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コラム

木曜マジック・バラエティ

浅原晃の「デッキタイムトラベル!」 Part5 -コンボの系譜 中篇

浅原晃の「デッキタイムトラベル!」 Part5 -コンボの系譜 中篇

By 浅原 晃  前篇からの続き。コンボ編の続きをウルザズ・サーガから!

■1998年

15) 《波動機

 ウルザブロックのサイクリングのシステムを利用したコンボとして一世を風靡したのが《波動機》だ。ウルザブロックではサイクリングのコストが無色2マナに限定されていたため、《波動機》を置くだけで、サイクリングをタダにすることができた。そして、ほとんどのカードをサイクリングカードで埋めることで、0マナのキャントリップを繰り返し、特定のカードにたどり着きそのカードを使ってコンボを達成するという発想が生まれた。  《波動機》によってサイクリングされたカードは墓地に落ちるため、サイクリングを繰り返しながら、墓地をリソースとして使えるカードがコンボの片割れとして採用される。その中でもスタンダードで活躍したのが、《生ける屍》と組み合わせた「サイクリングデス」だろう。
⇒1999年 +《生ける屍》+各種サイクリングカード
『サイクリングデス』[MO] [ARENA]
4 《漂う牧草地
4 《離れ島
4 《汚染されたぬかるみ
4 《滑りやすいカルスト
4 《薄煙の火口
4 《枯渇地帯

-土地(24)-

2 《フェアリーの大群
3 《法の信奉者
4 《ふくれたヒキガエル
4 《闇番のエルフ
4 《ペンドレルのドレイク
4 《砂州の大海蛇

-クリーチャー(21)-
2 《水蓮の花びら
4 《波動機
2 《生ける屍
3 《暗黒の儀式
2 《排除
2 《スクラップ

-呪文(15)-
2 《フェアリーの大群
1 《優雅の信奉者
1 《法の信奉者
4 《防御の光網
2 《再入植
2 《排除
1 《スクラップ
2 《沸騰

-サイドボード(15)-
 ウルザズ・サーガだけの時代は他のコンボデッキの影に隠れていたが、ウルザズ・レガシーの加入によって、より多くのサイクリングカードが手に入り、コンボデッキとしての強さを確立したデッキだ。フィニッッシャーとしてはサイクリングで墓地に落としたカードを全て戦場に拾い上げて物理で殴って勝利する。  しかし、このデッキも構成上、《波動機》を置けば決まってしまうという、お手軽な1枚コンボであったためにスタンダードでは強すぎるとして禁止された。

■1999年

16) 《修繕

 ウルザズ・サーガでもっとも強いカードと言われて思いつくものの一つは《トレイリアのアカデミー》ではないだろうか。この土地はコンボそのものではなかったが、大量のマナを生み出すことで、あらゆるコンボを高速化した伝説の土地だ。  ウルザブロックがデザイン上、コンボを多く作れるセットであったというのは一つの方向性として存在していたものの、悪い印象を与えてしまったのは、マナを大量に生み出す、もしくは、マナをフリーにするといったカード群が同時に収録されていたことだろう。それによって、ゲームそのものを壊してしまっていたのは間違いない。  高速なデッキはそれだけで強さと理不尽さを持つ。ウルザズ・レガシーで、高速化という点で活躍したカードの一つは《修繕》だろう。《修繕》には2つの役割がある、一つが、サーチとしての役割、もう一つがマナを無視して出すことができる、マナ加速としての役割だ。
⇒ 1999年 +《記憶の壺》+《偏頭痛
『メグリムジャー』 Randy Buehler
グランプリウィーン99 ベスト4 / エクステンデッド[MO] [ARENA]
4 《Underground Sea
4 《真鍮の都
3 《地底の大河
3 《古えの墳墓
2 《宝石鉱山

-土地(16)-


-クリーチャー(0)-
4 《ライオンの瞳のダイアモンド
4 《モックス・ダイアモンド
4 《水蓮の花びら
4 《魔力の櫃
4 《暗黒の儀式
4 《渦まく知識
1 《神秘の教示者
4 《吸血の教示者
4 《防御の光網
4 《修繕
2 《ヨーグモスの意志
1 《偏頭痛
4 《記憶の壺

-呪文(44)-
2 《砂のゴーレム
4 《Force of Will
2 《紅蓮破
1 《神秘の教示者
1 《中断
1 《解呪
1 《寒け
1 《ヨーグモスの意志
1 《憂鬱
1 《非業の死

-サイドボード(15)-
 そして、悪いことにその2つの役割はコンボデッキにもっとも必要な要素だった。アーティファクトというリソースを1つ削るというのが《修繕》のデメリットになるが、リソースを取り合うゲームを行わないコンボデッキではそのデメリットも無いようなものだ。
 さらにこのデッキでは《記憶の壺》そのものが、コンボパーツでありながら、余りにも強力なドローソースであるため、《修繕》によって失ったリソースも一瞬で取り返すことができる。  コンボパーツが、コンボそのものを回すエンジンにもなる。環境を席巻するような強力なコンボというのは、そういったスタンスを取っていることも多い。  このデッキはエクステンデッドのものだが、スタンダードと構成パーツはほとんど変わらない。  《記憶の壺》は《修繕》の力を借りて、最速でありながら、安定度も誇るコンボであったが、禁止カードに指定される速度も1ヶ月と最速であった。あるプレイヤーは《記憶の壺》を大量に購入し、飛行機に乗っている間に禁止されたという話も噂として存在している。風のように去っていったコンボと言えるかもしれない。  その後、《修繕》はスタンダードに残り、茶単といったアーティファクト主体のデッキで活躍した。強いカードではあるものの、この当時のことを思えば、それは健全な活躍と言っていいだろう。

17) 《ヨーグモスの取り引き

 ウルザブロック最後のエキスパンションである、ウルザズ・デスティニーも他の2つと同様にコンボデッキを生み出している。《ネクロポーテンス》よりも直接的に、よりコンボ的に使われたのが《ヨーグモスの取り引き》だ。
 昔から、《ネクロポーテンス》はコンボパーツ集めとしての役割を担うことも多かった。ライフの損失も次のターンに勝てるならあまり問題は無い。コンボデッキにおいてライフを軽視できることこそが、《ネクロポーテンス》をドローソースとして使えた理由だろう。  ただ、それでも《ネクロポーテンス》には「次のターンにならないと、ライフを払って得たカードが使えない」という弱点があった。それゆえに、循環系のコンボでは使えない――例えば、ライフを即座に得て、それでカードを引くといった動作の循環は不可能だった。  それによって、純粋に《ネクロポーテンス》と《生命吸収》などで戦うコントロールデッキも、《ネクロポーテンス》のメジャーな戦略として使われていた。  ただ、《ヨーグモスの取り引き》はその殆どの活躍がコンボデッキとしての活躍だ。それは、1ライフ払って引いたカードがそのターンのうちに使えるという効果がコンボに適しすぎているからであり、特にライフ獲得とそのドローによる循環が即座に行えたため、循環系コンボがスタンダードにおいて活躍した。
⇒1999年 《スカージの使い魔》+《魂の饗宴
『ピットサイクル』 射場本正巳
The Finals99 ベスト4 / スタンダード[MO] [ARENA]
5 《平地
7 《
1 《高級市場
4 《泥炭の沼地
2 《僻遠の農場
3 《ファイレクシアの塔

-土地(22)-

4 《アカデミーの学長
4 《レイディアントの竜騎兵
4 《スカージの使い魔

-クリーチャー(12)-
4 《厳かなモノリス
1 《レイモスの歯
4 《暗黒の儀式
4 《吸血の教示者
4 《死体発掘
1 《縁切り
1 《ヨーグモスの意志
4 《魂の饗宴
3 《ヨーグモスの取り引き

-呪文(26)-
1 《大天使
2 《解呪
2 《休止
3 《打倒
2 《非業の死
2 《日中の光
1 《象牙の仮面
1 《撲滅
1 《一掃

-サイドボード(15)-
 かつて日本三大地雷と言われた射場本正巳がデザインしたのが、この『ピットサイクル』だ。このデッキは、『プロスブルーム』のように、いくつかのエンジンを組み合わせて構築されている、
 特にライフそのものがこのコンボにとって重要であるため、いかにライフを効率良く獲得していくか、といった点にも工夫がされているデッキだ。《レイディアントの竜騎兵》と《死体発掘》に注目したのが『ピットサイクル』、海外で開発された《縁切り》を使ったものは『セイバーバーゲン』などと呼ばれている。  《ヨーグモスの取り引き》はヴィンテージやエクステンデッドなど下の環境ではすぐに禁止、制限カードとなったが、スタンダードでは6マナという重さやライフによってコンボの成功率が大きく変わることから、禁止されることはなかった。

18) 《補充

 ウルザズ・デスティニーで生み出されたコンボカードの中で、コンボとして支配的に君臨した時代が長いカードと言えば、《補充》に違いない。  《補充》がもっとも有名になったのは、ネメシスで加わったパララクスシリーズを使った、『パララクス補充』だが、それ以前にも瞬殺コンボデッキとしての形は存在していた。
⇒1999年 +《伏魔殿》+《オパール色の輝き
『ROP』 Holger Meinecke
ヨーロッパ選手権99 Top 8 / スタンダード[MO] [ARENA]
8 《
4 《真鍮の都
4 《アダーカー荒原
2 《サラカスの低地
1 《古えの墳墓
4 《裏切り者の都

-土地(23)-


-クリーチャー(0)-
3 《神秘の教示者
4 《対抗呪文
4 《直観
4 《大あわての捜索
4 《プロパガンダ
4 《調律
4 《伏魔殿
4 《オパール色の輝き
4 《補充
2 《魔力消沈

-呪文(37)-
3 《スランの鋳造所
4 《防御の光網
3 《エネルギー・フィールド
3 《解呪
1 《冬眠
1 《魔力消沈

-サイドボード(15)-
 『ROP』と呼ばれるこのデッキは、《補充》によって《伏魔殿》と《オパール色の輝き》を含む、大量のエンチャントを戦場に戻し、クリーチャー化と《伏魔殿》のダメージよって瞬殺するものだ。  《調律》や《大あわての捜索》をエンジンとして利用しており、見かけ上のアドバンテージを失いながらも、墓地にエンチャントを効率よく落とすことができる。《調律》を2回も起動すれば、相手を倒せるだけのカードが墓地に溜まっており、なおかつ探すカードは《補充》1枚で良かったため、確実性の高いコンボと言える。  しかし、デッキとしての《補充》デッキが化けるのはネメシスが加わってからだ。
⇒2000年 +《パララクスの潮流》《パララクスの波
『パララクス補充』 Tom van de Logt
世界選手権00 Top8 / スタンダード[MO] [ARENA]
9 《
8 《平地
4 《アダーカー荒原
4 《リシャーダの港

-土地(25)-


-クリーチャー(0)-
1 《空色のダイアモンド
3 《悟りの教示者
1 《神秘の教示者
1 《退去の印章
3 《対抗呪文
1 《エネルギー・フィールド
1 《浄化の印章
4 《大あわての捜索
4 《調律
4 《オパール色の輝き
3 《パララクスの潮流
4 《パララクスの波
4 《補充
1 《神の怒り

-呪文(35)-
3 《消去
2 《目くらまし
1 《寒け
1 《黒の防御円
1 《浄化の印章
2 《軽快なリフレイン
1 《呪われたトーテム像
2 《神の怒り
2 《水没

-サイドボード(15)-
 『パララクス補充』がコンボデッキとして活躍し、多くのトーナメントを席巻した理由は、それが元の瞬殺型のコンボデッキではなく、コントロール型のコンボデッキへと変貌したからだ。《パララクスの潮流》はコントロールデッキを無力化し、《パララクスの波》はクリーチャーデッキに対してコンボ達成までの時間を稼ぐ、それらが墓地に落ちたとしても、それはまたコンボパーツとなる。長く戦うこともできるし、なにより、青いデッキがカウンターしなければいけない呪文が多かった。  基本的には《補充》を打ち消せばいいという従来の形に比べれば、それは大きな進歩であり、トーナメントレベルで支持される大きな理由になったといえる。当時の青は今に比べると格段に強く、青に耐性がついたというだけで十分な利点だったのだ。コンボとしても《パララクスの波》と《パララクスの潮流》、そして、《オパール色の輝き》が戻ってくれば、相手は何もできず、実質的に勝利がもたらされた。それは、瞬殺ができなくとも、従来の形に比べ、まったく遜色がないと言えた。  ただ、完全な瞬殺型もネメシスから《はじける子嚢》を得たことで、カードプールの広いエクステンデッド以下で活躍した。
⇒2000年 +《はじける子嚢》+《伏魔殿
『パンデバースト』 森勝洋
グランプリ・京都00 3位 / エクステンデッド[MO] [ARENA]
9 《
4 《平地
2 《Tundra
2 《Volcanic Island
1 《Tropical Island
1 《古えの墳墓
1 《裏切り者の都
4 《氾濫原

-土地(24)-


-クリーチャー(0)-
2 《伏魔殿
4 《補充
2 《はじける子嚢
1 《無効
4 《渦まく知識
4 《対抗呪文
4 《Force of Will
4 《大あわての捜索
4 《直観
2 《軽快なリフレイン
4 《商人の巻物
1 《神秘の教示者

-呪文(36)-
3 《無効
4 《水流破
1 《誤った指図
2 《火薬樽
2 《紅蓮破
2 《浄化の印章
1 《神の怒り

-サイドボード(15)-
 《直観》などの、サーチカードを大量に入れることで、コンボパーツでありながら、《はじける子嚢》や《伏魔殿》の枚数を抑えることができるのがポイントだ。その分早さは若干犠牲になっているが、打ち消し呪文を加えることができ、それによって対応力が増している。  相手の妨害や妨害に対して強いコンボというのも、一線級に生き残れるコンボの条件であるといえる。  ただ、ウルザブロックでコンボデッキが隆盛を誇ったことが原因か、それ以降、コンボデッキが活躍することは少なくなり、スタンダードではコントロールとビートダウンの戦いが主流となっていくようなデザインがされていくことになる。

■2002年

19) 《うつろう爆発

 しかし、スタンダードシーンからコンボデッキというものが生まれにくくなったとしても、カードプールの広いエクステンデッドになれば話は別だ。  オンスロートブロックの中でも異色を放つコンボデッキを生み出したのが、《うつろう爆発》である。このダメージ呪文は、捲られたカードのマナコストに依存している不確定なものだ。
⇒2002年 +《ドラコ
『ドラコ爆発』 八朔人平
プロツアー・ヒューストン02 24位 / エクステンデッド[MO] [ARENA]
10 《
5 《
4 《シヴの浅瀬
4 《孤立した砂州

-土地(23)-

1 《変異種
3 《ドラコ

-クリーチャー(4)-
4 《渦まく知識
4 《蓄積した知識
4 《対抗呪文
2 《マナ漏出
2 《記憶の欠落
4 《火 // 氷
2 《巻物棚
3 《狡猾な願い
4 《直観
3 《うつろう爆発
1 《地震

-呪文(33)-
3 《無効
1 《蒸気の連鎖
1 《神秘の教示者
3 《退去の印章
1 《音波の炸裂
1 《冬眠
1 《枯渇
1 《転覆
1 《荒残
1 《嘘か真か
1 《妨害

-サイドボード(15)-
 その不確定を確定した大ダメージとして作られたコンボデッキが『ドラコ爆発』だ。《ドラコ》のマナコストは16。《うつろう爆発》でライブラリーから捲られれば16点のダメージを与えられる。《うつろう爆発》はライブラリーを上から捲っていくという条件なので、当然《ドラコ》を仕込まなければいけないが、それは《巻物棚》や《渦まく知識》を使って効率よくセットできる。  このデッキの最大の利点は、リソースという点で手札から3マナの《うつろう爆発》1枚をキャストするだけでコンボが成立することだろう。1枚のカードしか使わないため、アドバンテージに優れ、戦場にパーマネントを必要としないため妨害も難しい。  そして、このデッキはコンボの構成パーツが多くないため、コントロールとして振る舞うこともできるということになる。実際、メインに《変異種》が入っているように、コントロールとしての勝ち方も意識しているのが分かる。  ただ、欠点もあり、当然のことだが16点のダメージしか与えられないことが挙げられる。マジックは誰もが知っている通り、20のライフからスタートする。このコンボは決まっても勝てるというわけではない。後のライフを他の火力によって削る必要がある。ただ、この欠点も《狡猾な願い》によって、メインに多くの火力を入れる必要が無いという点によって致命的ではないと言えるだろう。

■2003年

20) 《ゴブリンの放火砲

 ミラディンブロックに入り、《ゴブリンの放火砲》が加わることによって、当時のエクステンデッドはコンボデッキの時代を迎える。その原動力となったのは、《修繕》と《ゴブリン徴募兵》だ。
⇒2003年 +《マナ切り離し
『マナベルチャー』 Gabriel Nassif
プロツアー・ニューオーリンズ03 準優勝 / エクステンデッド[MO] [ARENA]
4 《
4 《汚染された三角州
4 《裏切り者の都
4 《古えの墳墓
4 《リシャーダの港

-土地(20)-


-クリーチャー(0)-
2 《金属モックス
4 《厳かなモノリス
2 《威圧のタリスマン
3 《発展のタリスマン
2 《通電式キー
1 《金粉の水蓮
4 《魔力の乱れ
4 《渦まく知識
4 《神秘の教示者
4 《マナ切り離し
4 《修繕
1 《急流
4 《ゴブリンの放火砲
1 《精神隷属器

-呪文(40)-
3 《水銀のドラゴン
1 《白金の天使
3 《無効
4 《寒け
1 《蒸気の連鎖
1 《罠の橋
2 《綿密な分析

-サイドボード(15)-
 《ゴブリンの放火砲》は土地が出るまでライブラリーを上から公開していくが、土地が出ずにライブラリーが尽きてしまった場合、それまで公開した分のカードと同じだけのダメージを与えることができる。《マナ切り離し》はデッキの土地を全てゲームから除外することができるので、その後、《ゴブリンの放火砲》を起動すれば、ライブラリーの枚数と等しいだけのダメージ、大抵は20点以上のダメージを相手に与えることができる。  青単で構築されているこのデッキは《古えの墳墓》や《裏切り者の都》といった2マナを生み出す土地をふんだんに使っており、《金属モックス》や《威圧のタリスマン》といったマナ加速を使いながら、《神秘の教示者》や《修繕》といったサーチ能力で安定して3ターンから4ターンでのコンボ達成可能にした。
⇒2003年 +《ゴブリン徴募兵
『ゴブバンテージ』 浅原 晃
プロツアー・ニューオーリンズ03 第10位 / エクステンデッド[MO] [ARENA]
17 《
4 《古えの墳墓

-土地(21)-

3 《スカークの探鉱者
4 《ゴブリンの群衆追い
4 《ゴブリン徴募兵
4 《ゴブリンの戦長
4 《ゴブリンの女看守
2 《宝石の手の焼却者
1 《ゴブリンの名手
3 《ゴブリンの首謀者
2 《包囲攻撃の司令官

-クリーチャー(27)-
4 《金属モックス
4 《煮えたぎる歌
4 《ゴブリンの放火砲

-呪文(12)-
4 《ゴブリンのうすのろ
1 《ゴブリンの模造品
1 《ゴブリンの名手
2 《破壊的脈動
3 《忘却石
4 《荒残

-サイドボード(15)-
 もう一つ、同じ大会で活躍したのが、この『ゴブバンテージ』だ。  本来、『ゴブバンテージ』とは、好きな数のゴブリンをデッキに積み上げることができる《ゴブリン徴募兵》を使って、《ゴブリンの首謀者》で4枚のゴブリンをドローしてからの圧倒的物量、アドバンテージで圧殺するデッキである。その構想をもとに、2003年の夏に行われた世界選手権で日本勢がシークレットデッキとして使用し好成績を収めた。  その初期の『ゴブバンテージ』に比べ、ミラディンブロックが加わり、一気にコンボ色が強くなったのがこの形だ。《ゴブリン徴募兵》はそれ単体でも3ターンキルを可能にするクリーチャーだが、《ゴブリンの放火砲》でデッキに積み上がったゴブリンを公開していき、大ダメージを与えることも可能になっている。この『ゴブバンテージ』の強さは、速さというよりも、その攻め方の多様性にある。  コンボデッキとビートダウンの融合。マジックでは強いデッキの条件として、攻め方が複数あるものは強いと言われる。何故なら、一つの勝ち方に傾倒している場合、対策する側もより対策しやすくなってしまうからだ。それが警戒されているデッキなら尚更だろう。  ただ、軸の違う2つのコンボが成立している『ゴブバンテージ』では、本来もっとも有効な対策と言われる《仕組まれた疫病》や《寒け》によっても完全に沈黙することがない。  ビートダウンでもコンボでも勝てる、よほどかみ合っていなければ器用貧乏になってしまうが、お互いが欠点を補う形に構築できれば、これほど理想的な形も無いだろう。  《ゴブリンの放火砲》はミラディンブロック3つめのエキスパンションであるフィフス・ドーンが出たあとには、『アイアンワークス』と呼ばれるコンボデッキで使われることもあった。
⇒2004年 +《マイアの保育器》+《クラーク族の鉄工所
『アイアンワークス』 岡本尋
The Finals04 準優勝 / スタンダード[MO] [ARENA]
2 《古えの居住地
3 《大焼炉
4 《教議会の座席
2 《伝承の樹
4 《囁きの大霊堂
4 《ダークスティールの城塞

-土地(19)-


-クリーチャー(0)-
4 《金属モックス
4 《威圧のタリスマン
4 《発展のタリスマン
4 《クラーク族の鉄工所
4 《師範の占い独楽
4 《血清の幻視
4 《マナ漏出
4 《加工
1 《ゴブリンの放火砲
4 《物読み
4 《マイアの保育器

-呪文(41)-
1 《ダークスティールの巨像
2 《溶接の壺
4 《無効
4 《秘宝の障壁
4 《夜の囁き

-サイドボード(15)-
 これはスタンダードで活躍した茶単のデッキで、《クラーク族の鉄工所》によって大量のマナを生み出し、《マイアの保育器》から大量のトークンで勝利する。  基本的には《ウルザの保育器》から生み出された大量のトークンによって殴り勝つことができるので、《ゴブリンの放火砲》自体はメインパーツというわけではない。1ターン早く勝てるオプションや、全体除去に対して警戒すべきときに使われた。

■2004年

21) 《精神の願望

 21世紀のコンボデッキを語る上で絶対に外せないシステム。と聞かれたら真っ先に挙げられるものの一つは「ストーム」に違いない。このコンボに特化したシステムを生み出したのはオンスロート3つ目のエキスパンションである、スカージだ。  《精神の願望》はエクステンデッドで特に活躍したデッキで様々な形が存在するが、ここでは代表的なものをいくつか紹介していこう。
⇒2003年 +《ぐるぐる
『ぐるぐるデザイア』 藤田修 / デザイン:藤田剛史
プロツアー・ニューオーリンズ03 72位 / エクステンデッド[MO] [ARENA]
4 《古えの墳墓
2 《裏切り者の都
4 《サプラーツォの岩礁
4 《教議会の座席

-土地(14)-


-クリーチャー(0)-
4 《金属モックス
4 《厳かなモノリス
3 《金粉の水蓮
4 《ぐるぐる
4 《渦まく知識
4 《夢の掌握
3 《エネルギーの炸裂
2 《神秘の教示者
4 《修繕
2 《瞑想
2 《企業秘密
4 《先細りの収益
2 《苦悶の触手
4 《精神の願望

-呪文(46)-
1 《白金の天使
2 《悪意の眼差し
3 《蒸気の連鎖
4 《防御の光網
2 《急流
2 《知識の渇望
1 《苦悶の触手

-サイドボード(15)-
 『マナベルチャー』や『ゴブバンテージ』が流行していたプロツアー・ニューオリンズ03の中で、さらなる速さを求めたデッキも作られていた。それが、《精神の願望》を使った『ぐるぐるデザイア』だ。  マナを稼ぎながら、ストームも稼ぐ、それが《精神の願望》デッキの理想的な動きになる。このデッキでは、《金粉の水蓮》を《修繕》などで戦場に出し、《ぐるぐる》をまるで《暗黒の儀式》のように使って、マナとストームを稼いでいく。  速度という点では申し分なかったが、ストームや《先細りの収益》の不確実性が欠点として挙げられるだろう。ストーム5~6といった数字ではそれがスカることも十分考えられるからだ。
⇒2004年 +《サファイアの大メダル》+《断絶》+《フェアリーの大群
『青黒デザイア』 大磯正嗣
プロツアー・コロンバス04 ベスト8 / エクステンデッド[MO] [ARENA]
7 《
1 《
1 《溢れかえる岸辺
4 《汚染された三角州
4 《地底の大河

-土地(17)-

4 《フェアリーの大群
2 《夜景学院の使い魔

-クリーチャー(6)-
4 《金属モックス
4 《サファイアの大メダル
4 《渦まく知識
2 《吸血の教示者
4 《蓄積した知識
3 《断絶
2 《商人の巻物
3 《直観
3 《狡猾な願い
2 《綿密な分析
1 《転換
1 《苦悶の触手
4 《精神の願望

-呪文(37)-
2 《サイカトグ
1 《被覆
1 《棺の追放
1 《マナ漏出
1 《断絶
1 《思考停止
2 《残響する真実
1 《魔力流出
1 《直観
1 《再建
1 《転換
1 《卑下
1 《天才のひらめき

-サイドボード(15)-
 ストームはいかにそのターン中にカードを使えるかで確実性が変わる。その確実性を上げるには、そのターンカードを使うことができる数をより多く、そのためには、マナを使わない呪文をどれだけ多く、手札を極力減らさずに唱え続けられるかに懸かっている。そういったカードが多くあれば、呪文の数を稼ぎ、《精神の願望》で《精神の願望》が捲れるのを期待できるだけのストームを稼ぐことができる。  この『青黒デザイア』ではフリースペルと呼ばれる土地が起きる呪文、《フェアリーの大群》と《断絶》を使い、さらに《サファイアの大メダル》でそれらのマナを軽減することで、マナを増やしながら効率よくストームを稼ぐことを実現している。  余ったマナを《狡猾な願い》をループさせることで使い切るのもテクニックの一つだった(編注:現在のルールでは不可能となっています)。
⇒2006年 +《睡蓮の花
『TEPS』 Paul Matthews
グランプリ・フィラデルフィア08 ベスト8 / エクステンデッド[MO] [ARENA]
3 《宝石鉱山
3 《地熱の割れ目
4 《硫黄孔
4 《ほくちの加工場
2 《用水路

-土地(16)-


-クリーチャー(0)-
4 《睡蓮の花
2 《金属モックス
4 《炎の儀式
4 《陰謀団の儀式
4 《煮えたぎる歌
3 《太陽との交感
4 《彩色の星
4 《彩色の宝球
4 《燃え立つ願い
3 《深遠の覗き見
3 《暗黒への突入
2 《苦悶の触手
3 《精神の願望

-呪文(44)-
3 《殺戮の契約
3 《否定の契約
3 《思考囲い
1 《死の印
1 《外殻貫通
1 《苦悶の触手
1 《太陽との交感
1 《巣穴からの総出
1 《精神の願望

-サイドボード(15)-
 青のパーツがローテーションによって失われてからエクステンデッドで組まれたのが、純粋なマナ加速と《燃え立つ願い》で《精神の願望》や《巣穴からの総出》を状況に応じて使っていく形だ。  時のらせんブロックから加わった待機の《睡蓮の花》は初手にさえあれば、もっとも効率のよいマナ加速であり、ストームの数を増やしてくれる呪文でもあった。キャントリップも多く入っており、手札をそのターンまで溜めて、一気に決めるといった形になっている。  このデッキの形だと、マナ加速が大量に入っているため、直線的すぎるといった弱点もあるが、それを補ったのがストームのシステムだ。  ストーム自体は誘発型能力だったため、《もみ消し》といった特殊な打消し呪文でない限り、打消し呪文で対処するのは難しい、そのため、本来、コンボパーツだけを打ち消せばよいという青の戦略が通用しにくい。途中のマナ加速を打ち消さなければいけないといった選択を迫られることが、カウンターデッキの優位を打ち消してくれているのだ。
 最後まで書いてしまうとちょっと長くなってしまうので今回はここまで。  次回、ストームの続きなどから始めて、後編ということで完結しようと思う。「強いコンボデッキとはどういうものか」というものにも詳しく触れていく予定だ。  それでは、また次回。
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