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津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ プロツアー『霊気紛争』特集
津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ プロツアー『霊気紛争』特集
こんにちは! 晴れる屋の津村です。
初めての「チームシリーズ」が実施されたプロツアー『霊気紛争』が幕を閉じました。強豪チームがひしめく中で、見事にトップの座を射止めたのは日本人だけで構成された「Musashi」と、アジア有数のスター選手を主軸とした「MTG Mint Card」でした。
どちらのチームもすばらしいアベレージですが、そんな中僕たち「Last Samurai」は6名中4名が初日落ちという惨憺たる結果に終わってしまいました。今回の敗戦をチームメイトともども深く反省しておりますので、「Last Samurai」の次回作、「侍たちの復讐」にご期待ください。
さて、少し脱線してしまいましたが、ここからはいつものようにプロツアーの結果を追っていきましょう。事前の予想では「黒緑アグロ」と「サヒーリコンボ (コピーキャット)」の2強環境になるのではないかと危惧されていましたが、実際にはどのような結果が待ち受けていたのでしょうか?
まずはトップ8に残ったデッキをご覧ください。
プロツアー『霊気紛争』 トップ8デッキ (2017年2月3~5日)
- 優勝・「マルドゥ (赤白黒) 機体」
- 準優勝・「マルドゥ (赤白黒) 機体」
- 3位・「4色機体」
- 4位・「4色機体」
- 5位・「4色機体」
- 6位・「4色機体」
- 7位・「黒緑『昂揚』アグロ」
- 8位・「ジャンド (赤緑黒) エネルギーアグロ」
燦然と輝く「機体」の二文字。3色と4色という違いこそあれど、今大会で最も印象的な活躍を披露したのは環境最速と評されるこのビートダウンデッキでした。
「機体」が勝った3つの要因
「機体」デッキがこれほどまでに大成した理由は、(1)環境内でも屈指のトップスピード、(2)多角的な攻撃手段、(3)理想的な展開がジェスカイサヒーリコンボに強い、この3点です。
ひとつめのトップスピードに関しては、予選ラウンドや決勝ラウンドの放送をご覧いただいた方ならお分かりでしょう。《模範的な造り手》から始まる圧倒的な攻撃力は他のデッキの追随を許しません。
ふたつめの多角的な攻撃は、以前の環境から「機体」デッキが持ち味とするところです。《屑鉄場のたかり屋》、「機体」、「プレインズウォーカー」擁する「機体」デッキには全体除去呪文は効果が薄いとされており、同じビートダウンデッキであるはずの「黒緑アグロ」とは対策の仕方が大きく異なります。
そして最後の「理想的な展開がジェスカイ・サヒーリコンボに強い」という項目が、「機体」デッキが躍進した最大の要因だと思われます。軽くて優秀なクロック (ダメージ源) を持つこのデッキは、あっという間に「サヒーリコンボ」以外では逆転不可能な盤面を作り上げることが可能です。そのうえで、1マナと構えるのが容易な《ショック》、環境最高の除去である《無許可の分解》がコンボの達成を阻むのです。「サヒーリコンボ」デッキに勝つデッキを作るだけならそれほど難しいことではないかもしれませんが、「機体」デッキが優秀なのは自身の最高の動きが「サヒーリコンボ」デッキに強力なだけでなく、それが環境で最高かつ最速であるほどに強力である点です。
以上が今大会で「機体」デッキが大活躍した主な理由だと思われます。他のデッキに比べてマークが甘かったのも勝率が高かった秘訣かもしれませんね。さて、ここからは実際のデッキリストをご覧いただきましょう。
マルドゥ機体
3 《平地》 3 《山》 4 《感動的な眺望所》 1 《鋭い突端》 4 《秘密の中庭》 1 《凶兆の廃墟》 1 《燻る湿地》 4 《産業の塔》 2 《霊気拠点》 -土地(23)- 4 《スレイベンの検査官》 4 《模範的な造り手》 3 《発明者の見習い》 4 《屑鉄場のたかり屋》 4 《経験豊富な操縦者》 2 《ピア・ナラー》 1 《異端聖戦士、サリア》 -クリーチャー(22)- |
2 《ショック》 4 《無許可の分解》 4 《キランの真意号》 2 《霊気圏の収集艇》 3 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -呪文(15)- |
1 《発明者の見習い》 2 《無私の霊魂》 1 《致命的な一押し》 1 《断片化》 1 《空鯨捕りの一撃》 2 《グレムリン解放》 1 《耕作者の荷馬車》 2 《領事の旗艦、スカイソブリン》 2 《反逆の先導者、チャンドラ》 1 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 1 《鋭い突端》 -サイドボード(15)- |
予選ラウンドの構築戦を10戦全勝 (!) から、決勝戦でも勢いそのままに優勝を決めたルーカス・エスペル・ベルサウド/Lucas Esper Berthoud選手。決勝戦では同じコミュニティで同系統のリストを駆るマルシオ・カルヴァリョ/Marcio Carvalho選手と対峙しており、「マルドゥ機体」の、そしてブラジル/ポルトガルチームの好調を印象付ける結果となりました。メインデッキは《発明者の見習い》まで採用されており、他のリストよりも序盤の展開が安定している点が特徴です。
また、個人的に印象に残った点として、トップ8に残った「機体」デッキは《霊気拠点》の枚数が抑えられていることが挙げられます。
以前の環境では《蓄霊稲妻》と組み合わせることで安定した色マナ供給源として機能していた《霊気拠点》ですが、除去呪文が《ショック》に移り変わったため今ではそれが難しくなっています。僕も調整段階で「機体」デッキを少しはプレイしていたものの、前環境の「《霊気拠点》は4枚」というイメージに引きずられてしまいどうしてもこの土地を削るという判断に踏み切ることができませんでした。
ベルサウド選手のリストでは、これまでの「機体」デッキでは決してお目にかかることのなかった《凶兆の廃墟》や《燻る湿地》が採用されており、マナベースひとつをとっても大きな違いが出るのだと感心してしまいました。
前述の通り、このデッキは全体除去も苦にすることもありませんし比較的弱点の少ないデッキではありますが、攻撃力に長ける一方で防御力に不安の残るアーキタイプなので、今後激増するであろうミラーマッチをいかにして乗り切るかが重要になりそうです。ベルサウド選手いわく、ミラーマッチはサイドボード後に対戦相手よりも少し重めの構成にすることを意識すべきとのこと。英語ではありますが、ご本人によるサイドボーディングプラン付きの大会レポートも掲載されておりますので、これからこのデッキを使用してみようという方はぜひそちらにも目を通してみてください。
4色機体
3 《平地》 4 《感動的な眺望所》 4 《秘密の中庭》 4 《尖塔断の運河》 4 《産業の塔》 3 《霊気拠点》 -土地(22)- 4 《スレイベンの検査官》 4 《模範的な造り手》 1 《発明者の見習い》 4 《屑鉄場のたかり屋》 4 《経験豊富な操縦者》 2 《模範操縦士、デパラ》 -クリーチャー(19)- |
4 《致命的な一押し》 1 《発火器具》 4 《無許可の分解》 4 《キランの真意号》 3 《耕作者の荷馬車》 3 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -呪文(19)- |
2 《呪文捕らえ》 2 《断片化》 2 《ショック》 3 《金属の叱責》 2 《苦い真理》 1 《空鯨捕りの一撃》 2 《燻蒸》 1 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -サイドボード(15)- |
細かく区分するとトップ8で最多勢力となった「4色機体」。青を足す理由はもちろんサイドボード後の打ち消し呪文です。
懸念されるマナベースの問題は《山》が《尖塔断の運河》になった程度でそこまでの負担はありませんし、《耕作者の荷馬車》のおかげで中盤以降の色マナ供給はこちらのバージョンの方が安定しています。これから「ジェスカイ・サヒーリコンボ」が減ってミラーマッチや「黒緑アグロ」が増えるのであれば《ショック》よりも《致命的な一押し》が優先される機会も増えるでしょうが、土地だけで安定して黒マナを捻出するのは難しいため、その際にはぜひ《耕作者の荷馬車》も採用したいところ。
現状ではビートダウンデッキが多いため打ち消し呪文が必要かどうかは判断が分かれますが、もしも《霊気池の驚異》や《金属製の巨像》などのコンボデッキが登場するようであれば「4色機体」の本領発揮となるでしょう。
黒緑エネルギーアグロ
6 《森》 4 《沼》 4 《花盛りの湿地》 3 《風切る泥沼》 4 《霊気拠点》 -土地(21)- 4 《緑地帯の暴れ者》 4 《光袖会の収集者》 4 《牙長獣の仔》 4 《歩行バリスタ》 4 《巻きつき蛇》 4 《ピーマの改革派、リシュカー》 4 《新緑の機械巨人》 -クリーチャー(28)- |
4 《霊気との調和》 3 《致命的な一押し》 2 《闇の掌握》 2 《霊気圏の収集艇》 -呪文(11)- |
1 《害悪の機械巨人》 1 《致命的な一押し》 3 《精神背信》 3 《造命師の動物記》 2 《殺害》 1 《人工物への興味》 1 《領事の旗艦、スカイソブリン》 2 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》 1 《生命の力、ニッサ》 -サイドボード(15)- |
9勝1敗を記録した行弘 (賢) 君を筆頭に、なべ (渡辺 雄也) 君やローリーさんも使用した「黒緑エネルギーアグロ」。プロツアー前から存在していたアーキタイプではありますが、プロツアーで一気に評価を高めたカードが《緑地帯の暴れ者》と《造命師の動物記》です。
前者は1マナとは思えないスペックの持ち主で、とりわけ《模範的な造り手》や《屑鉄場のたかり屋》の入った「機体」系のデッキ相手に重宝します。3ターン目の2回行動であったり、《ピーマの改革派、リシュカー》を出したターンに余ったマナでキャストできたりと、その軽さが際立つ展開は多いです。
後者の《造命師の動物記》は対コントロールからミラーマッチまで、実に多くのマッチアップで役に立つ1枚。一度設置に成功すれば息切れすることはなくなりますし、《先駆ける者、ナヒリ》の[-2]能力で対処されない点も評価できます。
サイズで勝ることから「機体」デッキに多少の有利が付き、「機体」デッキの隆盛に伴いメインに全体除去を搭載したデッキが数を減らすと予想されるため、今後のさらなる活躍に期待ができるデッキです。
赤黒アグロ
10 《山》 5 《沼》 4 《凶兆の廃墟》 4 《燻る湿地》 -土地(23)- 4 《ボーマットの急使》 4 《発明者の見習い》 4 《屑鉄場のたかり屋》 3 《殺戮の先陣》 4 《速接会の技師》 3 《ピア・ナラー》 -クリーチャー(22)- |
2 《ショック》 4 《焼夷流》 3 《無許可の分解》 4 《キランの真意号》 2 《反逆の先導者、チャンドラ》 -呪文(15)- |
2 《ゲトの裏切り者、カリタス》 3 《致命的な一押し》 4 《精神背信》 2 《集団的蛮行》 2 《街の鍵》 2 《反逆の先導者、チャンドラ》 -サイドボード(15)- |
初日終了時に大きな話題となっていたデッキが「赤黒アグロ」。各種「機体」デッキに勝るとも劣らないほどのトップスピードを持ち、それでいて2色ならではの堅実なマナベースが魅力的なデッキです。
基本的にはこの2種類でアーティファクトクリーチャーをバックアップし、最後は火力呪文で止めを刺すのが理想の展開。
高速ビートダウンと的確なインスタントタイミングの除去呪文、そして多角的な攻撃手段と、「機体」デッキに似通った性質を持つデッキですが、懸念されるのは「機体」デッキ以上に守りに難がある点です。ただし、それを差し引いても2色の安定性は魅力的に映りますし、デッキの長所は損なわれてしまうものの、メインボードに《致命的な一押し》を採用したりすれば決して対応できないことはないと思います。
「赤黒」にはゾンビ型もありますし、他のデッキと比べてまだ研究の余地が多く残されている印象を受けているので、今後の伸びしろに期待できます。
スゥルタイ昂揚
3 《沼》 1 《森》 2 《島》 4 《花盛りの湿地》 4 《窪み渓谷》 2 《植物の聖域》 2 《伐採地の滝》 2 《霊気拠点》 4 《進化する未開地》 -土地(24)- 2 《不屈の追跡者》 2 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》 3 《奔流の機械巨人》 1 《害悪の機械巨人》 -クリーチャー(8)- |
4 《ウルヴェンワルド横断》 2 《致命的な一押し》 3 《過去との取り組み》 3 《発生の器》 3 《闇の掌握》 1 《否認》 2 《不許可》 2 《知恵の拝借》 2 《餌食》 3 《天才の片鱗》 1 《圧倒的な否定》 2 《最後の望み、リリアナ》 -呪文(28)- |
4 《残忍な剥ぎ取り》 1 《ゲトの裏切り者、カリタス》 1 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》 2 《致命的な一押し》 1 《否認》 1 《精神背信》 1 《人工物への興味》 1 《知恵の拝借》 1 《餌食》 1 《圧倒的な否定》 1 《ヤヘンニの巧技》 -サイドボード(15)- |
《約束された終末、エムラクール》の禁止とともに、多くの人が諦めたであろう《墓後家蜘蛛、イシュカナ》を使ったコントロールデッキで、見事に8勝2敗という好成績を収めたのが石原 隼さん。
このデッキの魅力はとにかく長期戦に強くて楽しいこと。《奔流の機械巨人》→《過去との取り組み》→墓地にある《奔流の機械巨人》や《墓後家蜘蛛、イシュカナ》を回収、という動きは一度味わうとやみつきになること間違いなし!
間髪入れず連打される《奔流の機械巨人》の威力は相当なもので、劣勢の盤面からでもあれよあれよと逆転できるのがこのデッキの魅力です。ミッドレンジやコントロールデッキがお好きな方であれば満足度120%のデッキなので、《墓後家蜘蛛、イシュカナ》を使いたかったけど諦めてしまっていた方はぜひこのデッキをお試しください。
おわりに
今週の「津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ」は以上です。「機体」デッキのあまりの活躍っぷり、そして完成度の高さに驚いてしまいましたが、追われる立場となった今週からどのようにメタゲームが動くのか非常に楽しみです。今週から各地でスタンダードのグランプリやプロツアー予備予選が開催されますので、次回の記事ではそれらの結果を特集したいと思います。
それでは、また次回の連載でお会いしましょう!
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