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津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
第88回:白黒トークンとローグデッキ特集
読み物
津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
2012.02.02
第88回:白黒トークンとローグデッキ特集
こんにちはー。
いよいよ「闇の隆盛」の発売日が明日に迫ってまいりました。先週末には全国各地でプレリリースイベント(シールド戦)が行われましたが、みなさんはもうお気に入りのカードを見つけましたか?
僕は週刊連載「ウィザーズプレイネットワーク通信」でもお馴染みの宮坂さんのご紹介で、千葉のプレリリースに参加させていただいたのですが、その時にとあるカードのあまりの強さに愕然としてしまいました。
今週はそのカードを使った「闇の隆盛」入りのデッキひとつと、「闇の隆盛」加入前のローグデッキ特集をメインに書いていこうと思います。
それでは、まずは「闇の隆盛」加入後にスタンダードを変えてくれそうなこのデッキから。
「白黒トークン」(闇の隆盛入り)
9 《平地》 4 《沼》 4 《孤立した礼拝堂》 4 《進化する未開地》 2 《大天使の霊堂》 2 《幽霊街》 -土地(25)- -クリーチャー(0)- |
4 《無形の美徳》 4 《未練ある魂》 4 《深夜の出没》 4 《忠実な軍勢の祭殿》 3 《忘却の輪》 3 《審判の日》 1 《高まる献身》 4 《迫撃鞘》 4 《イニストラードの君主、ソリン》 4 《エルズペス・ティレル》 -呪文(35)- |
4 《虚無の呪文爆弾》 3 《存在の破棄》 4 《機を見た援軍》 1 《審判の日》 2 《死の支配の呪い》 1 《白の太陽の頂点》 -サイドボード(15)- |
僕がプレリリースで惚れ込んでしまったカード、それは《未練ある魂》でした。
1枚で4体の「飛行」付きトークンを生みだすその効果は、悪名高き「Caw-Blade(参考:第57回)」の中核をになっていた、あの《戦隊の鷹》を彷彿とさせます。
「闇の隆盛」のカードリストが公開された段階で、すでに多くのプレイヤーがこのカードの強さに気付いていたことでしょうが、個人的には実際に使ってみるまでは、まさかこれほどまでに強力なカードだとは思っていませんでした。
マナコストの観点で見てみると、5マナで4体出せるわけで、これは《戦隊の鷹》をも凌駕する驚異のコストパフォーマンスです。「フラッシュバック」には黒マナが必要ということで、《戦隊の鷹》ほど多様なデッキで使えるわけではありませんが、このカードのためだけに「白黒」を選ぶことも十分にありえると思います。
そんな《未練ある魂》を主軸に据えたデッキが、この「白黒トークン」です。
すでに世界各国で話題になっているデッキですが、今回は第80回の記事で紹介した森田(雅彦)さんの「緑白トークン」の焼き直しのようなリストにしてみました。
デッキの動きはいたってシンプルで、デッキ内に含まれる大量のトークン生産カードでトークンをばらまき、《無形の美徳》でのバックアップのもと盤面を制圧していきます。
以前であれば、自軍のクリーチャーを強化する手段は《無形の美徳》だけしかありませんでしたが、「闇の隆盛」で《イニストラードの君主、ソリン》という優秀な全体強化手段を手に入れました。[-2]能力の「紋章」効果は重複するので、必要であれば2回、3回と繰り返し使って対戦相手を追い詰めていきましょう。
このデッキの懸念材料として、今現在スタンダードで《死の支配の呪い》が蔓延していることがあげられます。
《無形の美徳》があればなんとか戦線を維持することも可能ですが、そうは言っても致命的なカードであることに変わりはありません。
メインボードは汎用性の高い《忘却の輪》で、サイドボード後には《存在の破棄》や《天界の粛清》などでしっかりと対策しておきたいですね。
それと、《死の支配の呪い》とは別にもうひとつ気になるのが《漸増爆弾》の存在。
《イニストラードの君主、ソリン》や《エルズペス・ティレル》のように、継続的にトークンを生み出せるカードがそれなりにあるので、《漸増爆弾》単体なら問題はないかもしれませんが、厄介なのは《裏切り者グリッサ》や《太陽のタイタン》と併用されるケースです。
その場合、こちらのトークン戦略は完全に破綻してしまうので、《忘却の輪》や《審判の日》できちんと除去するようにしたいですね。相手のデッキ次第ではありますが、サイド後であれば《虚無の呪文爆弾》なんかも良い対策になると思います。
さて、「白黒トークン」の紹介はこのあたりで切り上げて、ここからは久しぶりにローグデッキを見ていきましょう。
今回はデッキコンセプトが面白いものや、「闇の隆盛」のカードを使ってパワーアップしそうなものをピックアップしてみました。
「青緑タッチ《ケッシグの狼の地》」
6 《森》 6 《島》 2 《山》 4 《内陸の湾港》 1 《硫黄の滝》 3 《墨蛾の生息地》 2 《ケッシグの狼の地》 1 《幽霊街》 -土地(25)- 2 《瞬唱の魔道士》 4 《真面目な身代わり》 4 《原始のタイタン》 3 《霜のタイタン》 2 《聖別されたスフィンクス》 -クリーチャー(15)- |
4 《不屈の自然》 4 《太陽の宝球》 4 《思案》 4 《蒸気の絡みつき》 1 《鞭打ち炎》 1 《冒涜の行動》 2 《情け知らずのガラク》 -呪文(20)- |
1 《秋の帳》 2 《古えの遺恨》 2 《帰化》 2 《鞭打ち炎》 2 《瞬間凍結》 2 《否認》 1 《精神の制御》 1 《冒涜の行動》 1 《殴打頭蓋》 1 《解放された者、カーン》 -サイドボード(15)- |
今まで「赤緑《ケッシグの狼の地》(第80回)」、「白緑タッチ赤《ケッシグの狼の地》(第83回)」、「黒緑タッチ赤《ケッシグの狼の地》(第87回)」と様々なバージョンを紹介させていただきましたが、この「青緑」バージョンで全てのカラーコンビネーションが出揃ったことになります。
その昔《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》がスタンダードリーガルだった頃は、《霜のタイタン》で《原始のタイタン》を抑え込んでも《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》で負けてしまう、というジレンマを抱えていましたが、それは最早過去の出来事。
今ならば《原始のタイタン》や《墨蛾の生息地》を抑えこんで殴り勝つことができるでしょうし、《原始のタイタン》のみならず、《業火のタイタン》や《墓所のタイタン》にも十分に対抗できます。
当然のことながら、青を使えば《マナ漏出》などのカウンター呪文を使えるので、ミラーマッチやコントロールの多いメタゲームであれば、このアプローチにも大いに可能性があると思います。他にも《瞬唱の魔道士》で《不屈の自然》を使いまわしたりと、他の色にはない面白い動きができますね。
お次は僕の大好きなカードを使ったふたつのデッキを。
「青黒Tezzeret Summoning」
7 《島》 4 《沼》 4 《闇滑りの岸》 4 《水没した地下墓地》 4 《埋没した廃墟》 -土地(23)- 4 《マイアの超越種》 4 《大建築家》 4 《宝物の魔道士》 4 《ファイレクシアの変形者》 4 《真面目な身代わり》 1 《鋼のヘルカイト》 1 《ワームとぐろエンジン》 -クリーチャー(22)- |
4 《思案》 3 《虚無の呪文爆弾》 4 《心なき召喚》 2 《漸増爆弾》 2 《ボーラスの工作員、テゼレット》 -呪文(15)- |
3 《聖別されたスフィンクス》 1 《ワームとぐろエンジン》 1 《虚無の呪文爆弾》 2 《破滅の刃》 2 《死の支配の呪い》 3 《黒の太陽の頂点》 2 《饗宴と飢餓の剣》 1 《ボーラスの工作員、テゼレット》 -サイドボード(15)- |
第82回で解説した「青黒《心なき召喚》」の最新版がこちらです。
行弘君のカードレビューにもあるように、このデッキは《ヘイヴングルの死者》という強力な武器を手に入れました。
墓地からクリーチャーを唱えられるというのは非常に凶悪ですし、《心なき召喚》があれば、《ヘイヴングルの死者》の追加の1マナも全く気になりません。
さらに《ヘイヴングルの死者》の登場は、スタンダード環境での「無限マナ」コンボを可能にしています。
そのために使用するカードは《ヘイヴングルの死者》、《心なき召喚》、そして《ウラブラスクの僧侶》の3枚で、手順は以下のようになります。
- 戦場に《ヘイヴングルの死者》と《心なき召喚》があり、手札か墓地に《ウラブラスクの僧侶》がある状況を作る。
- 《ウラブラスクの僧侶》をキャスト→《心なき召喚》の「あなたのクリーチャーは-1/-1修整を受ける」効果で《ウラブラスクの僧侶》が墓地に落ち、「戦場に出た時」の効果を解決してマナプールに{R}{R}{R}に加える。
- そのうちの1マナを使い、《ヘイヴングルの死者》の能力を墓地にいる《ウラブラスクの僧侶》に対して起動する。
- 残った2マナのうち1つを使い、《ウラブラスクの僧侶》をキャスト。
- 2~4のサイクルを行う度にひとつずつ赤マナが増えていくので、あとは好きなだけ繰り返す。
このようにして、あなたは任意の数のマナを得られるという仕組みです。
いくらでもマナが出る以上、勝ち手段は《赤の太陽の頂点》でも何でもいいですが、最もデッキに合っているのは《危険なマイア》でしょうか。
十分なマナを用意した後に、上のサイクルの《ウラブラスクの僧侶》を《危険なマイア》に置き換えれば、「無限ダメージ」のできあがり、というわけです。
コンボの構成要素が多いので、コンボ完成まで時間がかかること、《ウラブラスクの僧侶》が単体で弱いことなど、いくつかの不安材料はありますが、「闇の隆盛」が入ったら真っ先に試してみたいデッキのひとつです。
「青緑白《出産の殻》」
7 《森》 2 《平地》 1 《島》 4 《剃刀境の茂み》 2 《陽花弁の木立ち》 4 《金属海の沿岸》 3 《ガヴォニーの居住区》 -土地(23)- 4 《極楽鳥》 3 《アヴァシンの巡礼者》 4 《ヴィリジアンの密使》 2 《幻影の像》 1 《レオニンの遺物囲い》 4 《刃の接合者》 1 《悪鬼の狩人》 1 《シルヴォクの模造品》 1 《ファイレクシアの変形者》 1 《真面目な身代わり》 1 《石角の高官》 1 《翼の接合者》 1 《酸のスライム》 1 《正義の執政官》 1 《太陽のタイタン》 1 《ワームとぐろエンジン》 1 《大修道士、エリシュ・ノーン》 -クリーチャー(29)- |
1 《漸増爆弾》 4 《出産の殻》 2 《滞留者ヴェンセール》 1 《情け知らずのガラク》 -呪文(8)- |
2 《悪鬼の狩人》 1 《ヴィリジアンの堕落者》 3 《最後のトロール、スラーン》 2 《酸のスライム》 2 《漸増爆弾》 3 《機を見た援軍》 2 《饗宴と飢餓の剣》 -サイドボード(15)- |
PTQホノルル、PTQバルセロナを連続で突破した絶好調男、kbr3が愛用しているのが「青緑白《出産の殻》」デッキです。今まで何度も紹介しているデッキなのですが、なぜ再びこのデッキかと言いますと、これもまた、《ヘイヴングルの死者》の恩恵を受けられるデッキだと考えているからです。
先ほどのデッキとは違い、《極楽鳥》やその他大量のタフネス1軍団擁するこのデッキに、《心なき召喚》を入れるわけにはいかないので、残念ながら無限コンボの搭載は難しいでしょうが、「戦場に出た時」、または「戦場を離れた時」の能力を持ったクリーチャーが多いこのデッキにも、《ヘイヴングルの死者》はうってつけの存在だと思います。
これまでであれば、デッキ内に1枚しかなく、それでいて重要性の高い《石角の高官》のようなクリーチャーを《出産の殻》で生け贄に捧げることを躊躇しなければなりませんでしたが、《ヘイヴングルの死者》がいればそんな問題ともおさらばできます。
このリストに黒は入っていませんが、《極楽鳥》《ヴィリジアンの密使》《真面目な身代わり》、そしてマナコストを踏み倒せる《出産の殻》を擁するこのデッキであれば、《ヘイヴングルの死者》のキャストに困ることも少ないでしょう。
《ヘイヴングルの死者》には実に様々な可能性が秘められていますが、このふたつのアーキタイプはスタートラインとして悪くないと思います。《ヘイヴングルの死者》、または《心なき召喚》、《出産の殻》フリークのみなさんはぜひお試しください。
「太陽拳(青白黒)」
3 《島》 4 《沼》 2 《平地》 4 《闇滑りの岸》 4 《水没した地下墓地》 4 《氷河の城砦》 4 《孤立した礼拝堂》 2 《幽霊街》 -土地(27)- 4 《幻影の像》 4 《太陽のタイタン》 1 《ワームとぐろエンジン》 2 《大修道士、エリシュ・ノーン》 -クリーチャー(11)- |
1 《虚無の呪文爆弾》 3 《マナ漏出》 2 《漸増爆弾》 4 《禁忌の錬金術》 3 《忘却の輪》 3 《堀葬の儀式》 2 《黒の太陽の頂点》 4 《ヴェールのリリアナ》 -呪文(22)- |
1 《ワームとぐろエンジン》 3 《死の重み》 3 《虚無の呪文爆弾》 2 《漸増爆弾》 2 《雲散霧消》 1 《忘却の輪》 2 《死の支配の呪い》 1 《黒の太陽の頂点》 -サイドボード(15)- |
「太陽拳」はローグデッキではありませんが、このリストは《幻影の像》、《太陽のタイタン》をともに4枚採用している上に、《堀葬の儀式》も3枚と、かなり個性の強い構成になっています。
なぜこのリストに注目したかと言いますと、「白黒トークン」の項目でお伝えしたように、今後は《太陽のタイタン》がひとつの鍵になると思っているからです。相手の戦線を壊滅させられる《漸増爆弾》はもちろんのこと、「闇の隆盛」で帰ってきた《進化する未開地》のおかげで、以前よりも墓地にカードが溜まりやすくなりますからね。
その《進化する未開地》も、今後のスタンダードを担う重要なカードで、これによって今まではできなかった色の組み合わせも可能になるでしょう。先ほどの「白黒トークン」はその好例で、《進化する未開地》がなければ、とてもじゃありませんが満足のいくマナベースの構築はできません。
僕が「太陽拳」を毛嫌いしている最大の原因は、そのマナベースにあったので、《進化する未開地》の登場は、それを変えてくれるかもしれません。
「青白コントロール」
12 《平地》 5 《島》 4 《氷河の城砦》 3 《金属海の沿岸》 1 《幽霊街》 -土地(25)- 4 《幻影の像》 4 《悪鬼の狩人》 4 《石角の高官》 4 《太陽のタイタン》 2 《ウスーンのスフィンクス》 -クリーチャー(18)- |
4 《ギタクシア派の調査》 4 《金輪際》 4 《忘却の輪》 3 《滞留者ヴェンセール》 1 《ギデオン・ジュラ》 1 《記憶の熟達者、ジェイス》 -呪文(17)- |
2 《精神的つまづき》 4 《送還》 4 《戦慄の感覚》 3 《平和な心》 1 《大笑いの写し身》 1 《機を見た援軍》 -サイドボード(15)- |
最後にご紹介させていただくのは、「闇の隆盛」の登場や、現在のメタゲームとは全く関係なく、ただ単にリストの変態さに感銘を受けたからです。
《ギタクシア派の調査》→《金輪際》の流れだったり、《ウスーンのスフィンクス》+《滞留者ヴェンセール》で何回も《嘘か真か》だったりと、いくつもの面白テクニックが凝縮されています。
「青白Delver-Blade」に対しては分かりませんが、《石角の高官》+《滞留者ヴェンセール》コンボのおかげで、妨害手段に乏しい「青白人間ビートダウン」相手には相性が良さそうに見えますね。面白いデッキ好きのみなさんはぜひ一度手にとってみてください。
今週は以上になります。今週末からは、現実世界で「闇の隆盛」入りの大会が行われるようなので、来週からはその結果を追いかけようと思っています。
それでは、また来週ー!
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