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ReConstructed -デッキ再構築-

飴と鞭

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ReConstructed

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飴と鞭

Gavin Verhey / Tr. Yuusuke "kuin" Miwa / TSV testing

2013年9月10日


 テーロスの5人の神々はそれぞれ武器を振るう。

 ヘリオッドには強力な太陽の槍が。タッサには魅惑的な二叉槍が。パーフォロスには山を彫り刻む鎚があり、ナイレアには不朽の弓がある。

/

 しかし死の神エレボスについてはどうか? 死の国の王はその傍らにどのような武器を持つことを選ぶだろうか?

 それは広い応用性をもつものであるべきだろう。彼により地の下へ送られた――あるいは天の上に召された――ものどもを捕らえ、そしてそれらを使役してから処分したり、彼の罠にかかったものに命令し、苦痛を与えつつそこから生命を搾り取る用い方のできるものだ。

 プレインズウォーカーのための「テーロス」案内 その1を読んでいるなら、エレボスの武器が多くをこなす長鞭、マスティクスであることは知っているかもしれない。しかしそれがどのような手法でカード化されるかは知らないだろう。

 よし、知る覚悟をしてくれ。鞭に巻きつかれる側じゃなく、振るう側であることを切に望もう......

 紹介しよう、《エレボスの鞭》だ!

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 こいつを思う存分使おう。このカードはかなりのやり手だ。

 単純に基本的なことだが、このカードのために4マナを支払えばすぐさまこちらのクリーチャー全てに効果を発揮してくれる――しかも強力すぎるやつを。

 あなたはここで「ちょっとまってよ、ガヴィンおじさん」と考えたかもしれない。「ライフ獲得はたいてい強くないとかそれだけでは採用する価値はないって教えられてきたよ」と。

 さて、それに対する2つの考えを述べよう。第一に、私は間違いなく君のおじじゃない。第二に、ライフを獲得するカード全てが一回限りの効果であるならその言は通常正しい......しかしこれは長期的に影響する効果だ!

 どんな種類の速攻同系対戦であっても、こちらのクリーチャー全てに絆魂を与えるというのは非常に大きい。それはそれだけでゲームを揺り動かす類の効果だ。場合によってはそれだけで事足りるかもしれない。

 ラクドスのミラーマッチをやっているところをイメージしてくれ、ただしこちらには《エレボスの鞭》があり、相手にはない。《エレボスの鞭》を叩きつけるのが実に妙手となる! 毎ターンクリーチャーで攻撃しつつライフを上昇させられるようになり、対戦相手の攻撃は弱まるか完全に無効になってしまう。

 対戦相手にとってはなお悪いことに、《エレボスの鞭》はこちらの防御クリーチャーにも絆魂を付与する。それはつまり、そのターンに唱えるあらゆるクリーチャーは安全に身を守れるというだけでなく、相手にとっては相打ちを狙っても非常に損なブロッカーになるということだ。

 速攻同系対戦に加えて、これは確かに中速デッキで速攻デッキに対抗するための良いツールでもありえる。多くの場合、やることといえば――ライフを得ることによって――時間を稼ぐこと、そして速攻デッキのリソースを消耗させることだ。このデッキはそれを見事にこなす。


エレボスの鞭》 アート:Yeong-Hao Han

 2番めの能力についても、同様のことが言える......

 上記のシナリオ――速攻同系あるいは速攻対中速の対戦――のどちらにおいても、おそらくは多くのクリーチャーが相打ちとなることだろう。《エレボスの鞭》の第二の能力は消耗戦における途方もないアドバンテージを保証してくれる。こちらのクリーチャーすべてが対戦相手のライフを攻撃するべく死の国の蓋を開いて跳ね戻ってくる......そしてその上こちらはライフも獲得できる!(言うまでもないが、戦場に出たときの能力のためにも使える!) 私は今まで墓地の蓋をこじ開けるカードで気に入るようなものに出会ったことはないのだが、このカードについては例外としたい。クリーチャーを除去するだけでは助からない、ということは覚えておこう。死者の襲来を止めるためには《エレボスの鞭》を処理しなければならない。

 ここまで、速攻と中速について述べてきた。しかし800ポンド級《グリセルブランド》を擁するデッキ、リアニメイトについてはどうだろう!

 《エレボスの鞭》は殴りかかる(そして大量のライフを獲得する!)ために墓地から好きな大型クリーチャーをすぐさま戦闘に送り込めるカードだ――リアニメイト専用デッキと「リアニメイトの価値がある」デッキのどちらででも完璧に仕事をこなしてくれる。

 《グリセルブランド》や《孔蹄のビヒモス》はどちらもスタンダードから外れるものの、まだ狙い目はいっぱいだ。例えば《怒れる腹音鳴らし》、《大軍のワーム》、《虚無の王》、《静穏の天使》、《忌まわしき首領》......まだまだ列挙できる! 《トロスターニの召喚士》のようなカードでさえもジャンク・リアニメイト・デッキでは相当なものだ――とりわけ全てのトークンが絆魂をも持つことを考慮に入れるならね!

 このカードについてひとまとめに、全般的に何ができるのかについて語ってきたが、次に実際の使用例をいくつか見ていきたい。いくぞ!

鞭打つ

 まだ触れていない《エレボスの鞭》の要素はマナ・コストだ。黒マナシンボル2つが備えられていることにより、これは信心を獲得する助けとしての重要な一面がある。(その信心で......おそらくは......エレボスを顕現させるために?)

 テーロスには黒単信心デッキに相応しいカードが大量にある。その構想を取り入れられる多くの手法が確かにあるし、そしてそれは超速攻デッキからより黒単コントロール戦略に寄ったもののどれにでも決められる。

 中速ではないが全くの速攻でもない、その中間ぎみに位置したものを見てみよう。

ガヴィン・ヴァーヘイの「エレボスと彼の下僕」
テーロス後スタンダード[MO] [ARENA]
22 《
2 《ニクスの祭殿、ニクソス
1 《変わり谷

-土地(25)-

4 《ラクドスの哄笑者
3 《ただれたイモリ
4 《ラクドスの切り刻み教徒
2 《群れネズミ
3 《生命散らしのゾンビ
1 《夜の咆哮獣
3 《死者の神、エレボス
3 《アスフォデルの灰色商人

-クリーチャー(23)-
4 《思考囲い
2 《破滅の刃
2 《究極の価格
1 《闇の予言
3 《エレボスの鞭

-呪文(12)-

 このデッキは黒の信心上昇を助けるいくつかのカードを用いて、信心効果を上手く利用する――加えて隅にはいくつかの必見カードも。十分な圧力をかけてこない対戦相手が相手なら、《死者の神、エレボス》は発電所の役割として多数のカードを引きつつも――パワー5での一撃もある。

 しかしおそらく、あなたが最も気になるカードは《アスフォデルの灰色商人》だろう。《アスフォデルの灰色商人》――あるいは私が良く知る設計時の名前で言えば「小銭入れ/Coinkeeper」――は5マナと少々重く見えるかもしれない。しかしこちらが十分に信心深ければ、こいつが相当大きな一撃を見舞ってくれるのは間違いないところだ。戦場に他に2つの黒マナシンボルがあるだけで――単に《生命散らしのゾンビ》がいるだけで――4点ドレインだ! もし複数枚引いたならこいつは極めてやばいことになる。

......そして信心の備えと複数枚「引く」ことについて《エレボスの鞭》より良い方法があるだろうか? もう一度ドレインするために、墓地のこいつを鞭打つ以上の方法が! 《アスフォデルの灰色商人》へと《エレボスの鞭》を振るうことで、そこまでの合計で最低でも8点ドレインを期待できる。(そこはまあ、対戦相手が《エレボスの鞭》を除去できないと仮定してね。)

 信心を積み上げつつ序盤から圧力をかけられるように、デッキのエンジンを稼動するための序盤用クリーチャーがいくつか投入されている。《ラクドスの切り刻み教徒》には信心によって新たな生きがいが与えられた。《群れネズミ》のトークンはいずれも{1}{B}のマナ・コストを持っており――そしてリミテッドで《群れネズミ》に相対したことがあれば、あなたもこれが単体でゲームを掌握できることを知っているはずだ!

 いったんそれらで対戦相手の抵抗力を削いでからが、《死者の神、エレボス》や《アスフォデルの灰色商人》のような確実な一撃となるカードの出番だ。その上死んだ仲間を再び呼び戻すことで、《エレボスの鞭》のライフ回復が速攻同系における優位性を与えてくれる。

 このデッキには様々な方向性が存在する――そしてまだ発表されていない黒単向けの刺激的なカードもまだいくつか存在する。一度カードギャラリー全てが公開されてから再び取り上げるべきなのは間違いないだろう。(訳注:記事掲載時は全公開されていませんでした)

よく鞭打つ

 もしかしたらあなたは信心デッキに興味が無く、スクロールを進めて別の手法を探しているかもしれない。幸いにも、そんなあなたのために数多くの選択肢がある。

 《エレボスの鞭》を試すのに向いている2色の組み合わせのうち、ぴったりなのは白黒と黒緑だ。そして黒緑は少し後で取り上げるので、まずは白黒デッキを見てみよう。

ガヴィン・ヴァーヘイの「オルゾフ人間デッキ」
テーロス後スタンダード[MO] [ARENA]
8 《平地
7 《
4 《神無き祭殿
4 《静寂の神殿
2 《オルゾフのギルド門

-土地(25)-

4 《カルテルの貴種
4 《威圧する君主
3 《管区の隊長
4 《罪の収集者
4 《ザスリッドの屍術師
4 《幽霊議員オブゼダート
1 《アスフォデルの灰色商人

-クリーチャー(24)-
3 《思考囲い
3 《破滅の刃
2 《オルゾフの魔除け
3 《エレボスの鞭

-呪文(11)-

 イニストラードがローテーションしてはいるが、まだまだ人間部族デッキの鍵となる人間が基本セット2014には見て取れる。《ザスリッドの屍術師》のことさ。このデッキに投入されているカードの多くは人間なので、《ザスリッドの屍術師》が良い選択となる。

 このデッキには《エレボスの鞭》を用いるための重量級アタッカーが少ないものの、いくつかのねらい目はある。《罪の収集者》は簡単に対戦相手の手札を剥ぎ取ってしまえる――とりわけ繰り返し活用すればね。しかし実際に大きな影響があるのは《幽霊議員オブゼダート》だ。

 通常、《幽霊議員オブゼダート》は死なせないように気をつけなければならない。しかし《エレボスの鞭》を出すことで、幽霊の首謀者達は何度でも黄泉がえる。何てぴったりなんだ!

 ルール的に少々複雑になるが、その要点はこうだ。《エレボスの鞭》で《幽霊議員オブゼダート》を墓地から戦場に戻したとする。そして、ターン終了時の自身の効果でそれを追放する。そうすると、それは《エレボスの鞭》の効果があったとしてもやはり追放したことにもなる。良い感じだ。その後、《幽霊議員オブゼダート》はしばらくしてから舞い戻り攻撃の準備を整えるだろう。ただでさえ《幽霊議員オブゼダート》に対処するのは相当大変なことだが――さりとて本当に不死である《幽霊議員オブゼダート》を撃退できうるであろうかな!

もっと鞭打つ

 《漁る軟泥》、《世界を喰らう者、ボルクラノス》、《ゴルガリの魔除け》、などの黒緑の主要カードを初め、その他もろもろ(あるいはもしかすると黒緑白の3色にして《ロクソドンの強打者》や《復活の声》まで入っているかもしれない)ゴルガリ中速デッキも確かにありだが、すでに2つの中速的なデッキを取り扱ったところなので、少し違うものが見たい。コンボ重視の《エレボスの鞭》デッキだ!

 《忌まわしい回収》や新しく登場した《神々との融和》(望むならさらに《汚濁まみれ》)など、まだまだスタンダードには自分のライブラリーを削る手段が大量にある。墓地を素早く肥やせるだけでなく、《エレボスの鞭》とそのお仲間をかき集めるために必要な部分を見つけ出すことも可能だ。

 今後のリアニメイトの可能性を見てみよう。

ガヴィン・ヴァーヘイの「リアニウィップ」
テーロス後スタンダード[MO] [ARENA]
9 《
5 《
4 《ゴルガリのギルド門
4 《草むした墓

-土地(22)-

4 《エルフの神秘家
3 《死儀礼のシャーマン
4 《森の女人像
3 《ロッテスのトロール
4 《夜の咆哮獣
2 《影生まれの悪魔
2 《首席議長ゼガーナ
4 《忌まわしき首領

-クリーチャー(26)-
4 《神々との融和
4 《忌まわしい回収
4 《エレボスの鞭

-呪文(12)-

 大量のマナ加速により、このデッキは脅威をすぐさま展開できる。だがさらにこのデッキはかなり素早く《エレボスの鞭》とのコンボを開始できる。《忌まわしき首領》は1/1の軍勢の守りを後に残せるのだから、リアニメイトの選択肢となるのも当然だ。

 もし出だしが遅れたとしても、《エレボスの鞭》は得られる全てのライフをもってしてそこまでの差がつかないことを保証してもくれる! こちらの大型クリーチャーは大ダメージを与え、エレボスの見事な鞭はすごい勢いでこちらのライフを維持し続けるわけだ。

 《首席議長ゼガーナ》の投入に気づいて少々不適当だと思うかもしれない。{U}{U}を得るのはかなり難しいが、《首席議長ゼガーナ》は《エレボスの鞭》の目標としては素晴らしいものだ。

 巨大な《夜の咆哮獣》か同じくらい大きな《ロッテスのトロール》と共に登場することで、手札を再び満載にする準備を整えてくれる。それらをまとめて引きたくはないのであまり多くは投入したくないが、ちょうど2枚なら頻繁に引いたりはしないだろう。(そしてやろうと思えばいつでも《ロッテスのトロール》で捨てることもできる......あるいは単に唱えて出したりね!)

 《エレボスの鞭》によるリアニメイトを重視した際に《漁る軟泥》が問題となるのは確かだ――とはいえ幸いなことに、このデッキにはクリーチャーをそのまま唱えるという妥当なプランBがある! このデッキに入っている11体のマナ生成クリーチャーにとって、7マナに到達することは造作もない。かなりの頻度で《忌まわしき首領》をそのまま叩きつけて攻撃を開始できるだろう!

飴と「餅」

 我々は繰り返し使えるリアニメイト効果をあまり刷らない――それには相応の理由がある。《エレボスの鞭》はパーツとしてあらゆるデッキに入る可能性を持つカードだ。速攻デッキ(とりわけサイドボード)に、中速デッキに、コンボ・デッキに、そしてあるいは戦場に出たときの強力な誘発効果を再利用する方法としてコントロール・デッキにも同様に。そう、ありうるとも......


(以下のデッキ募集部分は、原文・本日(9月24日)掲載分の記事から抜粋・収録しております。 この節の文責・編集 吉川)

 このフォーマットが新鮮であるうちに、そしてプロツアーが近づいてくるまで、スタンダードの研究の流れを続けていこう。

フォーマット:『テーロス』導入後のスタンダード

デッキの制限:なし!

締め切り:10月1日(火)午前10時(日本時間)

すべてのデッキリストを英語で、こちらのリンク先のフォームからメールでお送りください。デッキリストの提出時には、以下のようなフォーマットで入力してください。(必ずしも下記のような枚数通りのものでなくてもかまいません。あくまで一般的にデッキリスト記入のレイアウトを示すものです。)

あなたのローマ字氏名+'s+デッキ名(英語)

Standard(フォーマット)

20 Land(土地カード 枚数とカード名・英語で)

20 Land

4 Creature(クリーチャー・カード 枚数とカード名・英語で)

4 Creature

4 Other Spell(その他の呪文カード 枚数とカード名・英語で)

4 Other Spell

4 Planeswalker(プレインズウォーカー・カード 枚数とカード名・英語で)

 この記事、デッキについてフォードバックがあれば、ぜひフォーラムへの投稿や私へのツイートを送ってほしい。ぜひ皆さんの意見を聞いてみたい。

 また来週お会いしよう!

Gavin / @GavinVerhey

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