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プレインズウォーカーのためのイニストラード案内 ネファリアとアンデッド
プレインズウォーカーのためのイニストラード案内 ネファリアとアンデッド
Magic Creative Team / Tr. Mayuko Wakatsuki / TSV Yohei Mori
2011年10月19日
イニストラードの住人で、貿易に関心がある者はネファリアに引き寄せられる。その州は職業と人種が興味深く混ざり合っている地である。ネファリアには多数の街があり、その秩序はアヴァシニアンの聖職者たちとその代理人によって維持されている。そこには供給源となる人間たちが「貯蓄」されており、中でもストロムカーク家がその代表である。隊商が行き交う賑やかな交易路があり、町民は街と街の間で獲物を仕留めようとする爪の群れに右往左往する。そして消えることのないネベルガスト、「不眠の吐息」とも呼ばれる海霧が潮とともに満ちては引き、幽霊の群れをもたらす。
DaarkenとSteve Prescottによるコンセプト・アート |
ネファリアでは、スカーブ師(錬金術的に肉体を構築され生気を与えられたスカーブの創造者たち)とグール呼び(屍術士見習い)も同様に練習のため、また技術を研鑽するために、疑い深い町民やアヴァシニアンの権威からの邪魔をほとんど、もしくは全く受けないような特異な場所を見つけることができる。両者は極めて秘密主義を通しており、その業界は一般的に人間の庶民たちの間では怖れられているが、ストロムカークの吸血鬼とネファリアの商人たちにとっては金づるであり、地方の居酒屋で交わされる噂の中だけに留まっている限りは、彼らの秘術的小道具と不気味な奉仕は大目に見られている。
メツァラーとして知られる商人たちが、ネファリアを固く一つに繋ぎ止める役割を果たしている。それは個人事業主たちが一つにまとまったもので、物々やサービス、そしてもちろん貨幣のやり取りを行う。
ほとんど樹木のない地域
ネファリアには僅かな森林があったが、前世紀にその数少ない森が木のくいやその他の武器となる事を怖れた吸血鬼たちによって、切り倒されたか破壊された。ストロムカーク家の始祖ルノは悪賢くその森林地帯を撤去した。初期には、その魅力と大きな幸運によって彼は大衆を職人に仕立て上げ、素晴らしい都市や誇れる船、そして活発な州の貿易を構築する奮闘を支えた。これらは全て何かしら木を基礎としている。成功を収めた富裕な人間たちはストロムカーク家にとって良いビジネス相手となり、ルノはネファリアの謎めいたパトロンのような存在となって熟達の職人たちを支え、建築物、塔、船の建造を依頼した。一方で錬金術師や権威者から成る、吸血鬼に好意的な組織にも資金を供給した。そして、ネファリアはその木に熟達した職人たちとその芸術性とで広く知られるようになった。ネファリアの建造物、船、礼拝堂、そして家は全て他の州とは明確に異なり、見事に芸術的なものである。
《島》 アート:Adam Paquette |
水域
この州は水域によって隔てられている。海への出入り(全州の中で最も容易)、内陸深くへと伸びる多くの河川、そして三角州、湿地帯、湖。水域はこの地での貿易を可能にし、また澄んで神秘的な雰囲気をネファリアへともたらしている。雲と月はほとんどの場所で、最も高くも低くも見える。
銀の砂浜
ネファリアの海岸線は銀の砂浜から成り、それは岩と海岸洞窟、そして時折の巨大な岬で切れ切れになりながら、果てしない距離にわたっている。海岸の砂には銀の粒が豊富に含まれ、他の州からの訪問客の目をくらます超自然的な揺らめく光を与えている。だがそこは休暇のための場所ではない。浜辺に落し物を拾う者達を招くには脅威はあまりに膨大であり、海そのものもまた非常に危険である。魔法と地形とをよく知る熟練のネファリアの水兵たちだけが、海に出て魚や交易品、宝物を持ち帰る。
ネファリアの港町
ネファリアには海岸沿いに三つの主な港町が存在する。ヘイヴングル、ドルナウ、セルホフである。
ヘイヴングル
三つのうち最大の港町ヘイヴングルは、シルブールリンド川の河口に位置している。住民は人間の職人、造船技師、鍛冶屋、交易商人からなる。ここでアヴァシニアンの教会は、急成長する貿易と市場に参加するために強い存在感を示している。だが多くのネファリア人たちは聖職者たちを鷹のように慎重に観察している。教会がスレイベンとの交易をもたらしているうちは、彼らはネファリアの貿易の中心となりうる。
Adam Paquetteによるコンセプト・アート |
エルゴード訓練場
一昔前にこの小さな砦に設立された、アヴァシン教会の派遣団はエルゴード訓練場として知られている。ここではアヴァシンの言葉を広め、人々を守るために新入りの聖戦士が訓練を受けている。ひとたび訓練を受けたなら、卒業生たちは少人数の集団(2人か3人)となって近隣の街へと送られ、前哨地を設立する。彼らは「アヴァシンの武器」として知られ、保護と安全を提供しつつ教会への信頼を集めることを試みる。多くの町民はこれらの「一派」を警戒するかあからさまな不信を示し、むしろ自らの血や汗、古来からの伝承、そして迷信によって自衛しようとする。
死体交易
聖戦士の存在があってさえ、死体は金になる。最多の人口を抱えるヘイヴングルでは、死体泥棒が蔓延している。高い金を支払ってくれるグール呼びやスカーブ師のために、彼らは死体を発掘しエルドワルと呼ばれる地下通路網を使用して輸送している。
ルーデヴィック
最も有力なネファリア商人はウルムのルーデヴィック、隠遁生活を営む喘息持ちの錬金術師である。ルーデヴィックが服用する薬と有毒な蒸気の吸入が、実験をやめる以外に選択肢のない状況に自身を追い込み、かつ彼自身と協力者を大金持ちにするという問題のためにルーデヴィックの膨大な知性を捧げるしかなくなったと噂する者がいる。ルーデヴィックは今も錬金術の技で遊んでいると悪口を言いふらす者もいる。
ドルナウ
ドルナウはストロムカークの吸血鬼がその始祖ルノの下、ステンシアの外で先祖代々の荘園と商業の中心地を設立した地である。もし血を望むなら、ドルナウでそれを得ることができる。特別美味しい血を所有する人間たちは最高級家畜のように扱われ、贅沢な奴隷の身分を享受しながらイニストラードの他のあらゆる危険から守られている。これは全てストロムカークの荘園の、優雅なバスルームとマホガニーの書斎で行われている。
ネファリアでは、吸血鬼が人間の中を歩かなければならない時には、彼らはその魅力でもって変装し、人間の隣人から追い出されないようにする。時折、新たに生まれた吸血鬼が上品な礼節の一家から離れ、血に浸る摂食の狂乱へと走ることがある。ストロムカークではこういった事例をしばしば可能な限り迅速に、静かに処理する。特にその吸血鬼が血統から外れたならず者である場合には。
長刀
これらの戦士たちは聖戦士ではないが、人間の吸血鬼ハンターからなる紛れもない結社である。特にアンデッドを破壊し、できればルノ自身を殺すためにドルナウへとやって来ている者たちもいる。彼らは秘密主義の集団であり、身に着け、記述し、また身ぶりで表現される手の込んだ象徴的な暗号で互いを認識する。ルノは長刀の存在を知っているが、彼らは吸血鬼の中でもストロムカークが最も愚鈍で不愉快と考えている者たちを殺しているため、ある程度までは見て見ぬふりをしている。つまり、長刀の者たちはストロムカークの吸血鬼に知られてしまったなら、情け容赦なく追い詰められ滅ぼされてしまうであろう。
ドルナウの商人
メツァラーはここで船、手工業品、他の州からの物品(スレイベンからの聖なる品のような)、そして武器を適正な価格で取引している。
Adam Paquetteによるコンセプト・アート |
セルホフ
靄が立ち込める静かなセルホフの港はネベルガスト、霊魂の霧が最も活動的な場所である。その霧はほとんど永続的に街と近隣に広がるモークラットの沼を覆っている。活動的な霊魂は人間に追い払われるが、他の者の注意をも引き付ける。すなわち幽霊のエネルギーを実験しようとするスカーブ師と錬金術師たちである。
セルホフの支配者階級はネファリアの他の街とは異なる塔や尖塔に居住している。ネファリア人が彼らの最南端の街について語る時には、「セルホフの尖塔群」という表現がしばしば使用される、。
潮の干満とネベルガスト
ここセルホフとネファリアの海岸沿い全域で、霊魂は潮の干満とともにやって来ては去ってゆく。だがそれは潮が引けば霊魂はいなくなるという意味ではない。ただとても数が少なくなるだけである。潮の干満は月に関係しており、月の引力が霊魂を生者の世界へともたらし、脅かす。ネベルガストは主にマーレイ(溺死した水兵と難破船の犠牲者)とニブリス(霜の幻影)から成るが、他の霊や霊魂の群れもまた月に引き寄せられている。
オスピド川とモークラット
セルホフはオスピド川がヴァストロウ湾へと流れ込む河口の、小さな三角州の上に位置している。これはモークラットとして知られる広大な沼地を形成している。グール呼び以外に足を踏み入れる者はほとんどおらず、彼らでさえも霧の中で行方不明となる。モークラットは殺人の犠牲者と、適切な埋葬のための支払いがなされない、引き取り手のいない死体の廃棄所である。このことから、モークラットはバンシーや他の悪意のある幽霊で満ちている。
エルドワル
口語的には「どぶ」と呼ばれる地下通路網と溝がエルドワルである。元々はネファリア人によって、ヘイヴングル、ドルナウ、セルホフの主要都市それぞれにゾンビや狼男の攻撃を防ぐために作られた壕である。長年に渡って、三つの都市の間の壕はさまようゾンビの群れやデーモンのような悪鬼、餓えた幽霊、もしくは犠牲者を探す爪の群れといった脅威の中、物品の輸送と継続した貿易のための堅固な通路網として繋がってきた。ネファリアの一流の商人たちはエルドワルの使用に特別な注意を払ってきた。そしてそれを合理的な貿易の幹線とするために多額の資金を投入してきた。その結果エルドワルは、人間の血、暗殺業、偽造の銀、屍術、呪い、そして血なまぐさい娯楽といったあらゆる類の際どい、もしくは違法な品物の取引が行われる騒がしい地下商業地帯として発達した。
Adam Paquetteによるコンセプト・アート |
エルドワル内でも大きな街の近隣においては、多彩なならず者、みずぼらしい商人、汚れた水兵や不気味なよそ者が溝の中の市場に集い、幹線から枝分かれした暗い路地と粗末に掘られたトンネルではあらゆるビジネスが行われている。人目につかない隅では、スカーブ師とグール呼びが取引に精を出し、人間の血が細口瓶で売買されている。肉のゴーレムが創造され、卑金属を純粋な銀に似せる実験が行われる。スカーブ師はひどく醜い怪物を縫い合わせ、そのうちのいくつかは拘束を破って「どぶ」の至る所に大混乱を引き起こす。これら暗黒の取引が地上に出てこない限り、アヴァシン教会とその聖戦士たちは干渉しない。ネファリアは「合意」の州であり、この不安な休戦協定の一つが維持され続けているのであれば、全ての当事者にとって利益となる。
ジェンリクの塔
とりわけ広々とした銀の砂浜の果てに、背の高い塔がぼんやりと立っている。銀の砂浜の砂を混ぜられたモルタルが月光に輝いている。塔の内部では、天文学者ジェンリクが星々を研究し、外界とのあらゆる接触を断ちながら謎めいた仕事を行っている。彼は月の観測を行っており、その天空の通り道を責め苦にかけられるような細かさで図に記している。護法印が塔から狼男を遠ざけており、そしてストロムカークはそれほどまでに月への深い理解がある者は本当に強大な力を持っているとして彼を怖れている。ジェンリクはイニストラードの未来を予見しているとも、故郷に帰りたがっている霊魂であるとも噂されている。他には彼はアヴァシンの復帰を願う天使であるとも、もしくは世界を破壊しようと企てるデーモンだとも噂されている。
有形のアンデッドクリーチャーは別個に二種類おり、イニストラードを悩ませている。一つはグールであり、時折「神聖を汚す者」と呼ばれる、屍術的に動かされている屍である。もう一つはスカーブであり、死体から錬金術的に構築された存在である。
Steve Prescottによるコンセプト・アート |
神聖を汚す者
屍術的に動かされているゾンビはイニストラードでは最も普遍的にグールもしくは「神聖を汚す者」と呼ばれている。その名は、彼らは清められていない墓地から掘り起こされたことに由来する。アヴァシニアンの聖職者の義務の一つは死者が最後に眠る地が「祝福されし眠り」に値するよう清めることである。今アヴァシンはもはや姿を見せず、死者はより容易に身を動かすことができるようになった。
グール呼び
イニストラードにおいて屍術士たちとは通常、グール呼びのことである。彼らは墓地や「墓所」から死者を呼び起こす、黒のマナに列する魔術師である。墓所にはいくつかの種類があり、それぞれが独特な歩く死者の集団を呼び寄せている。
沼の墓所
沼の墓所は低地に多くある浸水した墓地の一つである。かつてこれらの場所は聖別されていたが、長い年月に渡って手入れされることなく放置されていた。沼の墓所のグールは通常は鍛冶屋、靴の修繕屋、売春宿の労働者や他のありふれた、貧しい人々である。
海の墓所
海の墓所は「漁師の墓場」である。下級貴族のように、漁師はしばしば彼らの最も価値のある財産、例えば網、長銛、滑りやすい所に引っかける巨大な鉤といった物とともに葬られる。海の墓所の神聖を汚す者は死んでさえも彼らの交易を完璧に忘れてはいない。そして生前に所持していた道具と器用さをもって彼らは犠牲者につきまとう。
不吉の墓所
不吉の墓所はとりわけぞっとする戦場であった。不吉の墓所から目覚めた神聖を汚す者は鎧や武器、最後の血みどろの戦いで負った致命傷を身にまとっている。不吉の墓所のグールは彼らの靄のかかった心の中で、終わらない戦いへの渇望を抱いている。そしてしばしば生前に訓練されたように軍隊の隊列を組もうとする。
死者が立ち上がったなら、グール呼びは突き動すような単一の目的で、死者の腐った精神のあらゆる思考に取って代わる。ほとんど心を持たないグールは彼らに残された技術で務めをこなそうと応え、その結果は生前のグロテスクな模倣となる。鍛冶屋は敵対者を「鋳造し直そうと」し、倒れた戦士は耳障りな叫びのようなものを吐き出し、アンデッドとなった殺人者は殺しの味を思い出す。時折、倒れた魔術師は呪文を紡ぐ限られた能力を見せることさえあるが、これはしばしば呪文の元々の目的からどこか逸脱した結果となる。
スカーブ
屍錬金術はグール呼びよりもずっと熟練の技術を必要とする。スカーブを創造する技術を習得した者はスカーブ師と呼ばれる。スカーブ師の真の目的は生命を創造することであり、真の生命よりも通常は不格好な「子孫」を作り出す仕事である。
Steve Prescottによるコンセプト・アート |
スカーブの製作には四つの段階がある。
1. 身体作成
「死体修繕」とも呼ばれる。スカーブが組み立てられる元となる屍から様々な解剖学的部位を集めることである。これは通常墓暴きやホムンクルスがスカーブ師から引きうけて行う。時には獣の四肢が製作に使用される。人間の腕が手に入らない場合は馬の脚が十分に代用品となる。
2. 板金合ワセ
「ルーン繋げ」とも呼ばれるそれは「繋ぎの金属板」を使用して様々な解剖学的組織を繋ぎ合わせる工程である。これらは銀の象眼細工のルーンが刻まれている銅や青銅の板で、死体修繕によって集められた異種の部位間を繋ぐ秘術的な橋の役割を提供する。
3. 臓液注入
臓液、もしくは生命流動体はスカーブ師の技術の鍵となるものである。臓液は天使の血を乾燥させたものをほんの一滴を含む、大量の灯油の混合物から作られる。臓液が完璧に調合できたなら、それを注入することにより死体に残っていたどんな血もこの生命油に取って代わられる。結果、スカーブはしばしば極めて高い可燃性を持つ。
4. 静カナル言葉
静かなる言葉はスカーブ創造の最後の段階である。スカーブ師は結構な長さの呪文を屍に囁き、クリーチャーを目覚めさせる。だがグール呼びのやり方よりもずっと穏やかな作法である。ひとたび目覚めたなら、スカーブは静かで「純真無垢」の状態となり、錬金術師はクリーチャーを再教育するという長い務めを始めることができる。スカーブ師から見ると、グール呼びが使用する技は粗野で、異端的で、容認できない結果を生むものである。
Richard WhittersとSteve Belledinによるコンセプト・アート |
スカーブ師は通常、人里離れて荒れ果てた場所で取引に精を出す。彼らは庶民や聖職者たちから不敬の者とみなされているからである。スカーブ師はしばしば、古の巻物や本、有毒な液体の貴重なアンプル、薬品漬けの内臓が詰まったガラス瓶、人間と獣両方の解剖学的図解、ルーンの埋め込まれた骸骨の残骸、そして青銅と銅にルーンを彫り込むための小さな金床とハンマーに囲まれた悩める隠者となる。
Steve Prescottによるコンセプト・アート |
幽霊
イニストラードは死した人間の幽霊に満ちている世界である。これら幽霊は様々な姿をとる。中には守護をもたらしてくれる先祖の霊もいる。他は執念深いクリーチャーであり、生前の悩みを解決しようと躍起になっている。
悪意と善意
幽霊は常にイニストラードに存在してきた。だがアヴァシン以前、そのような霊魂は全て悪意のものであり、繋がれていた身体の祝福されし眠りをかき乱すのに十分な恨みや後悔を抱いて世界に現れていた。アヴァシンの不在の中、悪意の霊と釣り合う数の善意もしくは中立の幽霊が現れるようになった。一族を大切に見守ろうとする先祖の霊から、生前の務めを続けようと欲しているように思われる不可解な霊まで。
Richard Whittersによるコンセプト・アート |
霊魂を冥界に導く者としてのアヴァシン
霊魂の世界の新たな平衡は、死者の霊魂を冥界に導く者としてのアヴァシンの力によるものである。彼女の存在が死者の魂を次元の霊的空間へと導いているのだと。アヴァシンによるこの哲学的導きによって、幽霊たちは次元の真髄と再び一つになることを拒むという選択が可能となった。かつては激しい苦悶や後悔のみが霊界からの引力を克服していた時のみに起こっていた現象である。
Daarkenによるコンセプト・アート |
有形と無形
幽霊は物質世界と霊的世界の間に存在し、二つの世界の特色にどれほど捕らえられているかは様々である。つまり、ある幽霊は壁を通り抜け、犠牲者の喉をかき切ることができる。他の者は生者が霊に対して抱いている信念を使う。犠牲者たちは、霊は精神の力を使って危害を及ぼしてくると完璧に信じている。文字通りに恐怖を使用して犠牲者に死をもたらす霊魂や、冷気を使用して敵対者を凍らせる霊魂も存在する。もしくは荒れ野で迷ったり沼地の奥深くをさまよう人間がいたなら、彼らが低体温症を引き起こすまで気温を下げる。他、より強力な霊はその意思や感情の力を使用し、手や武器の周囲に凝縮物(心霊体と呼ばれる)を一瞬にして作り出して攻撃する。念動力を使用して物体(具体的には茨、鎖、刺、ガラス等々)を身にまとい、敵に向けてそれらを振るう霊も存在する。
Steve Prescottによるコンセプト・アート |
信念の力
アヴァシンが不在であってさえ、神聖魔法は無力ではない。強い信念とマナとを組み合わせ、聖職者は様々な方法で幽霊を消滅させる。幽霊の真髄を分散させることから、冥界への導きの代理人として幽霊を霊界の休息の中へと導くことまで。
白に列する幽霊
白に列する幽霊の多くは無害である。もしくは死んだ家族や友が守護的な霊魂となり、義務や信義、責任、愛を感じて生者の前に現れる。しかしながら白に列する、悪意のある幽霊もまた存在する。通常彼らは罪の意識、失敗の記憶、正されなかった過ちに歪んでいる。死んだ兵士の霊の中には今も荒れ野を巡視し、彼らの敵を探している者もいる。
青に列する幽霊
幽霊の中には、精神の本質の投影が動き出した存在である者がいる。悪意のある、もしくは執念深い思考、集合的な人間の記憶がその周囲の見えない霊気に十分引きつけられて動き出し、自律的存在となる。彼らは執念深い霊となる。叩き、真似をし、配列し、積み重ね、印をつける、そのような事をひたすら繰り返す。彼らはまた生者の思考に取り憑き、反復する動作、発言、引きつけ、執念深い行動、精神分裂病、その他の精神的な病をもたらす。水、嵐、氷、霧、果ては寒い日の白い息にさえ、青の幽霊は引き寄せられる。
黒に列する幽霊
黒に列する幽霊は永遠に生や力に飢え、もしくは邪悪な遺恨を抱き続けている。これらは食物、財、血といったものを捧げることにより宥めねばならない。もし宥められない場合、これら幽霊は病気、事故や死の原因となりうる。他の色のマナに列する幽霊は善意のある、もしくは中立の者がいるかもしれないが、黒に列する幽霊たちはほとんど常に危険で悪意を持つ。
赤に列する幽霊
これらの霊魂は生前に挫折した激しい感情、満たされぬ欲望、復讐への渇望に突き動かされている。彼らは彫像からしたたる血、道に土埃を巻き上げるつむじ風、小さな丘や断崖や山腹の小規模な地滑り、そして生者へと憑依し、突然の躁病や殺意のある怒りといったものを引き起こして自身を主張する。遺恨に燃える霊はイニストラードで最も危険な幽霊の一種とされ、時折生きた炎や「血の霧」といった存在として現れては不運な犠牲者を巻き込み、治癒の遅い切り傷とみみず腫れを負わせる。
緑に列する幽霊
幽霊の中には生前に敬愛していた自然と再び繋がることを焦がれる者もいる。木々の内にある精力がドルイドや他の自然の魔術師によって呼び起こされ、根や茨が彼らの霊的な身体の周囲に絡み合って形をとる。これらの霊魂の中には動物や植物や土地と自身を結びつけ、特有の力に染まる者や突然変異を起こして奇妙な、空想的存在となる者がいる。その土地に宿る霊魂が現れない時はしばしば荒廃、不作、飢饉といった結果をもたらす。
プレインズウォーカーのためのイニストラード案内 目次
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