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津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
第94回:プレインズウォーカーコントロールとコンボデッキの最新型
読み物
津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
2012.03.22
第94回:プレインズウォーカーコントロールとコンボデッキの最新型
こんにちはー。
今週末にはグランプリ・クアラルンプールが開催されますね(リンク先は英語)。日本からも何名かのプレイヤーが参加するでしょうし、今後のスタンダードのメタゲームを左右する重要な大会と言えるでしょう。
今週は何を書こうか悩んでいたのですが、最近は「青黒ゾンビ」や「赤緑ビートダウン」の特集をしてばかりだったので、グランプリのメタゲーム分析は軽めにしておいて、その後は主にこれからの活躍に期待ができそうなデッキやテクニックの紹介をしたいと思います。
そのような特集をしようと思ったきっかけは、先週紹介させていただいた「ジャンド《出産の殻》」デッキでした。
あのデッキは使っていて非常に楽しく、それでいてデッキパワーも十分で、さらには対戦相手の方に「そのデッキ面白いね」なんてよく言ってもらえましたし、ゲームの勝敗を度外視しても、非常に良いデッキだと思います。
自分の作ったデッキでそんな風に言ってもらえたらさぞ気持ちいいんだろうなぁ...なんてとりとめもないことを考えていたのですが、これだけの力作がすぐに見つかったということは、「What's Happening?」には他にもたくさんの良いリストがあるに違いないと思い、Magic Online(以下MO)の結果をチェックしてみたというわけです。
するといくつかのデッキが目に留まったので、今週はそれらを紹介させていただきたいと思います。
その前に、まずは現在のメタゲームをおさらいしておきましょう。
~グランプリ・クアラルンプール・メタゲーム予想~
Tier1
Tier2
- 「《出産の殻》(主に赤緑白、青緑白、4色)(第90回)」
- 「ゾンビ(主に青黒、黒赤)(第93回)」
- 「青黒コントロール(第92回)」
- 「白黒トークン(第93回)」
- 「エスパー(青白黒)コントロール(第89回)」
- 「Frites(5色リアニメイター)(第91回)」
年末年始の「青白Delver-Blade」、「青白人間ビートダウン」に支配されていた環境から一転、今現在は非常にバランスの良いメタゲームになっていると思います。
依然として他のデッキよりも「青白Delver-Blade」が少し多いという印象を受けていますが、「闇の隆盛」の加入で登場した「赤緑ビートダウン」や「ゾンビ」デッキがメタゲームを面白くしています。
カウンター呪文を構えながら攻めてくる「青白Delver-Blade」のような「クロックパーミッション」系統のデッキが環境に多いと、デッキ構築の際に重いカードを入れにくいだとか、ある程度の制限がかかってしまいますが、それに比べ「赤緑ビートダウン」や「ゾンビ」といった真っ当なビートダウンデッキは、比較的そのような制限を生みづらいですからね。
ビートダウンデッキの台頭、そして時間の経過とともに正当な評価をされ始めた「闇の隆盛」のカードにより、メタゲームは新たなステージに突入しようとしています。先週紹介した「白黒トークン」などはその最たる例で、ここ1週間で一気に数を増やしてきました。
その「白黒トークン」の中核を担う《未練ある魂》と《イニストラードの君主、ソリン》は、「白黒トークン」以外のデッキでも使用される機会が増えており、他にもこんなデッキで結果を残し始めています。
「エスパー(青白黒)プレインズウォーカーコントロール」
5 《沼》 3 《平地》 2 《島》 4 《金属海の沿岸》 1 《闇滑りの岸》 4 《氷河の城砦》 4 《孤立した礼拝堂》 3 《進化する未開地》 -土地(26)- 2 《瞬唱の魔道士》 2 《聖別されたスフィンクス》 -クリーチャー(4)- |
2 《悲劇的な過ち》 4 《マナ漏出》 3 《熟慮》 1 《破滅の刃》 1 《喉首狙い》 3 《未練ある魂》 2 《禁忌の錬金術》 3 《審判の日》 3 《死の支配の呪い》 1 《殴打頭蓋》 3 《ヴェールのリリアナ》 2 《イニストラードの君主、ソリン》 2 《ギデオン・ジュラ》 -呪文(30)- |
3 《聖トラフトの霊》 2 《蔑み》 3 《漸増爆弾》 2 《天界の粛清》 1 《機を見た援軍》 1 《決断の手綱》 1 《殴打頭蓋》 1 《記憶の熟達者、ジェイス》 1 《解放された者、カーン》 -サイドボード(15)- |
どこか聞き覚えのある名前のlsvさんが操るのは「エスパー(青白黒)プレインズウォーカーコントロール」。
《マナ漏出》や、《悲劇的な過ち》を筆頭とした各種除去、そして攻守に活躍する《未練ある魂》で序盤をやり過ごし、《審判の日》と《死の支配の呪い》という強力な2枚看板がクリーチャーをシャットアウトします。環境にマナクリーチャーと《未練ある魂》が増えたことで、《死の支配の呪い》は以前よりも頼もしくなりましたね。そうやって時間を稼いでしまえば、あとは《聖別されたスフィンクス》や各種プレインズウォーカーがゲームを決めてくれます。
このデッキにおける《未練ある魂》は攻守の要で、《絡み根の霊》や《ゲラルフの伝書使》と相打って「不死」を使わせておけば、《審判の日》で盤面を一掃しやすくなりますし、《未練ある魂》さえあれば《秘密を掘り下げる者》にも余裕をもって対処することができます。
コントロール対決でもこのカードは非常に強力で、単体除去では対処しづらい4点クロックは十分な脅威となります。対戦相手が《黒の太陽の頂点》や《死の支配の呪い》のような大振りなアクションを取ってくれば、その隙に《ヴェールのリリアナ》だったり《イニストラードの君主、ソリン》だったりを通しやすくなりますし、相手のデッキを問わず活躍を期待できます。
このデッキのフィニッシャーに選ばれているのは、「赤緑」系のデッキと「《出産の殻》」系統のデッキに劇的に強い《聖別されたスフィンクス》。《蒸気の絡みつき》に弱いので、「青白Delver-Blade」が圧倒的に多かった時期には使用を躊躇われましたが、今のメタゲームではこのカードに触れないデッキも多いので、再び脚光を浴びています。
メインボードで他にフィニッシャーと呼べるのは、3種類採用されたプレインズウォーカーたち。《ギデオン・ジュラ》はビートダウンが流行っている今だからこそ採用された1枚で、《死の支配の呪い》との組み合わせはビートダウンデッキにとって悪夢そのもの。ただでさえ「忠誠度」が高い上に、《未練ある魂》や《イニストラードの君主、ソリン》で守りを固められてしまうと、《ギデオン・ジュラ》を倒すだけでも相当な労力を必要とします。
《イニストラードの君主、ソリン》は対ビートダウンデッキ戦ではブロッカーを、対コントロールデッキ戦ではアタッカーと全体強化能力でプレッシャーを与えてくれます。極稀にではありますが、最終奥義で自分のプレインズウォーカーを破壊し、「忠誠度」を回復しつつ、そのプレインズウォーカーの能力をもう一度使ったりなんて荒業もできちゃいます。
まだ1回しかやったことはありませんが、《解放された者、カーン》との組み合わせで、対戦相手の《ネファリアの溺墓》2枚を1ターンの間に追放したりといった使い方をしたので、一応頭の片隅に入れておくといつか得する日が来るかもしれません。
残る《ヴェールのリリアナ》は、《聖トラフトの霊》や《最後のトロール、スラーン》のような「呪禁」持ち対策であり、このデッキが苦手とする「青黒コントロール」への解答。
対「青黒コントロール」戦では、《雲散霧消》と《ネファリアの溺墓》の有無により、長期戦になるとこちらが不利になりやすいので、できることなら《ヴェールのリリアナ》や《未練ある魂》で序盤から積極的に攻めていきたいところです。
《殴打頭蓋》もフィニッシャーと呼べる1枚。特に「赤緑ビートダウン」や「ゾンビ」なんかに強いカードですが、もう少し軽いカードがあってもいいかなと感じたので、この枠は追加の2マナ除去か4枚目の《未練ある魂》にしてもいいと思います。
《スレイベンの守護者、サリア》1枚で負けてしまうことも多かったので、もしもこの枠を変更するなら、それを踏まえて《破滅の刃》か《喉首狙い》がいいでしょう。
このデッキはビートダウンデッキに強い半面、カウンターの多い「青黒コントロール」を苦手としています。そのため、サイドボードには少し多めにコントロール対策が採用されています。
カウンター以外では対処しづらい《聖トラフトの霊》は「オフェンシブサイドボード」として最上級のものですし、相手のプレインズウォーカーを狙い打つ《蔑み》と《決断の手綱》、1枚でゲームを決定付けることのできる《記憶の熟達者、ジェイス》と《解放された者、カーン》などは、このマッチアップの相性差を幾分緩和してくれます。
これだけの数の脅威を凌ぐのは、いかに「青黒コントロール」と言えど容易ではないですし、《蔑み》が入ることで仕掛けやすくもなるので、サイドボード後は1本目以上に攻めの姿勢を貫いていきましょう。
このリストは「闇の隆盛」加入直後の「StarCityGames スタンダードオープン・リッチモンド(参考:第89回)」でトップ16に残っていたものに似ていますが、当時よりもビートダウンデッキが増えたこと、そして《未練ある魂》の採用によるデッキパワーの向上というふたつの点で、以前よりも活躍しやすくなっていると思います。
カウンター呪文や除去で盤面をコントロールする「エスパー」型以外にも、巷では全く別のアプローチを用いたこんな形もあるようです。
「黒緑白プレインズウォーカーコントロール」
4 《平地》 4 《沼》 1 《森》 4 《孤立した礼拝堂》 4 《陽花弁の木立ち》 4 《森林の墓地》 4 《進化する未開地》 1 《剃刀境の茂み》 -土地(26)- -クリーチャー(0)- |
4 《悲劇的な過ち》 1 《虚無の呪文爆弾》 1 《喉首狙い》 4 《未練ある魂》 3 《忘却の輪》 1 《四肢切断》 1 《内にいる獣》 1 《審判の日》 3 《テゼレットの計略》 2 《迫撃鞘》 2 《ヴェールのリリアナ》 3 《情け知らずのガラク》 3 《イニストラードの君主、ソリン》 2 《エルズペス・ティレル》 2 《ギデオン・ジュラ》 1 《解放された者、カーン》 -呪文(34)- |
2 《呪文滑り》 2 《外科的摘出》 2 《秋の帳》 1 《虚無の呪文爆弾》 2 《帰化》 1 《漸増爆弾》 2 《死の支配の呪い》 1 《生命の終焉》 2 《幽霊街》 -サイドボード(15)- |
時期は違えど、これもまた「StarCityGames スタンダードオープン・ダラス」で結果を残していたものですが、このリストに搭載されているプレインズウォーカーの総数はなんと13枚。
青ではなく緑を選ぶ最大の動機は《情け知らずのガラク》であり、これはマナクリーチャーを多用する「赤緑ビートダウン」や「《出産の殻》」デッキ、そしてパワー2のクリーチャーが多い「ゾンビ」デッキに効果的な1枚です。
《ヴェールの呪いのガラク》に「変身」すれば、「接死」持ちトークンと《迫撃鞘》のコンボを使えますし、そうなれば《原始のタイタン》なんかも対処可能です。
ただし[-1]能力が使えないのは少しもったいないので、1枚だけ《ワームとぐろエンジン》や《大修道士、エリシュ・ノーン》を採用してもいいかもしれませんね。
青マナが出ないデッキにも関わらず採用された《テゼレットの計略》は各種プレインズウォーカーと相性抜群で、特に最終奥義の強力な《ヴェールのリリアナ》、《イニストラードの君主、ソリン》との組み合わせは秀逸です。
かなり個性的で面白いリストになっていますが、このリストも軽いところが少ないと感じたので、《テゼレットの計略》、または涙をのんでプレインズウォーカーを少し削って《不屈の自然》を入れてもいいと思います。その場合は《沼》を削って《森》を増やすといいですね。
このような「プレインズウォーカーコントロール」デッキの登場も新時代の到来を感じさせますが、「闇の隆盛」のフルスポイラーが出た段階で噂になっていた「無限コンボ」を搭載しているデッキも、ここ何週間かでじわじわと数を増やしています。
「《ヘイヴングルの死者》"無限"コンボ」
4 《島》 2 《山》 1 《沼》 4 《闇滑りの岸》 4 《黒割れの崖》 4 《硫黄の滝》 3 《水没した地下墓地》 -土地(22)- 4 《危険なマイア》 2 《呪文滑り》 4 《ウラブラスクの僧侶》 4 《ヘイヴングルの死者》 -クリーチャー(14)- |
4 《ギタクシア派の調査》 4 《思考掃き》 4 《思案》 4 《信仰無き物あさり》 4 《捨て身の狂乱》 4 《心なき召喚》 -呪文(24)- |
4 《マイアの超越種》 4 《大建築家》 4 《ファイレクシアの変形者》 3 《ワームとぐろエンジン》 -サイドボード(15)- |
第88回の記事でも紹介させていただきましたが、今一度「無限コンボ」の仕組みを説明しておきます。
- 戦場に《ヘイヴングルの死者》と《心なき召喚》があり、手札か墓地に《ウラブラスクの僧侶》がある状況を作る。
- 《ウラブラスクの僧侶》をキャスト→《心なき召喚》の「あなたのクリーチャーは-1/-1修整を受ける」効果で《ウラブラスクの僧侶》が墓地に落ち、「戦場に出た時」の効果を解決してマナプールに{R}{R}{R}を加える。
- そのうちの1マナを使い、《ヘイヴングルの死者》の能力を墓地にいる《ウラブラスクの僧侶》に対して起動する。
- 残った2マナのうち1つを使い、《ウラブラスクの僧侶》をキャスト。
2~4のサイクルを行う度にひとつずつ赤マナが増えていくので、これを好きなだけ繰り返せば「無限マナ」コンボの完成というわけです。
このループの《ウラブラスクの僧侶》を《危険なマイア》にすると今度は「無限ダメージ」コンボになるので、往年のコンボデッキらしく、一度コンボが開始してしまえばそのターン中に勝つことができます。
このデッキの最速キルターンは驚くほどに早く、コンボパーツが揃っていれば、僅か3ターン目にして対戦相手を葬り去ることが可能です。
2ターン目に《心なき召喚》を設置→3ターン目に《ウラブラスクの僧侶》でマナを増やしてから《ヘイヴングルの死者》と動けば早くも「無限マナ」が完成し、《信仰無き物あさり》か《捨て身の狂乱》があればそこからライブラリーを掘り進むことができるので、そこで《危険なマイア》を引ければ、驚異の3ターンキルが完了します。
ドローサポートが大量に入っている関係上、結構な早さでコンボが決まりますし、相手の妨害さえなければそれこそ3ターン目や4ターン目に勝てることもあるでしょう。
第88回では、「《ウラブラスクの僧侶》は単体で弱い」とお伝えしてしまいましたが、墓地にあってもコンボがスタートできるため気軽にブロッカーにできること、そして《心なき召喚》状況下であれば、あの《暗黒の儀式》と同じ動きができたりと、決して単体で弱すぎるということはありませんでした。
《心なき召喚》を生かし、攻め手に《業火のタイタン》や《ルーン傷の悪魔》なんかを採用しているリストもあるようですが、このリストのように「無限コンボ」に特化したものは、《呪文滑り》の枠だけ流動的で、それ以外のカードは固定されていることが多いようです。
《呪文滑り》の枠は人によって《否認》だったりしますが、《否認》は除去呪文だけではなく、《マナ漏出》や《雲散霧消》といったカウンター呪文も弾けるのが長所で、《呪文滑り》はカウンター呪文に対処することはできないものの、《心なき召喚》があれば0マナでキャストできるので、除去耐性という面だけで見れば《呪文滑り》に軍配が上がります。
メインボードは妨害されにくい「無限コンボ」を勝ち手段にしていますが、サイドボード後は《外科的摘出》や《虚無の呪文爆弾》などで対策されてしまうので、こちらもそれを見越して「オフェンシブサイドボード」で対抗します。
《心なき召喚》と相性の良い《マイアの超越種》、それをキャストするための《大建築家》、そして《大建築家》のマナから高速召喚できる《ワームとぐろエンジン》という構成が一般的ですね。
《大建築家》は対戦相手の《幻影の像》対策としても優れていて、《マイアの超越種》に化けている《幻影の像》をたった1マナで除去できるのは優秀です。
このデッキは予想していたよりも強いデッキだと感じましたし、墓地対策がないようなメタゲームなら「オフェンシブサイドボード」を使わなくてもよかったり、色々な観点でまだまだ研究の余地がたくさんあるデッキだと思います。コンボデッキ好きなみなさんに、ぜひとも試してほしい一品ですね。
「Frites(5色リアニメイター)」
7 《森》 1 《平地》 4 《剃刀境の茂み》 4 《銅線の地溝》 4 《黒割れの崖》 2 《闇滑りの岸》 1 《陽花弁の木立ち》 -土地(23)- 4 《極楽鳥》 3 《アヴァシンの巡礼者》 1 《ラノワールのエルフ》 2 《業火のタイタン》 2 《ワームとぐろエンジン》 1 《大修道士、エリシュ・ノーン》 2 《飢餓の声、ヴォリンクレックス》 -クリーチャー(15)- |
4 《信仰無き物あさり》 4 《根囲い》 3 《追跡者の本能》 1 《天啓の光》 4 《未練ある魂》 4 《堀葬の儀式》 2 《赤の太陽の頂点》 -呪文(22)- |
4 《絡み根の霊》 3 《ファイレクシアの変形者》 2 《古えの遺恨》 1 《天啓の光》 3 《踏み荒らし》 2 《赤の太陽の頂点》 -サイドボード(15)- |
コンボデッキ繋がり・・・というよりは墓地を活用するデッキ繋がりということで「Frites」の新型を。
このデッキもトーナメントシーンに登場してからまだ日が浅いので、日々進化の過程が見受けられます。最近では「不死」クリーチャー対策とフィニッシュの役割を果たす《赤の太陽の頂点》を搭載しているリストが増えてきました。
このリストのお洒落ポイントは、フィニッシャーに《飢餓の声、ヴォリンクレックス》を混ぜることで、《赤の太陽の頂点》の可能性を広げているところです。
最初は《飢餓の声、ヴォリンクレックス》は微妙かなと思っていたのですが、実際に出されてみたところ、《審判の日》のような大振りなアクションで対処すると《時間のねじれ》してしまうため、思いの外対処に困る類いのクリーチャーでした。
《大修道士、エリシュ・ノーン》を削ってまで入れるかどうかは難しいですが、見た目以上に強いカードだったので、コントロールデッキを意識するなら候補に挙げてもいいと思います。
それとサイドボードにも変化があり、近頃では《絡み根の霊》を使用した「オフェンシブサイドボード」を頻繁に見かけます。
このデッキも「《ヘイヴングルの死者》無限コンボ」デッキと同じく、墓地対策には悲しみを背負うことになるので、《絡み根の霊》や《未練ある魂》で攻めて《赤の太陽の頂点》か《踏み荒らし》でフィニッシュ、というプランは悪くないように見えますね。
《絡み根の霊》も除去→墓地対策の流れで対処されてしまうものの、仮にそこで墓地対策を使わせられるのなら御の字でしょう。
「オフェンシブサイドボード」プランは、人によって《絡み根の霊》+《最後のトロール、スラーン》だったり、《絡み根の霊》+《饗宴と飢餓の剣》だったりと、いくつかの相違点があるので、メインボードのクリーチャー選択だけでなく、サイドボードのプランも今後の研究課題と言えます。
何にせよ、今後更なる成長に期待のできるデッキですね。
「4色《出産の殻》」
4 《森》 2 《平地》 1 《島》 1 《山》 4 《剃刀境の茂み》 4 《陽花弁の木立ち》 3 《内陸の湾港》 2 《墨蛾の生息地》 1 《ガヴォニーの居住区》 1 《ケッシグの狼の地》 -土地(23)- 3 《極楽鳥》 3 《幻影の像》 1 《絡み根の霊》 1 《ヴィリジアンの密使》 1 《夜明け歩きの大鹿》 2 《刃の接合者》 1 《悪鬼の狩人》 2 《真面目な身代わり》 1 《ファイレクシアの変形者》 1 《石角の高官》 1 《高原の狩りの達人》 1 《酸のスライム》 1 《剃刀のヒポグリフ》 1 《霊誉の僧兵》 1 《正義の執政官》 1 《原始のタイタン》 1 《太陽のタイタン》 1 《ワームとぐろエンジン》 1 《大修道士、エリシュ・ノーン》 -クリーチャー(25)- |
4 《不屈の自然》 4 《出産の殻》 3 《緑の太陽の頂点》 1 《滞留者ヴェンセール》 -呪文(12)- |
1 《斑の猪》 1 《夜明けのレインジャー》 1 《石角の高官》 1 《最後のトロール、スラーン》 2 《漸増爆弾》 2 《古えの遺恨》 1 《天啓の光》 3 《忘却の輪》 2 《審判の日》 1 《迫り来る復興》 -サイドボード(15)- |
プロツアー・闇の隆盛以降、すっかり「ナヤ(赤緑白)」バージョンが主流になってきた「《出産の殻》」デッキですが、近頃ではこの《不屈の自然》入りのリストも増加傾向にあります。
マナクリーチャーから2ターン目に《出産の殻》、という必殺の動きができる確率は低くなっていますが、今の環境は《感電破》、《悲劇的な過ち》のようなものから、《金屑の嵐》《死の支配の呪い》といったマナクリーチャーを効果的に対処できるカードが多いので、このアプローチも検討の余地があると思います。
このリストはサイドボードに《迫り来る復興》を入れて長期戦に強くしていたりと、独自路線の構成が目を引きます。かなり珍しい類いのカードではありますが、「フラッシュバック」のおかげでカウンター呪文にも耐性がありますし、ぜひとも試してみたい1枚です。
それと「《出産の殻》」デッキの隆盛に伴い、《墓掘りの檻》の露出度が上がっているので、このリストのように《漸増爆弾》や《古えの遺恨》でしっかりと対策しておくといいでしょう。
「今週の一押し」~「赤緑狼男」
7 《森》 5 《山》 4 《銅線の地溝》 4 《根縛りの岩山》 3 《ケッシグの狼の地》 -土地(23)- 4 《無謀な浮浪者》 4 《狼に噛まれた囚人》 4 《アヴァブルックの町長》 3 《ガツタフの羊飼い》 3 《常なる狼》 3 《夜明けのレインジャー》 4 《高原の狩りの達人》 -クリーチャー(25)- |
4 《昇る満月》 3 《火葬》 2 《月霧》 2 《電弧の痕跡》 1 《内にいる獣》 -呪文(12)- |
1 《夜明けのレインジャー》 3 《墓掘りの檻》 3 《霊炎》 3 《古えの遺恨》 2 《帰化》 3 《内にいる獣》 -サイドボード(15)- |
「今週の一押し」は一風変わった「赤緑ビートダウン」です。
《絡み根の霊》や《地獄乗り》を搭載したものとは違い、このリストの主戦力はまさかまさかの「狼男」たち。ロードである《常なる狼》を除く全てのクリーチャー陣が「狼男」で占められており、更には《昇る満月》と《月霧》まで入っている徹底っぷり。
《昇る満月》のバックアップを得た「狼男」たちを止めるのは非常に困難ですし、《月霧》は戦闘を一方的なものにするだけでなく、「変身」することで自軍に+1/+1修正を与えられる《アヴァブルックの町長》や、「変身」する度に劇的なおまけが付いてくる《高原の狩りの達人》とのコンボも魅力的です。
余談ではありますが、対戦相手の《火葬》に対し、《昇る満月》を生け贄に捧げて悲しみに暮れたプレイヤーがいるので、みなさんはそんなことがないようご注意を。生け贄に捧げる前に5回くらい《昇る満月》のテキストを読み返したんですが、ここ何年かの「再生」クリーチャーの少なさゆえに《火葬》のおまけ能力を忘れていました...(笑)。
「狼男」という部族に着目した点もすばらしいですが、その他にも「赤緑ビートダウン」と「ゾンビ」相手に安定して2対1交換の取れる《電弧の痕跡》、マナクリーチャーに突き刺さる《霊炎》、「《出産の殻》」デッキと「Frites」に効果的な《墓掘りの檻》と、渋いカード選択が目を惹きます。
これらのカードは一般的な「赤緑ビートダウン」なんかでも応用が利くので、この辺りのカード選択はぜひとも参考にしていきたいところです。
部族システムといった意味合いでは、すでに大成功を収めている「人間」や「ゾンビ」などの偉大な先人たちがいますが、「狼男」もそれに続くことができるのか、今後の活躍に期待しましょう。
今週は以上になります。
以前よりもTier1~2のデッキ種類が増えていますが、ビートダウンデッキが増加していることもあり、今週末のグランプリ・クアラルンプールでは、「赤緑《ケッシグの狼の地》」や「《出産の殻》」系統のデッキが活躍するのではないかと予想しています。
来週末(3月31~4月1日)にもアメリカ・ソルトレークシティでスタンダードのグランプリが開催されるので、スタンダードファンのみなさんは必見ですよ!
それでは、また来週ー!
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