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津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
第101回:士気溢れる挑戦者たち?アヴァシンの帰還参入後のデッキ分析
読み物
津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
2012.05.10
第101回:士気溢れる挑戦者たち~アヴァシンの帰還参入後のデッキ分析
こんにちはー。
ついに『アヴァシンの帰還』がリリースされましたね。例によってMagic Online(以下MO)でのリリースはもう少しばかり先の話になるのですが、僕のようにMOを主戦場にしているプレイヤーにとって、この現実世界とのタイムラグは本当にもどかしい時間帯です。おそらく、僕と同じような想いをしていらっしゃる読者の方々も多いことかと思いますが、そんなみなさんに朗報です!
なんとなんと、10月に発売予定の『ラヴニカへの回帰』からは、現実世界で発売された翌週からMOでも『ラヴニカへの回帰』のリリースが開始されちゃうんです。
参考:Shrinking the Gap(英語記事)
今までは現実世界とMO界では約2~3週間ほどのタイムラグがありましたが、『ラヴニカへの回帰』からはほぼ同時期にリリースされるようです。これでMOプレイヤーも現実世界に後れをとることはなくなるでしょうし、記事を書く僕にとっても非常にありがたい変更と言えますね。
さて、少し未来の話題を先取りしすぎてしまいましたが、ここからは『アヴァシンの帰還』加入後のスタンダード環境を分析していきます。
今週はいち早く行われたイベントとして、「StarCityGames.com オープントーナメント・プロビデンス」と「PWC第328回大会」の結果を見ていきたいと思います。
まずは「StarCityGames.com オープントーナメント・プロビデンス」の上位デッキを見ていきましょう。
「赤緑ビートダウン」
10 《森》 3 《山》 4 《銅線の地溝》 4 《根縛りの岩山》 2 《ケッシグの狼の地》 -土地(23)- 4 《極楽鳥》 4 《ラノワールのエルフ》 4 《絡み根の霊》 3 《ウルフィーの報復者》 4 《高原の狩りの達人》 2 《地獄乗り》 2 《ファイレクシアの変形者》 1 《酸のスライム》 -クリーチャー(24)- |
4 《感電破》 1 《火葬》 4 《緑の太陽の頂点》 3 《戦争と平和の剣》 1 《饗宴と飢餓の剣》 -呪文(13)- |
1 《夜明けのレインジャー》 1 《士気溢れる徴集兵》 3 《電弧の痕跡》 2 《帰化》 1 《古えの遺恨》 2 《魔力のとげ》 1 《高まる残虐性》 2 《攻撃的な行動》 1 《腐食の突風》 1 《原初の狩人、ガラク》 -サイドボード(15)- |
新環境最初の「StarCityGames.com オープントーナメント」を制したのは、『アヴァシンの帰還』で更に力を付けた「赤緑ビートダウン」でした。以前お伝えした(参考:第99回)このデッキの課題として、3マナ域のクリーチャーの薄さがありましたが、《ウルフィーの報復者》は見事にそれを解消してくれたようです。
「再生」ゆえに《破滅の刃》や《審判の日》など、環境を代表する除去カードの多くが効かないこのカード。
「瞬速」持ちということで予想外のタイミングにキャストされることも多いでしょうし、戦場に《戦争と平和の剣》や《ケッシグの狼の地》がある場合は、そのままゲームを決めてしまうほどの働きをしてくれることでしょう。
終了フェイズにキャストすることで対戦相手に対応を迫ることができますし、そこで相手がマナを使えば自身のターンで《地獄乗り》や《饗宴と飢餓の剣》などの致命的なカードを通しやすくなるので、カウンター呪文に強いのも「瞬速」の長所のひとつです。
「赤緑ビートダウン」はクリーチャータイプがばらけているので《魂の洞窟》を使いづらいですし、依然として「青白Delver」はTier1に位置しているので、エンド前に揺さぶりをかけられるというのは非常に重要なポイントですね。「再生」持ちのアタッカー兼ブロッカーは、ミラーマッチで与えるインパクトも大きいので、今後このカードが増えるようであれば、《火葬》の増量を検討してもいいでしょう。
他の新戦力は、サイドボードに潜む《士気溢れる徴集兵》ですね。いろいろな方の日記を拝見していると、あちらこちらで「最終奥義の使える《滞留者ヴェンセール》や《月の賢者タミヨウ》を奪われて負けた」なんて事態が多発しているようですし、『アヴァシンの帰還』全体で見ても、文句なしのトップレアと言っていいでしょう。
Dustinさんは《士気溢れる徴集兵》と《攻撃的な行動》を使い分けていますが、これは主に対「赤緑《ケッシグの狼の地》」を意識してのことだと思われます。
「赤緑《ケッシグの狼の地》」戦はマナクリーチャーが生き残りづらいので、それを加味すると《攻撃的な行動》を優先してもいいでしょうが、それ以外の観点から見ると、《ギデオン・ジュラ》などを問答無用で奪える《士気溢れる徴集兵》に軍配が上がります。
そのため、この枠はどのデッキを強く意識するか、またはメインの土地の総数で決めるといいと思います。個人的には土地を24枚にして《士気溢れる徴集兵》を3枚にしたいですね。
「赤緑《ケッシグの狼の地》」は間違いなくメタゲームの大本命ですが、最近では《大修道士、エリシュ・ノーン》や《ギデオン・ジュラ》を見かける回数も相当に増えているため、《士気溢れる徴集兵》はぜひとも多めに採用したいところ。
そういった大味なデッキが増える兆候があれば、《士気溢れる徴集兵》はメインから採用してもいいくらいのカードです。
たまに自軍のクリーチャーに「速攻」を付けたりだとか、土地をアンタップしてマナを増やし、《戦争と平和の剣》を装備してアタック、なんて動きができるのもお忘れなく。
「赤緑《ケッシグの狼の地》」
5 《森》 4 《山》 4 《銅線の地溝》 4 《根縛りの岩山》 4 《墨蛾の生息地》 3 《魂の洞窟》 2 《ケッシグの狼の地》 -土地(26)- 1 《極楽鳥》 4 《高原の狩りの達人》 4 《真面目な身代わり》 1 《酸のスライム》 4 《原始のタイタン》 3 《業火のタイタン》 -クリーチャー(17)- |
4 《太陽の宝球》 4 《不屈の自然》 2 《鞭打ち炎》 4 《金屑の嵐》 2 《緑の太陽の頂点》 1 《小悪魔の遊び》 -呪文(17)- |
1 《解放の樹》 3 《士気溢れる徴集兵》 2 《古えの遺恨》 1 《帰化》 1 《忌むべき者のかがり火》 2 《殴打頭蓋》 2 《原初の狩人、ガラク》 2 《解放された者、カーン》 1 《魂の洞窟》 -サイドボード(15)- |
既存のデッキの中で、最も《魂の洞窟》の恩恵を受けたデッキ。それはこの「赤緑《ケッシグの狼の地》」でしょう。もう少し時間が経ってメタゲームが固まらなければ、メインに何枚にすべきかまでは判断しかねますが、「青白Delver」過多の現状なら、少なくとも3枚はメインから採用しておきたいですね。
このデッキはメインデッキには《魂の洞窟》くらいしか新カードがありませんが、もともと完成度の高かったデッキですし、「青白Delver」に対する武器を手に入れただけでも十分に強化されたと言えます。
サイドボードに目を向けてみれば、ここでも《士気溢れる徴集兵》が使われていることに注目です。ミラーマッチで各種タイタンを奪う動きももちろん強力ですが、《原初の狩人、ガラク》を奪って[-3]能力を使ったり、《解放された者、カーン》を奪って自身を追放したりと、やはり《攻撃的な行動》にはない魅力が目を引きます。
それと《士気溢れる徴集兵》は、このデッキにおいても《大修道士、エリシュ・ノーン》対策として機能します。《大修道士、エリシュ・ノーン》さえ奪ってしまえば、戦場に眠っていた複数の《墨蛾の生息地》で突然の毒殺死も十分に起こりえますし、今までは《内にいる獣》が担っていた役割を、むしろそれ以上の役割を《士気溢れる徴集兵》には期待できますね。
残る新カードは《忌むべき者のかがり火》。《鞭打ち炎》や《金屑の嵐》とは違い、自軍に影響を及ぼさない点は加点対象ではありますが、キャスティングコストがそれ相応に重いため、追加の《鞭打ち炎》、または《火柱》なんかにしてもいいかもしれませんね。
「白赤人間ビートダウン」
13 《平地》 2 《山》 4 《断崖の避難所》 4 《魂の洞窟》 1 《処刑者の要塞》 -土地(24)- 4 《教区の勇者》 2 《宿命の旅人》 3 《スレイベンの守護者、サリア》 3 《稲妻のやっかいもの》 3 《嵐血の狂戦士》 3 《銀刃の聖騎士》 3 《ミラディンの十字軍》 2 《悪鬼の狩人》 4 《刃砦の英雄》 -クリーチャー(27)- |
4 《清浄の名誉》 2 《町民の結集》 3 《戦争と平和の剣》 -呪文(9)- |
2 《士気溢れる徴集兵》 3 《天界の粛清》 2 《Revoke Existence》 2 《漸増爆弾》 3 《Oblivion Ring》 3 《機を見た援軍》 -サイドボード(15)- |
『アヴァシンの帰還』の登場により誕生した「白赤人間ビートダウン」が早くも結果を残しました。序盤に赤マナを必要とするカードをあまり入れたくなかったので、先週紹介させていただいたリストには《嵐血の狂戦士》を採用していませんでしたが、2ターン目に出るパワー3クリーチャーは大きな魅力なので、これもまた検討の余地がありそうです。
ただし《嵐血の狂戦士》を入れる場合は《宿命の旅人》を4枚にしたりして、極力2ターン目に「狂喜」できる確率を高めておきたいですね。
あとはサイドボードの《天界の粛清》についてなんですが、近頃では「黒青ゾンビ」デッキが大幅な減少傾向にあるので、そろそろ数を減らしても良い時期だと思います。「黒青ゾンビ」がTier1だった頃はメタゲームの本命デッキ、そしてデッキによっては致命的な《死の支配の呪い》の両者に対処できる優秀なカードでしたが、今はどちらも共に数を減らしてきているので、「赤緑《ケッシグの狼の地》」に強い《天使の運命》、または追加の《士気溢れる徴集兵》にしてもいいでしょう。
「ナヤ(赤緑白)《出産の殻》」
6 《森》 4 《平地》 2 《山》 4 《剃刀境の茂み》 4 《陽花弁の木立ち》 1 《ガヴォニーの居住区》 1 《処刑者の要塞》 -土地(22)- 4 《極楽鳥》 1 《アヴァシンの巡礼者》 2 《ヴィリジアンの密使》 2 《絡み根の霊》 3 《刃の接合者》 3 《悪鬼の狩人》 1 《国境地帯のレインジャー》 4 《修復の天使》 3 《ファイレクシアの変形者》 1 《高原の狩りの達人》 2 《士気溢れる徴集兵》 1 《酸のスライム》 1 《ウルフィーの銀心》 -クリーチャー(28)- |
3 《雲隠れ》 3 《緑の太陽の頂点》 4 《出産の殻》 -呪文(10)- |
1 《ヴィリジアンの堕落者》 1 《石角の高官》 1 《酸のスライム》 3 《精神的つまづき》 2 《天界の粛清》 3 《忘却の輪》 2 《ミミックの大桶》 2 《戦争と平和の剣》 -サイドボード(15)- |
最後は《修復の天使》と《雲隠れ》の「明滅」能力をフィーチャーした「《出産の殻》」デッキを。
もともと「戦場に出た時」、または「戦場を離れた時」に何かしらの能力が誘発するクリーチャーの多い「《出産の殻》」にとって、「明滅」能力はデッキにぴったりのものですが、そこでこのデッキの良いアクセントになっているのが《士気溢れる徴集兵》です。
《雲隠れ》のご先祖様の《ちらつき》《一瞬の瞬き》などは、クリーチャーが戦場に出直す際に「オーナーの」コントロール下で戻ってくるのが通例でしたが、今回の《修復の天使》と《雲隠れ》は「あなたの」コントロール下で戦場に戻ってきます。つまるところ、《士気溢れる徴集兵》で奪ったクリーチャーに対して《雲隠れ》や《修復の天使》の能力を使えば、そのクリーチャーのコントロールを永続的に奪えるということを意味します。
「明滅」能力は、他にも《悪鬼の狩人》の「戦場に出た時」の効果にスタックでキャストすればクリーチャーを追放したままにできたりもしますし、《ウルフィーの銀心》の「組」を入れ替えたりもできますね。
ジェイスさんも仰っているように、《士気溢れる徴集兵》で《出産の殻》をアンタップすれば即座に6マナ域に繋げることもできますし、単純に「明滅」能力とも相性の良い《業火のタイタン》はぜひとも採用したいところ。
《修復の天使》を多めに入れたリストは何度か見たことがありましたが、《雲隠れ》まで入れたこのアプローチは実に斬新で画期的なものだと思います。
「《出産の殻》」デッキは本当に調整が楽しいデッキでもあるので、みなさんもぜひ自分なりのリストを完成させてみてください。
今週は以上です。今回は選んだデッキが全て赤絡みのデッキだったこともあり、全てのリストに《士気溢れる徴集兵》が投入されていました。
「その色を使ったデッキならほぼ確実に入るカード」というのは相当にカードパワーが高い証拠ですし、単体で使っても十分に強いカードではありますが、最後に紹介した「《出産の殻》」デッキのように、《士気溢れる徴集兵》の持つ魅力を最大限に引き出す構築をするのもまた一興ですね。
それと、僕の連載の趣旨とは少し外れてしましますが、今週末には「イニストラード・ブロック構築」とリミテッドフォーマットを用いた「プロツアー・アヴァシンの帰還」が開催されます。
今週の連載で誉めに誉めちぎった《士気溢れる徴集兵》は「イニストラード・ブロック構築」環境でも暴れてくれると思いますし、カバレージ好きのみなさんはぜひともこのカードにもご注目してみてください。
それでは、また来週ー!
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