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木曜マジック・バラエティ
行弘賢の「MOを遊びつくせ!」第4回:イニストラード・ブロック構築
読み物
木曜マジック・バラエティ
2012.04.19
行弘賢の「MOを遊びつくせ!」第4回:イニストラード・ブロック構築
著者紹介:行弘 賢(ゆくひろ・けん)
「deathsnow」の二つ名を持つ、気鋭のプレイヤー・デッキデザイナー。
マジック歴は時のらせんブロックからと短いながら、プロツアー・京都09での《ミストメドウの魔女》デッキ、プロツアー・アムステルダム10での「オリスチャント」など、特異なデッキデザイン能力は海外からも注目を集める。
高いレベルで安定した成績を残し続け、主な戦績にグランプリ・神戸2012 準優勝、The Finals 2011 トップ8などがある。
また、「ニコニコ生放送」で配信を行うなど、ネットを使った積極的な活動でも知られている。
皆さんこんにちは!
今回の記事はイニストラード・ブロック構築についてです。現実では『アヴァシンの帰還』がじき発売となりますが、Magic Onlineでは『アヴァシンの帰還』が導入されるのはまだまだ先の話になります。
いつもと違った感じになりますが、今回は現在のイニストラード・ブロック構築の環境をおさらいしつつ、代表的なデッキを紹介していきたいと思います。
イニストラード・ブロック構築(ISD構築)って?
イニストラード(ISD)、闇の隆盛(DKA)の二つのセットのカードだけでデッキを組むフォーマットです。アヴァシンの帰還(AVR)発売後は、さらにアヴァシンの帰還のカードが加わることになります。
現在禁止されているカードは《未練ある魂》と《無形の美徳》の2種類です。
イニストラード・ブロック構築の現在のメタゲーム
Tier1
- 赤白ビートダウン
- 赤緑中速ビートダウン
Tier2
- 黒単ゾンビ
- 多色ドレッジ(青緑赤)
- ジャンドコントロール
現在のイニストラード・ブロック構築のメタゲームはこんな感じになります。他にもちょこちょこデイリーイベント(DE)上で見かけるデッキは存在するのですが、3勝1敗以上の入賞ラインの多くは、この5種のデッキに含まれます。
環境を定義する「除去」
さて、それでは先程紹介した5種のデッキを紹介・・・の前に、各色の基本的な除去を先に紹介させていただきます。
赤
白
- 《悪鬼の狩人》
- (サイド後)《忌まわしきものの処刑者》
黒
緑
青
「サイド後」と書かれているのはサイドボード後によく見かけるカードです。
これらの除去が環境にあるというのを踏まえて、デッキ紹介を読んでいただけると分かりやすいと思います。
デッキ紹介
赤白ビートダウン
12 《平地》 8 《山》 4 《断崖の避難所》 -土地(24)- 4 《教区の勇者》 4 《宿命の旅人》 4 《悪鬼の狩人》 4 《地獄乗り》 -クリーチャー(16)- |
4 《町民の結集》 3 《高まる献身》 4 《深夜の出没》 2 《農民の結集》 4 《硫黄の流弾》 3 《小悪魔の遊び》 -呪文(20)- |
4 《スレイベンの異端者》 3 《忌まわしきものの処刑者》 3 《霊炎》 3 《魔女封じの宝珠》 2 《冒涜の行動》 -サイドボード(15)- |
Tier1で赤緑ビートダウンと一緒の分類にしてありますが、実質1番人気のアーキタイプです。
《教区の勇者》からのぶんまわりが非常に魅力的なデッキで、先手からだと4ターンキルもざらにあります。
例えば、
第1ターン:《教区の勇者》
第2ターン:《町民の結集》
(《教区の勇者》アタックで3点)
第3ターン:《悪鬼の狩人》
(ブロッカーを排除しつつ《教区の勇者》(4点)と《町民の結集》のトークン2体でアタック(2点)、合計6点)
第4ターン:《地獄乗り》
(《教区の勇者》(4+1点)と《町民の結集》のトークン2体(1+1点×2)と《悪鬼の狩人》(1+1点)、《地獄乗り》アタック(3+1点)、合計15点)
などの回りで4キル。こちらが後手だと第4ターンの《教区の勇者》をチャンプブロックしたとしても最初のターンから合計19点ライフが削られてしまいますので、実質ほぼ詰みの状態になってしまいます。
このデッキはこうした序盤からの高いクロックからのぶんまわりが強いのもそうなのですが、もし序盤を捌かれてゲームが長引いたとしても《硫黄の流弾》と《小悪魔の遊び》で10点以上のライフをいつでも削りきることができます。
総合的に、序盤から終盤まで常に対戦相手にプレッシャーを与えられる、死角の少ないデッキになっています。
青緑赤ドレッジ
8 《森》 2 《島》 4 《内陸の湾港》 4 《硫黄の滝》 2 《ゆらめく岩屋》 2 《ケッシグの狼の地》 -土地(22)- 4 《アヴァシンの巡礼者》 4 《錯乱した助手》 4 《骨塚のワーム》 4 《甲冑のスカーブ》 2 《裂け木の恐怖》 2 《ケッシグの檻破り》 4 《グール樹》 -クリーチャー(24)- |
4 《根囲い》 4 《追跡者の本能》 3 《骨までの齧りつき》 3 《冒涜の行動》 -呪文(14)- |
2 《裂け木の恐怖》 2 《レインジャーの悪知恵》 2 《静かな旅立ち》 2 《硫黄の流弾》 2 《押し潰す蔦》 1 《骨までの齧りつき》 2 《記憶の旅》 1 《天啓の光》 1 《冒涜の行動》 -サイドボード(15)- |
《根囲い》や《追跡者の本能》でデッキを掘り進みつつ、墓地にクリーチャーを溜めて《骨塚のワーム》や《裂け木の恐怖》のサイズをUPしつつ、《グール樹》を高速召喚するデッキになります。
この環境は《破滅の刃》のような確定除去が少なく、特に現環境は赤の火力が除去の役割を担っているので、サイズの大きなクリーチャーを除去するのが難しくなっています。なので、このデッキのように「ただサイズの大きなクリーチャーを出す!」のを目標にしているデッキでも成り立っています。
最終的には《グール樹》やサイズが膨れ上がった《骨塚のワーム》に《ケッシグの狼の地》でトランプルを付与して殴り勝つのが目的になります。それとは別に《投げ飛ばし》なんかを採用しているリストもありますね。
赤緑中速ビートダウン
15 《森》 5 《山》 4 《進化する未開地》 2 《ケッシグの狼の地》 -土地(26)- 4 《夜明け歩きの大鹿》 4 《絡み根の霊》 4 《夜明けのレインジャー》 4 《捕食者のウーズ》 4 《高原の狩りの達人》 4 《食百足》 2 《憎悪縛りの剥ぎ取り》 -クリーチャー(26)- |
2 《冒涜の行動》 2 《小悪魔の遊び》 4 《情け知らずのガラク》 -呪文(8)- |
4 《アンデッドの錬金術師》 2 《解放の樹》 2 《轟く激震》 2 《異教徒の罰》 2 《冒涜の行動》 2 《小悪魔の遊び》 1 《島》 -サイドボード(15)- |
《高原の狩りの達人》のカードパワーを活かすべく使われるカラーリングが赤緑です。
本来ISD構築の世界はイニストラードの対抗色土地が中心なので2色の友好色は組むのが難しいのですが、緑には《夜明け歩きの大鹿》というマナサポートがあるので、友好色の組み合わせでもデッキを組むことが可能になっています。
序盤は《絡み根の霊》や《夜明け歩きの大鹿》で時間を稼ぎつつ、中盤からは《高原の狩りの達人》や《情け知らずのガラク》で場を制圧していき、終盤は対処されにくい不死付きの《食百足》や《憎悪縛りの剥ぎ取り》で止めを刺す、といった感じになります。
サイド後は《進化する未開地》と《夜明け歩きの大鹿》から《島》を調達してから《アンデッドの錬金術師》というプランも用意してあります。これは山札を削って墓地にクリーチャーを溜めることを目標にするドレッジに対しては非常に効果的なサイドボードになります。
黒単ゾンビ
21 《沼》 -土地(21)- 4 《戦墓のグール》 4 《墓所這い》 4 《チフス鼠》 4 《名門のグール》 4 《スカースダグの高僧》 4 《ゲラルフの伝書使》 -クリーチャー(24)- |
4 《悲劇的な過ち》 3 《死の重み》 2 《夜の犠牲》 3 《祭壇の刈り取り》 1 《血統の切断》 2 《ヴェールのリリアナ》 -呪文(15)- |
4 《血統の守り手》 2 《猛火の松明》 2 《夜の犠牲》 2 《飢えへの貢ぎ物》 3 《血統の切断》 2 《魔女封じの宝珠》 -サイドボード(15)- |
スタンダードにもあるアーキタイプですが、結局《墓所這い》と《ゲラルフの伝書使》が強いデッキなので、その2種類をどれだけ毎ゲーム引けるかが重要になってきます。
その2種によるビートダウンは赤除去が多いこの環境では対処するのが非常に難しく、かなりのプレッシャーを与えることができます。
ただ、1番人気の赤白ビートダウンにはクロック負けすることも多く、全体のカードパワーも《チフス鼠》を採用していたりとあまり高くないので、5種の中では最も不安定なアーキタイプとなっています。
ジャンドコントロール
9 《山》 4 《森》 3 《沼》 4 《森林の墓地》 3 《ゆらめく岩屋》 4 《進化する未開地》 -土地(27)- 1 《夜明けのレインジャー》 4 《高原の狩りの達人》 1 《オリヴィア・ヴォルダーレン》 2 《血の贈与の悪魔》 -クリーチャー(8)- |
4 《霊炎》 4 《信仰無き物あさり》 4 《硫黄の流弾》 2 《轟く激震》 4 《血統の切断》 2 《冒涜の行動》 1 《小悪魔の遊び》 4 《情け知らずのガラク》 -呪文(25)- |
1 《夜明けのレインジャー》 3 《解放の樹》 2 《ファルケンラスの貴種》 4 《夜の恐怖》 1 《轟く激震》 1 《異教徒の罰》 2 《魔女封じの宝珠》 1 《小悪魔の遊び》 -サイドボード(15)- |
除去と環境のパワーカードを詰め込んだデッキがこのジャンドコントロールです。
基本的には赤緑ビートダウンの延長のようなデッキなのですが、足してある黒で《血統の切断》が使えるのが大きく、環境のほとんどのクリーチャーを後腐れなく除去することができます。
クリーチャーの面でも、《血の贈与の悪魔》はタフネスが4で《硫黄の流弾》で対処するのが難しいためなかなか除去されにくく、《オリヴィア・ヴォルダーレン》も2マナ残してプレイすれば同じようにタフネスが4になるので、除去耐性、制圧力ともにフィニッシャーとしての性能が高いです。
とにかくデッキに入っているカードパワーが高く、《霊炎》や《血統の切断》、《情け知らずのガラク》などのアドバンテージを稼げる除去で盤面をグダらせて、消耗戦の末に何かしらのクリーチャーか《情け知らずのガラク》を盤面に生き残らせたら勝ちというデッキなので、コントロールが使いたい方にはオススメのアーキタイプです。
環境を把握した後は・・・?
環境を把握した後は、もちろんデッキ構築ですよね。
僕も大好きな《降霊術》でデッキを作ってみましたので、それを紹介させていただきます。
8 《森》 4 《平地》 3 《山》 4 《断崖の避難所》 4 《進化する未開地》 -土地(23)- 4 《アヴァシンの巡礼者》 4 《夜明け歩きの大鹿》 2 《銀筋毛の狐》 4 《悪鬼の狩人》 4 《高原の狩りの達人》 4 《霊誉の僧兵》 -クリーチャー(22)- |
4 《信仰無き物あさり》 4 《根囲い》 4 《降霊術》 3 《小悪魔の遊び》 -呪文(15)- |
4 《忌まわしきものの処刑者》 2 《地獄乗り》 3 《墓掘りの檻》 2 《天啓の光》 4 《冒涜の行動》 -サイドボード(15)- |
このデッキは、《信仰無き物あさり》や《根囲い》で山札を掘りつつ、《降霊術》を張って《高原の狩りの達人》や《霊誉の僧兵》を釣り上げてトークンを生み出してアドバンテージを得るのが大きな勝ち筋になります。
《高原の狩りの達人》と《霊誉の僧兵》で普通にビートダウンして勝つこともよくあり、素出ししたその2種を再度《降霊術》で使いまわして常にプレッシャーを与え続けることができます。
《悪鬼の狩人》はこのデッキにおいて色々なシナジーを作り出してくれる非常に万能なカードです。
普通にプレイしてクリーチャーを除去するという役割もありますが、墓地に落ちた後も《降霊術》で釣り上げた時に自分の《高原の狩りの達人》や《霊誉の僧兵》を追放してターン終了時に戻すことで、更にトークンを得ることができます。
このデッキの縁の下の力持ちが《夜明け歩きの大鹿》で、序盤はブロックしつつ土地を伸ばし、後半は《降霊術》で相手のターンに釣り上げてブロックしつつ土地を伸ばしとデッキのエンジンとして働いてくれます。
そのおかげで3枚入れている《小悪魔の遊び》が最大限機能し、相手のライフをそれだけで削りきることもよくあります。
サイドボードは《野生の狩りの達人》に対して強く、《降霊術》とも相性の良い《忌まわしきものの処刑者》を4枚。
白赤ビートダウン等のビートダウン系に劇的に刺さる《冒涜の行動》が4枚と、ドレッジやフラッシュバックを多用するデッキ、黒単ゾンビに対して強い《墓掘りの檻》を3枚。
ジャンドコントロールやドレッジのような少しゆっくりしたデッキに対してはダメージクロックアップが欲しいので《地獄乗り》を2枚。また《死の支配の呪い》がデッキ的に非常に厳しいので、《天啓の光》を2枚採用しています。
実際にこのデッキでよく2人構築で対戦しますが、結構勝てちゃいます。
メタゲームは現在固まっていますが、それ以外のデッキがチャンスが無いわけではありません。逆に、メタゲームが固まっている時ほどその隙間を縫うチャンスかもしれません。
アヴァシンの帰還がMOにリリースされるまでの1か月間、皆さんも是非イニストラード・ブロック構築のデッキを作って参戦してみてはいかがでしょうか?
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