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射場本正巳の「カジュアルマジックのススメ」 第2回:ヘイトが上がるとゲームが変わる?
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木曜マジック・バラエティ
2011.11.10
射場本正巳の「カジュアルマジックのススメ」 第2回:ヘイトが上がるとゲームが変わる?
著者紹介:射場本 正巳
|
こんにちは! ウィザーズR&Dの射場本です。
前回のデッキは「カジュアルって言ってる割にサーチがないだけでコンボバリバリじゃないっすか」って言うツッコミをいただきました。
まあ、確かに。僕からコンボ取ったら何も残らないですからね。しょうがないです。
個人的にはサーチを多用すると勝ち筋が一定化してしまうのであんまり面白くないんですね。
なのでいろいろなコンボを入れてどれか一個でも決まればいいなって気持ちでプレイしています。
しかし、最近R&D内で統率者戦をやると、始める前から「しゃばを先にやっつけろ!」と合言葉のように言われるようになりました。コンボやりすぎると真っ先に狙われるようになるので注意が必要ですね(笑)。
さて、こういった多人数戦ならではの駆け引きがあるのも統率者戦のおもしろいところ。
当たり前ですが1対複数になってしまうと途端にピンチになってしまいます。
こういう部分はボードゲームと似ていて、「出る杭は打たれる」構図になっています。どれだけ「目立たずに」自分の勝利へのプロットを描けるかが大事になってくるのですね。
そんなとき重要な指標になってくるのが「ヘイト値」です。
「ヘイト値ってなんだ?」と思う方もいるかもしれませんが、「どれだけ他のプレイヤーに狙われやすいか」という、多人数戦ならではの想像上の数字だと思ってください。
今回は、その「ヘイト値」を上げるものは何か、というところをお話ししたいと思います。
○その1 ヘイト値を上げる統率者
ゲームが始まる前からヘイト値が上がる場合があります。
それは統率者自身によるもの。
統率者が速やかにゲームに勝つようなものであった場合、その時点で有利に立っているわけですから、他のプレイヤーは協力してそれをさせまいとして来るでしょう。
そのような統率者の例としては、
すぐにコンボが決まりそうなもの(例:《アーカム・ダグソン》、《火想者ニヴ=ミゼット》)
「単騎無双」する可能性の高いもの(例:《数多のラフィーク》、《霧を歩むもの、ウリル》)
なんでもできる5色統率者(例:《始祖ドラゴンの末裔》、《邪神カローナ》)
などが挙げられます。
たまたま好きで選んだ統率者が上記のようなものだった場合、人によってはいきなりヘイト値が上がる場合があるので注意が必要ですね。
○その2 ヘイト値を上げるカード
次にカード自身のヘイト値です。
これを言うと、強いカードは全部ヘイト値が上がるといえなくもありませんが、特にカードパワーの割に過剰に反応されやすいカードを挙げてみます。
例1) 相手の行動を縛るカード
統率者戦はみんながやりたいことをやるのが楽しいフォーマットなので、そのやりたいことを抑制するカードはヘイト値を上げる対象となります。
特にゲームの根幹のマナを奪うことは嫌がられますね。
また、上記の《基本に帰れ》などはパーマネントで場に残ると言うところも大きな要素です。
たとえば《ハルマゲドン》や《抹消》であれば瞬間的なヘイト値の上昇はマックスかもしれませんが、結局壊されたものはどうしようもないので新たなヘイト対象ができた瞬間に忘れ去られゆくものです。
しかし、これらパーマネントは場に残り続けることで常にヘイト値上昇に貢献し、さらにプレイヤーがいなくなればその効果も消えるとあれば、集中砲火を浴びることになるでしょう。もし使うときは、相手のヘイトが上昇しようと一方的に勝てる場を築きあげたときにしたいですね。
例2) プレインズウォーカー
プレインズウォーカーは強力なカードですが、実は統率者戦だとそこまで活躍できなかったりもします。
1対1なら《濃霧》の付いたアドバンテージエンジンは強いんですが、1対複数で40点というライフを目標にゲームをしていると、どうしても片手間に殺されることが多いです。
それでも、ちゃんと守ることができればアドバンテージを生み続けてくれることに変わりはないので、使う際は確実に仕事をするときに出したいものです。
例3)あからさまなコンボの臭いがするカード
統率者戦で一撃必殺のコンボを入れておくことは勝ちにつながりやすいのでオススメしたいのですが、あからさまに「コンボのキーカードですよ」っていうカードを出してしまうと、いつコンボが決まるかわからないという恐怖感から、みんなの一斉攻撃を受けることがあります。
単体で何もしないような場合は、コンボを決める直前や、場が混戦となって自分が攻撃されにくい状況の時に出したいですね。
このほか、プレイグループによっては特定のカードをひどく嫌がる人もいます。
僕のやっているカジュアル環境では、《死の雲》や《時間の伸長》などの、ゲームを長引かせたり、多人数戦なのに一人プレイモードに入ってしまうカードは追加の禁止カードになってたりします。
このように、メンバーのプレイスタイルに合わせて禁止カードを指定してしまうのもありかもしれません。
○その3 ヘイト値を上げる行動
最後にどのような行動をするとヘイト値が上がるかを見ていきましょう。
例1) 早いターンから《太陽の指輪》や、《稲妻のすね当て》などを展開する。
これらは統率者戦の代名詞にもなっているカードで、全ての「統率者」構築済みデッキにも入っていますが、それだけ強力であるといえます。
最序盤にこれらのカードを展開すると、他のプレイヤーよりも場の状況を大幅に有利にしているという点でヘイト値が上がります。
皆が同じレベルでゲームが進行する分には均衡が保てますが、一人が飛び抜けてしまうとついていけなくなりますからね。
《太陽の指輪》に限らず、序盤の過剰なマナ加速はこの均衡を崩しやすいので狙われやすいですよ。特にその後やることがないのにマナ加速しすぎると、自分は何にもできないのに集中攻撃を食らってションボリ、なんてこともよくあります。
後続があまり期待できないときは、いきなり展開するのではなく手札に溜めておくプレイも重要ですよ。
例2) 序盤の攻撃選択
ゲーム序盤において出たクリーチャーで不用意に攻撃してしまうと、攻撃されたことでそのプレイヤーからのヘイト値を上げてしまうことになりかねません。
特に理由がなければ、攻撃するときはダイスを振るなどしてランダムに攻撃先を決めるなどした方がよいでしょう。序盤の数点が勝敗を分けるものでもないので、攻撃せずに「見」に回った方が賢明かもしれません。
このような行動によるものはある程度プレイングでカバーできます。他のプレイヤーに「理不尽」と感じられればヘイト値が上がるものですが、納得いく理由があれば特にヘイトされません。
友好にゲームを進めるなら、目立たないように着々と地盤作りしたいですね。
以上、どういうときにヘイト値が上がるのかということをお話ししました。
どうせなら自分のヘイト値を上げず上手く立ち回りたいものですね。
とはいえ、これだけでゲームの行方が決まるほど甘くはないもの。多人数戦だからこそ他のプレイヤーとの協調や駆け引きも大事になってきます。
ヘイト値は他のプレイヤーと協調するための一つの手段とでも思ってもらえればいいかと思います。ヘイトされるということはそれだけ自分が有利に立っているということでもあるので、それを交渉材料に他のプレイヤーを同盟を結ぶなど、駆け引きの材料にできるようになるとそれはそれで一層ゲームが楽しくなりますよ。もし同盟者を作ることができれば複数対複数にすることが可能になりますしね。
○で、今週のデッキは?
ヘイト値がテーマと言うことで今週のデッキは作ってみたらヘイト値が高くてつらかったデッキをご紹介します。
14 《森》 10 《平地》 6 《島》 4 《沼》 3 《山》 -土地(37)- 1 《概念の群れ》 -統率者(1)- 1 《桜族の長老》 1 《幻影の像》 1 《ニッサに選ばれし者》 1 《ヤヴィマヤの古老》 1 《彼方地のエルフ》 1 《ファーティリド》 1 《永遠の証人》 1 《ゴブリンの太守スクイー》 1 《ファイレクシアの変形者》 1 《真面目な身代わり》 1 《叫び大口》 1 《熟考漂い》 1 《胞子の教祖、ゲイヴ》 1 《太陽のタイタン》 1 《絶滅の王》 1 《ゼンディカーの報復者》 1 《浄火明神》 1 《真実の解体者、コジレック》 -クリーチャー(18)- |
1 《ダークスティールの鋳塊》 1 《流刑への道》 1 《剣を鍬に》 1 《天球儀》 1 《不屈の自然》 1 《虹色の前兆》 1 《大地の知識》 1 《森の知恵》 1 《屍からの発生》 1 《ゴブリンの砲撃》 1 《マイコシンスの水源》 1 《伝染病の留め金》 1 《木霊の手の内》 1 《耕作》 1 《リスの巣》 1 《破滅的な行為》 1 《オーラの破片》 1 《神の怒り》 1 《審判の日》 1 《危険な進出》 1 《ミラーリの目覚め》 1 《容赦無い潮流》 1 《質素な命令》 1 《アクローマの復讐》 1 《ファイレクシアの再誕》 1 《倍増の季節》 1 《伝染病エンジン》 1 《軍部政変》 1 《起源の波》 1 《ヴェールのリリアナ》 1 《ジェイス・ベレレン》 1 《黄金のたてがみのアジャニ》 1 《ニッサ・レヴェイン》 1 《槌のコス》 1 《エルズペス・ティレル》 1 《ギデオン・ジュラ》 1 《原初の狩人、ガラク》 1 《求道者テゼレット》 1 《滞留者ヴェンセール》 1 《サルカン・ヴォル》 1 《燃え立つチャンドラ》 1 《ソリン・マルコフ》 1 《解放された者、カーン》 1 《プレインズウォーカー、ニコル・ボーラス》 -呪文(44)- |
上で書いたように5色統率者、プレインズウォーカー満載、コンボ臭がするということで断然ヘイト値が高かったです。そりゃそうか。
このところ僕のイチバン好きなカードと言えば《起源の波》なわけですが、「《起源の波》ブッパからいろんなプレインズウォーカー出てきたら楽しくね?」っていう安直な考えから生まれたのがこのデッキです。
対消滅するのが怖くて、各種プレインズウォーカー1バージョンしか入ってないのがヒヨリですね。
プレインズウォーカーに被害が及ばない《アクローマの復讐》や《破滅的な行為》などの除去で有意な盤面が作れればワンチャンスあるかもしれません。
《概念の群れ》は統率者として優秀で、想起だけでなく《絶滅の王》や《ゼンディカーの報復者》といったような粒ぞろいのエレメンタルを復活可能です。
特に《ゼンディカーの報復者》は《ゴブリンの砲撃》などの手段で生け贄にすれば循環可能なので、それだけでゲームが決まることもしばしば。
実は、僕がこのデッキを作ったのと同時期に、デザイナーのKen Nagleが同じようなプレインズウォーカーデッキを作っていたんですが、彼のデッキは《大祖始》が統率者でバリエーション含めて全てのプレインズウォーカーが入ってたので「負けたな」と思いました。
さすがコスプレでプレインズウォーカー「ファイレクシアン・ケン」になってしまうだけのことはあります。
変身前、マジックのデザイナーとして活躍中!
変身後、世界中をファイレクシア化しようと活躍中!
先日のハロウィンでも「ファイレクシアン・ケン」になって社内を駆け回っていました。
と、いうのもアメリカの会社だけあって、ハロウィンの日は仮装コンテストが行われるんですね。イニストラード発売直後ということもあり、デザイン部ではゾーン丸ごとゴシックホラーの世界になっていてビックリしました。
こんな遊び心満載の会社なので、マジックの新しい楽しみ方も日々研究中です。
そのうち新しいカジュアルフォーマットをご紹介できればと思います。
それでは次回、カジュアルマジックの世界で会いましょう!
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