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戦略記事

津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ

津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ 『破滅の刻』発売!新環境最新デッキ特集

津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ 『破滅の刻』発売!新環境最新デッキ特集

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 こんにちは!

 ついに新セット『破滅の刻』が発売されました。今週末にはグランプリ・京都2017 (シールド・ドラフト) が、来週末にはプロツアー『破滅の刻』 (ドラフト・スタンダード) の開催が予定されており、リミテッドが好きな方にとっても、スタンダードが好きな方にとっても大満足の2週間となっております。

 リミテッドはいつものように行弘 (賢) 君ががっつり特集してくれているので、こちらの記事では『破滅の刻』加入後のスタンダードをチェックしていきたいと思います。

 今週は例によってプロツアーの前哨戦とされる「StarCityGames.com Open Cincinnati」、そしてMagic Onlineで行われたプロツアー予選の中から注目のデッキやカードを見ていきましょう。

 まずは「StarCityGames.com Standard Open Cincinnati」のトップ8デッキからご覧ください。

「StarCityGames.com Standard Open Cincinnati」 トップ8デッキ

  • 優勝・「4色プレインズウォーカーコントロール」
  • 準優勝・「青白モニュメント」
  • 3位・「4色現出」
  • 4位・「黒緑エネルギーアグロ」
  • 5位・「青白モニュメント」
  • 6位・「赤単アグロ」
  • 7位・「黒単ゾンビ」
  • 8位・「ティムール・エネルギーアグロ」
 

 新環境らしく攻撃的なデッキの活躍が目立ちますが、『破滅の刻』加入により大幅に強化されたコントロールデッキが最終的に優勝を勝ち取りました。コントロールデッキは対応力に長けた軽量呪文と全体除去、そして1枚でゲームを決めてくれるフィニッシャーを手に入れたことで、これまで以上にバリエーション豊富かつ強力なデッキ構築が可能になっています。

 今週のトップバッターは、そんな新型のコントロールデッキからお送りしたいと思います。

(編集より:以下、「StarCityGames.com Standard Open Cincinnati」のデッキリストは StarCityGames.com より引用しております。)

「4色プレインズウォーカーコントロール」

Michael Hamilton - 「4色プレインズウォーカーコントロール」
StarCityGames.com Standard Open Cincinnati 優勝 / スタンダード (2017年7月15~16日)[MO] [ARENA]
3 《平地
2 《
2 《
4 《灌漑農地
2 《港町
4 《感動的な眺望所
3 《さまよう噴気孔
2 《尖塔断の運河
1 《異臭の池
4 《霊気拠点
-土地(27)-

1 《保護者、リンヴァーラ
1 《奔流の機械巨人
-クリーチャー(2)-
2 《マグマのしぶき
2 《削剥
2 《検閲
2 《本質の散乱
2 《蓄霊稲妻
2 《否認
1 《神聖な協力
3 《至高の意志
1 《光輝の炎
4 《天才の片鱗
2 《排斥
2 《燻蒸
1 《明日からの引き寄せ
2 《ドビン・バーン
1 《先駆ける者、ナヒリ
1 《秘密の解明者、ジェイス
1 《王神、ニコル・ボーラス
-呪文(31)-
3 《呪文捕らえ
3 《栄光をもたらすもの
1 《チャンドラの敗北
1 《払拭
1 《本質の散乱
1 《ジェイスの敗北
1 《俗物の放棄
1 《光輝の炎
1 《慮外な押収
2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン
-サイドボード(15)-

 前述の通り、『破滅の刻』により大きく力が向上したコントロールデッキ。《削剥》、《至高の意志》の登場によりこれまで以上に序盤の柔軟性が増した印象です。

 2マナや3マナの呪文の質はここ数年間で最高品質と言えるほどですが、課題としてはフィニッシャーの取捨選択が挙げられます。青いデッキのフィニッシャーと言えば《奔流の機械巨人》が一般的ですが、《削剥》が登場したことで以前と比べるとフィニッシャーとして、ブロッカーとしての信頼性は薄れてしまっています。

 そこでこのリストはフィニッシュ手段を「プレインズウォーカー」に置き換えることで、対戦相手の除去呪文を無効化する戦略が取られています。

 「プレインズウォーカー」を多用する都合上、《破滅の刻》や《啓示の刻》を採用できないという制限こそあるものの、環境全体として「プレインズウォーカー」への意識が低くなっていた隙をついた見事な戦略ですね。

 久しぶりに姿を見せた《ドビン・バーン》は、『カラデシュ』環境当時と比べて軽量呪文が強くなったので4ターン目まで戦場を更地にしておきやすいこと、後述の「赤単アグロ」の増加でライフ回復の需要が増したことで採用にいたったのだと思われます。

 《ドビン・バーン》だけでなく《神聖な協力》などでお手軽にライフ回復ができるのは白を選ぶ大きな理由になりえるので、今後も「赤単」系のデッキが蔓延するようであれば白の需要は増すことでしょう。

 サイドボードはコントロールデッキの定番と言える「オフェンシブサイドボード」に相応の枚数が割かれています。

 現在のスタンダードは、「サイドボード後に対戦相手の予想を上回ったプレイヤーが勝つ」と言っても過言ではないので、プロツアーでもプロプレイヤーたちがサイドボード後にどのような戦略を選択するのかにぜひご注目いただければと思います。

 

「青白モニュメント」

Jonathan Rosum - 「青白モニュメント」
StarCityGames.com Standard Open Cincinnati 準優勝 / スタンダード (2017年7月15~16日)[MO] [ARENA]
9 《平地
4 《
4 《港町
4 《大草原の川
1 《灌漑農地
3 《ウェストヴェイルの修道院
-土地(25)-

4 《スレイベンの検査官
4 《ハンウィアーの民兵隊長
4 《無私の霊魂
4 《往時の主教
4 《呪文捕らえ
4 《雲先案内人
-クリーチャー(24)-
4 《オケチラの碑
2 《金属の叱責
2 《停滞の罠
3 《黄昏 // 払暁
-呪文(11)-
2 《敏捷な妨害術師
3 《賞罰の天使
2 《断片化
3 《否認
2 《停滞の罠
3 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン
-サイドボード(15)-

 こちらは『破滅の刻』発売前に著しく勢力を伸ばしていた「青白モニュメント」。《オケチラの碑》による圧倒的な爆発力、そして《払暁》による持久力を併せ持つデッキで、前環境のベストデッキと評される逸材です。

 前環境終了時点での完成度が高かったこともあってか、今のところ新カードはほとんど採用されていませんが、《削剥》や《破滅の刻》といった天敵が加入しても2日目進出率で堂々の1位を記録し(参考記事)、それでいてトップ8に2人を送り込んでいるのですから、新環境でもこのデッキの躍進が止まることはなさそうです。

 

「赤単アグロ」

melancio - 「赤単アグロ」
Magic Online Standard PTQ 10位 / スタンダード (2017年7月15日)[MO] [ARENA]
15 《
4 《ラムナプの遺跡
4 《陽焼けした砂漠
-土地(23)-

4 《ボーマットの急使
4 《ファルケンラスの過食者
4 《村の伝書士
4 《地揺すりのケンラ
3 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ
4 《アン一門の壊し屋
2 《熱烈の神ハゾレト
-クリーチャー(25)-
4 《ショック
4 《焼夷流
4 《集団的抵抗
-呪文(12)-
2 《エルドラージの寸借者
3 《アクームの火の鳥
2 《砂かけ獣
4 《削剥
2 《グレムリン解放
2 《屍肉あさりの地
-サイドボード(15)-

 久々に登場した高速ビートダウン型の「赤単アグロ」。一見新カードは《地揺すりのケンラ》だけに見えるものの、このアーキタイプの力を大きく底上げしたのは《ラムナプの遺跡》です。

 ただの土地だと馬鹿にしてしまいがちですが、《陽焼けした砂漠》と合わせて平気で4~5点もっていく恐ろしいカード。これまでは序盤にクリーチャーで押し込んで最後の数点は火力呪文で、といった流れがお馴染みでしたが、この環境では最後の数点を土地だけで削り切ることが可能なんです。コントロールデッキでこれを妨害する手段は《不許可》くらいしかないため、とりわけコントロールデッキに対して頼りになるカードですね。

 サイドボードにはコントロールデッキ対策として、少しマニアックな《アクームの火の鳥》が採用されています。その際に追加の土地として投入される《屍肉あさりの地》は「砂漠」であるため《ラムナプの遺跡》の燃料としても機能しますし、状況次第では《奔流の機械巨人》の能力を無効化してしまう優れもの。

 クリーチャーを大量に並べてくる「青白モニュメント」に対しては苦戦を強いられそうなものの、サイドボードには《削剥》《グレムリン解放》といった《オケチラの碑》対策がしっかりと用意されていますし、それ以外のデッキに対しては土地を含めた多角的な攻撃手段でしっかりと渡り合える構成になっています。

 自分で使ってみた感触も良好でしたし、Magic Onlineでも日増しに存在感を増しているデッキなので、プロツアー本戦でも相当数の使用者がいると予想されます。

 

「黒緑エネルギーアグロ」

Plain Bagel - 「黒緑エネルギーアグロ」
Magic Online Standard PTQ 8位 / スタンダード (2017年7月15日)[MO] [ARENA]
6 《
4 《
4 《花盛りの湿地
3 《風切る泥沼
4 《霊気拠点
-土地(21)-

4 《光袖会の収集者
4 《牙長獣の仔
4 《歩行バリスタ
4 《巻きつき蛇
4 《夢盗人
2 《ピーマの改革派、リシュカー
3 《新緑の機械巨人
-クリーチャー(25)-
4 《霊気との調和
4 《顕在的防御
4 《致命的な一押し
2 《闇の掌握
-呪文(14)-
1 《闇の掌握
3 《大災厄
3 《ヤヘンニの巧技
2 《スカラベの責め苦
2 《不帰 // 回帰
2 《霊気圏の収集艇
1 《領事の旗艦、スカイソブリン
1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス
-サイドボード(15)-

 「黒緑エネルギーアグロ」が『破滅の刻』で得た新戦力は、《夢盗人》です。

 このデッキであれば2ターン目のクリーチャーで露払いをしつつ戦場に着地させることができますし、《ピーマの改革派、リシュカー》や《新緑の機械巨人》など相性が良いカードが多いため、《夢盗人》は遺憾なくその力を発揮することができます。

 与えたダメージの点数に等しい枚数の手札を捨てさせる能力の性質上、パワーを上げやすい緑のデッキで採用されることが多いカードですが、コントロールデッキのサイドボードなどにもうってつけの1枚と言えるでしょう。

 他に『破滅の刻』から加入したカードは《スカラベの責め苦》と《大災厄》です。

 前者はパーマネント展開力に乏しいコントロールデッキに対して毎ターン手札1枚かライフ3点かの損失を強いる強力なカードで、後者の《大災厄》は基本的には万能手札破壊呪文として機能しつつも、サイドボード後にありがちな「除去呪文を減らし過ぎて《竜使いののけ者》や《氷の中の存在》に負けてしまった」という展開をなくしてくれるナイスカード。

 このデッキは見た目以上に強化されている印象を受けましたが、その反面でデッキ内のほとんどのカードを無効化する《厳粛》というキラーカードも登場してるので、《人工物への興味》などの対策カードはお忘れなく。

 

「4色現出」

Zan Syed - 「4色現出」
StarCityGames.com Standard Open Cincinnati 3位 / スタンダード (2017年7月15~16日)[MO] [ARENA]
4 《
2 《
1 《
1 《
4 《植物の聖域
1 《伐採地の滝
4 《花盛りの湿地
1 《風切る泥沼
4 《進化する未開地
-土地(22)-

4 《残忍な剥ぎ取り
4 《機知の勇者
4 《秘蔵の縫合体
4 《憑依された死体
1 《墓後家蜘蛛、イシュカナ
4 《老いたる深海鬼
-クリーチャー(21)-
4 《ウルヴェンワルド横断
4 《発生の器
3 《過去との取り組み
2 《巧みな軍略
4 《コジレックの帰還
-呪文(17)-
2 《不屈の追跡者
1 《刻み角
1 《膨らんだ意識曲げ
4 《致命的な一押し
2 《否認
2 《バントゥ最後の算段
1 《不帰 // 回帰
2 《最後の望み、リリアナ
-サイドボード(15)-

 最後は《機知の勇者》と《巧みな軍略》で安定性が増した「現出」デッキを。

 このデッキは《秘蔵の縫合体》と《憑依された死体》で継続的なプレッシャーを与えることを基本軸としつつ、そこに《老いたる深海鬼》と《コジレックの帰還》を合わせた絡め手で対戦相手を圧倒するデッキです。

 特に《憑依された死体》を墓地に落とす、またはそれを探しにいけるカードはこのデッキが欲していたものそのものですし、《機知の勇者》の「永遠」能力はおまけとしては十分すぎるほど。

 このリストは《残忍な剥ぎ取り》まで投入し爆発力に特化したブン周り仕様となっており、理想的な展開ができた場合はどんなデッキであれ圧倒できるほどのポテンシャルを秘めています。

 ただし、気掛かりな点としては他のデッキと比べて多少なりとも安定性が低いこと、そして《没収の曲杖》や《捲土 // 重来》といった墓地対策カードの採用率がそこそこ高いことの二点です。

 前者はアーティファクトなのでどんなデッキでも採用される可能性があり、後者は「赤緑ランプ」や「ティムール」系のデッキで少しずつ見かける機会が増えています。《没収の曲杖》を乗り越えるのは至難の業なので、このカードの採用率は「現出」デッキが活躍できるかどうかの生命線と言えそうです。

 

「今週の一押し~プレインズウォーカー・ミッドレンジ~」

Todd Stevens - 「プレインズウォーカー・ミッドレンジ」
StarCityGames.com Standard Open Cincinnati 35位 / スタンダード (2017年7月15~16日)[MO] [ARENA]
3 《
1 《
2 《
4 《植物の聖域
1 《伐採地の滝
2 《燃えがらの林間地
3 《尖塔断の運河
4 《霊気拠点
-土地(20)-

4 《導路の召使い
3 《牙長獣の仔
4 《ならず者の精製屋
2 《つむじ風の巨匠
1 《不屈の追跡者
2 《逆毛ハイドラ
2 《栄光をもたらすもの
-クリーチャー(18)-
4 《霊気との調和
4 《ニッサの誓い
1 《マグマのしぶき
4 《蓄霊稲妻
2 《削剥
1 《先駆ける者、ナヒリ
3 《反逆の先導者、チャンドラ
1 《炎呼び、チャンドラ
2 《王神、ニコル・ボーラス
-呪文(22)-
2 《不屈の追跡者
2 《マグマのしぶき
3 《否認
3 《熱病の幻視
2 《光輝の炎
1 《人工物への興味
1 《破滅の刻
1 《先駆ける者、ナヒリ
-サイドボード(15)-

 今週の一押しは至極真っ当な「ティムール・エネルギーアグロ」......に《先駆ける者、ナヒリ》と《王神、ニコル・ボーラス》の入ったミッドレンジデッキを。

 現状では《王神、ニコル・ボーラス》はフィニッシャーとして文句の付けどころがないと感じていますが、どのようなデッキで、どのような形で運用するのがベストなのかは解答が出ていません。

 このリストならば《導路の召使い》→《反逆の先導者、チャンドラ》から最速で4ターン目に出すことができますし、《ニッサの誓い》から《王神、ニコル・ボーラス》を導くことも可能です。

 個人的にもプロツアーで《王神、ニコル・ボーラス》がどのような使われ方をするのかに注目していますし、みなさんもぜひご自身なりの《王神、ニコル・ボーラス》デッキを完成させてみてください!

 

おわりに

 今週の「津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ」は以上です。今週の現環境は非常にバランスが良く、アグロ/ミッドレンジ/コントロール、どのアーキタイプにもチャンスがあるように思えます。

 だからこそデッキの選択やメタゲームの読み間違いは致命的になりやすいので、この度のプロツアーはいつも以上にメタゲームを読む力が重要になるのではないかと思っています。次回はプロツアー『破滅の刻』の結果をお届けする予定です。

 それでは、また次回の連載でお会いしましょう!

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