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戦略記事

津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ

第63回:日本選手権・トップ8デッキ総括

読み物

津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ

2011.07.20

第63回:日本選手権・トップ8デッキ総括


 こんにちはー。

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 先週末は日本選手権でした。本戦だけでなく、レガシー選手権やプロツアー予選、グランプリトライアルなど、併催イベントも盛り沢山の大会でしたが、みなさん楽しんでいただけたでしょうか?
 本戦に関して言えば、参加人数が358人という膨大な数に膨れ上がっており、これは日本選手権だけに限らず、世界各国の選手権の歴史の中でも1位だそうです。併催イベントも大盛況だったようですし、みなさんのおかげで素晴らしいイベントになりました!

 僕はライターとして参加させていただいた他に、ニコニコ生放送にもゲストとして参加させていただきました。
 終始緊張していて声が小さかったり、なかなか口が動かなかったりと反省点の多い内容でしたが、非常にいい経験をさせていただけました。今後は機会があれば僕個人で生放送をしたりして、生放送にも慣れていきたいです。

 参加された方々、ライターやジャッジや裏方のみなさま、他にもこのイベントを盛り上げてくださった読者のみなさま、お疲れ様でした。


 今週はそんな日本選手権本戦の中から、トップ8に残ったデッキを特集していきます。
 なお、KJ(鍛冶 友浩)の書いたDeck Techも合わせて読んでいただけると、より一層楽しんでいただけるかと思います。

 この中でお勧めのデッキは、ダントツで角岡さんの「緑単エルドラージ」ですね。強い、面白い、そしてかっこいいと、子供心をくすぐる要素を全て兼ね備えています。
 今週の記事では紙面の都合もあり触れることができないのですが、また別の機会があればぜひ紹介させていただきたいと思っています。

 まずはKJが記事の中でまとめてくれた、全体のデッキ分布を見てみましょう。


デッキブレイクダウン

デッキタイプ
赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート 80
赤単 43
白青コントロール 33
鍛えられた鋼 27
青黒コントロール 22
Caw-Blade 21
青黒テゼレイター 18
青赤《欠片の双子 16
エスパーコントロール 10
黒赤吸血鬼 7
緑単エルドラージ 7
白緑ビートダウン 7
ボロス 7
出産の殻 6
青赤《紅蓮術士の昇天 6
黒単吸血鬼 5
黒単コントロール 4
青黒赤《欠片の双子 4
エルフ 3
バント 3
同盟者 3
緑青赤ターボランド 4
純鋼の聖騎士 2
緑白黒《復讐蔦 2
青緑エルドラージ 2
緑青赤《欠片の双子 2
青白緑コントロール 2
新鮮な肉 1
青赤白《欠片の双子 1
集団変身 1
白単エメリアコントロール 1
青白ビートダウン 1
無限ライフ 1
黒単感染 1
緑単ビッグマナ 1
緑赤ビッグマナ 1
大建築家 1
緑単感染 1
緑青感染 1
無色コントロール 1
青黒赤《紅蓮術士の昇天 1
緑白エルドラージi 1
赤緑《復讐蔦 1

 ここにきて「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」が復権しているのが印象的です。2位の「赤単」に倍近くの差を付けた、この大会における大本命といった扱いですね。

 「白単《鍛えられた鋼》」はもう少しいるかと思っていたのですが、使う予定だったプレイヤーの何人かが、メタられ過ぎていると予想してデッキを変えたという話も聞きました。
 「青白コントロール」と「青黒コントロール」は、それなりの数がいたわりには勝ち切れなかったという印象ですね。

 リミテッドラウンドもあったので一概には言えないのですが、とりあえずトップ8のデッキ分布も見てみましょう。

優勝 「白単《鍛えられた鋼》」
準優勝 「緑白ビートダウン」
3位 「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」
4位 「白青《鍛えられた鋼》」
5位 「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」
6位 「青黒テゼレイター」
7位 「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」
8位 「青黒コントロール」

 母数が多かったとは言え、トップ8に3人ものプレイヤーを送り込んだ「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」はさすがの強さですね。
 逆に数が少なめだった割りに2人を送り込んだ「白単《鍛えられた鋼》」の強さも際立っています。
 他のデッキは個性の強い仕上がりになっているので、解説を交えながらお伝えしていきます。


 それでは、デッキの解説に移りましょう。


「白単《鍛えられた鋼》」

石田 龍一郎
日本選手権2011・優勝[MO] [ARENA]
11 《平地
4 《墨蛾の生息地
3 《激戦の戦域

-土地(18)-

4 《メムナイト
4 《羽ばたき飛行機械
4 《信号の邪魔者
4 《きらめく鷹
4 《大霊堂のスカージ
4 《鋼の監視者
3 《磁器の軍団兵

-クリーチャー(27)-
4 《オパールのモックス
4 《急送
3 《きらめく鷹の偶像
4 《鍛えられた鋼

-呪文(15)-
3 《呪文滑り
4 《コーの火歩き
2 《精神的つまづき
2 《天界の粛清
4 《忠実な軍勢の祭殿

-サイドボード(15)-

 先週紹介した「白単《鍛えられた鋼》」が見事に優勝を勝ち取りました。しかし石田さんのリストは、先週紹介したMOの平均的なリストとは一線を画しています。

 決勝の中継を見た方はご存じかもしれませんが、このデッキの特徴は「ブン回り」要素を極限まで高めているところです。

 具体的には4枚ずつ搭載された《羽ばたき飛行機械》と《オパールのモックス》がそれにあたり、これにより1ターン目に展開できるパーマネント数が圧倒的に増えています。こうすることで、ただでさえ強力な《鋼の監視者》や《鍛えられた鋼》はいつも以上にその力を発揮できるわけです。

 その半面で0マナカードの増量というのは、先週紹介したこのデッキが抱えている問題である「引きムラ」の危険性が増すという課題もあります。《羽ばたき飛行機械》は、何のバックアップもなければ所詮ただの0/2でしかありませんからね。
 
 ですが、石田さんのリストはその「引きムラ」をできるだけ緩和するように組まれています。それこそが、石田さんの優勝した原動力になったと思われる《激戦の戦域》です。

 みなさん御存じの通り、この土地は相手がクリーチャーデッキだった場合に奪われてしまうという危険性を孕んでいます。しかしながら上記のデッキ分布を見てもらえば分かるように、そもそもクリーチャーデッキが少なかったことがこの戦略の正しさを証明していますし、仮に相手のデッキがクリーチャーデッキであろうとも、大量の低マナ域クリーチャーを《激戦の戦域》で後押しするというのは、有効なプランでした。

 これだけの軽量クリーチャーと共に《激戦の戦域》を使用すれば、4、5ターン目にはゲームが終わるので、もしも相手に《激戦の戦域》を奪われたとしても、それまでに致命傷を与えておくことが可能だからです。

 石田さんの取った、メインから《激戦の戦域》戦略はメタゲームを度外視しても非常に良いプランに見えますし、それ以外の部分にも石田さんの細かい気配りが感じられるカード選択が多いです。

 《きらめく鷹》は1マナ2/2飛行というだけでは、あまり有能なクリーチャーとは言えませんが、このクリーチャーが真価を発揮するのは、対戦相手が《帰化》系のカードを入れてくる2ゲーム目以降です。

 下で紹介する他のデッキリストを見てもらえれば分かるのですが、この「白単《鍛えられた鋼》」デッキはかなり意識されていました。僕が予想していたよりもみなさんはこのデッキをメタっていて、《忍び寄る腐食》まで入っているリストが数多くあったくらいです。そんな中でも《帰化》系のカードにひっかからない《きらめく鷹》なら、サイド後でも安定してダメージを稼いでくれます。

 《鋼の監視者》と《鍛えられた鋼》の恩恵を受けられないのは残念ですが、その「パワー不足」も前述の《激戦の戦域》でカバーできますし、これからこのデッキがメタられていく中での必須パーツに思えますね。

 サイドボードは、先週紹介した「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」対策の《攻撃的な行動》+《ぐらつく峰》セットが抜けていますが、これはメインボードの高速化を受けてのことでしょう。

 その代わりに、環境に溢れる《自然の要求》対策となる《精神的つまづき》を少量だけ採用して、それで浮いた枠を他のカードスロットに割くことで、手広く色んなデッキに対応できるようになっていますね。
 《忠実な軍勢の祭殿》もきっちり4枚採用していますし、これもまた《激戦の戦域》のおかげでカードパワーが上がっているのも見逃せないポイントです。


 デッキの解説は以上になるのですが、このように実に様々な工夫が織り込まれていました。MOでも早速《きらめく鷹》を採用したリストと当たりましたし、ナック(中村 修平)さんとKJも、このデッキは強すぎると太鼓判を押していました。無敗で日本選手権を優勝したこのデッキを、みなさんにもぜひ一度お試しいただきたいです。


「白青《鍛えられた鋼》」

井川 良彦
日本選手権2011・4位[MO] [ARENA]
7 《平地
4 《氷河の城砦
4 《金属海の沿岸
4 《墨蛾の生息地

-土地(19)-

4 《メムナイト
4 《信号の邪魔者
4 《大霊堂のスカージ
4 《呪文滑り
4 《鋼の監視者
1 《刃砦の英雄

-クリーチャー(24)-
3 《オパールのモックス
3 《起源の呪文爆弾
4 《急送
2 《定業
4 《きらめく鷹の偶像
4 《鍛えられた鋼

-呪文(17)-
2 《刃砦の英雄
4 《統一された意思
3 《天界の粛清
2 《存在の破棄
2 《屈折の罠
2 《激戦の戦域

-サイドボード(15)-

 こちらも先週紹介したリストに似ているのですが、先週からの変更点は《刃砦の英雄》の採用と、サイドの《マナ漏出》が《統一された意思》になったことでしょう。

 《刃砦の英雄》は、イメージとしては石田さんの採用していた《きらめく鷹》に近く、サイド後の《帰化》系のカードが効かない上に《紅蓮地獄》も効かないので、対策カードの対策にもってこいの1枚です。タフネスとマナコストが高いため、《漸増爆弾》や《弱者の消耗》にひっかかりませんし、《黒の太陽の頂点》も効きづらいです。

 《統一された意思》は、井川君曰く《紅蓮地獄》に対して《マナ漏出》では打ち消せない場面が多く、クリーチャー数で負けていることがほとんどないデッキなので変更を施したそうです。《屈折の罠》まで入れているので、このリストは《紅蓮地獄》に対してかなりの耐性が付いていますね。


 最後に「白単」と「白青」の簡単な比較なんですが、「《鍛えられた鋼》」デッキ対策が進む今後は、今まで以上に「白青」バージョンに注目が集まるでしょう。井川君に準々決勝で敗れてしまった玉田さんの、「「白単」バージョン相手なら本当に2:98くらいの相性差がある。」という言葉が示すように、《忍び寄る腐食》ですらもカウンター呪文の前では無力ですからね。


「青黒テゼレイター」
八十岡 翔太
日本選手権2011・7位[MO] [ARENA]
4 《
3 《
4 《忍び寄るタール坑
4 《水没した地下墓地
4 《闇滑りの岸
4 《地盤の際
1 《墨蛾の生息地

-土地(24)-

1 《ワームとぐろエンジン
1 《聖別されたスフィンクス

-クリーチャー(2)-
4 《永遠溢れの杯
3 《定業
3 《コジレックの審問
2 《見栄え損ない
3 《漸増爆弾
2 《倦怠の宝珠
2 《マナ漏出
2 《破滅の刃
2 《転倒の磁石
1 《冷静な反論
1 《弱者の消耗
1 《黒の太陽の頂点
1 《ソリンの復讐
1 《殴打頭蓋
2 《ジェイス・ベレレン
4 《ボーラスの工作員、テゼレット

-呪文(34)-
3 《方解石のカミツキガメ
1 《聖別されたスフィンクス
2 《見栄え損ない
2 《強迫
1 《倦怠の宝珠
4 《瞬間凍結
1 《破滅の刃
1 《ジェイス・ベレレン

-サイドボード(15)-

 こちらはヤソさんの「青黒テゼレイター」です。第57回で紹介した、グランプリ・シンガポールでトップ8に入賞したデッキのアップデートバージョンなのですが、最も大きな違いは「フィニッシャーの増量」にあります。

 以前のリストが《ワームとぐろエンジン》1枚、《ボーラスの工作員、テゼレット》3枚、《精神を刻む者、ジェイス》2枚の計6枚に対し、今回のリストは《聖別されたスフィンクス》1枚、《ワームとぐろエンジン》1枚、《殴打頭蓋》1枚、《ボーラスの工作員、テゼレット》4枚、《ソリンの復讐》の計8枚になっています。

 この「フィニッシャーの増量」はゲームの運び方が簡単になるということも示唆していて、特に《聖別されたスフィンクス》と《殴打頭蓋》を入れたおかげで、どうでもいいクリーチャーに除去を使わざるをえない展開になる回数が減っているのが重要なポイントです。

 ゲームが長引くということは、相手の脅威全てを対処した上で勝たなければならないのですが、長期戦になると除去を撃つ対象やタイミングをひとつ間違えるだけで負けてしまうことが多々あります。
 ヤソさんくらいずば抜けた実力があればそれを毎ゲーム当然のようにこなせるでしょうが、僕のような平凡なプレイヤーにはなかなかに難しいものです。しかし今回は以前よりも多少簡単になっているので、これからこのデッキを使ってみようという方にも優しい構成になっていると思います。

 サイドボードの《方解石のカミツキガメ》と追加の《聖別されたスフィンクス》も、ゲームを素早く終わらせることに貢献します。《方解石のカミツキガメ》は「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」に効果的ですし、《聖別されたスフィンクス》はコントロールデッキ相手なら概ねサイドインできるコントロールキラーです。

 そうは言っても難しい部類のデッキなことには変わりはありませんが、今乗りに乗っているヤソさんのデッキに、みなさんもぜひ挑戦してみてください。


 最後に、今回のリストだけに限らず、ヤソさんのデッキの長所を挙げておきます。ヤソさんの「青黒テゼレイター」は、アーティファクトの総数が少なめに仕上げられているのですが、これはサイド後にアーティファクトと《ボーラスの工作員、テゼレット》を抜いて普通の「青黒コントロール」に変形できるという意味を持ちます。
 「白単《鍛えられた鋼》」デッキのせいで、《石鍛冶の神秘家》禁止後も相変わらず《帰化》系のカードは減っていないので、対戦相手が《帰化》系のカードを大量に入れてくるようであれば、「青黒コントロール」へとシフトチェンジするといいでしょう。


「青黒コントロール」

高尾 翔太
日本選手権2011・6位[MO] [ARENA]
6 《
4 《
4 《忍び寄るタール坑
4 《闇滑りの岸
4 《水没した地下墓地
4 《地盤の際

-土地(26)-

3 《真面目な身代わり
3 《墓所のタイタン
1 《ワームとぐろエンジン

-クリーチャー(7)-
4 《定業
4 《コジレックの審問
1 《強迫
3 《漸増爆弾
4 《マナ漏出
2 《破滅の刃
1 《喉首狙い
2 《冷静な反論
2 《黒の太陽の頂点
4 《ジェイス・ベレレン

-呪文(27)-
2 《瞬間凍結
3 《見栄え損ない
2 《記憶殺し
2 《リリアナ・ヴェス
2 《呪文滑り
1 《強迫
3 《広がりゆく海

-サイドボード(15)-

 高尾君のデッキはオーソドックスな「青黒コントロール」です。「白単《鍛えられた鋼》」を意識して、メインから《漸増爆弾》と《黒の太陽の頂点》を多めに取っているのが特徴的ですね。
 ただこのデッキが最も苦手としているのが、日本選手権を征した「白単《鍛えられた鋼》」デッキなので、サイドボードにはもう少し対策カードを、具体的には《弱者の消耗》を入れてもよかったように思えます。

 あとは比較的まとまったリストになっていて、基本セット2012より《真面目な身代わり》を得たことと、アーティファクトの隆盛っぷりに環境の除去が《破滅の刃》になってきたことを受け、《墓所のタイタン》を多めに採用しているのが印象的です。


 個人的には、「白単《鍛えられた鋼》」にさえ勝てるならまだまだ上位に残れるデッキだと思うので、その部分だけは妥協せずに調整するようにしましょう。今のメタゲームであれば、2マナの単体除去は全て《破滅の刃》にしてもいいでしょうし、サイドボードに《弱者の消耗》を入れるといいでしょう。

「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」

三原 槙仁
日本選手権2011・3位[MO] [ARENA]
10 《
5 《
4 《溶鉄の尖峰、ヴァラクート
4 《進化する未開地
2 《広漠なる変幻地
2 《新緑の地下墓地
1 《怒り狂う山峡

-土地(28)-

1 《極楽鳥
3 《草茂る胸壁
4 《ムル・ダヤの巫女
4 《原始のタイタン
2 《ゼンディカーの報復者

-クリーチャー(14)-
2 《稲妻
4 《不屈の自然
2 《探検
4 《耕作
1 《転倒の磁石
1 《召喚の罠
4 《緑の太陽の頂点

-呪文(18)-
1 《強情なベイロス
1 《最後のトロール、スラーン
1 《ガイアの復讐者
4 《紅蓮地獄
1 《自然に帰れ
1 《転倒の磁石
3 《記憶殺し
2 《忍び寄る腐食
1 《

-サイドボード(15)-
玉田 遼一
日本選手権2011・5位[MO] [ARENA]
10 《
5 《
4 《溶鉄の尖峰、ヴァラクート
4 《怒り狂う山峡
1 《霧深い雨林
1 《新緑の地下墓地
2 《進化する未開地
1 《広漠なる変幻地

-土地(28)-

4 《真面目な身代わり
2 《ムル・ダヤの巫女
4 《原始のタイタン
2 《ワームとぐろエンジン

-クリーチャー(12)-
4 《召喚の罠
4 《不屈の自然
4 《探検
4 《カルニの心臓の探検
2 《耕作
2 《砕土

-呪文(20)-
4 《強情なベイロス
4 《自然の要求
4 《紅蓮地獄
3 《忍び寄る腐食

-サイドボード(15)-
伊藤 光英
日本選手権2011・8位[MO] [ARENA]
10 《
5 《
4 《溶鉄の尖峰、ヴァラクート
1 《怒り狂う山峡
3 《広漠なる変幻地
3 《進化する未開地
2 《新緑の地下墓地

-土地(28)-

4 《真面目な身代わり
4 《原始のタイタン
1 《業火のタイタン
1 《ワームとぐろエンジン
2 《ゼンディカーの報復者

-クリーチャー(12)-
4 《噴出の稲妻
4 《不屈の自然
4 《探検
3 《カルニの心臓の探検
3 《砕土
2 《召喚の罠

-呪文(20)-
2 《強情なベイロス
2 《最後のトロール、スラーン
3 《自然の要求
2 《紅蓮地獄
3 《転倒の磁石
2 《金屑の嵐
1 《召喚の罠

-サイドボード(15)-

 今年の日本選手権で、最も多くのプレイヤーをトップ8に導いたのは「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」でした。
 禁止カード後で最も注目されていたデッキであり、さらに基本セット2012から《不屈の自然》と《真面目な身代わり》を得たことで、日本選手権で1番人気のデッキとなりました。

 三原さんは《緑の太陽の頂点》型を選んでいますし、残る2人のリストも微妙に違いがあるのですが、全員が《》を10枚まで削って、14枚もの緑マナを確保しているのは興味深いですね。
 今までこのアーキタイプを紹介する度に、「緑マナは13枚以上入れましょう」と口をすっぱくして言ってきましたが、彼らはそれ以上の安定性を求め、見事トップ8を射止めています。

 サイドボードにも共通点が多く、少なくとも3人とも「白単《鍛えられた鋼》」デッキを強く意識していたことが伺えます。伊藤さんのみ《忍び寄る腐食》を採用していませんが、それでもメインから《噴出の稲妻》を4枚取っていますし、サイドにも必要最低限のカードは用意しています。

 個人的にはメインから《召喚の罠》4枚、3マナ以下のマナ加速もきっちり16枚入れた玉田さんのリストが1番好きですね。サイドボードにコントロール対策がないのは気になりますが、玉田さん曰く、コントロールには何もなくても十分に相性がいいので、サイドボードを用意しなかったとのこと。
 サイドボードに「白単《鍛えられた鋼》」対策を多めにとったのは、玉田さん本人が「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」か「白単《鍛えられた鋼》」を使うか直前まで悩むほど「白単《鍛えられた鋼》」デッキが強かったからだそうです。

 これまで幾度となく紹介してきたデッキなので、他に書くことがあまりなかったりするので、久しぶりにこのデッキを相手取る場合の《広がりゆく海》の使い方でも解説してみましょう。


~《広がりゆく海》の対象~

 端的に言えば、目指すところは2つしかありません。即ち、緑マナを縛りきるか、《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》を縛りきるかです。
 残念ながらこの答えは本当にケースバイケースとしか言えないのですが、もしも「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」のデッキリストを、もっと正確に言うなら《》と緑マナの総数を知っている場合は話は別です。

 例えば、今回の3人のリストのように《》が10枚、緑マナの総数が14枚のリストだと仮定します。こちらのデッキは上で紹介した高尾さんの「青黒コントロール」だと思ってください。

 この場合僕は基本的に緑マナは狙わず、《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》か《》だけに狙いを定めます。理由としてはマナ加速全てをカウンターしながら、緑マナを全て縛り、その間にフィニッシャーまで繋ぐというのはいささか非現実的だと思うからです。
 デッキにカウンターの総数は6枚だけなので、仮にマナ加速を全て無視したとしても、いつかは《原始のタイタン》が通ってしまうと思ってプレイするので、その「《原始のタイタン》が通ってしまった時」にどうするか、という問題の答えが「《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》を縛りきる」になります。

 仮定の話ばかりで申し訳ないのですが、相手のデッキに《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》が入っていないと《原始のタイタン》はただの6/6トランプルにすぎません。これならば《墓所のタイタン》で相打ちしたり、《破滅の刃》でもなんでもいいので、とにかくこちらが死ぬまでに除去すれば問題なくなります。玉田さんのように《怒り狂う山峡》が4枚入っている場合はまた別ですが、今のところ少数派なのであまり意識しなくていいでしょう。

 つまり《広がりゆく海》と《地盤の際》の組み合わせで、《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》を破壊しつくすことができたなら、その段階であなたは大きく勝利に近づいているわけです。《》が10枚だけのリストなら、《》を2枚ほど《広がりゆく海》で水没させてやれば、相手の《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》は4回しか誘発しないので、似たような状況が作り出せます。

 相手のデッキリストを知っているというのは、《記憶殺し》などで相手のデッキを見たり、大きめのイベントのトップ8で相手のリストをもらっている時くらいしかありませんが、《記憶殺し》などでライブラリーを見れた場合は、フィニッシャーの種類のチェックに加え、《》の数をチェックするのをお忘れなく。

 なお、相手のリストを知らない場合でも、僕は《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》に狙いを定めるようにしていることも明記しておきます。理由としては、先程お伝えしたように、いつかは《原始のタイタン》が通ってしまうつもりでプレイしていますし、《真面目な身代わり》の登場で緑マナを縛りきるのは今まで以上に困難に感じるからです。

 例外として、こちらの手札に早期の段階からフィニッシャーがあり、すみやかにゲームに勝てそうな場合や、サイド後に《最後のトロール、スラーン》が早く出てきてしまうのを防ぎたい場合は緑マナを狙うのも良いと思います。


 あまり今回の内容には相応しくないかと思ったのですが、個人的に日本選手権でおされ気味だった青いコントロールにもっと活躍してほしいとの想いから、青いデッキの目線で書いてみました。

 それでは、最後にトップ8の中で最もめずらしいデッキを紹介してお別れしましょう。


「緑白ビートダウン」

藤本 知也
日本選手権2011・準優勝[MO] [ARENA]
4 《
3 《平地
3 《活発な野生林
4 《陽花弁の木立ち
4 《剃刀境の茂み
2 《湿地の干潟
2 《新緑の地下墓地
4 《地盤の際

-土地(26)-

4 《極楽鳥
4 《巣の侵略者
3 《水蓮のコブラ
3 《刃の接合者
4 《刃砦の英雄
1 《強情なベイロス
3 《酸のスライム
3 《ワームとぐろエンジン
1 《大修道士、エリシュ・ノーン

-クリーチャー(26)-
3 《未達への旅
1 《出産の殻
4 《野生語りのガラク

-呪文(8)-
3 《呪文滑り
2 《孤独な宣教師
1 《最後のトロール、スラーン
1 《酸のスライム
1 《ガイアの復讐者
2 《天界の粛清
2 《忘却の輪
1 《忍び寄る腐食
2 《召喚の罠

-サイドボード(15)-

 オープン予選から破竹の勢いで勝ち続けた「ふっじー」さんこと藤本さんのデッキは、殿堂入りプレイヤーであるローリー(藤田剛)さん謹製の「緑白ビートダウン」でした。
 「赤単」デッキのようにライフを愚直に攻めるデッキではなく、《未達への旅》や《酸のスライム》でのコントロール要素を兼ねた中速デッキです。第48回の連載でお伝えした、町田さんの「ボロス」に似た思想ですね。

 個人的に「緑白」という色は対「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」戦の勝率が悪い、というイメージがあるのですが、ふっじーさんは3回参加したオープン予選で4回、本戦で2回の合計6戦を全勝したそうなので、むしろ相性はいいのかもしれません。
 《刃砦の英雄》さえ出てしまえば、その圧倒的なクロックを《酸のスライム》のランデスや《未達への旅》でバックアップするだけでゲームに勝ててしまえるでしょう。

 これとは別に、ローリーさんたちが使ったもうひとつのバージョンも存在します。

藤田 剛史
日本選手権2011(スタンダード)[MO] [ARENA]
6 《平地
6 《
3 《活発な野生林
4 《剃刀境の茂み
4 《陽花弁の木立ち
2 《地盤の際

-土地(25)-

4 《極楽鳥
4 《巣の侵略者
4 《戦隊の鷹
4 《ミラディンの十字軍
4 《刃砦の英雄
2 《酸のスライム

-クリーチャー(22)-
4 《未達への旅
3 《饗宴と飢餓の剣
4 《野生語りのガラク
2 《ギデオン・ジュラ

-呪文(13)-
4 《孤独な宣教師
3 《復讐蔦
2 《天界の粛清
2 《忘却の輪
2 《忍び寄る腐食
2 《地盤の際

-サイドボード(15)-


 こちらは《戦隊の鷹》と《饗宴と飢餓の剣》を投入したバージョンになっています。《饗宴と飢餓の剣》を採用したことを受け、3マナ域が《刃の接合者》から《ミラディンの十字軍》に変わっていますね。上のバージョンとの比較としては、クリーチャーデッキをどう意識していたか、に尽きると思います。

 藤本さんのリストは、メインから大量に《ワームとぐろエンジン》を取っていますし、1枚だけではありますが《強情なベイロス》までも投入されています。一方でローリーさんが使用したリストは、コントロールに強い《戦隊の鷹》と《饗宴と飢餓の剣》を、そしてそれと組み合わせることで瞬殺が狙える《ミラディンの十字軍》をも入れることで、コントロールや「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」戦でのキルターンを早めるように工夫されています。その分、サイドボードにはクリーチャー対策を多めに取っていますね。

 どちらのバージョンもトップ16にひとりずつ送り込んでいることもあって、どちらがいいか一概には判断できませんが、個人的には4枚差しの多い下のリストの方が好みです。



 今週は以上になります。来週は今週末に行われる「チェコ選手権」の中から、面白いデッキを特集していきたいと思っています。
 チェコと言えば、日本でもお馴染みのMartin Juzaが何を使うかにも要注目ですね。今のところまだデッキは決まってないそうですが、彼のことなのできっと面白いデッキを用意してくれるはずです!

 それでは、また来週ー!

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