回はミラディン包囲戦が発売してから間もない期間でのプロツアー開催なので、十分な練習ができているとは言い難い状況です。が、それは参加者全員共通のこと。

 同じ条件の中でどれだけ他の参加者に差をつけられるか各々の技量が問われるところです。

 ちなみに筆者は今回スタンダードのデッキにかなりの時間を費やしてしまい、リミテッドに関してはかなり不安な状態での参戦となります。

 具体的に言ってしまうと、練習のドラフトで勝ち数より負け数の方が多いというくらいの負けっぷり。正直お通夜と言ってもいいかもしれません。

 リミテッドの連載を書いていてそれはどうなんだ、というツッコミもあるかもしれませんが、プロツアーに参加するからにはできるだけ満足のいくデッキを使いたいものです。今回はそれの作成に時間がかかってしまいました・・・。

 その甲斐あってか、初日の構築ラウンドは4勝1敗と好調な滑り出し。
 二日目に残るにはあと1勝すれば良いというかなり楽な状態でのドラフトになります。

 「初日抜けのボーダーとかそんなことを考えていても仕方ない。今の自分に出来ることは全部やろう」

 というのは建前で、本心では

 「何か強いレア引かないかなー」

 と思いながら、自分の名が書かれているドラフトポッドへ。


 同じ卓で知っているのは皆さんご存知の昨年の世界王者、おっちゃんことギヨーム・マティニョンと、殿堂プレイヤーのカミエル・コーネリセン、アメリカの若手マット・マーくらい。

Guillaume -Grave Titan- Matignon

 個人的に一番の強敵はやはりおっちゃん。やはり去年の勝ちっぷりは伊達ではありません。
 はてさてどうなることやら。


戦略

 ちなみに今回の自分のドラフトの戦略は、

 「感染だけはプレイしない」

 というものでした。

 包囲戦で感染関係のカードがかなり増えたことで、感染は以前よりもやり易くなったのですが、逆に考えるとそれは卓の中に多くの感染デッキが現れるということで、競争率が以前よりも格段に増していることになります。

 感染は上手く組めたら強力なデッキになりますが、卓の競争率が高い状態で強力な感染デッキを作るのは至難の業。

 そういう状況なら、敢えて感染を周りに押し付けて、自分は1パック目となる包囲戦ではそれほど有用なカードの多くない金属術を狙い、2・3パック目の傷跡で良い流れになることを期待する、というのが今回の筆者の戦略です。

 傷跡の金属術といえば、《オーリオックの太陽追い》や《ガルマの保護者》を擁する白。
というわけで出来れば白の金属術を狙っていこうというのが今回のPTでの自分のピックの指針となりました。

 ではさっそくドラフトのピックを見てみましょう。


第1ドラフト

 1パック目初手は《勝利の伝令》。

 白をやりたいと思っているときに、運よく白の強力レアを引けました。他の候補も《荒廃後家蜘蛛》くらいで、初手は文句なしのレアピックとします。

 2手目は《核への投入》。アドバンテージが期待できて盤面に与える影響も大きい優良カードです。続いて3手目も《核への投入》。これは上からの「赤をやらない」というシグナルと考えて良さそうですね。

 4手目は《レオニンの空狩人》で予定通り白に進む態度を決めていきます。
 その後はあまり赤のカードは流れてこないのですが、白のカードとアーティファクトを取っておきます。ここは戦略通り。

 1パック目で感染のカードをほとんど見なかったので、上3人のうち2人くらいは感染をドラフトしていそうな雰囲気です。


 つづいて2パック目、ここからは傷跡に戻ります。

 2パック目初手には《拘引》と《感電破》があり、純粋なクリーチャー除去が取れてないので取ろうかと思いましたが、横には《先駆のゴーレム》。またレアです。

 「レアパワーを優先」といいますが、除去されなければ1枚でそのままゲームに勝ってしまうというのは、大きな基準となります。《先駆のゴーレム》はそれに当てはまりますね。

 2手目は《マイア鍛冶》。1枚で複数のアーティファクトを生み出せる、白い金属術というデッキの方向性にばっちりな1枚。同じパックにある《オーリオックの太陽追い》が1周することに期待します。

 3手目は《ゴーレムの職工》。単体でも力を発揮する、ナイスパワーカードです。
 4手目の《転倒の磁石》。アーティファクトでありクリーチャーに触れる点で金属術にぴったり。

 その後は白の金属術関係のカードとアーティファクトを確保していきます。

 2パック目終了時点で金属術としては若干アーティファクトが足りないという状況だったので、3パック目はアーティファクトを優先してピックしていく方向にしました。以前の連載にも書きましたが、金属術を軸にするならアーティファクトは最低でも14枚、出来れば16枚くらい欲しいので、このタイミングできちんと確認しておきましょう。

 3パック目初手は《屍賊の死のマント》。またまたレアです。いやーついてるなー。

 同じパックに《感電破》があったのですが、アーティファクトの枚数を確保しておきたかったのと、スローゲームになった際の盤面の制圧力に期待して《屍賊の死のマント》をピックしました。

 2手目は先ほども出てきた《転倒の磁石》、構築でも活躍しましたね。3手目は《粉砕》。まぁ有用除去。4手目《パラジウムのマイア》でマナサポートも。

 結果的にこのようなデッキになりました。

プロツアー・パリ2011 第1ドラフト

渡辺 雄也
プロツアー・パリ2011 第1ドラフト[MO] [ARENA]
9 《平地
8 《

-土地(17)-

2 《オーリオックの太陽追い
1 《レオニンの空狩人
1 《マイア鍛冶
1 《絡み線の壁
1 《ヴァルショクの模造品
1 《パラジウムのマイア
1 《回転エンジン
1 《平和の徘徊者
2 《ガルマの保護者
1 《先駆のゴーレム
1 《ゴーレムの職工
1 《連射のオーガ
1 《勝利の伝令

-クリーチャー(15)-
1 《粉砕
1 《主の呼び声
2 《核への投入
1 《屍賊の死のマント
1 《液鋼の塗膜
2 《転倒の磁石

-呪文(8)-

 白赤の金属術デッキ。

 アーティファクトが13枚(アーティファクトを生み出すカードも含む)と、金属術としては若干枚数が少ないのですが、《マイア鍛冶》や《主の呼び声》のような複数のアーティファクトを確保できるカードがあるので、金属術は問題なく達成出来る構成になっています。

 除去も《核への投入》2枚と《転倒の磁石》2枚があるので、盤面を捌くのは簡単そうです。

 長期戦になったときに《連射のオーガ》+《屍賊の死のマント》のコンボも光ります。

 デッキの点数としては82点くらいですかね。


 成績は3勝0敗。

 《核への投入》が強かったり《先駆のゴーレム》が毎回除去されず無双しての勝利でした。
 いやーついてるついてる。

 これで初日は7勝1敗という好成績で2日目に進出。2日目の成績次第でトップ8も見えているラインです。
 初日終了時のスタンディングを見て見ると、全勝の中田直樹を筆頭に上位に日本勢が多い印象。

 今回は日本勢の活躍が期待できそうで、自分も頑張ろうと思いながら、宿への帰路に着きました。


 一夜明けて2日目。
 2日目はドラフト→スタンダードの順番にラウンドを行います。

 というわけで朝からドラフト。集中力を切らさないために十分な睡眠と朝食をきちんととりました。
 万全の状態でいざ2日目へ。


第2ドラフト

 2日目のドラフトは1番ポッドだったので、すべてのピックが記録され、「ドラフト・ビュアー」で閲覧できるようになっています。詳細な内容はそちらをぜひ参照してみてください。

 Draft Viewer: Draft 2, Pod 1


 ピックの反省点としては、1パック目の7手目。

 《主の呼び声》ではなく《銅の甲殻》を取るべきでした。
 この時点で青白の飛行ビートのプランが見えていたので、装備品を優先するべきでしたね。

 それ以外は仕方ないと言った感じでしょうか。除去を沢山流しているのが懸念材料です。

 皆さんも、自分だったらどうするか、ぜひ考えてみてくださいね。


 出来たデッキはこちら。

プロツアー・パリ2011 第2ドラフト

渡辺 雄也
プロツアー・パリ2011 第2ドラフト[MO] [ARENA]
9 《平地
8 《

-土地(17)-

2 《レオニンの空狩人
1 《眼魔
1 《危険なマイア
1 《ヴィダルケンの解剖学者
1 《ノーンの僧侶
2 《ケンバの空護衛
2 《ニューロックの透術士
2 《闇滑りのドレイク
1 《血清掻き
1 《カルドーサの鍛冶場主
1 《ロクソドンの非正規兵

-クリーチャー(15)-
2 《存在の破棄
1 《分散
1 《主の呼び声
1 《ダークスティールの斧
1 《起源の呪文爆弾
2 《きらめく鷹の偶像

-呪文(8)-

 青白の飛行ビート。

 回避能力持ちが多いのはいいのですが、クリーチャーの色マナ拘束が非常に厳しかったり、相手のアーティファクトではないクリーチャーに触れるカードが《分散》だけだったり、1枚で勝てるようなレアが無かったりと、欠点を挙げるならきりがありません。

 正直かなり厳しいデッキになってしまいましたが、ブン周りもあるデッキなので、全く希望がないわけではありません。

 デッキの点数としては65点くらい。3勝とはいかなくても、せめて2勝はしたい感じです。


 そして成績の方は2勝1敗。1敗は毒デッキに負けてしまいました・・・。
 このデッキで2勝なら嬉しい方なので良しとしましょう。


 これで成績は9勝2敗と、かなりの好成績で最後の構築ラウンドへ進むことが出来たのですが・・・その後は1勝4敗と散々な負けっぷりをしてしまい、最終的に10勝6敗と残念な成績になってしまいました。おお渡辺よ、死んでしまうとは情けない。

 まぁ今回は仕方ないと思って、また次のイベントを頑張ろうと思います。


 私見ですが、今回のプロツアーのドラフトでは感染というアーキタイプは負け組だったと感じました。

 あくまで自分の見た範囲ですが、勝っているデッキは上手く組めている金属術や重めのパワーカードを連打していくような緑のようなデッキが多く、感染をやっている人は総じて負けている印象がありました。

 包囲戦で感染関係のカードが増えたことで卓に感染を目指す人が多く出来てしまい、お互いに邪魔をしあってしまって上手くデッキが組めていないような状況だったと思います。

 いくら1パック目の包囲戦で感染が強化されているとしても、続く2・3パック目の傷跡からは感染のカードが少なくなるので、今回のプロツアーでは卓全体の許容人数に対して感染を目指す人が多い状況だったということでしょう。

 感染をやる際には、きちんと自分の上下との住み分けをしてやる必要がありそうですね。

 フィーチャーマッチの観戦記事からもわかることがあるかもしれないですし、僕が参加していない第1ドラフトのドラフト・ビューアーもあるので、ぜひカバレージを読んでみてください。

プロツアー・パリ イベントカバレージ

 では今回はこの辺で。

 それではまた来週お会いしましょう。

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