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コラム

木曜マジック・バラエティ

浅原晃の「デッキタイムトラベル!」 Part3?青白コントロール

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木曜マジック・バラエティ

2011.03.17

浅原晃の「デッキタイムトラベル!」 Part3-青白コントロール

By 浅原 晃


 今回、デッキタイムトラベルで取り上げるのは、プロツアー・パリ2011で「Caw Blade」が優勝し、最近、活躍著しい色として認知されている青白コントロール。青白はコントロールの中でも、もっとも伝統的な色という認識がされる色であり、アドバンテージを主体にしたデッキの形の原点とも言える色の組み合わせだ。コントロールの歴史を語る上では避けては通れないものだろう。

 青白コントロールは歴史の中でメタゲームの王道として、ビートダウンの敵として君臨してきた。これらのデッキの歴史を見ていくことで、デッキが持つアドバンテージとその種類というものも学べるだろう。それでは、レッツタイムリープ!


1995~1996年 最古のアドバンテージデッキ「ザ・デック」

 もっとも最古のアドバンテージを主体にしたコントロールデッキと言われるのが「ザ・デック」だ。

 「ザ・デック」によって、ブライアン・ワイズマンが提唱したといわれるのがカードアドバンテージだが、それが提唱されるまでカードアドバンテージを誰も知らなかったかというと、そうではないだろう。

 マジックというゲームはプレイしていくうちに経験で理解できることが多い。

 誰もが、殆どのクリーチャーを無力化できる《Moat》の強さ、多くのカードが引ける《Ancestral Recall》は強いというのは使ったり、もしくは、使われるだけでも自然と理解することが可能だ。

 このデッキが素晴らしい点は、そのアドバンテージを構築という段階で考え、デッキとして昇華させたことにある。アドバンテージを方向性として具現化したのが、ブライアンワイズマンであり、その具現化されたデッキが「ザ・デック」と呼ばれるデッキなのだ。

「The Deck」 / 使用者:ブライアン・ワイズマン[MO] [ARENA]
4 《
3 《平地
4 《Tundra
2 《Volcanic Island
4 《真鍮の都
1 《Library of Alexandria
3 《露天鉱床

-土地(21)-

2 《セラの天使

-クリーチャー(2)-
1 《Black Lotus
1 《Mox Pearl
1 《Mox Sapphire
1 《Mox Jet
1 《Mox Ruby
1 《Mox Emerald
1 《Sol Ring
4 《剣を鍬に
1 《Ancestral Recall
2 《赤霊破
4 《解呪
2 《対抗呪文
4 《Mana Drain
1 《Time Walk
1 《Demonic Tutor
1 《Regrowth
2 《破裂の王笏
1 《Timetwister
2 《Moat
1 《ジェイムデー秘本
1 《Amnesia
1 《Mirror Universe
1 《Braingeyser
1 《回想

-呪文(37)-
1 《象牙の塔
1 《トーモッドの墓所
1 《フェルドンの杖
2 《赤霊破
2 《神への捧げ物
2 《赤の防御円
2 《血染めの月
1 《破裂の王笏
1 《Moat
1 《ジェイムデー秘本
1 《火の玉

-サイドボード(15)-


 マイク・フローレスの著した「ティンカーデッキの探求」では、この言葉を借りてワイズマンのデッキを説明している、

 「バレーボールの用語で説明すると分かりやすいかもしれない。相手に何点取られたって、15 点取られなければ大丈夫だ。それと同じく、Weissman 流のデッキは、最後の20点目が取られない限り、ライフの 19 点ぐらいなら喜んでさし出す」-Robert Hahn

 この言葉は、マジックというゲームでライフを軽視しているわけではない。ライフというのは重要な役割を果たすものであり、ゲームの勝敗を決めるものだ。つまり、この言葉には「ライフを失っても、より大事なもの得るものがあ」るということを意味した比喩表現になっている。
 では、この19点を喜んで差し出す代わりに得られるものはなんだろうとなれば、それがカードアドバンテージと呼ばれるものになるだろう。デッキとして考えるならば、ライフを19点失うことさえ戦略として組み込める、つまりはそういうことなのだ。

 このデッキのアドバンテージ戦略を支えているのは、特定の相手やカード群に効果的、継続的な効果を発揮するカード、それに《Mana Drain》といった打ち消し呪文だ。白と青の組み合わせが何故コントロールに優れているかというと、前者には白が優れたカードを持ち、後者には青が優れたカードを持つからだ。

 具体的な例では、最初に《Moat》を挙げたが、これは地上の攻撃クリーチャーを全て完封してしまうカードだ。これによって、相手のデッキに入っている全ての攻撃するための地上クリーチャーを無効にできる。そうなれば、青の打ち消し呪文はそれ以外の脅威や《Moat》を破壊しようとするカードに対してのみ使うことができる。打ち消し呪文は単純にアドバンテージを取れる呪文ではないが、アドバンテージを守る呪文であり、相手のアドバンテージを防ぐ呪文になってくれる。

 このデッキはコントロールの利点も体現されている。例えば、相手のクリーチャー除去はこのデッキを相手にしたときに、有効に使うことができるだろうか? このデッキのフィニッシャーは《セラの天使》が2枚だけで普通にキャストしても、相手がもし多くの除去を手札に隠していた場合にそれらを掻い潜ることはできない。しかし、実際にこの2枚の《セラの天使》が相手のクリーチャー除去によって有効に除去されてしまうことは基本的には無いだろう。このデッキはフィニッシャーが安全であるという場面でしか出さず、大抵の場合は、相手の除去が手札で腐っている間にアドバンテージソースである《ジェイムデー秘本》や《破裂の王笏》を使い続け、十分に、それこそ、もう何をやっても勝てる状態になってから《Mana Drain》に守られた《セラの天使》を出していたからだ。

 勘違いしてはいけないのは、フィニッシャーと呼ばれる《セラの天使》は実質的な勝利手段ではないということだろう。勝利手段とはカードアドバンテージそのものであり、《セラの天使》を出すときには既に勝っていることが多く、そういう使い方こそが望ましい。5ターン目に安易に《セラの天使》を出すということは基本的にはない。

 少数のフィニッシャーを安全な局面を作り出し運用していく。それは経験では得にくいものであったといえるかもしれない。このデッキはコントロールそのものが勝利であるということをプレイヤーに教え、飛躍的にマジックのデッキ構築の理論を整備していった。


1997年~ 土地の有用性

 アライアンスの発売によって、青白のコントロールデッキは一気に強化される。それは青と白のカードによってというよりも、土地によってである。

 強力な土地は各種アーキタイプの強さのバランスに一気に影響を与えることがある。

 例えば、《露天鉱床》はマナ源でありながら、相手のマナ事故を誘発できるために、軽量のビートダウンを後押しし「スライ」というアーキタイプを生み出した。土地はデッキのスペル枠を取らずに採用でき、打ち消されないなど大きなメリットがあるため、強い土地はデッキの軸にさえなる。

 アライアンスで、もっとも強力なカードと言えば今でこそ《Force of Will》ではあるが、当時は《Thawing Glaciers》と《Kjeldoran Outpost》が《露天鉱床》の禁止などによって、環境を支配する土地になっていた。これらの土地は恒久的なアドバンテージであり、勝利手段でもあった。また、より長くゲームで使い続けることでアドバンテージを獲得できるカードだったため、この強力な土地は勝利するために長いターンゲームを行う、コントロールデッキと噛みあっていた。

「カウンターポスト」 / 使用者:塚本俊樹
日本選手権97・準優勝[MO] [ARENA]
11 《
8 《平地
2 《アダーカー荒原
4 《Kjeldoran Outpost
4 《Thawing Glaciers

-土地(29)-


-クリーチャー(0)-
3 《剣を鍬に
2 《渦まく知識
4 《対抗呪文
2 《中断
1 《解呪
1 《Soldevi Digger
4 《雲散霧消
2 《沈黙のオーラ
4 《神の怒り
2 《ジェラードの知恵
2 《鋸刃の矢
4 《Force of Will

-呪文(31)-
4 《水流破
1 《臨機応変
3 《解呪
1 《黒の防御円
1 《聖なるメサ
3 《政略
2 《Helm of Obedience

-サイドボード(15)-


 このデッキのポイントの一つは、ノンクリーチャーデッキであるということだろう。

 厳密には《Kjeldoran Outpost》のクリーチャートークンがフィニッシャーではあるものの、このデッキに対してのクリーチャー除去は《Kjeldoran Outpost》から無限に生み出されるトークンにしか使えないため、ほとんど無駄といってもいい。「ザ・デック」と違う部分はそこで、「ザ・デック」は《セラの天使》を出す前に、相手の対抗手段を押さえ込むために、アドバンテージを《破裂の王笏》や《ジェイムデー秘本》で得てから《セラの天使》を出していくのに対し、「カウンターポスト」ではそもそもクリーチャー除去を無視できる。デッキ構成がそもそもクリーチャー除去を無効化できるという潜在的なアドバンテージなのだ。

 また、《Kjeldoran Outpost》のトークンは守りに使うことできたため、相手がクリーチャーを並べざるを得ない状況を作り、相手がクリーチャーを並べたところで《神の怒り》でアドバンテージを取っていくことができた。良質のカウンターと除去呪文、それに加えて、土地によるアドバンテージ獲得がデッキに安定した動きをもたらしていた。土地が強いというのは土地を多くの枚数入れることができることでもあり、28枚以上の土地の枚数を入れてもデッキが薄くなるといった弱点が無い。優れたカウンター呪文も多くあり、論理的に作られたパーミッションデッキの代表的なものになっている。

 カウンターポストの息は長く、ミラージュブロックが全て加わってからも《ジェラードの知恵》といったライフ回復呪文を加え、環境を支配していた。サンプルとして挙げられているデッキは、活躍の後期のものになっている。

 同型対策に《政略》が使われているのも 土地を主体としてデッキであるのを象徴する事例だろう。《政略》は自分の土地1枚と相手の土地1枚のコントロールを交換するソーサリーだが、これによって相手の《Kjeldoran Outpost》を奪い、使用したら手札に戻る《Thawing Glaciers》などを押し付けた。また、ノンクリーチャーデッキであるため、《Helm of Obedience》でのライブラリーアウト戦術もサイドボードから取られていた。それだけ、同型対決も多かったと言える。

 ただ、このデッキには弱点があった。それは勝つための時間が異常に長いということだ。特に同型対決はライブラリーアウトで決まりやすく、時間内に3本の戦いが終わらないことも普通にあった。

 あるプレイヤーがカウンターポストを使い、黒ウィニーと3本で9時間の戦いをしたというのは少し有名な話かもしれない。


1998年~99年 カードの革命時代

 テンペストブロックはカードの質そのものが大きく変わった時代だ。

 《不毛の大地》は多色デッキ相手には新しい《露天鉱床》となっていて、赤のクリーチャーの質の向上が新しいビートダウンデッキの時代をもたらしていた。また、《不毛の大地》に伴って、デッキが全体的に単色傾向にあり、パーミッションの理念もユーロブルーといった青単色のデッキが主流になっていく。《ネビニラルの円盤》が汎用性の高いリセットカードとして機能していたこともあるが、《不毛の大地》や《隠れ石》のような、有効性の高い無色マナの出る土地がテンペストに含まれていたからだ。

「ヒューミリティ・オアリム」 / 使用者:ブライアン・ハッカー
世界選手権98 ベスト8 / テンペスト・ブロック構築[MO] [ARENA]
9 《
6 《平地
4 《サラカスの低地
2 《ヴェクの教区
2 《反射池
1 《不毛の大地

-土地(24)-


-クリーチャー(0)-
3 《オアリムの祈り
4 《謙虚
3 《モックス・ダイアモンド
3 《ミューズの囁き
4 《対抗呪文
2 《巻物棚
2 《丸砥石
4 《禁止
4 《直観
3 《プロパガンダ
1 《転覆
2 《解呪
2 《回収

-呪文(37)-
1 《ミューズの囁き
2 《丸砥石
3 《暖気
1 《赤の防御円
1 《安らぎ
2 《解呪
2 《放逐
1 《日中の光
1 《沸騰
1 《不毛の大地

-サイドボード(15)-

 その中でテンペストブロック構築から生まれたデッキといえば、一際異彩を放つ、このロック型の青白コントロールだろう。

 ジャッジ泣かせのカードとして悪名高い《謙虚》は、相手のクリーチャーを完全にロックする目的で使われる。《謙虚》単体では1/1クリーチャーが相手の場に現れてしまうので、それに対する回答が必要だが、攻撃時に1点のライフを回復する《オアリムの祈り》と合わせることで完全に無力化した。

 そして、《謙虚》のもっとも素晴らしいところは、クリーチャーの能力までも完全に封じてしまうことにあるだろう。

 テンペストブロックは《適者生存》が流行のデッキの一つであった。《謙虚》は1枚で《適者生存》のクリーチャー選択によるシルバーバレット戦術を全て封じることができた。クリーチャーが場に出たときの効果さえ発揮されないため、《適者生存》を使うプレイヤーは呪文によって《謙虚》を壊さなくてはいけない。しかし、このコンボさえ決まってしまえば、打ち消さなければいけない呪文は殆どないようなものなので、勝負はその段階で決まっていた。

 クリーチャーやダメージ対策を、このような特定のコンボや《赤の防御円》による無力化でまかなえる、というのは白の特典といえる。

 しかし、次のウルザブロックは速く、そしてカードパワーの著しく高いセットだった。《トレイリアのアカデミー》や《修繕》といったコンボ主体のパーツが多くあり、クリーチャーデッキも《ガイアの揺籃の地》などがその速度を加速させていた。

 「基本ターン」という、ズヴィ・モーショヴィッツが考案した概念がある。基本ターンはそのデッキがコントロールを得られるまでの行動に掛かるターン数を指す。

 青白コントロールなら《神の怒り》を撃てる4ターン目が基本ターンといわれているが、ウルザブロックは《トレイリアのアカデミー》、《ガイアの揺籃の地》、《厳かなモノリス》などのマナ加速を中心とされていたため、他のデッキの基本ターンは4よりも速く、《神の怒り》が十分機能するような相手が居ることも少なかった。青は白と組むよりも、青単色で組まれることが多い時代だったといえるだろう。


2000年 システムとコントロール

 マスクスブロックは、ウルザブロックに比べれば遥かに遅い環境である。マスクスブロックの主なシステムは、白のレベルという「クリーチャーが別のレベルクリーチャーを呼び出せる」システムだった。

 レベルは小さいクリーチャーがそれよりも大きいクリーチャーを呼べるために、マナと1枚のレベル、そして時間さえあれば、戦場をレベルで一杯にすることも可能だった。

 つまり、レベルを相手にする場合は《神の怒り》のような全体除去ではアドバンテージを取りにくい。また、1枚のレベルがひょっこり現れるだけで、コントロールするのが厄介になってしまうからだ。

 そこで、恒久的なコントロール要素を加えたものとして期待され作られたのが青白の「カウンターマギータ」だ。

「カウンターマギータ」 / 使用者:小宮忠義
The Finals00 準優勝[MO] [ARENA]
11 《
6 《平地
4 《アダーカー荒原
4 《沿岸の塔

-土地(25)-

2 《獅子将マギータ
3 《まばゆい天使

-クリーチャー(5)-
3 《解体の一撃
4 《神の怒り
4 《蓄積した知識
4 《対抗呪文
3 《嘘か真か
3 《妨害
2 《袖の下
4 《吸収
3 《サーボの網

-呪文(30)-
2 《要塞の機械技師
2 《宝飾のスピリット
1 《獅子将マギータ
3 《緑の防御円
2 《解呪
1 《枯渇
3 《誤った指図
1 《総くずれ

-サイドボード(15)-

 カウンターマギータは、マスクスブロック構築の後期やインベイジョンが導入されてまもなくのスタンダードで活躍した。《獅子将マギータ》はコントロール用のクリーチャーとして使われ、恒久的な《神の怒り》は除去の薄いクリーチャーデッキにとっては絶大な働きをしたのだ。相手の戦闘フェイズを飛ばす《まばゆい天使》も、一方的に相手のクリーチャーを無効化できるクリーチャーだった。

 ただ、クリーチャーがコントロール要素というのは、クリーチャーがもっとも除去されやすいパーマネントであるというリスクを内包している。青黒編で紹介したカウンターエヴィンカーにとって《ウルザの激怒》が向かい風になったように、カウンターマギータも《ウルザの激怒》によって姿を消すことになった。


 その代わりに青白の定番のデッキとなったのは、カウンターレベルだ。

「カウンターレベル」 / 使用者:カミエル・コーネリッセン
プロツアー・シカゴ00 準優勝[MO] [ARENA]
10 《
8 《平地
4 《アダーカー荒原
4 《沿岸の塔

-土地(26)-

4 《レイモス教の兵長
2 《果敢な隼
2 《果敢な先兵
2 《果敢な勇士リン・シヴィー
1 《反逆者の密告人
1 《レイモス教の空の元帥
1 《ジョーヴァルの女王

-クリーチャー(13)-
4 《渦まく知識
4 《対抗呪文
1 《解呪
4 《吸収
2 《解体の一撃
2 《神の怒り
2 《嘘か真か
1 《総くずれ
1 《威圧

-呪文(21)-
2 《獅子将マギータ
2 《解呪
2 《緑の防御円
3 《禁制
2 《嘘か真か
1 《神の怒り
1 《総くずれ
2 《威圧

-サイドボード(15)-


 このカウンターレベルというデッキは、白のレベルのシステムに青のカウンターを組み合わせたものだ。このカウンターレベルが生まれた理由は様々だが、レベルというのはそもそも、デッキをレベルで埋め尽くす必要はあまりない。レベルは、フェアリーやマーフォークのように、ロードでパンプアップして攻めたり、集まれば集まるほどに効果が高まる類の種族ではなく、基本的にはライブラリーからサーチできる、アドバンテージのシステムでしかないからだ。もちろん、ライブラリーには一定数が含まれる必要があるものの、その問題も、ライブラリーにレベルを戻せる《果敢な勇士リン・シヴィー》がネメシスで登場してからは解決していた。

 それを考えると、レベルという集団を最低限機能させるだけ残して後の枠を他の役割のカードで埋めるという戦略は有効であると言えるだろう。カウンターレベルは、コントロールデッキにレベルというフィニッシャーを加えたデッキであると考えれば確実にコントロールデッキであり、レベルの特性を考えれば、カウンターポストの《Kjeldoran Outpost》のような存在と考えられるかもしれない。また、青を加えることで、《渦まく知識》とデッキをシャッフルするカラクリが取り入れられ、《対抗呪文》や《吸収》といったカウンター呪文が《サーボの命令》といった致命的な呪文を防ぐことができた。

 この「特定のシステムを最小限機能するレベルに留め、後はパーミッション要素で固める」というスタイルの青白コントロールは後々にも使われていく。

 カウンターレベルはパーミッションに強いという特性があるが、プロツアー・シカゴ00では、皮肉にもこの「カウンターレベル」は「レベル」に敗れている。優勝したカイ・ブッティの「レベル」には、《果敢な勇士リン・シヴィー》が4枚入っていたからだ。


2001年 ラストエンペラー

 プレーンシフトの発売以後、もっとも流行したデッキは赤緑の「ファイヤーズ」だろう。プレーンシフトで《火炎舌のカヴー》や《荊景学院の戦闘魔道士》といった盤面に強いクリーチャーを得たことでレベルに対して有利になっていた。

 その中で、再び注目を浴びたのがノンクリーチャーのコントロールデッキだ。《火炎舌のカヴー》のようなクリーチャーは対象となるクリーチャーが居なければ戦場に出しても、自分自身を焼いてしまう。となれば、デッキ構造としてクリーチャーを入れないという構成が再び浮上してくる理由になっていた。

「ミルストーリー」 / 使用者:岡本尋
アジア太平洋選手権01 優勝[MO] [ARENA]
8 《
7 《平地
4 《沿岸の塔
4 《アダーカー荒原

-土地(23)-


-クリーチャー(0)-
4 《選択
4 《対抗呪文
4 《蓄積した知識
2 《今わの際
3 《サーボの網
3 《石臼
4 《吸収
3 《物語の円
3 《解体の一撃
4 《神の怒り
3 《嘘か真か

-呪文(37)-
2 《獅子将マギータ
4 《マハモティ・ジン
3 《反論
1 《解呪
1 《今わの際
2 《総くずれ
2 《誤った指図

-サイドボード(15)-

 「ラストエンペラー」岡本尋が使用したこの「ミルストーリー」は、2つのカード、《石臼》と《物語の円》の名前を冠したデッキ名になっている。デッキ構成はまさに古典的な青白コントロールと呼べるもので、《神の怒り》などの全体除去、《物語の円》による恒久的な防御手段と、《石臼》というクリーチャーに頼らない勝ち手段が明確なコンセプトを打ち出している。

 土地の関係も、多色マナが今に比べると遥かにタイトだが、《リシャーダの港》を効率的に止める手段である《サーボの網》がインベイジョンで加わったことで、多色のコントロールにも光が当たることになっていた。

 ちなみに岡本尋の「ラストエンペラー」の二つ名は、これが使われた大会が「最後のアジア太平洋選手権」だったということにちなんでいる。


2002年 オデッセイブロック

 コントロール界において、青白の最大のライバルは青黒だ。青白は全体除去とライフ回復でビートダウンには強いが、手札破壊を擁する青黒は青白に対して強いことが多かった。オデッセイブロックは青黒にサイカトグという化け物が居たために青白のコントロールの居場所というのはなかなか見つけることができなかった。

 しかし、ややアグロな青白デッキで言えば、オデッセイブロック構築から生まれた「パニッシャー・ホワイト」が有名だろう。 

「パニッシャー・ホワイト」 / 使用者:石田格
グランプリ・札幌02 ベスト4 / オデッセイ・ブロック構築[MO] [ARENA]
13 《平地
6 《
4 《広漠なるスカイクラウド

-土地(23)-

4 《不屈の部族
4 《拒絶魔道士の代言者
2 《陽光尾の鷹
4 《敬愛される司祭
3 《巡視犬
3 《栄光

-クリーチャー(20)-
4 《金切るときの声
3 《物静かな思索
4 《聖餐式
1 《虹色の断片
3 《綿密な分析
2 《打開

-呪文(17)-
2 《厳格な裁き人
1 《司令官イーシャ
4 《被覆
2 《オーラの移植
2 《虹色の断片
1 《綿密な分析
1 《ねじれの光
2 《カーターの怒り

-サイドボード(15)-

 オデッセイブロックはスレッショルドとフラッシュバックというシステムがどの色においても重要な役割を持っていた。基本的には青緑のスレッショルド+マッドネスデッキと、黒単色のコントロールデッキが支配する色の格差が激しいことで有名なブロックではあるが、それでも、他の色に比べ圧倒的に劣るように見えるクリーチャーを使い、この青白のデッキはグランプリのトップ8に2人を送りこんでいる。

 今の人は《戦隊の鷹》が鷹の中でも一番の出世頭だと知っていると思うが、このときも地味にではあるが《陽光尾の鷹》という鷹がその名を連ねている。このデッキの肝は他の青緑のデッキなどと等しく、《物静かな思索》によるもので、そこからのフラッシュバックで戦場にクリーチャーを多く展開した。このデッキは、システムに触りづらい青緑の弱点を突いており、《拒絶魔道士の代言者》などで戦場をコントロールしたのだった。


2003年~2005年 《等時の王笏

 ここでは、少しエクステンデッドにも目を向けてみよう。

 ミラディンが発売されたとき、もっとも注目されたカードの一つが《等時の王笏》である。

 実際のスタンダードでは、親和デッキの強さや、アーティファクト除去の豊富さから、あまり活躍しなかったカードではあるが、エクステンデッドでは《オアリムの詠唱》+《等時の王笏》が強力なロックとして活躍することにより、一つの勢力として拡大していった。

「セプターチャント」 / 使用者:鍛冶友浩
グランプリ・北九州05 優勝 / エクステンデッド[MO] [ARENA]
6 《
2 《平地
1 《シヴの浅瀬
2 《聖なる鋳造所
3 《アダーカー荒原
1 《広漠なるスカイクラウド
4 《溢れかえる岸辺
2 《教議会の座席
1 《古えの居住地
1 《水辺の学舎、水面院
1 《海の中心、御心

-土地(24)-

2 《賛美されし天使
1 《永遠のドラゴン

-クリーチャー(3)-
4 《等時の王笏
1 《金属モックス
3 《魔力の乱れ
1 《オアリムの詠唱
4 《対抗呪文
3 《火 // 氷
4 《知識の渇望
2 《吸収
3 《狡猾な願い
3 《神の怒り
3 《嘘か真か
2 《正義の命令

-呪文(33)-
2 《賛美されし天使
2 《オアリムの詠唱
2 《解呪
1 《稲妻のらせん
1 《残響する真実
1 《思考停止
1 《火 // 氷
1 《原野の脈動
1 《翼の破片
1 《ウルザの激怒
1 《吸収
1 《嘘か真か

-サイドボード(15)-

 セプターチャントと呼ばれるコンボは、一度決まってしまうとインスタントの呪文でない限りはほぼ抜け出せない。かつての《謙虚》+《オアリムの祈り》がクリーチャーを封殺するコンボでしかないのに対し、これはついでに相手のターンすらほとんど封殺してしまう。2マナのアーティファクトの成せる効果としては破格のものと言っていいだろう。

 《オアリムの詠唱》が白であり、そのコンボのサポートにはカウンター呪文を持つ青が最適であるため、セプターチャントは青白のデッキに《火 // 氷》の赤を加えたもので組まれることが殆どだった。

 また、エクステンデッドでは《知識の渇望》が強力なドローソースとして使えたほか、《狡猾な願い》からのシルバーバレット、および、刻印するためのカードのサーチが強力な環境であり、この時期のエクステンデッドではもっとも有名なデッキの一つと言える。

 そしてこのデッキの優れていた点は、「相手が頑張らない」という点かもしれない。このコンボのロックはあまりにも強力なために、相手に対抗手段が無い場合、素早く投了してくれたからだ。もちろん、素早く勝負を決めるためとビートダウン対策に《賛美されし天使》が入れられていることが多かったが、それでも、ロックデッキの中でも引き分けが少ないデッキに数えられるのは、ロックそのものが強力なのだからだろう。 


2006年 スタイルの変遷

 第8版以後のスタンダードは、《対抗呪文》がリーガルでなくなってしまったことが青白のコントロールから一つの可能性を奪ってしまった時期かもしれない。確定のカウンター呪文を相手が嫌になるほど入れて、勝ちが確定するまでのアドバンテージを取り続ける、そんな戦い方ができなくなってしまったからだ。代わりに、より能動的にアドバンテージを取っていく青白のコントロールデッキが主流になっていく。

 その中でも代表的なのが、ウルザ地形を使ったデッキだ。世界選手権06では、2つの青白トロンデッキがベスト8に入っている。

「殉教者トロン」 / 使用者:ガブリエル・ナシフ
世界選手権06 ベスト4[MO] [ARENA]
1 《平地
2 《トロウケアの敷石
4 《アダーカー荒原
4 《神聖なる泉
4 《ウルザの鉱山
4 《ウルザの塔
4 《ウルザの魔力炉
1 《ウルザの工廠

-土地(24)-

3 《雨ざらしの旅人
4 《砂の殉教者
2 《クロノサヴァント

-クリーチャー(9)-
4 《アゾリウスの印鑑
3 《糾弾
1 《目くらましの呪文
4 《差し戻し
4 《強迫的な研究
4 《再誕の宣言
4 《神の怒り
1 《詩神の器
2 《呪文の噴出

-呪文(27)-
1 《雨ざらしの旅人
1 《ミューズの囁き
3 《赤の防御円
3 《解呪
2 《詩神の器
2 《信仰の足枷
1 《複写作成
1 《福音
1 《ヴェズーヴァ

-サイドボード(15)-

 このデッキには殆どカウンター呪文は入っていない。《呪文の噴出》もウルザ地形が揃ったときにそのマナを生かすために入っているものだ。このデッキは能動的にライフを、それこそ相手が嫌になるまで回復していくデッキになっている。

 一度、《砂の殉教者》と《再誕の宣言》による循環パターンに入ってしまうと、直接的な妨害が出来ないデッキでは、このデッキのライフを削りきることは困難だろう。実際にベスト8の戦いではライフが400近くまでなって、対戦相手の小倉陵......ではなく、ティアゴ・チャンが苦い顔をしていたのを筆者は覚えている。

 これは、最初のワイズマンの話と比較すると面白いかもしれない。ライフを差し出すはずのコントロールがライフを得ているのが、これも実はカードアドバンテージの一種と言えるだろう。

 ライフの獲得はダメージを与えてくるクリーチャーと火力呪文の解答になる。相手のダメージソースよりも、多くのライフを得られるシステムが機能していれば、それらのカードは全て紙切れのようなものだ。だから、このライフの回復は潜在的なカードアドバンテージで、「ミルストーリー」の《物語の円》のような役割に近いだろう。

「青白トロン」 / 使用者:小倉陵
世界選手権06 準優勝[MO] [ARENA]
1 《
4 《神聖なる泉
4 《アダーカー荒原
4 《ウルザの塔
4 《ウルザの鉱山
4 《ウルザの魔力炉
1 《ウルザの工廠
1 《アカデミーの廃墟

-土地(23)-

2 《ザルファーの魔道士、テフェリー
2 《トリスケラバス

-クリーチャー(4)-
4 《アゾリウスの印鑑
3 《ディミーアの印鑑
2 《呪文嵌め
4 《差し戻し
2 《マナ漏出
2 《熟慮
4 《強迫的な研究
1 《入念な考慮
1 《神秘の指導
3 《神の怒り
2 《信仰の足枷
2 《連絡
1 《徴用
2 《呪文の噴出

-呪文(33)-
1 《吸収するウェルク
1 《呪文嵌め
2 《赤の防御円
1 《霊魂放逐
1 《計略縛り
3 《道化の王笏
3 《併合
1 《神の怒り
1 《信仰の足枷
1 《塵への帰結

-サイドボード(15)-

 もう一つの青白トロンは、殉教者トロンとは全く別種のデッキだ。このデッキはカウンターが多めに採用されており、パーミッションの要素が強い。最終的にはウルザ地形のマナによって《トリスケラバス》や《呪文の噴出》などのマナが掛かるものを運用して、盤面をコントロールした。ちなみに使用者はティアゴ・チャンではなく、本物の小倉陵だ

 この時代はウルザ地形を使って、様々なウルザトロンデッキが生み出された。青赤トロン、青黒トロンなども生み出されていき、Finals06では森勝洋はこの青白トロンに《塩水の精霊》と《ヴェズーヴァの多相の戦士》の通称「ピクルス」コンボを取り込み、渡辺雄也の青赤トロンを破り優勝を果たした。明らかにコントロールの形が変わってきたことを印象付けた大会ともいえるだろう。


2007~2008年 ヒバリとシステム

 モーニングタイドが発売されると、《目覚ましヒバリ》を使った青白のデッキが登場する。

「ヒバリブリンク」 / 使用者:津村健志
グランプリ・静岡08 3位[MO] [ARENA]
8 《
6 《平地
4 《アダーカー荒原
4 《雨雲の迷路
2 《変わり谷

-土地(24)-

3 《エイヴンの裂け目追い
1 《鏡の精体
2 《誘惑蒔き
1 《造物の学者、ヴェンセール
4 《熟考漂い
4 《裂け目翼の雲間を泳ぐもの
4 《目覚ましヒバリ
2 《影武者

-クリーチャー(21)-
4 《精神石
4 《ルーンのほつれ
2 《一瞬の瞬き
2 《入念な考慮
3 《神の怒り

-呪文(15)-
3 《薄れ馬
1 《エイヴンの裂け目追い
1 《誘惑蒔き
2 《隆盛なる勇士クロウヴァクス
2 《否定の契約
3 《霊魂放逐
3 《テフェリーの濠

-サイドボード(15)-

 《目覚ましヒバリ》は戦場から離れると、パワーが2以下のクリーチャーを墓地から2枚戻すことができる能力を持っており、一端戦場に出てしまうと、コントロールを奪う以外での対処が難しいカードだった。

 特に《神の怒り》といった本来万能な除去呪文でさえ、《目覚ましヒバリ》の前には逆に打ったら負けといった事態すら発生した。むしろ、このデッキこそが、クリーチャーデッキでありながら、積極的に《神の怒り》を使っていくデッキだ。当時のパワー2以下のクリーチャーで優秀だったのが、想起能力で能動的に墓地に落とせて、カードを引ける《熟考漂い》やバウンス効果を持つ《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》だろう。

 《目覚ましヒバリ》はこれらユーティリティーなクリーチャーと共に使われ、また誘発条件が「戦場を離れたとき」であったことから、一時的に戦場を離れさせる《一瞬の瞬き》とのコンボでよって、凶悪なアドバンテージを取ることができた。

 また、《影武者》を使って無限のエンジンが組み込まれているものも多かった。《影武者》は墓地のクリーチャーのコピーとなるが、それ自身は墓地にいるときは0/0のクリーチャーでしかない。つまり、《目覚ましヒバリ》をコピーした《影武者》は、墓地に落ちるとそれ自身を戦場に戻すことが出来た。これに、《鏡の精体》と《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》、《エイヴンの裂け目追い》が絡むことで、相手のパーマネントを全て手札に戻したり、無限のライフを得ることが出来た。このコンボの形は後に赤から《大いなるガルガドン》を加え、コンボ型として進化していくことになる。


 逆にこの《目覚ましヒバリ》のシステムを最小限だけ利用した形も模索された。レベルがカウンターレベルになったように、《目覚ましヒバリ》もそのシナジーを最大限利用する形にしてしまうと、構成的に勝つときには勝ち過ぎてしまい、逆に特定の相手に弱くなってしまうとも考えられたからだ。

「ヒバリコントロール」 / 使用者:大礒正嗣
日本選手権08 優勝[MO] [ARENA]
12 《冠雪の島
5 《冠雪の平地
4 《秘教の門
3 《アダーカー荒原

-土地(24)-

4 《台所の嫌がらせ屋
2 《造物の学者、ヴェンセール
4 《熟考漂い
4 《裂け目翼の雲間を泳ぐもの
4 《目覚ましヒバリ

-クリーチャー(18)-
2 《虹色のレンズ
4 《祖先の幻視
4 《ルーンのほつれ
2 《霊魂放逐
2 《一瞬の瞬き
4 《謎めいた命令

-呪文(18)-
2 《ザルファーの魔道士、テフェリー
2 《隆盛なる勇士クロウヴァクス
2 《否定の契約
3 《糾弾
2 《霊魂放逐
3 《神の怒り
1 《ジェイス・ベレレン

-サイドボード(15)-


 このデッキは通常のヒバリデッキよりも、カウンター呪文が多く採用されている。日本選手権08では多くのヒバリデッキが使われトップ8にも入ったが、この形はコンボではなく、システムとしてヒバリを採用した青白コントロールといってもいいかもしれない。

 

2009年~2010年 《精神を刻む者、ジェイス》の登場

 アラーラの多色環境は、青白のコントロールに大きく寄与する部分は無かったが、ゼンディカーブロックの2番目のセット、ワールドウェイクが発売されると《精神を刻む者、ジェイス》によって、大きくメタゲームとマジックが変わっていく。

 青を主体にしたコントロールデッキというのはまず単純にドローソースが強いことが望ましい。それがコントロールデッキの強さの基盤になる。《嘘か真か》があった時代に青が最盛期を迎えたように、《精神を刻む者、ジェイス》の存在が将来、青の最盛期をもたらすことは想像に難くなかった。

 そもそも、プレインズウォーカーというシステムが加わったことで、マジックは「プレインズウォーカーに対処できないデッキは少なからずリスクを抱える」という形に変わっていた。そこに、強力な《精神を刻む者、ジェイス》の登場によって、プレインズウォーカーに対処できない、もしくは無視できないデッキはその存在価値すら怪しいものになっていたのだ。

「タップアウトコントロール」 / 使用者:ブラッド・ネルソン
グランプリ・ワシントンDC10 優勝[MO] [ARENA]
7 《
5 《平地
4 《天界の列柱
4 《氷河の城砦
2 《セジーリの隠れ家
2 《乾燥台地
2 《地盤の際

-土地(26)-

4 《前兆の壁
4 《悪斬の天使

-クリーチャー(8)-
2 《永遠溢れの杯
4 《流刑への道
4 《広がりゆく海
3 《忘却の輪
3 《審判の日
1 《軍部政変
2 《思考の泉
3 《精神を刻む者、ジェイス
2 《遍歴の騎士、エルズペス
2 《ギデオン・ジュラ

-呪文(26)-
3 《コーの火歩き
1 《コーの奉納者
1 《失われた真実のスフィンクス
4 《否認
2 《天界の粛清
1 《忘却の輪
1 《軍部政変
1 《ジェイス・ベレレン
1 《遍歴の騎士、エルズペス

-サイドボード(15)-

 前述した《精神を刻む者、ジェイス》や、エルドラージ覚醒から《ギデオン・ジュラ》、基本セット2010で加わった《悪斬の天使》など、青と白の強力なカードをひたすらに戦場に叩きつけていくデッキで、後の「2010年プレイヤー・オブ・ザ・イヤー」ブラッド・ネルソンはグランプリ・ワシントンDCで優勝を果たす。

 このデッキは青白にも関わらずカウンター呪文を採用していないことから、「タップアウトコントロール」と言われた。この当時のメタゲームの中心の「ジャンド」は続唱というカウンターに強い能力を軸に組み立てられていたこと、基本セット2010には《マナ漏出》が無く、汎用性の高いカウンター呪文が無かったなどメタゲーム上の選択が大きいが、この色の組み合わせでカウンター呪文を使わない構成のコントロールというのは、一つの革命と言っていいかもれない。

 「タップアウトコントロール」は基本セット2011に《マナ漏出》が加わったことで、主流ではなくなっていくが、プレインズウォーカーが勝利手段になることを鮮烈に印象付けたデッキと言えるだろう。 


2010~2011年 羽ばたく鷹

 現在も活躍する、2011年の青白コントロールを象徴する一つのカードである《戦隊の鷹》。世界選手権前2010では「Caw Go」としてコントロールに組み込まれ、ブライアン・キブラーがスタンダード部門を全勝した。

「Caw-Go」 / 使用者:ブライアン・キブラー
世界選手権2010[MO] [ARENA]
4 《
4 《平地
4 《天界の列柱
4 《氷河の城砦
4 《金属海の沿岸
2 《沸騰する小湖
1 《乾燥台地
3 《地盤の際

-土地(26)-


4 《戦隊の鷹

-クリーチャー(4)-
4 《定業
4 《呪文貫き
2 《糾弾
2 《マナ漏出
1 《剥奪
3 《未達への旅
1 《広がりゆく海
2 《冷静な反論
3 《審判の日
1 《ジェイス・ベレレン
4 《精神を刻む者、ジェイス
3 《ギデオン・ジュラ

-呪文(30)-
2 《糾弾
3 《天界の粛清
3 《広がりゆく海
2 《瞬間凍結
1 《剥奪
1 《審判の日
1 《ジェイス・ベレレン
1 《エルズペス・ティレル
1 《地盤の際

-サイドボード(15)-

 《戦隊の鷹》のもっとも大きな利点は、ただ単純に殴れるということだろう。

 1点のダメージであれ、殴れるということは実は大きい。特に《精神を刻む者、ジェイス》を先に出されてしまった場合、《忘却の輪》が存在しない今のスタンダードの青白では、「クリーチャーによる攻撃」か「自分もジェイスを出して相殺」以外での対策は厳しい。この「殴れるクリーチャーを先に出しておける状態」というのが、コントロール対決において重要であるということは、世界選手権で《方解石のカミツキガメ》などが使われたことからも分かる。

 《戦隊の鷹》は2マナであり、十分なアドバンテージと並べることによってクロックも用意できた。手札をライブラリーに戻せる《精神を刻む者、ジェイス》との相性も良く、アドバンテージを他の手札に還元することもできたし、単純にデッキをシャッフルすることもできた。さらに、《精神を刻む者、ジェイス》を守る役割も持っている。

 《戦隊の鷹》はカードパワーではなく、青白が苦手としているプレインズウォーカーに攻撃するという役割を、できる限りアドバンテージを失わずに補完する。それが《戦隊の鷹》の強さだった。

 ただ、《戦隊の鷹》はそれ単体では所詮は貧弱なクリーチャーであるということは変わらず、《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》デッキなどに対しての打撃力は弱かった。しかし、ミラディン包囲戦から《饗宴と飢餓の剣》が加わると「Caw-Go」は「Caw-Blade」として一気に進化する。

「Caw-Blade」 / 使用者:ベン・スターク
プロツアー・パリ2011 優勝[MO] [ARENA]
5 《
4 《平地
4 《天界の列柱
4 《氷河の城砦
4 《金属海の沿岸
1 《霧深い雨林
4 《地盤の際

-土地(26)-

4 《戦隊の鷹
4 《石鍛冶の神秘家

-クリーチャー(8)-
4 《定業
4 《呪文貫き
3 《マナ漏出
1 《剥奪
1 《冷静な反論
4 《審判の日
1 《シルヴォクの生命杖
1 《饗宴と飢餓の剣
4 《精神を刻む者、ジェイス
3 《ギデオン・ジュラ

-呪文(26)-
2 《悪斬の天使
4 《失脚
3 《漸増爆弾
2 《神への捧げ物
2 《瞬間凍結
1 《否認
1 《肉体と精神の剣

-サイドボード(15)-

 今もっとも活躍しているデッキがこの「Caw-Blade」だ。このデッキの詳しい解説は津村健志の記事を参考にして貰えば分かりやすいと思う。なので、個人的な見解を少し示していこう。

 このデッキの強さは《饗宴と飢餓の剣》と《石鍛冶の神秘家》に支えられ、装備するクリーチャーに《戦隊の鷹》を採用しているため、その数に困ることもない。本質的に考えると、このデッキは必要最小限のシステムを利用し、他のパーツをより汎用性の高いもので埋めるというタイプのデッキだ。

 歴史的に考えるならカウンターレベル、ヒバリブリンクのパーミッション型などがそれに当たるだろう。ただ、このシステムが機能する枚数が、歴代のデッキと比べても少ないことが特徴として挙げられる。

 本来、装備品を使うデッキなら、そのクリーチャーの数が多ければ多いほどシナジーはある。しかし、かつてのナヤのようにクリーチャーで埋め尽くしてしまうと、《悪斬の天使》のようなカード1枚に完封されてしまう。

 青白は汎用性の高い受けを持つ色だ。それを最大限生かすためには、勝つための要素は最小限にとどめるのがベターであるのかもしれない。「Caw-Blade」はカウンターレベルやヒバリブリンクなどの歴代のデッキに比べ、そのシステムが十分機能する枚数を少なくすることができており、クリーチャーが8体で十分強い。そのため、他のカードをコントロールする役割に裂くことができるのだ。これはデッキの強みと言ってもいいだろう。


 《饗宴と飢餓の剣》の強さというだけでなく、幾重にも重なったアドバンテージの理論が青白コントロールを作り上げている。青白コントロールも当然、時代に合わせてスタイルを変えてきている。今は《神の怒り》も《対抗呪文》も無いが、青白のコントロールが目指すのが、常に論理的にカードアドバンテージを考えたコントロールなのだというのは、「ザ・デック」のときから変わらないのだろう。


筆者お気に入りの青白デッキ。

 「Caw Go」の原型である、自分が趣味で使っていた《戦隊の鷹》デッキが今回のお気に入り。教えたら、ブラッド・ネルソンがそれを調整(本人いわくアメリカ向きに)して世界選手権に使って来てて、びっくりしましたね。いろいろ、無駄なカードが入っているように見えますが、それがいいんだよ!と言いたい。無限に《戦隊の鷹》が回るので鷹への愛が分かってもらえると思います。

「Caw Original」 / 使用者:浅原晃
Magic Online Championship 2010 スタンダード部門[MO] [ARENA]
5 《
4 《平地
4 《天界の列柱
4 《氷河の城砦
4 《金属海の沿岸
1 《霧深い雨林
4 《地盤の際

-土地(26)-

4 《戦隊の鷹
1 《粗石の魔道士
2 《太陽のタイタン

-クリーチャー(7)-
2 《呪文貫き
3 《糾弾
1 《不死の霊薬
1 《脆い彫像
4 《マナ漏出
1 《剥奪
2 《未達への旅
2 《冷静な反論
3 《審判の日
2 《ジェイス・ベレレン
4 《精神を刻む者、ジェイス
2 《ギデオン・ジュラ

-呪文(27)-
2 《テューンの戦僧
1 《真心の光を放つ者
1 《糾弾
4 《瞬間凍結
2 《否認
3 《天界の粛清
2 《精神壊しの罠

-サイドボード(15)-


 最後になりましたが、記事の方が遅れてしまい、楽しみにしてくれていた人はすいません。それでは、また次回会いましょう。

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