MAGIC STORY

タルキール龍紀伝

EPISODE 03

プレインズウォーカーのための『タルキール龍紀伝』案内 その1

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プレインズウォーカーのための『タルキール龍紀伝』案内 その1

Magic Creative Team / Tr. Mayuko Wakatsuki / TSV Yohei Mori

2015年3月11日


 これは『タルキール龍紀伝』におけるタルキール世界を取り扱う、「プレインズウォーカーのための案内」全二回のうち第一回である。

龍たちが統べる世界

 異なる現在であったなら、タルキールは五人の強大なカン達が支配する世界だったかもしれない。砂漠にも森にも殺戮が満ち、戦で荒れ果てていたかもしれない。各氏族は莫大な富と広大な王国の支配を巡る争いに固執していたかもしれない。だがこれはそのような現在ではない。この現在には統べるカンなどいない。この現在は龍のもの。


アート:James Ryman

 タルキールにこの強大な龍たちが存在するのはプレインズウォーカー、サルカン・ヴォルの恩恵による。龍なき現在から彼は千年以上の時を重大な分岐点まで遡り、そこで彼は精霊龍のプレインズウォーカー、ウギンを死の淵から救った。それによって龍の嵐は確実に存在し続けることとなった。ウギンの魔術に養われた、タルキールのあらゆる龍の源である嵐が。

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 長年に渡って、氏族はそれぞれ生き残りをかけて、少しでも優位に立とうともがきながら龍たちと戦ってきた。サルカンの行動によって龍たちの存在は安定し、数を増やし、そしてやがて戦の潮流が変わった。最終的に龍たちはカンを追い詰め、打ち滅ぼした。そして残されたのは、タルキールの空位の玉座を奪い合う龍たちである。

タルキールの歴史

カンの凋落

 カンに率いられたいられた氏族は精一杯善戦した。だが古の、人型種族のカンは一人また一人と倒れ、氏族もまた倒れた――それが千年以上前に起こった、カンの凋落として知られる出来事である。人型種族からなる古の氏族は五つの龍の氏族となり、それぞれの龍王にならった名が付けられた。古龍ドロモカ、オジュタイ、シルムガル、コラガン、アタルカ。


アート:Aaron Miller
人型種族の命運

 龍の氏族は人型種族の全てを消し去りはしなかった。カンが打ち負かされると、龍たちはその関心を互いへと向けた。互いに争う中で龍たちは人へと、龍に従い、仕えることを許し、新たに五つの龍氏族を形成した。今はほぼ全ての人型種族がこれらの五氏族それぞれの一部として生存しながら、彼らの龍王のために様々な役割で仕えている。龍氏族における人生は厳しい。最高位の人型種族であっても、最下層の龍よりも低い地位にある。それでも、氏族に加わることは最も安全な生を保証する。これが、サルカンの行動が創造した世界――龍が真に統べる世界。ズルゴですら――サルカンがやって来た時間軸における、マルドゥのカンですら――龍王へと膝をつかねばならない。

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タルキールの龍氏族

 この現在では、五体の伝説の龍王達が敗北した氏族を統べている。長い時間をかけて、氏族は龍の主の卓越した面を取り入れるようになり、龍の象徴とともにそれらの力を体現するようになった。各氏族はその龍王の名を冠し、対応する龍の面を体現する。忍耐、狡知、残忍、迅速、獰猛。

龍詞

 龍たちはその種独特の言語を話す。多くの龍が共通言語を操ることもできるが、あえてそれを使うことは滅多にない。

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ドロモカ({G}{W})忍耐、オジュタイ({W}{U})狡知、シルムガル({U}{B})残忍
コラガン({G}{R})迅速、アタルカ({R}{G})獰猛

オジュタイ氏族

氏族の概観

 タルキールのほとんどの者が怖れや畏敬から龍王へと従うが、オジュタイ氏族の僧や神秘家たちは尊敬と知識への欲求から服従する。この氏族はいかにして龍の狡知の面を真に我がものとするかを追い求め、そしてこの悟りへの探求を表すために龍眼を象徴として取り入れている。


アート:Jason A. Engle

 オジュタイ氏族は、自分達の短い人生において得られる知恵には限りがあると認めている。しかしながら彼らが敬う龍たちはずっと長く生きるため、氏族の君主たちは気高き存在であると信じ、「空智」として敬っている。オジュタイの氏族員にとって最も偉大な達成の一つは、尊敬される空智の目にとまることである。そしてそれは龍が提供するありとあらゆる教えを貪欲に学べるようになることを意味する。

 オジュタイの正説では、龍たちは氏族を統べているのではなく、彼らに仕える者たちを、世界の更なる理解のために導いているのだとしている。氏族員は何よりも、彼らの導き手が持つ知恵へと感謝を捧げることに重きをおく。それゆえに、オジュタイの教えや彼の教義から逸脱した者は政治的な反体制者ではなく、悟りへの誤った道を歩む異端者とみなされる。そのような冒涜は迅速かつ冷酷に罰せられる。

龍王オジュタイ

 オジュタイは古く、眼識に優れ、賢明な龍王である。いかにして彼が氏族を支配し、その名を冠するようになったかの真実は歴史の霧中へと失われている。彼の教えは、オジュタイ種の龍たちは自由意志で、龍王の年齢と知恵へと服従しているのだと説いている。それを信じているかどうかにかかわらず、その主張についてあえて論じようという氏族員はいない。


アート:Chase Stone

 偉大なる師として知られるオジュタイは龍眼の聖域の彼の座にて午後の長い時間を過ごし、霊的・知的な関心事について長々と述べている。その聴衆はほぼ龍に限られる。他種族は時折、尊き龍王と直接の接触を持つことを許可される。龍よりも劣る存在は、龍の言語の複雑さを真にものにすることは決してできないだろうと受け取られているために信頼されず、偉大なる師の言葉を筆記する許可すら下りない。

氏族の価値観

空智の指導 オジュタイ氏族の者達は年齢、知恵、そして肉体的強さを重んじる――人型種族も身につけることが可能な、だが龍たちが例示する長所を。多くの氏族員は龍たちを栄誉ある存在として模範とし、龍たちを崇高とみなす者達は――特に彼らの龍の主たちは――空智を称する。人型種族にとって、龍の師の目にとまることは偉大な達成である。中年となる以前にそれを得たという例はごく稀である。

大いなる円環 氏族員は、魂は大いなる円環として知られる周期で転生すると信じている。最小の龍であっても最高の人間よりも賢く強い、最小の人間であっても最高の鼠よりも賢く強いように。そうオジュタイは教えている。従って、大いなる円環に属するあらゆる魂の目標は、龍として生まれ変わることにより、最高の存在の姿を得ることである。

 この説は、龍たちの魂もかつては人の魂だったと示唆している。だが「以前の生」の話題は通常――そして龍たちにとっては特に――上品な話とはみなされない。ある龍がある人型種族の生まれ変わりかもしれないという推測は、不敬に近い。それでもなお、広く尊敬を集めた僧の死後は、多くのオジュタイの弟子達が密かに彼/彼女の転生の兆候を、続いて起こる龍の嵐の中に探す。

 龍王オジュタイは大いなる円環の外に存在すると考えられている。その龍王は最初の嵐から完璧かつ永遠の姿で、彼の知恵を劣る存在へと授けるために生まれてきたと教義は定めている。

氏族の構造

隠遁的な聖域 氏族は「聖域」として知られる、緩やかに繋がった一連の寺院の複合体によって組織されている。それぞれが自給自足の生活を営み、年功序列と学術的業績に基づいた指導者による自治が認められている。ほとんどの聖域は小規模で、住人のほとんどは人間とアイノクからなり、常駐する龍はおらず、放浪のエイヴンとジンが時折訪れる。最大規模の聖域には複数の龍が常駐し、最も才能ある学徒が他の聖域から送り込まれる。「龍眼の聖域」が最大の聖域であり、そこにオジュタイの座がある。

 オジュタイ氏族は氏族であると同様に、修道的階級を形成している。地位は世襲ではなく肉体的武勇と精神的な教示によって得るものである。人型種族の氏族員は戦の階級と学問の階級の両方を持ち、片方を追い求めるも両方を追い求めるも自由である。そして二つが対等に存在する。ある聖域の最高階級の武術家はその聖域の戦士達を指揮し、最高階級の学問の師は平時に聖域を導く。稀に、小規模の聖域において、同じ人物が両方の地位を持つこともある。


アート:Anastasia Ovchinnikova

 オジュタイ氏族の人型種族の衣服は簡素で、階級が上がるに従って次第に精巧なものとなる。指導者、特に学者はとても華麗な衣服をまとう。ある意味、この習慣は龍たちにとって助けとなっている。人間の小さな顔の詳細を観察せずともその人物を判別することが可能となっているからである。

 偉大なる師は主として氏族の日常的な出来事からは距離をおいている。彼は人型種族社会の世俗ではなく、悟りと教えに携わっている。

学者の言語、龍詞 オジュタイ氏族の日常的な用務には人間の言語が使用されており、また若年の学び手達は偉大なる師の教えの翻訳文を学ぶことを許されている。しかしながら、真の学問では、龍たちの言語の理解と読解と会話が必須とされる。オジュタイはその教えを龍詞の言葉で伝えるが、それらの真の意味は劣った種族の舌では曖昧な意味となりかねない。オジュタイ氏族のほとんどの人型種族はある程度の龍詞を理解できるが、いずれかの空智から直接の教えを受けない限り、龍詞を読み、話すことはしばしば禁忌とみなされる。

 氏族員の多くが少なくとも基本的な話し言葉を理解できるが、龍たちもその方が有益であるためにゆっくりと、明確に発声する。熱烈な霊的議論に使用される、複雑な龍詞を理解できるものは比較的少ない。実際にその言語を話すことのできる者は、人型種族ではほんの一握りである――そしてそれですら、翼と尾を持たない肉体的要素から、彼らは龍詞に重い「アクセント」を与え、正確なニュアンスを与えることができない。翼を持つことからこの点に関してエイヴンは人間よりも優位だが、それも僅かなものにすぎない。

 龍たちが僻遠の聖域の訪れる時には、一人の僧が――通常は首席の学者が――聖域の者達との会話のために指名される。人の言葉で龍の訪問者へと話しかけることは通常、追放か死に値する。そのため龍詞の会話はオジュタイ氏族の中で政治的な力を振るうためには必要不可欠となっている。選定された話し手はその龍の言葉を他の僧へと翻訳し、またその者はその龍へと話しかけることが許された唯一の者である。とりわけ有力な龍たちは時折、彼ら自身の話し手を連れている。

氏族の魔術

 オジュタイ氏族にとって、魔術と武術の技は深く絡み合ったものである。オジュタイの魔道士達は時折、一連の武術の型を使用して呪文を編む。そしてオジュタイの武術家達は周囲の魔術から力を引き出す。オジュタイの魔道士達はその武術の技を、破壊的な複合攻撃を解き放つために追求している。オジュタイの龍たちはしばしば、他氏族の龍よりもずっと呪文術に熟達し、既に素晴らしい肉体的能力を魔術の豊富な武器で更に増大させている。

氏族内の主な役割

空智 オジュタイ氏族の龍たちはよそよそしく、孤独を好む、優雅な存在である。彼らの内にも階級が存在するが、その大部分はオジュタイ氏族の人型種族にとっては不可解なものである。ただ明らかなのは、龍たちは人型種族の上に存在し、その龍全ての上にオジュタイが座すという事である。オジュタイの龍たちは滅多に知的種族を食べない――そして氏族員を食べることはほぼ決してない――それを何よりも嫌悪している。人型種族は高い地位にはなく、とりわけ機嫌を損ねた龍は簡単に人型種族を殺し、その結果を気にすることも滅多にない。とはいえそのような振舞いはやや見苦しいものとみなされている。


アート:Adam Paquette

龍語り オジュタイ氏族でも博識な者は時折、地位のある龍たちの伝令になるという特権にあずかる。時折、ある龍が一人の人間を龍語りとし、彼/彼女をその肩や鉤爪に乗せるが、それは威厳がない振舞いと考える龍もいる。ほとんどはその飛行能力から、エイヴンの龍語りを好む。その伝令は龍のために話し、劣る存在との仲介者となる。もしもその龍が戦いで死したなら、その龍語りの命も剥奪される。そのため龍語りたちは彼らの龍を守るために死ぬまで戦う。

呪拳士 通常は人間かジンからなるこの戦士達は、何年もの修行の後に魔術のエネルギーの緻密な流れを操る。魔術を振るっているとは正確には呼べないながらも、それはそれは彼らの動きと攻撃に超自然的としか言いようのない優雅さ、速度、流動性を与える。

雅刃 呪拳士のように、雅刃もエネルギーへと繋がってそれを呼び起こす。彼らは攻撃を強化するためではなく、精神的な強さを証明するためにそうする。雅刃となるためには呪拳士の技術の理解を必要とし、戦いの熱の中で瞑想状態の明晰さに到達する能力を求められる。

氏族の建築物

 聖域のほとんどは人里離れており行き来が困難である。龍たちにとっては容易く移動できるように築かれているが、大地に縛られた種族にとってはそうではない。エイヴンの伝書士たちが聖域を繋いで公文書を運ぶが、他の人型種族にとっては、聖域を離れることは困難で危険な旅を意味する。龍たちは人型種族を運ぶことは好まず、そして騎乗を許可することは決してない。

 あらゆる聖域に、常駐する龍がいない所にすら止まり木や巣が、そして龍たちの着地や離陸のために野外の「滑走路」がある。扉や通路は大型の龍が通れるほど大きく建造されている。とはいえほとんどの聖域において居住区と訓練の間は人型種族向けの縮尺である。

 浮遊鐘、大昔には龍の攻撃を警告するために使用されていたそれは今、空智の到着を知らせるものとして使用されている。それらの響きは人型種族の聖域の住人へと、身分の高い者の訪問の準備をするように告げている。


アート:Howard Lyon
氏族の重要地点

 オジュタイ氏族には多くの「聖域」があるが、特に大きな四つは他の全てよりも重要視されている。

コーリ山 古のカルデラ湖の内部に築かれたコーリ山の聖域は、龍王オジュタイの第一の座と知的な瞑想の場である。龍眼の聖域では、オジュタイは配慮を要求する。コーリ山では瞑想のための孤独を要求し、私室で研究調査を行っている。コーリ山の多くの僧が、偉大なる師の機嫌を不意に損ねることを避けるべく沈黙の誓いを立てている。そして龍たちすらオジュタイがその内にいる時には距離を保つ。

龍眼 第二の聖域にして龍王オジュタイの巣は入江の端の山腹に建造されている。その聖域は船、長く危険な登攀、そして勿論、翼によって到達が可能である。オジュタイはしばしばその聖域の広大な中庭で日光浴をし、多くの他の龍たちが彼を囲みながら知恵の真珠を待っている。龍眼の武術の流派は戦闘の型と同様に瞑想を重視し、肉体と精神の統合を通してより高位の悟りの鍵を開けることに献身する。しかしながら窮地に陥った時は、龍眼の僧たちは他流派と同じほどに戦闘でも力を発揮する。

ダルガー 湖の中央に位置する小島に築かれたこの聖域は、翼持つ龍と同様に頻繁に通行する船の目的地でもある。大型の聖域の中では他の氏族の領土に最も近く、そのため商隊と略奪隊の両方が訪れる。その聖域に住まう多数の龍はしばしば他氏族の龍による攻撃を受ける。ダルガーの人間達は交易と侵略の両方へと同等に備えており、攻撃に対する彼らの防衛は素早くかつ厳しい。

落氷 断崖に彫り込まれるように建造されたこの聖域は、人間たちの昔の習慣の痕跡を保存している。遠い昔、この聖域には巨大な滝の力を伝える巨大な水車があった。今や、おそらくは冷気を好むオジュタイの龍たちの魔法的な介入によって凍り付き、氷柱がその水車を閉じ込めている。落氷の聖域が伝える武術は堅固で断固としたもので、高度に統制された一連の武術の型を通して動く。

ナーセット

 幼い頃に、ナーセットはオジュタイ自身の目にとまった。彼女は龍や年長者の訓練を軽い一瞥だけで身に付け、それをしばしば模倣してその龍の注意を惹いた。オジュタイは彼女を、無限の成長の可能性を備えた精神と認識し、学徒として迎え入れた。ナーセットはただちに訓練だけでなく龍詞そのものを身に付けた。だが成長すると、彼女は自身の内に落ち着かなさを感じ始めた。彼女は切望を心に抱き続け、とはいえ自身でもそれが何なのかもわからなかった。そして彼女は疑問を抱くようになった、オジュタイは、人生の疑問に対するあらゆる答えを知っているのかと。


アート:Magali Villeneuve

 比較的短い修行期間の後、ナーセットは師の地位を得た。だが彼女の関心は、その地位が授ける大変な名誉ではなく自由に向けられた。彼女はしばしば孤独に一日を過ごし、オジュタイの聖域の最深部にて埃だらけの空洞を探検し、ゆっくりと、禁じられた過去に光を当てては継ぎ合わせていった。彼女の同輩テイガムは龍王の許可無しに知識を求めることの危険性を警告したが、ナーセットの調査を妨害するものはなかった。

 彼女は過去のタルキールの真実を発見した――オジュタイの教えが語る、龍によって統べられていた世界ではなかった。かつて、人型種族のカン達が強大な氏族を率いて地を統べていた。ナーセットはまた、あらゆる龍を形作った強大な精霊龍について学んだ。それは彼女を最も興奮させた存在だった。そしてナーセットは彼を記述する歴史に更に何かを、彼女自身の放浪熱と同じものを感じた。彼女はこういった秘密の小部屋で何時間も瞑想をして過ごし、数日間、時には数週間も地上へ姿を現すことなく潜り続け始めた。

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氏族の他の人物

イーシャイ オジュタイの現在の龍語りを務める女性のエイヴン。かの古龍には多くの伝令がおり、彼はそれらに個人的な愛着を持ってはいないが、イーシャイは長年に渡って彼に仕え、多くの自主性と権威が与えられている。イーシャイの言葉はオジュタイの全権限を伝え、彼女が姿を現す時にはしばしば、龍王もまたすぐ後ろにいることを意味する。

テイガム 学者長にして呪拳士の指導者を務める寡黙な人間の男性。彼は偉大なる師の正しき知恵を保存し複写する務めを課されており、他の人型種族の誰よりも龍詞を流暢に話し、読み書きすることができる。反抗的な若者であった頃、彼はコーリ山の聖域を離れてより大きな富を求めることを考えた。だが真の知恵をもたらすことができるのはオジュタイのみとやがて知り、オジュタイの主張に身を固めた。

ジアダ ダルガー要塞の戦士長を務める人間の女性。龍たちへとお世辞を言うが、実際には自身と要塞の新入り達を信頼している。彼女が低階級の弟子だった頃、ダルガーの守備隊は商隊に偽装したコラガンの略奪隊に隙をつかれた。彼女自身はその略奪隊の長である巨体のオークを殺したが、生き残り達が氏族の宝物を奪って逃走した。彼女は今、そのオークの歯を首飾りとして身につけている。彼女の指揮の下、ダルガーの警備体制は固く、侵入者は――怪しい他所者すらも――厳しく扱われる。このことは交易に不利をもたらすとダルガーの職人達は不平をこぼしているが、ジアダは警備的な判断だと主張している。

シルムガル氏族

氏族の概観

 タルキールの五体の龍王の中でも、シルムガルに従う者は最も少ない――生きて従う者は。死者を数に入れるならば、彼の氏族員の数は並ぶものがない。破壊的、残酷、凶悪、シルムガルの手下たちは彼らの龍王をあらゆる手段をもって真似ている。氏族は紛れもなくその龍の残忍の面を体現し、そして彼らの象徴である龍の牙に表している。


アート:Nils Hamm

 彼らの価値はその移り気な龍王の気まぐれに左右されるとわかっているため、シルムガルの臣民たちは寵愛を得て罰を避けることに心を傾ける。権力の中枢にいる者達にとって暗殺と強要はありふれたもので、策略を用いては地位のために殺す。ナーガの通訳達はしばしば最初に、最も迅速に寵愛を得る。彼らはまた得たものを最初に悪用する。ナーガは巧妙に、気ままな通訳を行うことを心得てきた。だがシルムガルも自身を害し、操ろうとした者を自ら発見してきた。そして彼は数人の扇動的な個人を根こそぎにするために組織全体を粛清することをためらわない。彼らの龍王が一千年以上に渡って黄金の頂上に座してきたのには理由がある、それを心しながら氏族は上手くやっている。

龍王シルムガル

 龍王シルムガルは配下の龍や魔道士、死者の軍勢に囲まれて華やかな宮殿要塞の内に住まう。彼は下僕同士の戦いを刺激し、戦いそのものを楽しみながら結果として生じる死者の下僕を彼の軍勢へと加える。その絶えず増え続ける死者の軍勢は、戦いにおいてシルムガルへと最上の自信をもたらしており、事実彼の下僕達はその無慈悲な攻撃で限りなく悪名高い。


アート:Steven Belledin

 シルムガル最大の弱点は彼自身の退屈にある。心が残酷な計画に従事していない時、彼は偏執状態に沈むことで知られている。そこで、彼は敵対するコラガンに何もかも敗北するという考えに取りつかれる。一度彼が妄想の苦悶に入ると、彼に言葉を届かせることは誰にもほぼ不可能となる。彼は苦悩のままに従者達の大半を殺戮する。この致命的な結果を避けるため、彼の臣民達は残忍な祝祭や血塗れの儀式を創案する――何であろうと彼らの龍王の気を散らし、なだめ、喜ばせるために。

氏族の価値感

 シルムガルの氏族は力に重きをおく。氏族員にとって知識は力であり、そのため彼らは非常に賢い。ジェスカイのように、彼らはタルキールの氏族で最も教養がある氏族と自負している。彼らは失われた巻物や伝承の断片を集めて土地を捜し回る。氏族の屍術士たちは死者の群れに命令し、ジェスカイの寺院を略奪してシルムガルの聖職者達にとって価値のある物品を持ち帰らせては解読する。彼らは自分達の他の宝物を守るために役に立つ宝物までも奪っていくと知られている......

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氏族の構造

 残忍の氏族はシルムガルを頂点とし、その直下に彼の龍族をおく階級構造を持つ。人間の高僧達が次に、そして戦士下級が位置し、最下層を下僕と死者達が占める。

甘言の言語、龍詞 氏族内の、恵まれた人間達は彼らの主の要求を他へと伝えるために龍詞の基礎的理解を得ている。彼らはまたその龍を上機嫌に保つことは生き残る鍵であることを弁えており、そのため彼らはシルムガルへの賛美を歌う、精一杯出来得る限り。

龍王の付き人、人間 人間はシルムガル氏族の中で高い地位にあるが、それは祝福であり呪いでもある。龍の寵愛を得ることは華麗で権力を持つ人生を意味するが、その龍の移り気な寵愛によってその高慢な地位は移ろいやすいものとなっている。そのような恵まれた境遇からシルムガルの食道へと落ちるのは実に容易い。

不穏な同盟者、ラクシャーサ ラクシャーサは氏族の一部を占めるが、龍とそのデーモンとの関係は不穏な休戦状態にある。シルムガルは、その強力な魔術がラクシャーサを有用な同盟者にしていると、だがそれによって危険な敵にもなりうると知る程には賢い。その龍の偏執が彼自身を苦しめている。彼は常に怖れている、ラクシャーサがいつの日かその不実の牙をむくかもしれないと。

滑り動く者の階級、ナーガ ナーガは秘密裏に龍との近縁関係を主張しているが、彼らは実際には氏族において最小の権力しか持っていない。その比類なき屍術の力で、死者のナーガ、シディシが唯一、影響を及ぼす地位を保持している。脅しと揺さぶりに長ける彼女の能力と、他の政敵を始末したことでシディシはシルムガルの隣を確保し続け、龍へと話を囁いている――時に宥めるために、時に妨げるために。


アート:Lius Lasahido
氏族の魔術

 シルムガルの氏族は屍術とその派生魔術、萎縮や毒、腐敗といった暗黒の術に今も頼っている。氏族の魔術の大部分は屍の再利用からなる。消滅したスゥルタイはかつて、他氏族の捨てられた死体を使用し、疲れを知らない労働階級だけでなく死者の無限の軍勢を作り出してきた。シルムガル氏族もそれを続けていると同時に、屍術士たちはまた彼らの呪文攻撃を超自然的な力で強化する方法を見つけてきた。彼らは物理的な死骸だけでなく、死した肉体に残る、見えない生命力を刈り取る。

氏族内の主な役割

死致 敵を消耗させたい時、シルムガルはこの龍たちを呼ぶ。彼らが吐き出す毒の雲は軍勢を窒息させ、酸の涎のはその流れにある全てを溶かしてしまう。

龍語り 人間とナーガが占めるこの役職は氏族内で高い地位にある。彼らは龍詞の基礎を教えられ、龍王の通訳として振舞う。

屍術使い この屍術士の龍たちは死者の肉体に残るエネルギーを引き出し、彼らの恐ろしい魔術を強化する。

万全隊 他氏族の龍を狩るために特別に訓練された戦士と魔道士の精鋭部隊。一体以上の龍を殺したと言える者は僅かだが、数体を殺した者もまた存在する。

シブシグ シルムガルが戦士として使用するゾンビはシブシグと呼ばれている。蘇らせた死者とは異なり、シブシグは動かされている死骸である。シルムガルの高僧達の暗黒魔術と屍術使いの龍によってシブシグはよじれた暗黒の魔力を吹きこまれ、蘇らせた死骸よりも強化されている。

氏族の重要地点

マラング川要塞 シルムガルの権力の座は密林が山岳地帯と接する所にあるマラング川要塞にある。狭く急勾配の小路だけが彼の領土と龍王コラガンの地とを隔てている。ここで、山からの雪解け水が壮大なマラング川となる。シルムガルの龍たちと休みない死者がこの地を昼も夜も監視している。龍王はここで眠るが、彼のまどろみは滅多に音すら立てない。


アート:Jack Wang

カルシ宮殿 運河の上に広がる、豪奢な密林の楽園。ここで多くのシルムガルの学者と術師たちがその暗黒魔法を訓練している。

ウクドの死滅都市 ウクドの死滅都市はカン達の時代に、滅びたスゥルタイの貴族が住まうために設計された巨大な寺院である。今、そこはシルムガルの高位の龍たちの骨を埋める墓所となり、彼らを蘇らせることは禁じられている。そこはまたシルムガルの宝物庫となっており、しばしば龍の墓所を宝石と黄金の山で満たす。

グドゥル これらは巨大な三角州に点在する島々である。水中と島の両方にあらゆる種類の怪物と不死の忌まわしきものが潜み、無謀にもシルムガルの領土へと侵入しようとする船と侵入者から内なる水路を守っている。

グルマグ グルマグはシルムガルの領土を帯状に取り囲む、危険な沼沢地帯である。そこは龍王シルムガル軍の放浪するゾンビ、シブシグの大群に埋め尽くされている。彼らは敵対する龍王の死した兵や、シルムガルの怒りを買った氏族員の屍で構成されている。

氏族の他の人物

龍の口、シアラ 龍語りの長を務める人間の女性。彼女はシルムガルの布告と命令を宣言し、また他者へと彼女の主の機嫌を警告する。

完全無欠のザーシ シルムガルはこの特別な龍殺しの人間を、最も危険な敵を殺すために秘蔵している。ザーシの技術は龍王を失望させたことはないが、シルムガルは裏切りを恐れて高官の一部隊に彼女を監視させている。

アンデッドの大臣、シディシ この時間軸でシディシはカンではないが、同じほどに強い。生前、彼女はシルムガルの通訳の一人として富と影響力を手に入れ、しばしばシルムガルの命令を彼女にとって有益となるように通訳していた。彼女はシルムガルに直接対立したことはなかったが、彼女の操作に気付いた時、偏執の龍王は彼女を処刑した。

 だがシルムガルの氏族において、死は終わりを意味しない。龍王はシディシの残虐性を強力な武器として認識しており、彼女をより近くで制御できる、知性あるアンデッドの下僕として蘇らせた。死後の生において、シディシはナーガを結集させてシブシグのゾンビ多数の忠誠を得ることが可能であった。今のところは、彼女はかつて得ていた影響力を手にしており、今のところは、シルムガルの忠実な下僕となっている。


アート:Min Yum
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