READING

戦略記事

津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ

津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ シーズン総決算!グランプリ・静岡/ポルトアレグレ特集

津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ シーズン総決算!グランプリ・静岡/ポルトアレグレ特集

kenjitsumura.jpg

 こんにちは! 晴れる屋の津村です。

 先週末に現環境の総決算となる「グランプリ・静岡2017春」と、「グランプリ・ポルトアレグレ2017」が開催されました。今週はそのふたつの大会をもとに、注目のデッキや主要デッキの変化を追っていきたいと思います。

 それでは、早速両グランプリでトップ8に残ったデッキをご覧ください。

グランプリ・静岡2017春 トップ8デッキ (2017年3月18~19日)

  • 優勝・「マルドゥ (白黒赤) ・バリスタ」
  • 準優勝・「マルドゥ・バリスタ」
  • 3位・「ティムール (青赤緑) ・タワー」
  • 4位・「マルドゥ・バリスタ」
  • 5位・「マルドゥ・バリスタ」
  • 6位・「マルドゥ・バリスタ」
  • 7位・「マルドゥ・バリスタ」
  • 8位・「ジャンド (黒緑赤) ・エルドラージ」

グランプリ・ポルトアレグレ2017 トップ8デッキ (2017年3月18~19日)

  • 優勝・「ティムール・タワー」
  • 準優勝・「マルドゥ・バリスタ」
  • 3位・「黒緑昂揚アグロ」
  • 4位・「黒緑エネルギーアグロ」
  • 5位・「マルドゥ・バリスタ」
  • 6位・「4色サヒーリ」
  • 7位・「4色サヒーリ (昂揚型)」
  • 8位・「4色サヒーリ」
 

 例によってTier1デッキの活躍が顕著だった両大会。特に「マルドゥ」の勢いは凄まじく、静岡ではトップ8に6名を送り込む圧倒的な勝ち頭となっています。プロツアー『霊気紛争』で優勝した段階ですら手の付けられないデッキパワーを誇っていましたが、そこからさらにリストやサイドボードプランが洗練されていき、今ではまごうことなき環境最高のデッキとして王座に君臨しています。

「マルドゥ・バリスタ」

桐野 亮平 - 「マルドゥ・バリスタ」
グランプリ・静岡2017春 優勝 / スタンダード (2017年3月18~19日)[MO] [ARENA]
4 《平地
1 《
1 《
4 《感動的な眺望所
1 《鋭い突端
4 《秘密の中庭
1 《乱脈な気孔
2 《燻る湿地
4 《産業の塔
3 《霊気拠点
-土地(25)-

4 《スレイベンの検査官
4 《模範的な造り手
4 《屑鉄場のたかり屋
2 《異端聖戦士、サリア
3 《大天使アヴァシン
3 《歩行バリスタ
-クリーチャー(20)-
3 《致命的な一押し
4 《無許可の分解
4 《キランの真意号
4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン
-呪文(15)-
1 《保護者、リンヴァーラ
2 《ショック
1 《致命的な一押し
2 《苦い真理
2 《停滞の罠
1 《苦渋の破棄
1 《リリアナの誓い
2 《グレムリン解放
2 《先駆ける者、ナヒリ
1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス
-サイドボード(15)-

 グランプリ初参戦で堂々の初優勝を果たした桐野選手。デッキリストは「グランプリ・ニュージャージー2017」でオーウェン・ターテンワルド/Owen Turtenwald選手やマイク・シグリスト/Mike Sigrist選手たちが使用したリストにアレンジを加えたもので、メインデッキに採用された3枚もの《大天使アヴァシン》が特徴的な構成となっています。

 《大天使アヴァシン》のカードパワーはみなさんご存じの通りですが、以前とは違い《歩行バリスタ》を採用しているため任意のタイミングで「変身」しやすくなったこと、対戦相手の「プレインズウォーカー」の牽制にうってつけなこと、「4色サヒーリ」に対してマナを構えたまま動けることを理由に、ここ最近では「マルドゥ」の必須パーツとなっています。

 また、このリストもサイドボード後には「プレインズウォーカー・コントロール」へと変貌します。(参考) メタゲームの移り変わりが激しい昨今のスタンダードにおいて、それでもなお「マルドゥ」が勝ち続けられる理由は、やはりこのプランへの対応が難しいことが挙げられると思います。

 速攻の「ビートダウンプラン」か遅攻の「プレインズウォーカー・コントロールプラン」か。この読み合いを外してしまうとゲーム開始前からとんでもないディスアドバンテージを抱えてしまうことになりますが、これは「マルドゥ」のミラーマッチも例外ではありません。「プレインズウォーカー・コントロールプラン」が浸透してからというもの、長期戦での有利を確立すべく《苦い真理》が採用されるようになり、無駄カードになりやすい《グレムリン解放》は2枚が限界という風潮がありますが、それを逆手にとって「ビートダウンプラン」のままを選択するプレイヤーもいるからです。

 僕自身も「マルドゥ」ミラーマッチの練習中に《精神背信》なども試してみましたが、その際に対戦相手が《模範的な造り手》→《屑鉄場のたかり屋》と動いてきて絶望した経験があります。「ビートダウンプラン」と「プレインズウォーカー・コントロールプラン」の中間のようなサイドボーディングをするプレイヤーもいますし、ただただ長期戦に強くすればいいというわけではないのがこのマッチアップの複雑さであり面白さでもありますね。

 後手のプレイヤーは「プレインズウォーカー・コントロール」型にするほかありませんが、先手のプレイヤーにはどのプランにするかたくさんの選択肢があるので、みなさんもぜひ先手と後手でいろいろなプランをお試しいただければと思います。

 

「4色サヒーリ」

 「マルドゥ」ほどではないにしろ、「4色サヒーリ」も最後の最後まで存在感を放ち続けました。最近では《新緑の機械巨人》や《領事の旗艦、スカイソブリン》を採用した形なども散見されるようになりましたが、そんな中で最もセンセーショナルなリストは《歩行バリスタ》と《ウルヴェンワルド横断》を起用したこの形でしょう。

Patricio Roman - 「4色サヒーリ (昂揚型)」
グランプリ・ポルトアレグレ2017 7位 / スタンダード (2017年3月18~19日)[MO] [ARENA]
5 《
1 《
1 《
1 《平地
4 《植物の聖域
1 《獲物道
2 《尖塔断の運河
1 《感動的な眺望所
4 《霊気拠点
1 《進化する未開地
-土地(21)-

4 《導路の召使い
2 《歩行バリスタ
4 《ならず者の精製屋
3 《つむじ風の巨匠
4 《守護フェリダー
1 《墓後家蜘蛛、イシュカナ
1 《新緑の機械巨人
-クリーチャー(19)-
4 《ニッサの誓い
2 《霊気との調和
2 《ウルヴェンワルド横断
4 《蓄霊稲妻
2 《チャンドラの誓い
4 《サヒーリ・ライ
2 《反逆の先導者、チャンドラ
-呪文(20)-
2 《不屈の追跡者
2 《領事の権限
1 《払拭
1 《自然のままに
2 《否認
1 《金属の叱責
3 《グレムリン解放
2 《領事の旗艦、スカイソブリン
1 《先駆ける者、ナヒリ
-サイドボード(15)-

 《歩行バリスタ》はミラーマッチのコンボ対策カードとしてサイドボードに搭載される機会が増えていましたが、このリストではメインデッキから《歩行バリスタ》を採用しています。そしてそれに伴い「昂揚」を達成しやすくなったことに目を付け、《ウルヴェンワルド横断》から《墓後家蜘蛛、イシュカナ》や《新緑の機械巨人》を導くギミックをも取り入れています。

 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》、《新緑の機械巨人》はともに《守護フェリダー》・《サヒーリ・ライ》と相性が良く、以前にも増してコンボ以外で勝ち切れるように工夫されていることが分かります。特に《新緑の機械巨人》と《サヒーリ・ライ》の組み合わせは圧巻で、サブプランと呼ぶには惜しいほど。

 「グランプリ・静岡2017春」でも黒田 正城さん (最終成績22位) や松本 郁弥さん (同220位) といった有名プレイヤーが《新緑の機械巨人》入りのリストを使用して結果を残していますし、《歩行バリスタ》を筆頭にコンボ対策が豊富な現環境で、いかにして勝ち切るかにみなさんの創意工夫が表れています。

 なお、松本さんがグランプリで使用されたリストとサイドボードプランはこちらの記事でご覧いただけます。「4色サヒーリ」をご使用の方はぜひご一読ください。

 

「ティムール (青緑赤) ・タワー」

Victor Fernando Silva - 「ティムール・タワー」
グランプリ・ポルトアレグレ2017 優勝 / スタンダード (2017年3月18~19日)[MO] [ARENA]
3 《
3 《
2 《
4 《植物の聖域
2 《伐採地の滝
4 《尖塔断の運河
4 《霊気拠点
-土地(22)-

4 《奔流の機械巨人
-クリーチャー(4)-
4 《霊気との調和
4 《蓄霊稲妻
3 《否認
2 《手酷い失敗
2 《焼夷流
2 《自然廃退
1 《予期
4 《電招の塔
3 《コジレックの帰還
3 《虚空の粉砕
2 《不許可
4 《天才の片鱗
-呪文(34)-
2 《ナーナムの改革派
4 《牙長獣の仔
4 《不屈の追跡者
2 《払拭
1 《自然廃退
1 《否認
1 《虚空の粉砕
-サイドボード(15)-

 「グランプリ・ユトレヒト2017」でのトップ16入賞、Magic Online・RPTQ突破など、着々とステップアップを果たしてきた「ティムール・タワー」が、ついにグランプリ優勝を掴み取りました。

 このリストの特徴はふたつ。ひとつめはメインボードから「マルドゥ」対策ががっつり搭載されていること。

 コントロールデッキの常として、中盤はライフを犠牲にしてでも《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》用に打ち消し呪文を構えておく必要があるため、どうしてもダメージを受けてからターン終了時に除去という流れが多くなってしまいます。そういった状況を単体除去呪文だけで捌き切るのは困難ですが、《コジレックの帰還》ならば問答無用で盤面を一掃することが可能です。「マルドゥ」は3マナ域のクリーチャーも含めタフネス3以上のクリーチャーがほとんどいませんし、メインから《コジレックの帰還》を採用した「ティムール・タワー」のリストはあまりなかったので奇襲性も抜群。「マルドゥ」が多いからこその素晴らしいアプローチと言えます。

 ふたつめの特徴は、サイドボードに《電招の塔》に代わる勝ち手段が豊富に採用されている点です。

 「マルドゥ」の「プレインズウォーカーコントロール」プランしかり、今のスタンダードはこれまで以上にサイドボード後のプランニングが重要です。このリストではメインデッキがほぼノンクリーチャーである点を生かし、サイドボード後に古典的な「オフェンシブサイドボード」を用意しているというわけです。このプランを知らなければ対戦相手は除去呪文を減量してくるはずですし、どちらのクリーチャーもその隙をつくには十分すぎるほどの殺傷能力を秘めています。

 他に気になる点としては、これまでは《不許可》一辺倒だった3マナの打ち消し呪文のスロットに、ここにきて《虚空の粉砕》が加わるという小さな変化が。

 《不許可》には「プレインズウォーカー」の奥義を牽制するといった役割がありますが、《虚空の粉砕》には《屑鉄場のたかり屋》や能力起動の際に必要なクリーチャーであったり、《奔流の機械巨人》の対象を奪い去ることができるという利点があります。ここ最近では《霊気池の驚異》デッキが復調の兆しを見せるとともに《儀礼的拒否》も日の目を浴びつつあるので難しいところですが、それを考慮しないのであれば《虚空の粉砕》の方が環境に合っていると思います。

 

「黒緑アグロ」

Higuchi, Makoto - 「黒緑アグロ」
グランプリ・静岡2017春 11位 / スタンダード (2017年3月18~19日)[MO] [ARENA]
7 《
5 《
4 《花盛りの湿地
4 《風切る泥沼
4 《霊気拠点
-土地(24)-

4 《光袖会の収集者
4 《導路の召使い
4 《巻きつき蛇
3 《不屈の追跡者
2 《地下墓地の選別者
1 《ゲトの裏切り者、カリタス
4 《新緑の機械巨人
4 《歩行バリスタ
-クリーチャー(26)-
4 《致命的な一押し
2 《闇の掌握
1 《破滅の道
2 《霊気圏の収集艇
1 《領事の旗艦、スカイソブリン
-呪文(10)-
4 《精神背信
2 《自然廃退
2 《造命師の動物記
1 《殺害
1 《破滅の道
3 《鈍化する脈動
2 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス
-サイドボード(15)-

 いつのまにやらスタンダードは三すくみではなく、「マルドゥ」と「4色サヒーリ」の二強と言われるようになってしまいましたが、なんだかんだで最後まで輝きを放っていた「黒緑アグロ」。「グランプリ・ポルトアレグレ2017」ではトップ8に2名を、「グランプリ・静岡2017春」でもトップ32に2名を輩出しています。

 そんな中で最も目を引いたのが、サイドボードに《鈍化する脈動》を採用したこちらのリスト。

 このカードは「4色サヒーリ」対策として頭角を表してきた1枚。従来の「4色サヒーリ」対策カードといえば《領事の権限》などが一般的でしたが、《鈍化する脈動》の強みは《守護フェリダー》+《サヒーリ・ライ》コンボだけでなく、《つむじ風の巨匠》の「飛行機械・トークン」すらをも無効化できる点です。また、《鈍化する脈動》は《領事の権限》とは違い《自然のままに》で破壊されることもありません。

 《鈍化する脈動》はこのデッキに限らず多くのデッキのサイドボードにフィットするカードですし、コンボも《つむじ風の巨匠》をも無視できるならばゲーム運びが楽になるデッキは多いと思うので、今後さらに露出の機会が増えることでしょう。

 

今週の一押し ~「マルドゥ・トークン」~

Kobayashi, Tomoya - 「マルドゥ・トークン」
グランプリ・静岡2017春 9位 / スタンダード (2017年3月18~19日)[MO] [ARENA]
2 《平地
1 《
3 《
4 《感動的な眺望所
2 《鋭い突端
4 《秘密の中庭
3 《乱脈な気孔
2 《凶兆の廃墟
1 《燻る湿地
2 《産業の塔
1 《ウェストヴェイルの修道院
-土地(25)-

4 《屑鉄場のたかり屋
2 《永代巡礼者、アイリ
3 《ピア・ナラー
3 《不死の援護者、ヤヘンニ
1 《異端聖戦士、サリア
3 《大天使アヴァシン
3 《歩行バリスタ
-クリーチャー(19)-
4 《致命的な一押し
4 《無許可の分解
1 《苦渋の破棄
3 《スラムの巧技
4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン
-呪文(16)-
1 《ゲトの裏切り者、カリタス
1 《領事の権限
2 《精神背信
1 《苦渋の破棄
1 《リリアナの誓い
1 《苦い真理
1 《光輝の炎
2 《燻蒸
2 《グレムリン解放
1 《隔離の場
1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス
1 《死の宿敵、ソリン
-サイドボード(15)-

 最後は13勝2敗ラインで惜しくもトップ8を逃してしまった「マルドゥ・トークン」を。このデッキのチャームポイントは、《不死の援護者、ヤヘンニ》さんです。

 これまでは見かける機会の少なかったカードですが、《ピア・ナラー》、《スラムの巧技》、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》から生み出される無数のトークンを率いる《不死の援護者、ヤヘンニ》は不死の名に違わぬ攻防一体のクリーチャーです。

 当然ながら何度でも蘇る《屑鉄場のたかり屋》との相性も抜群ですし、一度成長が始まってしまった《不死の援護者、ヤヘンニ》を止めることは非常に困難です。《不死の援護者、ヤヘンニ》にとって天敵である《闇の掌握》が「黒緑アグロ」の衰退に連れて環境から数を減らしているのも大きな追い風で、現環境でこのカードを効率よく対処できるのは《霊気溶融》や《苦渋の破棄》といったごくわずかなカードのみとなっています。

 なお、このデッキとはあまり関係がなく申し訳ありませんが、Magic Onlineで遊んでいる最中に《不死の援護者、ヤヘンニ》+《マリオネットの達人》という極悪コンボに瞬殺されたこともあります。

master.jpg

 《不死の援護者、ヤヘンニ》のポテンシャルはかなりのものがあると思いますので、《不死の援護者、ヤヘンニ》やトークンデッキがお好きな方はぜひこちらの「マルドゥ・トークン」や《マリオネットの達人》コンボをお試しください。

 

おわりに

 今週の「津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ」は以上です。執筆時間の都合などもあり掲載が叶いませんでしたが、「グランプリ・静岡2017春 イベントカバレージページ」内には「黒赤エルドラージ」や「バント・《霊気池の驚異》」のデッキテクなど、観戦記事以外にも注目の記事が盛りだくさんとなっております。

 また、トップ32デッキリストにも「白単エルドラージ」や「赤緑エネルギー」など魅力的なデッキがたくさんございましたので、お時間のある方はそちらの方もお見逃しなく!

 それでは、また次回の連載でお会いしましょう!

  • この記事をシェアする

RANKING

NEWEST

CATEGORY

BACK NUMBER

サイト内検索