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浅原晃の「デッキタイムトラベル!」 最終回 ? 世界選手権
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2011.11.24
浅原晃の「デッキタイムトラベル!」 最終回 -世界選手権
By 浅原 晃
先日行われた、2011年のサンフランシスコでの世界選手権で、今の形式の世界選手権は一区切り。来年からは、かつての招待イベント「インビテーショナル」のように16名の選ばれたプレイヤーによって、世界選手権が行われる。
最終回となる今回のデッキタイムトラベルでは、これまでの17回の世界選手権を、1つの大会から、1つのカード、1つのデッキを取り上げてこれまでの歴史を振り返りながら、どのようなデッキが活躍してきたのかというのを紹介していこうと思う。
それでは、最後のレッツタイムトラベル!
●世界選手権1994 アメリカ:ミルウォーキー
《Chaos Orb》
マジックの最初の選手権は1994年に行われた。この世界選手権は黎明期と言うに相応しく、さまざまなパワーカードが制限カードとして存在しており、混沌とした環境で行われた世界選手権だった。《Black Lotus》、《Ancestral Recall》などのパワー9も当然だが、もっともこの時代の混沌を象徴する、強烈な個性を持ったカードの一つとして取り上げられるのは《Chaos Orb》ではないだろうか。
4 《ミシュラの工廠》 4 《Taiga》 4 《Tropical Island》 4 《Volcanic Island》 2 《Bayou》 2 《真鍮の都》 -土地(20)- 4 《密林の猿人》 3 《極楽鳥》 2 《疾風のデルヴィッシュ》 3 《アルゴスのピクシー》 -クリーチャー(12)- |
4 《Chain Lightning》 4 《火の玉》 4 《稲妻》 1 《Ancestral Recall》 1 《チャネル》 1 《精神錯乱》 1 《Black Lotus》 1 《Mox Emerald》 1 《Mox Jet》 1 《Mox Ruby》 1 《Mox Sapphire》 1 《Demonic Tutor》 1 《Regrowth》 1 《Time Walk》 2 《心霊破》 1 《Chaos Orb》 1 《支配魔法》 1 《氷の干渉器》 -呪文(28)- |
3 《分解》 2 《生の躍動》 4 《Serendib Efreet》 1 《City in a Bottle》 1 《支配魔法》 2 《津波》 1 《野火》 1 《Forcefield》 -サイドボード(15)- |
このデッキは1994年の世界選手権を準優勝したデッキだ。優勝したZac Dolanの『宝石箱』が《セラの天使》を使ったコントロールをベースにしたデッキであるのに対し、このデッキは《稲妻》や《火の玉》などのバーンを主体にして作られている。今でこそ、クリーチャーが強いという環境になっているが、当時は制限カードも含め強力な呪文やアーティファクトが存在しており、逆にクリーチャーはダメージ源の補助的な役割を担うことが多かった。
このデッキの多くのパーツは火力などのダメージリソースを優先して採用されているが、《Chaos Orb》だけはその中で異彩を放っているパーマネント対策だ。
このカードは簡単に言えば、《Chaos Orb》自身をある程度一定の高さから落とし、それと触れているすべてのパーマネントを破壊するというもの。
実際に一体どういうことなの? と言いたくなるカードだが、それが公式に使われていたという事実は面白い。このカードの対策がそもそもカードではなく、パーマネントをバラバラに分けて置いたり、壁に貼り付けるといったことも行われたという話さえあり、落とす方も《Chaos Orb》自身を破いて撒くことで、多くのパーマネントを破壊したという噂さえあったカードだ。
黎明期ゆえ、今では使える環境は存在しないカードだが、マジックの面白さを語る上で、引き合いに出されるカードの一つになっている。
●世界選手権1995 アメリカ:シアトル
《黒の万力》
1995年の世界選手権の決勝は2つの強力なダメージリソースの戦いだった。しかし、それも、クリーチャーではなく、どちらも1マナのアーティファクト、優勝したデッキは《拷問台》を使った『黒き拷問台』。であり、準優勝したデッキは《黒の万力》を使ったデッキだった。
9 《平地》 4 《山》 4 《露天鉱床》 2 《アダーカー荒原》 1 《トロウケアの廃墟》 -土地(20)- -クリーチャー(0)- |
3 《剣を鍬に》 2 《地震》 2 《土地税》 3 《Zuran Orb》 4 《黒の万力》 3 《解呪》 2 《赤の防御円》 2 《孤島の聖域》 1 《天秤》 1 《象牙の塔》 4 《吠えたける鉱山》 3 《友なる石》 3 《冬の宝珠》 3 《神の怒り》 3 《ハルマゲドン》 3 《氷の干渉器》 -呪文(42)- |
3 《稲妻》 2 《地震》 2 《火の玉》 1 《臨機応変》 4 《山》 3 《紅蓮地獄》 -サイドボード(15)- |
この時代、基本的に危険なカードとして認知されていたのは、《黒の万力》の方だったろう。
何故なら、先攻で《黒の万力》を1ターン目に置ければ、まず3点。「Free Three Bolt」と呼ばれ、3ターンで9点のダメージをたたき出すことも少なくないほどに強力なダメージリソースだったのだ。準備が必要な《拷問台》に比べ、《黒の万力》はそのダメージ条件を既に最初に満たしていた。
ただ、《黒の万力》を最大限生かし、ダメージを与え続けるためには、相手に手札を使わせないことが必要になる。そういったコンセプトで作られたデッキがこれで、アーキタイプとしては『プリズン』と呼ばれるロック型のデッキになるだろう。
このデッキの主要なパーツは2つ、一つが《吠えたける鉱山》、これによって相手に使い切れない手札を増やすことができる。もう一つは《冬の宝珠》、毎ターン土地を1枚しか起こせない効果によってマナを縛り、手札の消費を抑えることができる。この2つに加えて、攻撃を遮断する《孤島の聖域》やさらにマナを縛る《氷の干渉器》によって相手が何も行動できない状態に追い込む。相手が何もできないという状態を目指すことからアーキタイプとして『プリズン』という名前が付いており、そうなった状態で《黒の万力》は機能した。
この2つの1マナアーティファクトがフィニッシャーとして活躍した環境であったと言えるかもしれない。
●世界選手権1996 アメリカ:レントン
《停滞》
1996年の世界選手権では当時最高のデッキと呼ばれた『ネクロディスク』にどうやって対処するかどうか、というのが鍵になっていた。
12 《島》 3 《アダーカー荒原》 3 《地底の大河》 2 《真鍮の都》 2 《Land Cap》 2 《River Delta》 -土地(24)- -クリーチャー(0)- |
4 《ブーメラン》 4 《Lim-Dul's Vault》 2 《回想》 1 《土地税》 1 《Zuran Orb》 4 《Arcane Denial》 4 《停滞》 3 《Despotic Scepter》 1 《天秤》 1 《象牙の塔》 4 《吠えたける鉱山》 1 《Soldevi Digger》 4 《Force of Will》 2 《宿命》 -呪文(36)- |
2 《水流破》 1 《Lodestone Bauble》 3 《大気の壁》 2 《黒の防御円》 2 《赤の防御円》 1 《黒の万力》 1 《フェルドンの杖》 1 《ハーキルの召還術》 2 《枯渇》 -サイドボード(15)- |
優勝したTom Chanphengはプロテクション(黒)の騎士軍団を擁してネクロデッキに対して立ち向かったが、この『ターボステイシス』も別の角度で、ネクロに対して立ち向かったデッキである。
《停滞》はお互いのアンタップステップを無くすエンチャントだ。マジックはカードがアンタップしないならば、土地もクリーチャーもほぼ使いきりとなり、リソースの供給が滞り戦局が文字通り停滞する。
ただ、この《停滞》をコントロールしているプレイヤーはアップキープに青マナを払い続ける必要がある。これが払えないと《停滞》は失われてしまい、相手からアンタップフェイズが始まってしまうので不利な状況が訪れてしまうのだ。
このデッキのポイントは、いかに青マナを払い続けるかというのと、《停滞》を「相手のターンに」戦場から外すことにある。
前者は《吠えたける鉱山》によって土地を引き続けることで達成し、後者は《ブーメラン》によって、相手のターンに《停滞》を手札に戻すことで、こちらのアンタップフェイズを獲得し、そして、また、置き直すことでロックを続けることができた。フィニッシャーは《フェルドンの杖》によるライブラリーアウト勝ちである。
この『ターボステイシス』はデッキとしての完成度だけでなく、《ネクロポーテンス》に強いという側面もあった。《ネクロポーテンス》は手札を増やし、毎ターンマナを使い切ることで機能するデッキであるため、手札がいくらあっても、土地は1ターンに1回しか置けない状態は何もできないに等しい、また、《停滞》がある状況では大量のドローを生かすことができず、また、《ネビニラルの円盤》が起きることもない。
ドローフェイズ(当時)を飛ばすというリスクを軽減するためにより少ないターンで大きなアクションをする必要がある『ネクロディスク』にとって、長引かせることに特化した《停滞》は天敵の一つと言えたのだ。
●世界選手権1997 アメリカ:シアトル
《巨大化》
セニョールストンピィというデッキを聞いたことがあるだろうか。緑単色のビートダウンの歴史を紐解くと必ず名前が上がるのがこのセニョールストンピィだ。
16 《森》 2 《Heart of Yavimaya》 -土地(18)- 4 《Fyndhorn Elves》 4 《ガズバンのオーガ》 4 《クウィリーオン・レインジャー》 4 《はぐれ象》 2 《疾風のデルヴィッシュ》 4 《Spectral Bears》 3 《収穫のワーム》 2 《ジョルレイルのケンタウルス》 3 《ルアゴイフ》 2 《ウークタビー・オランウータン》 -クリーチャー(32)- |
4 《巨大化》 4 《冬の宝珠》 2 《狩りの報奨》 -呪文(10)- |
4 《エメラルドの魔除け》 2 《崩壊》 2 《疾風のデルヴィッシュ》 2 《リバー・ボア》 3 《孤独の都》 1 《ウークタビー・オランウータン》 1 《狩りの報奨》 -サイドボード(15)- |
Svend Geertsenはこの『セニョールストンピィ』を使用して、世界選手権1997のトップ4に入っている。緑の軽量クリーチャーにパワフルなものが多く生まれたことで、高速ビートダウンとして誕生し、これ以降、ビートダウンの一つのアーキタイプとして成立し認知されていった。
特に重要なのは1マナ域のクリーチャーだ。《はぐれ象》は1マナ3/3というパフォーマンスを持ち、《ガズバンのオーガ》も2/2、それぞれもちろんデメリットもあるが、攻撃的なデッキであることがデメリット自体を補い、それを気にせずに序盤からクリーチャーを展開して攻め続けることができた。このデッキには、赤のように直接的な火力は無いが、《巨大化》や《狩りの報奨》などのパンプアップでクリーチャーをサポートしていった。
また、マナをほとんど使わない構成にすることで、《冬の宝珠》をほぼデメリットなしで使え、対戦相手の《神の怒り》などの大きなアクションを封じる戦い方が可能になっている。
緑の強力なサイズを持つクリーチャー+パンプアップ呪文という組み合わせは他の色には無いものであり、これから先もその時代のカードによってはメタゲームのトップに躍り出ることも多くなっていった。
●世界選手権1998 アメリカ:シアトル
《対抗呪文》
白、黒、赤、緑など、他の色がビートダウンとして特化した構成を持てるのに対し、青は常に打ち消し呪文と共にある。
18 《島》 4 《流砂》 4 《隠れ石》 -土地(26)- 1 《虹のイフリート》 -クリーチャー(1)- |
4 《対抗呪文》 4 《魔力の乱れ》 4 《ミューズの囁き》 4 《衝動》 3 《禁止》 3 《マナ漏出》 2 《雲散霧消》 1 《記憶の欠落》 4 《放逐》 4 《ネビニラルの円盤》 -呪文(33)- |
4 《水流破》 4 《不毛の大地》 4 《シー・スプライト》 2 《転覆》 1 《丸砥石》 -サイドボード(15)- |
もっとも有名なパーミッションデッキ『ユーロブルー』と言えば、世界選手権1998でRandy Buehlerが使用したこのデッキだろう。大量の打ち消し呪文、そして、ドロー、少量のフィニッシュカードはまさに全盛期のパーミッションデッキ、青が青たるゆえん、そのものであるとさえ言える。現に、ベスト8に入っていないにも関わらず、このデッキはチャンピオンズデッキ(金枠で実際の大会では使用できないカードで作られたデッキ)として、販売されている。
《対抗呪文》は青の象徴、ドローには繰り返し使用できる《ミューズの囁き》、土地に《隠れ石》があり、メインフェイズに一度もマナを使うことなく勝利したデュエルもあったという逸話も残っているデッキだ。《対抗呪文》といった優秀な確定カウンターはターンによってその価値が劣化することなく、また、《禁止》によって、あらゆる無駄カードを打ち消し呪文として使用することが可能であり、《虹のイフリート》はマナさえあればほぼ無敵にフィニッシャーであった。
ほとんどのプレイヤーはこのデッキに対して、ライフ20を残して負けを悟る。それが最盛期のパーミッション戦い方だった。
●世界選手権1999 日本:横浜
《厳かなモノリス》
横浜で行われた1999年の世界選手権。当時の熱気はその会場にいたものならば誰もがすさまじいものを感じ、世界選手権というもののすごさを感じたことだと思う。
13 《山》 4 《裏切り者の都》 3 《古えの墳墓》 -土地(20)- 4 《欲深きドラゴン》 3 《マスティコア》 1 《銀のゴーレム、カーン》 -クリーチャー(8)- |
4 《呪われた巻物》 4 《通電式キー》 4 《緋色のダイアモンド》 4 《厳かなモノリス》 4 《束の間の開口》 2 《摩滅したパワーストーン》 4 《スランの発電機》 4 《燎原の火》 2 《ミシュラのらせん》 -呪文(32)- |
3 《地震》 2 《破壊的脈動》 4 《呪文ショック》 2 《荒残》 2 《沸騰》 1 《ファイレクシアの処理装置》 1 《ミシュラのらせん》 -サイドボード(15)- |
この横浜は既に頭角を現していたKai Buddeが世界選手権優勝を果たし、本格的にブレイクした年でもある。その使用デッキは『赤茶単』。
《Black Lotus》、《Chaos Orb》、《黒の万力》など強力な、アーティファクトは黎明期から環境に大きな影響を与えてきた。マジックのウルザブロックは強力なアーティファクトが揃っており、その中でも強力なマナ加速を実現する《厳かなモノリス》と《通電式キー》の組み合わせは早いターンにもたらされる、莫大なマナの脅威を教えてくれるに十分だった。
そして、高コストながら《燎原の火》と《欲深きドラゴン》はこのデッキに非常にマッチしたカードで、リセットとアドバンテージ、そしてフィニッシャーと爆発的な破壊力持っていたのだ。
事実、決勝では土地破壊デッキ相手に圧倒的な相性差でもって勝利している。そして、ウルザブロックから生まれたこれらのアーティファクトが新しい時代を築きあげ、Kai Buddeが帝王として君臨することとなった。
●世界選手権2000 ベルギー:ブリュッセル
《天才のひらめき》
調整チームが同じデッキを持って参戦する。2011年の世界選手権で、ChanellFireballチームが75枚同一の《鍛えられた鋼》デッキを持ち込み、トップ8に4人ものプレイヤーを送り込んだのは記憶に新しいかもしれない。そして、この2000年の世界選手権でも、ほぼ全く同じデッキが決勝を戦っている。
10 《島》 4 《裏切り者の都》 4 《リシャーダの港》 3 《古えの墳墓》 -土地(21)- 4 《金属細工師》 4 《マスティコア》 1 《ファイレクシアの巨像》 -クリーチャー(9)- |
4 《通電式キー》 4 《厳かなモノリス》 4 《修繕》 3 《天才のひらめき》 4 《からみつく鉄線》 4 《スランの発電機》 2 《ファイレクシアの処理装置》 2 《激動》 1 《崩れゆく聖域》 1 《ミシュラのらせん》 1 《ウルザの青写真》 -呪文(30)- |
4 《退去の印章》 3 《抵抗の宝球》 1 《防御の光網》 1 《無のブローチ》 1 《激動》 2 《崩れゆく聖域》 1 《ミシュラのらせん》 1 《旗艦プレデター》 1 《ウルザの青写真》 -サイドボード(15)- |
この年もウルザブロックが健在であり、昨年とは色を赤から青へと変えたものの、アーティファクトデッキもまた健在だった。Jon Finkel とBob Maherはほぼ全く同じデッキで決勝戦を戦うことになったが、唯一違ったのがドロースペルの選択だ。同じドロー呪文でありながら、その性質は全くことなる《渦まく知識》と《天才のひらめき》。この違いは多くのプレイヤーの注目を浴び、どちらが優れているかという議論に発展した。
もちろん、マッチアップによって、どちらが優れているかというのは異なるため、どちらかが完璧に優れているということはマジックでは有り得ないが、それでもトーナメントにおいて、どちらが正しかったかというのは考えることはできる。
ただ、これほどのトッププレイヤー同士が、一長一短があるカードにせよ、どちらかのカードに統一できなかったというのは興味深いところであり、マジックというゲームの奥深さ、難しさを物語っているのかもしれない。
ちなみに、個人的には《天才のひらめき》の方が好きだが、みなさんはどちらを選ぶだろうか?
●世界選手権2001 カナダ:トロント
《対立》
最近では日本勢の躍進というのも珍しくないが、この当時は日本勢と言えばまだまだマジック後進国と考えられており、世界選手権トップ8に名を連ねるというのは大きな目標であった。
15 《島》 4 《カープルーザンの森》 1 《デアリガズのカルデラ》 1 《リースの木立ち》 1 《ヤヴィマヤの沿岸》 -土地(22)- -クリーチャー(0)- |
4 《対抗呪文》 4 《Fire // Ice》 4 《選択》 4 《蓄積した知識》 2 《目くらまし》 1 《菌獣の群落》 3 《対立》 3 《妨害》 1 《撃退》 4 《自然発生》 3 《嘘か真か》 2 《静態の宝珠》 3 《噴出》 -呪文(38)- |
3 《撹乱》 2 《たい肥》 2 《紅蓮地獄》 1 《反論》 2 《ウルザの激怒》 2 《大気の精霊》 1 《誤った指図》 2 《マハモティ・ジン》 -サイドボード(15)- |
そんな中、2001年の世界選手権においてトップ8にもっとも近づいたプレイヤーとして、そして、これ以降、世界選手権の場で何度も名前の出てくる森勝洋の名前を挙げておこう。
このときの、使用デッキは日本から生まれたオリジナルデッキの『ターボタクシー』。このデッキはロックデッキの一種で、《対立》によって、相手のパーマネントを縛り、行動不能にして勝利する。
もともとはウルザブロック構築で生まれた『リス対立』の変形だが、このデッキでは《対立》の相方として苗木トークンをパートナーとして選んでいる。苗木トークンの発生源は《自然発生》によるもので、手札分のトークンを発生することができ、《噴出》と組み合わされることで大量のトークンを発生させられる。
このデッキの利点は《自然発生》がシングルカラーであることから、緑を完全にタッチカラーとして、青単のパーミッションとして振舞えるところだろう、前述した《噴出》や《妨害》も有効利用でき、より大きなシナジーを獲得することができた。
《静態の宝珠》まで加えれば、ほぼ完全なロック状態を作ることができる。このデッキは、第10位にも岡本尋が入っており、世界選手権において存在感を示した大会と言えるかもしれない。
●世界選手権2002 オーストラリア:シドニー
《野生の雑種犬》
オデッセイで《サイカトグ》という化物が誕生してから、環境の多くはこの生物に支配された。世界選手権においても多くのプレイヤーが《サイカトグ》を使ったデッキを使用したが、どの環境にも支配者に抗うものは存在する。
7 《森》 4 《低木林地》 4 《カープルーザンの森》 3 《平地》 2 《真鍮の都》 2 《山》 -土地(22)- 4 《極楽鳥》 3 《ラノワールのエルフ》 4 《藪跳ねアヌーリッド》 4 《野生の雑種犬》 4 《幻影のケンタウロス》 4 《火炎舌のカヴー》 3 《栄光》 -クリーチャー(26)- |
3 《Fire // Ice》 2 《Wax // Wane》 3 《生ける願い》 4 《獣群の呼び声》 -呪文(12)- |
2 《サイムーン》 1 《森を護る者》 1 《真鍮の都》 3 《復仇》 1 《剛胆な勇士》 1 《荊景学院の戦闘魔道士》 1 《雷景学院の戦闘魔道士》 1 《栄光》 2 《世界の荒廃》 1 《起源》 1 《幻影のニショーバ》 -サイドボード(15)- |
Braian Kiblerが使用したのは、《サイカトグ》に対抗できるだけのポテンシャルを持った《野生の雑種犬》を使ったビートダウンデッキだ。一直線なビートダウンよりも、より、多色化され汎用性とカードパワーを高めたデッキを好む彼らしく、主流のステロイドよりも、白を足すことで、《藪跳ねアヌーリッド》や《栄光》といったカードを加え除去耐性や戦闘での決定打として運用できるようになっている。
《増進 // 衰退》といった分割カードや、《生ける願い》も採用されており、あらゆる局面に対応できるように作られている。
環境に飛びぬけたデッキがあるとき、どういった戦いを行っていくのか、王道のデッキを使うか、それを倒すデッキを作って挑むか、そうしたプレイヤーの意思がマジックの歴史とドラマを作っている。
●世界選手権2003 ドイツ:ベルリン
《ミラーリの目覚め》
ベルリンの決勝戦では、白青緑の《ミラーリの目覚め》を使ったデッキのミラーマッチで行われた。決勝を戦うプレイヤーは世界選手権では日本人として初めてトップ8に入った岡本尋と地元ドイツのDaniel Zink。
7 《島》 4 《森》 4 《クローサの境界》 4 《平地》 4 《広漠なるスカイクラウド》 2 《エルフェイムの宮殿》 2 《溢れかえる岸辺》 -土地(27)- -クリーチャー(0)- |
2 《復讐に燃えた夢》 4 《マナ漏出》 3 《強制》 3 《一瞬の平和》 4 《神の怒り》 3 《狡猾な願い》 3 《新たな信仰》 2 《正義の命令》 1 《堂々巡り》 4 《綿密な分析》 3 《ミラーリの目覚め》 1 《ミラーリ》 -呪文(33)- |
-サイドボード(0)- |
《ミラーリの目覚め》は強力なコントロールデッキとして知られていたが、パーミッションデッキのように完全に受身のデッキではなく、本質的には自分の型に嵌めるアグロな戦い方をする。また、本来、コントロールデッキはカードパワーの高いもので埋め尽くすことが戦略として一般的だが、このデッキは《一瞬の平和》や《新たな信仰》《マナ漏出》など、時間を稼ぐことを目的としたカードが多く含まれる。
『ウェイク』デッキはその稼いだ時間の間に《ミラーリの目覚め》を張り、《正義の命令》で一気に展開して相手を仕留めたり、《強制》と《綿密な分析》で掘り進み、《ミラーリ》から《狡猾な願い》を使い回してアドバンテージ差で勝利する。
一つのシステムの構築が勝利手段となる、ノンクリーチャーデッキとしての相対的なアドバンテージも含め、理に適った美しいデッキと言えるだろう。
●世界選手権2004 アメリカ:サンフランシスコ
《永遠の証人》
当時、アドバンテージは青の色であるという概念を覆したとさえ言えるのが、サイクリングというシステムだ。サイクリングすることでカードを1枚引くことができ、そして、サイクリングに誘発した能力を持つ《霊体の地滑り》によって膨大なアドバンテージを築き上げるデッキが生まれた。
7 《森》 6 《平地》 4 《隔離されたステップ》 4 《平穏な茂み》 4 《吹きさらしの荒野》 -土地(25)- 4 《永遠の証人》 4 《ヴィリジアンのシャーマン》 4 《永遠のドラゴン》 -クリーチャー(12)- |
4 《不屈の自然》 2 《翼の破片》 4 《霊体の地滑り》 4 《新たな信仰》 4 《神の怒り》 2 《正義の命令》 1 《すき込み》 2 《アクローマの復讐》 -呪文(23)- |
4 《酸化》 3 《赤の防御円》 3 《ひっかき爪》 3 《すき込み》 2 《粗野な覚醒》 -サイドボード(15)- |
『エターナルスライド』と呼ばれるデッキは、オンスロートブロックに存在したサイクリングデッキの変形である。本来は白赤で組まれるサイクリングデッキだが、このデッキは白緑の2色にし、《霊体の地滑り》の効果で、クリーチャーの戦場に出たときの効果を使いまわす。特に《永遠の証人》は自身が戦場に出ることで使ったサイクリングカードをも回収できるため、《霊体の地滑り》と組み合わせるだけで簡単に無限のエンジンを作る上げることができた。
2色で、さらにサイクリングを主体をしているため安定性も高く、また、当時最強デッキの一角と言われた親和デッキに対して有効なカードを多く取ることができたのもこのデッキが優勝した要因だろう。
スタンダード、ブロック構築共に「親和」を中心としたメタゲームであったが、しっかりとそれに対抗できるデッキが勝利を重ねるトーナメントだった。
●世界選手権2005 日本:横浜
《都市の樹、ヴィトゥ=ガジー》
横浜で行われた2度目の世界選手権。この年のトピックスは日本勢の躍進に他ならない。森勝洋が世界王者となるが、そのパートナーとなったデッキは前年と同じく白緑、しかし、コントロールではなくビートダウンデッキだ。
5 《森》 4 《低木林地》 4 《セレズニアの聖域》 4 《寺院の庭》 4 《都市の樹、ヴィトゥ=ガジー》 1 《先祖の院、翁神社》 1 《平地》 -土地(23)- 4 《セレズニアのギルド魔道士》 3 《ラノワールのエルフ》 1 《極楽鳥》 4 《ロクソドンの教主》 4 《ウッド・エルフ》 3 《北の樹の木霊》 3 《空を引き裂くもの、閼螺示》 2 《明けの星、陽星》 -クリーチャー(24)- |
2 《夜明けの集会》 3 《真髄の針》 3 《制圧の輝き》 3 《梅澤の十手》 2 《火花の結実》 -呪文(13)- |
2 《木彫りの女人像》 2 《帰化》 3 《塵を飲み込むもの、放粉痢》 2 《よりよい品物》 1 《北の樹の木霊》 1 《木霊の手の内》 1 《神の怒り》 1 《種子生まれの詩神》 2 《明けの星、陽星》 -サイドボード(15)- |
白緑はクリーチャーが強いという点でビートダウン向きの組み合わせではあるが、その反面融通が利かない色の組み合わせでもある。黒のような除去も無ければ、赤のような火力も無い、素直であるという点はマジックでは美徳ではなく欠点として扱われる。
しかし、このデッキでは《明けの星、陽星》という伝説のドラゴンとサイドボードから《よりよい品物》を組み込みことで、白緑のビートダウンでありながら、パーマネントに大きく干渉することが可能になっている。特にコントロールデッキ相手にこのシステムは有効に働き、白緑の素直さに一癖加えることで、世界選手権を優勝させるまでに至ったのだ。
また、このデッキは大きなプレミアイベントではなく、草の根と呼ばれるマジックの小規模な大会で練られたのものが、世界選手権の場で使われ活躍したとして知られている。マジックをプレイするのに使われるカードは同じであり、その発想に垣根は存在しないということを考えさせられることだろう。
●世界選手権2006 フランス:パリ
《サバンナ・ライオン》
ビートダウン、ボードコントロール、コンボデッキ、健全なメタゲームからさまざまなデッキが生まれる。2006年の世界選手権はそれぞれのアーキタイプのデッキがトップ8で火花を散らしていた。
4 《戦場の鍛冶場》 4 《聖なる鋳造所》 3 《ボロスの駐屯地》 3 《トロウケアの敷石》 3 《平地》 2 《宝石鉱山》 2 《山》 -土地(21)- 4 《アイケイシアの投槍兵》 4 《聖なる後光の騎士》 4 《サバンナ・ライオン》 4 《サルタリーの僧侶》 3 《焼け焦げたルサルカ》 4 《巨大ヒヨケムシ》 -クリーチャー(23)- |
4 《稲妻のらせん》 4 《火山の鎚》 4 《黒焦げ》 4 《裂け目の稲妻》 -呪文(16)- |
4 《ロノムの一角獣》 3 《名誉の道行き》 2 《ヴェクの聖騎士》 4 《氷結地獄》 2 《崇拝》 -サイドボード(15)- |
その中でも、完成度の高いビートダウンデッキが今では現役最強プレイヤーとも言われる、Paulo Victor Damo Da Rosaの駆る『ボロスウィニー』だ。「ボロス」はラブニカのギルドで白と赤のコンビネーションを指す言葉として使われる。1マナ2/1クリーチャーである《サバンナ・ライオン》を筆頭に白の優秀なクリーチャーと赤の火力の組み合わせで対戦相手のライフを速やかに0にする。
基本的ではあるものの、その明確な構成は強さに直結しているのだ。
しかし、同様にコンボデッキというアーキタイプの違いはあるものの、準々決勝では『ドラゴンストーム』という、明確な構成を持ったデッキを駆る三原槙仁に破れることになる。
力と力のぶつかり合いは面白い。この試合は世界選手権でも、伝説の試合の一つに数えられているので、興味がある人はぜひ動画の方もチェックしてみてほしい。
●世界選手権2007 アメリカ:ニューヨーク
《タルモゴイフ》
プレインズウォーカーというパーマネントが未来予知で示され、ローウィンで形として現れると、誰もがそのプレインズウォーカーのシステムに熱中した。しかし、その恩恵をもっとも受けたのは、《タルモゴイフ》というクリーチャーだろう。
5 《森》 4 《光り葉の宮殿》 4 《ラノワールの荒原》 4 《沼》 4 《樹上の村》 1 《ペンデルヘイヴン》 1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 -土地(23)- 4 《ラノワールのエルフ》 1 《ボリアルのドルイド》 4 《タルモゴイフ》 3 《トロールの苦行者》 3 《傲慢な完全者》 3 《仮面の称賛者》 2 《護民官の道探し》 4 《レンの地の群れ使い》 -クリーチャー(24)- |
4 《不敬の命令》 3 《思考囲い》 1 《名も無き転置》 3 《眼腐りの終焉》 2 《野生語りのガラク》 -呪文(13)- |
1 《思考囲い》 2 《殺戮の契約》 2 《雲打ち》 2 《ネクラタル》 2 《ヴィリジアンのシャーマン》 1 《クローサの掌握》 2 《ロクソドンの戦槌》 3 《リリアナ・ヴェス》 -サイドボード(15)- |
《野生語りのガラク》が強力なカードとして機能しており、また、それが墓地に落ちたとしても、《タルモゴイフ》がそのサイズを強化する。墓地に落ちているカードタイプが増えたことで、タルモゴイフのパワーは容易に5を越えるようになっていた。この、黒緑のエルフデッキは基本ベースはエルフクリーチャーによるものだが、単体としての活躍が目覚ましたかったのは、《野生語りのガラク》と《タルモゴイフ》だ。
《思考囲い》による安全確認に加えてのパンプアップ、《不敬の命令》によって墓地からリアニメイトしやすいコストなどの噛み合いも、さらに《タルモゴイフ》というクリーチャーの強さを際立たせていた。
レガシーやモダンにおいても、中心となるカードの一つである《タルモゴイフ》、その強さの歴史はまだまだ続いている。
●世界選手権2008 アメリカ:メンフィス
《荒廃稲妻》
長所あれば、短所あり。メリットにはデメリットがつき物。メタゲームにおいて、強力なデッキがあるならば、その弱点をいかに付いていくかというのは常套手段だろう。
6 《山》 4 《婆のあばら家》 4 《ギトゥの宿営地》 4 《偶像の石塚》 4 《硫黄泉》 3 《反射池》 -土地(25)- 4 《ボガートの突撃隊》 4 《運命の大立者》 3 《残忍なレッドキャップ》 4 《包囲攻撃の司令官》 -クリーチャー(15)- |
4 《マグマのしぶき》 4 《苦花》 4 《荒廃稲妻》 4 《火葬》 4 《炎の投げ槍》 -呪文(20)- |
3 《アッシェンムーアの抉り出し》 3 《蔓延》 4 《ヴィティアのとげ刺し》 2 《悪意に満ちた幻視》 1 《ロクソドンの戦槌》 2 《叫び大口》 -サイドボード(15)- |
この『ブライトニング』は赤単のビートダウンに《荒廃稲妻》と《苦花》を加えたデッキだ。この2枚のカードはものすごく強力という訳ではなく、《苦花》はこのデッキだとシナジーなども存在しない。
しかし、これが、相手がフェアリーデッキならば話しは別だ。メタゲームのトップのフェアリーデッキは《苦花》のトークンに手を焼き、ライフとアドバンテージがタイトなデッキなため、赤系のデッキから《荒廃稲妻》を一度受けてしまうと致命的なダメージを追ってしまう。
赤単という勝てる基本ベースを持ちながら、フェアリーデッキに対して致命的なカードを用意する。特に相手のもっとも強力なカード《苦花》に対して、《苦花》をぶつけるという発想によって、さらなる優位を確保しているのだ。相手の弱点をしっかり把握し、それに付け入るだけの要素をデッキに組み込んでいく、勝つための理念がここに存在している。
●世界選手権2009 イタリア:ローマ
《血編み髪のエルフ》
アラーラブロックが揃った以後の時期のスタンダードにジャンドデッキが王者として長い間君臨していたのには、単体単体のカードパワーが高いということ以上に弱点が少なかったということが挙げられるだろう。
2 《森》 3 《山》 3 《沼》 4 《野蛮な地》 4 《根縛りの岩山》 3 《竜髑髏の山頂》 2 《巨森、オラン=リーフ》 4 《新緑の地下墓地》 -土地(25)- 4 《朽ちゆくヒル》 4 《芽吹くトリナクス》 4 《血編み髪のエルフ》 2 《野生の狩りの達人》 2 《若き群れのドラゴン》 -クリーチャー(16)- |
4 《稲妻》 2 《終止》 1 《噴出の稲妻》 4 《荒廃稲妻》 3 《大渦の脈動》 3 《瀝青破》 2 《野生語りのガラク》 -呪文(19)- |
4 《ゴブリンの廃墟飛ばし》 3 《大貂皮鹿》 3 《強迫》 2 《ジャンドの魔除け》 1 《大渦の脈動》 2 《思考の大出血》 -サイドボード(15)- |
この年の世界選手権でのメタゲームの中心もジャンドデッキであった。ジャンドデッキは続唱というシステムを一番有効に使えるデッキで、これによって、アドバンテージを獲得しながら、攻撃的に動くことができるという理想的なデッキの条件を満たしていたからだ。
アドバンテージを失いにくい=息切れしにくいということであり、それがデッキの強さの根底となっていた。また、3マナ域に《大渦の脈動》と《荒廃稲妻》という強力な除去と手札破壊を擁することで、対応力という面でも他のデッキの追随を許さない構成になっていたのだ。
弱点の少ないデッキに勝つためにはどうすれば? ジャンドよりも早く自分のやりたいことをやること。そのため赤単のバーン主体のデッキや、《ゴブリンの奇襲隊》を使ったビートダウンなど、より攻撃的デッキも誕生したが、それでもジャンドに対して明確な有利が付くデッキはほとんど無かった。
●世界選手権2010 日本:千葉
《引き裂かれし永劫、エムラクール》
日本で3回目の世界選手権。この大会では《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》か否かというのが焦点になっていた。ゼンディカー生まれの《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》は基本セット2011で《原始のタイタン》の助力を得て強力なコンボデッキとして君臨していたからだ。
12 《森》 4 《エルドラージの寺院》 4 《カルニの庭》 4 《地盤の際》 1 《ウギンの目》 1 《惑いの迷路》 -土地(26)- 4 《ジョラーガの樹語り》 4 《草茂る胸壁》 4 《原始のタイタン》 1 《ゼンディカーの報復者》 1 《テラストドン》 1 《ワームとぐろエンジン》 2 《無限に廻るもの、ウラモグ》 1 《引き裂かれし永劫、エムラクール》 -クリーチャー(18)- |
3 《永遠溢れの杯》 4 《探検》 4 《成長の発作》 1 《耕作》 4 《召喚の罠》 -呪文(16)- |
1 《ウギンの目》 4 《漸増爆弾》 3 《強情なベイロス》 4 《酸のスライム》 3 《ムル・ダヤの巫女》 -サイドボード(15)- |
青黒コントロールが対ヴァラクートデッキとして、この大会で優勝を果たすが、そのデッキは青黒コントロールの回で紹介したこともあり、ここでは個人的な趣味で《引き裂かれし永劫、エムラクール》を使ったデッキを紹介しよう。
『緑単エルドラージ』は《原始のタイタン》を使ったデッキという点では《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》デッキと同じだが、持って来る土地カードが異なり、また、フィニッシャーも異なる。
通常のマナ加速に加えて、エルドラージをマナの面から強力にサポートする《エルドラージの寺院》、そして、《ウギンの目》を使って、膨大なマナコストを持つ、《真実の解体者、コジレック》や《引き裂かれし永劫、エムラクール》をキャストしていく。通常、これほどまでに大きいマナコストのクリーチャーはマナを踏み倒して使うのが「普通」だが、このデッキでは「普通」にキャストする。
15マナのカードをキャストできるかどうかは土地や環境によって変わるが、そんなデッキが活躍するのも、余りにも《引き裂かれし永劫、エムラクール》が強いからだろう。
15マナの割りには強い、そんな言い方ができるのも《引き裂かれし永劫、エムラクール》くらいだ。
●世界選手権2011 アメリカ:サンフランシスコ
《業火のタイタン》
つい先日行われた世界選手権で優勝したのは、日本人3人目の世界王者となる彌永 淳也が使う、 赤緑のケッシグデッキだ。
6 《山》 5 《森》 4 《銅線の地溝》 4 《墨蛾の生息地》 4 《根縛りの岩山》 3 《ケッシグの狼の地》 -土地(26)- 1 《極楽鳥》 1 《最後のトロール、スラーン》 4 《業火のタイタン》 4 《原始のタイタン》 4 《真面目な身代わり》 -クリーチャー(14)- |
4 《感電破》 2 《小悪魔の遊び》 2 《緑の太陽の頂点》 1 《ショック》 4 《不屈の自然》 3 《金屑の嵐》 4 《太陽の宝球》 -呪文(20)- |
4 《秋の帳》 2 《古えの遺恨》 1 《金屑の嵐》 1 《ヴィリジアンの堕落者》 2 《最後のトロール、スラーン》 1 《内にいる獣》 2 《饗宴と飢餓の剣》 2 《解放の樹》 -サイドボード(15)- |
このデッキに関しては津村健志が紹介してくれるだろうから、細かい説明はしないが、多くのプレイヤーが従来の形のケッシグデッキに留まる中で、《原初の狩人、ガラク》を抜き、《業火のタイタン》を多く採用し、マナベースを再構築し最善の形を模索したことは、優勝という最高の結果でもってこたえられるに十分なものと言えるだろう。
トップ8に4人を送りだしたChannelFireBallの『鍛えられた鋼』デッキも含め、どんな環境でも、どれほど完成されたデッキに見えても、常にマジックは考えることがあり、変化させる必要があるというのを証明した結果だったたと思う。
もしこの記事で歴史に興味が持てたなら、ぜひ自分の手でマジックの歴史を少し紐解いてみるのもいいかもしれない。それでは、またいつかどこかで。
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