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津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
第100回:連載100回突破記念&『アヴァシンの帰還』発売直前新デッキ特集
読み物
津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
2012.05.03
第100回:連載100回突破記念&『アヴァシンの帰還』発売直前新デッキ特集
こんにちはー。
明日はいよいよ『アヴァシンの帰還』の発売日ですね。先週末にはプレリリースが行われましたが、みなさんはお目当てのカードを手に入れることができましたか?
明日のフライデー・ナイト・マジックから、さっそく新カードが使えるということで、今週は『アヴァシンの帰還』の入ったリストをいくつかご紹介させていただきます。
本題に入るその前に、今週でめでたく100回目の連載を迎えられたことをご報告させていただきます。連載を始めた当時はまさかここまで長く続けられるとは思ってもいませんでしたが、本当に色々な人に支えられながらですが、なんとか今日まで続けることができました。編集長や友人の助けがなければここまで続けることはできなかったでしょうが、やはり記事というものは読者のみなさまの存在があってこそなので、いつも読んでくださるみなさまには、それ以上の感謝の気持ちでいっぱいです。
「『mtg-jp.comさえ見とけばスタンダードはばっちり!』とみなさんに思っていただくこと」
これは連載第5回で書いたものなのですが、今も昔も僕の目標はただこれだけです。自分ではそれが達成できているかどうか分かりませんが、これからも少しでもみなさんのお役に立てるように、少しでも良いものが書けるように精進していきたいと思っています。
今までの連載を振り返ってみると、個人的には第84回と第34回が記憶に残っています。
第84回:「The Deck of the Month」(2011年12月22日掲載)
第84回は1年を振り返る内容だったのですが、まとめるのが下手な僕にしては、それなりに上手く書けたように思えたので、少しはライターとして成長できたかな、と感じさせてくれる回になりました。
第34回:世界選手権直前特集・「ヴァラクート」おさらい(2010年12月8日掲載)
第34回に関しては、実はこの時は2週間ほど前から書く内容を決めていて、毎日毎日ひたすらに「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」ばかり使っていたのを覚えています。
週刊連載という形式上、何週間も前から内容が決まっていることはほとんどないのですが、第59回の「《出産の殻》」特集も2~3週間ほどかけて書きあげましたね。
週刊連載を始めてから一番記憶に残っているデッキは、やはり「Caw-Blade(参考:第57回)」です。あの時期は「What's Happening?」を含め大会結果をどれだけ見ても「Caw-Blade」しかおらず、記事のネタ探しにも苦労しましたし、本当に「Caw-Blade」恐怖症になりそうでした(笑)。
5 《島》 4 《平地》 4 《天界の列柱》 4 《金属海の沿岸》 3 《氷河の城砦》 2 《墨蛾の生息地》 4 《地盤の際》 -土地(26)- 4 《戦隊の鷹》 4 《石鍛冶の神秘家》 1 《聖別されたスフィンクス》 -クリーチャー(9)- |
4 《定業》 3 《呪文貫き》 4 《マナ漏出》 2 《乱動への突入》 1 《神への捧げ物》 3 《四肢切断》 1 《饗宴と飢餓の剣》 1 《戦争と平和の剣》 1 《殴打頭蓋》 1 《ジェイス・ベレレン》 4 《精神を刻む者、ジェイス》 -呪文(25)- |
1 《太陽のタイタン》 3 《失脚》 2 《糾弾》 2 《神への捧げ物》 2 《瞬間凍結》 1 《天界の粛清》 1 《剥奪》 1 《四肢切断》 1 《審判の日》 1 《殴打頭蓋》 -サイドボード(15)- |
前置きが長くなってしまいましたが、それでは『アヴァシンの帰還』入りのリストをご覧いただきましょう。
「白赤"結魂"ビートダウン」
10 《平地》 4 《山》 4 《断崖の避難所》 4 《魂の洞窟》 2 《処刑者の要塞》 -土地(24)- 4 《宿命の旅人》 4 《教区の勇者》 4 《稲妻のやっかいもの》 4 《スレイベンの守護者、サリア》 4 《銀刃の聖騎士》 4 《ミラディンの十字軍》 4 《刃砦の英雄》 2 《オキシド峠の英雄》 -クリーチャー(30)- |
4 《清浄の名誉》 2 《天使の運命》 -呪文(6)- |
4 《士気溢れる徴集兵》 3 《天界の粛清》 3 《魔力のとげ》 1 《天使の運命》 4 《戦争と平和の剣》 -サイドボード(15)- |
連載100回目のトップを飾るのは「結魂」を軸にした「白赤ビートダウン」です。
「白赤」というカラーリングは、《剃刀境の茂み》のような「ミラディンの傷跡」土地がなく、今まではマナベースが懸念材料でしたが、《魂の洞窟》のおかげで、今後はクリーチャータイプを寄せればマナベースに不安を抱える心配もなくなりました。
《魂の洞窟》の主な用途は「カウンター呪文対策」になるでしょうが、マナベースの安定性が向上する点も嬉しい限りです。
そんなマナベースの事情もあり、これまでは白+αのビートダウンと言えば「白青人間ビートダウン(参考:第85回)」が一般的でしたが、『アヴァシンの帰還』は白いビートダウンデッキの新たな一面を見せてくれそうです。
現代の白には《ミラディンの十字軍》や《刃砦の英雄》など、優秀なクリーチャーが山のようにいます。普通に使うだけでも十分に強いカードですが、それらに「速攻」を付随させることのできるこの2種類のカードは、2色目に赤を選ぶ大きな理由になりえます。
《稲妻のやっかいもの》のクリーチャータイプは「人間」なので《教区の勇者》とも噛み合っていますし、《稲妻のやっかいもの》から《銀刃の聖騎士》や《ミラディンの十字軍》に繋ぐだけでもとんでもないダメージが入ります。
《処刑者の要塞》は戦場に置いておくだけで、中盤以降に非常に大きなプレッシャーになりますし、「先制攻撃」や「二段攻撃」を持つクリーチャーの多いこのデッキなら、「+2/+0」のおかげで戦闘も優位に運ぶことができるでしょう。
ビートダウンデッキにとって、《審判の日》や《黒の太陽の頂点》の返しのターンは非常に重要なので、絶え間なく攻勢を維持できるこの2種類の加入は大きな意味を持ちます。
他に赤を選ぶ理由としては、サイドボードに入っている《士気溢れる徴集兵》があります。
もしかするとメインデッキに入れてもいいくらいの期待の新鋭で、比較的対処の難しい《ギデオン・ジュラ》だったり、憎き《原始のタイタン》や《大修道士、エリシュ・ノーン》などを奪えばそれだけで9点のダメージが入ります。
《稲妻のやっかいもの》と同じく、こいつのクリーチャータイプもばっちり「人間」なので、デッキ戦略的にも間違いなく採用すべきカードでしょう。
今でこそ数を減らしてはいますが、それこそ昨年のグランプリ・広島で「緑白人間ビートダウン」と「白青人間ビートダウン」が決勝戦を戦ったように、メタゲーム次第、またはメタゲームに合わせた構築ができれば、この手のビートダウンデッキにも十分にチャンスがあると思います。
先週の連載でお伝えしたように、個人的には今後は「赤緑《ケッシグの狼の地》」の活躍がより目立つようになるのではないかと考えているので、メインとサイド合わせて3枚の《天使の運命》を採用してみました。
《ミラディンの十字軍》に加え《銀刃の聖騎士》が加わったことで、以前よりも「二段攻撃」持ちのクリーチャーに付けられる確率も高まっていますし、「赤緑《ケッシグの狼の地》」の除去が《感電破》ではなく、《火柱》《鞭打ち炎》《金屑の嵐》のようなソーサリー主体になれば、相手にマナがあってもキャストを躊躇する必要がなくていいですね。
とは言え、『アヴァシンの帰還』加入前の王者である「青白Delver」は《蒸気の絡みつき》で《天使の運命》を容易に対処してくるので、今後も「青白Delver」の天下が続くようであればこの枠は《戦争と平和の剣》などに変える必要があるでしょうが、「赤緑《ケッシグの狼の地》」が増えるなら《天使の運命》が最適だと思います。
少し重いので微妙かもしれませんが、もしかしたら「赤緑《ケッシグの狼の地》」の《鞭打ち炎》《金屑の嵐》対策として、《神聖なる反撃》を候補に挙げてもいいかもしれません。
対ビートダウンデッキにも強いカードですし、このカードを警戒すると戦闘ができなくなるくらいのインパクトがあるので、一度見せるだけでも効果がありますね。
「青緑タッチ《ケッシグの狼の地》」
7 《森》 6 《島》 1 《山》 4 《内陸の湾港》 1 《硫黄の滝》 3 《魂の洞窟》 2 《墨蛾の生息地》 2 《ケッシグの狼の地》 -土地(26)- 4 《真面目な身代わり》 4 《霜のタイタン》 4 《原始のタイタン》 -クリーチャー(12)- |
4 《思案》 4 《太陽の宝球》 4 《不屈の自然》 4 《鞭打ち炎》 2 《時間の熟達》 1 《冒涜の行動》 2 《月の賢者タミヨウ》 1 《解放された者、カーン》 -呪文(22)- |
2 《秋の帳》 2 《漸増爆弾》 2 《否認》 2 《帰化》 2 《古えの遺恨》 1 《冒涜の行動》 1 《殴打頭蓋》 1 《月の賢者タミヨウ》 1 《解放された者、カーン》 1 《魂の洞窟》 -サイドボード(15)- |
先ほども少し触れましたが、個人的に『アヴァシンの帰還』で最も強化されたアーキタイプは「赤緑《ケッシグの狼の地》」だと思っています。しかし「赤緑」2色の形はそこまで大きな変化がなさそうなので、僕の大好きな《月の賢者タミヨウ》さんの入った3色のものをご紹介させていただきます。
このデッキだと[-2]能力を効果的に使えないかもしれませんが、[+1]能力はこのデッキにうってつけのものです。
《霜のタイタン》と合わせて使うことで相手の動きに大幅な制限をかけることができますし、戦況に余裕ができてくれば[-2]能力や最終奥義を使うことも可能でしょう。《霜のタイタン》とのタッグは相当に強力に見えますし、これはオリジナルの「赤緑《ケッシグの狼の地》」にはない大きな魅力のひとつです。
《時間の熟達》はお試しで採用したものですが、「《ケッシグの狼の地》」系デッキ最大の強みである「2→4→6」の動きを助ける可能性がありますし、各種タイタンがいる状況で使えばゲームを終わらせることもあるでしょうから、そんなに悪くはないと思います。
ただし「奇跡」というシステム自体がまだ未知の領域なので、ここは実際に使ってみてから判断したいですね。
このカードは3色のリストでも間違いなく採用されるでしょう。枚数に関しては、色マナの問題もあってメインは3枚に抑えましたが、メタゲーム次第では何か呪文の枠を1枚削ってメインから4枚にしてもいいくらいですね。
本当は《霜のタイタン》よりも《聖別されたスフィンクス》の方が好きなのですが、《魂の洞窟》と《月の賢者タミヨウ》の加入は《霜のタイタン》を優先させるに十分な要素です。
青を2色目にするとこれらのカードが使えますが、2色目に黒を選べば《グリセルブランド》を使うことができます。
キャスティングコストの重さと、色マナ拘束の強さだけ気になりますが、それ以外はほぼ完璧超人に近い《グリセルブランド》。
8マナなので《原始のタイタン》から次のターンにキャストすることができますし、《原始のタイタン》で《魂の洞窟》を持ってきておけばカウンターされることもありません。
これほどまでに強力なカードであれば、「Frites(5色リアニメイター)」や「エスパーコントロール(参考:第99回)」なんかでも見かけることになるでしょう。
「Frites(5色リアニメイター)」
2 《森》 1 《平地》 4 《剃刀境の茂み》 4 《銅線の地溝》 4 《黒割れの崖》 4 《魂の洞窟》 3 《ゆらめく岩屋》 1 《ケッシグの狼の地》 -土地(23)- 4 《極楽鳥》 3 《アヴァシンの巡礼者》 1 《ラノワールのエルフ》 4 《ソンバーワルドの賢者》 4 《ワームとぐろエンジン》 4 《大修道士、エリシュ・ノーン》 2 《グリセルブランド》 -クリーチャー(22)- |
4 《信仰無き物あさり》 4 《根囲い》 3 《追跡者の本能》 4 《堀葬の儀式》 -呪文(15)- |
4 《原始のタイタン》 3 《火柱》 2 《古えの遺恨》 2 《天啓の光》 4 《墨蛾の生息地》 -サイドボード(15)- |
《グリセルブランド》以外で密かに注目しているのは《ソンバーワルドの賢者》です。クリーチャーにしかマナが使えないことと、死にやすいことが懸念されますが、このデッキや「《出産の殻》」デッキなんかには入る可能性があると思います。
第94回でもお伝えしたように、「Frites」の課題としてサイド後の墓地対策をどうするか、というものがありますが、今回は「What's Hhappening」で見かけた《原始のタイタン》を採用した形を真似てみました。
こうすることで墓地対策を無視して《大修道士、エリシュ・ノーン》や《グリセルブランド》に繋げることができますし、《ソンバーワルドの賢者》はそういったサイド後の戦いを意識するという意味でも役に立ちますね。
「エスパー(青白黒)コントロール」
5 《沼》 3 《平地》 2 《島》 4 《金属海の沿岸》 1 《闇滑りの岸》 4 《氷河の城砦》 4 《孤立した礼拝堂》 3 《進化する未開地》 -土地(26)- 1 《瞬唱の魔道士》 -クリーチャー(1)- |
2 《悲劇的な過ち》 3 《熟慮》 2 《破滅の刃》 2 《喉首狙い》 4 《未練ある魂》 2 《禁忌の錬金術》 3 《審判の日》 2 《死の支配の呪い》 1 《終末》 2 《天使への願い》 3 《ヴェールのリリアナ》 2 《イニストラードの君主、ソリン》 2 《月の賢者タミヨウ》 2 《ギデオン・ジュラ》 1 《解放された者、カーン》 -呪文(33)- |
2 《外科的摘出》 3 《蔑み》 2 《漸増爆弾》 3 《否認》 1 《機を見た援軍》 1 《決断の手綱》 1 《饗宴と飢餓の剣》 1 《殴打頭蓋》 1 《記憶の熟達者、ジェイス》 -サイドボード(15)- |
最後を飾るのは「エスパーコントロール」です。実はここまで全てのリストに《魂の洞窟》が入っていたのですが、それはコントロールデッキが死滅することを意味するわけではありません。このリストのようにカウンター呪文を抜いてしまうのもひとつの手ですし、何と言っても『アヴァシンの帰還』で加入した新戦力は青好きのプレイヤーにデッキを組ませるに十分すぎるほどの魅力を持ち合わせています。
《月の賢者タミヨウ》の持つ高いボードコントロール能力は、《審判の日》や《終末》と組み合わせることでより一層の効果を発揮しますし、《未練ある魂》と併用することで、[-2]能力も使いやすくなっています。
プレインズウォーカーは数が並べば並ぶほど対処が難しくなるので、あの「青白Tap out Control(参考:第6回)」よろしく、このデッキもフルタップを恐れず毎ターン脅威を展開し続けることになるでしょう。
《未練ある魂》《イニストラードの君主、ソリン》《ギデオン・ジュラ》に守られた《月の賢者タミヨウ》なんて戦場は、想像するだけでも恐ろしいものがありますね。
残る新戦力2枚は『アヴァシンの帰還』の新メカニズムである「奇跡」付きのカードから。
「奇跡」カードの評価は本当に難しいところですが、《終末》は「奇跡」コストがあまりにも軽いので《審判の日》に割って入る可能性があると思います。「不死」持ちのクリーチャーにも1枚で対処できるのはかなり評価できますしね。ただし普通のキャスティングコストが重いので、多くても2枚が限界でしょうか。
もう一方の《天使への願い》に関しては、最初は全く評価していなかったのですが、天下のLSV(Luis Scott-Vargas)が猛烈にプッシュしているので、『アヴァシンの帰還』がリリースされたら真っ先に試そうと思っている1枚です。ゲーム終盤であれば、普通にキャストしても強いですし、《熟慮》からエンド前にキャストできると最高ですね。
KJの構築劇場や行弘君がカードレビューで紹介していた《轟く怒り》も強そうですし、もしかすると「奇跡」カードはかなりのやり手なのかもしれませんね。
《思案》《熟慮》をともに4枚採用し、さらに《僻地の灯台》などをも採用することで、「奇跡」を多めに入れたデッキが作れるかもしれないと評価を改めました。
最後になりますが、《マナ漏出》を抜いてしまうとミラーマッチで大きな問題を抱えてしまうことになります。「赤緑《ケッシグの狼の地》」を筆頭に、多くのデッキが《魂の洞窟》を使ってくることが予想されますが、ミラーマッチが一定数以上いると読むのであれば、《魂の洞窟》の存在を考慮しても《マナ漏出》を入れた方がいいでしょう。
一応サイドボードに多めにコントロール対策を取っているので、それでなんとかならないこともないでしょうが、「メタるべきはミラーマッチから」(参考:第5回)という教えもありますし、この辺はあなたが対ビートダウンデッキを得意とするか、または対コントロールデッキを得意とするか(参考:第36回)で変えてみてもいいかもしれません。
今週は以上です。冒頭でもお伝えした通り、無事に100回目を迎えられたのは本当に色々な人の協力と、いつもこの記事を読んでくださるみなさんのおかげです。僕はこの記事を書き続けるうちにスタンダードというフォーマットが一番好きになりましたし、もしもみなさんがこの記事を通してスタンダードを始めてくれたり、スタンダードをもっともっと好きになってくれたら、これ以上嬉しいことはないですね。
まだまだ完璧とは程遠い内容だとは思いますが、これからもよろしくお願いいたします!
それでは、また来週ー!
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