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ReConstructed -デッキ再構築-

ゼロからのデッキ構築:ゼロからのサイドボード構築

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ReConstructed

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ゼロからのデッキ構築:ゼロからのサイドボード構築

Gavin Verhey / Tr. Shin'ichiro Tachibana / TSV testing

2012年11月20日


 このコラムが始まってから、他の話題に比べ群を抜いてよく聞かれることがある。毎週毎週同じことを聞かれる。それは、どうやってサイドボードを作ればいいのか?どうやってサイドボードすればいいのか?だ。

 メインデッキ同様に極めて重要であるにも関わらず、実に多くのプレイヤーが真剣にサイドボードを考えず、デッキを作る際にはパズルの最後の1ピースのように残す。 以下を考えてみてくれ。「トーナメントにおいて、サイドボード前のデッキで対戦するよりも、サイドボードした後のデッキでプレイするゲームの方が多い。(あー、各ゲームをストレートで勝った場合には...サイドボードする前のゲーム数とした後のゲーム数は同数になる)」 最良のデッキは、最良のサイドボードからなる。


拘留の宝球》 アート:Kev Walker

 ハイレベルなプレイでは、サイドボードを15枚の追加用パッケージとしてとらえるのではなく、メインデッキの機能拡張ととらえることがある。プロプレイヤーたちは60枚のデッキではなく、75枚のデッキと考え、メインデッキとサイドボードの全体をを一体のものとして考えている。

 今日はサイドボーディングのポイントについて見ていく。この15枚の道具の作り方や使い方を理解していない君への授業だ。

 じゃあ、はじめよう!

サイドボードの作り方

 多くのサイドボード構築経験の浅いプレイヤーがサイドボードを作る際、そのフォーマットに存在するデッキをリストアップし、それを眺めながらそれらのデッキに効果的なカードで満たしていく。そうすると量が膨大となり、やがてチェックリスト形式で埋めていくようになる。「コンボ用の4枚?OK。コントロール用の4枚?OK。ビートダウン用の4枚?OK。《帰化》や《真髄の針》のようなピンポイントユーティリティ3枚?OK。」と。

 これは最も危険な方法だ。

 なぜか?うん、この方法には考え方のラインとして2つの根本的な問題があるからだ。1つ目、これは過剰/不足サイドボードに結びつく(これに関してはすぐあとで触れる)。2つ目、それは全体の計画ではなく個別のカードに重点を置くことになるからだ。

計画的に

 一つの秘訣として、すべてのマッチアップが特定のカードに関係しているとは限らないということだ。あなたにはカード単体ではなく、一連の計画を考えてもらいたい。

 この違いを説明するために2つの異なる思考の流れを示す。1つ目の思考の流れはこうだ。

「《赤の防御円》は良いバーン対策なので、それをサイドボードに入れよう。」

 この思考の流れは単なる「個別カード」アプローチでしかない。では、以下のコンセプトと比較してみよう。

「対バーンにおいて、サイドボード後の戦略は、《赤の防御円》を捜し、守ること。他のカードで防御円を見つけるまでの時間を稼ぎ、いったん防御円を見つけたら、起動のためのマナを毎ターン確保し続ける。防御円に対する対戦相手の《真髄の針》や軽減効果を妨げるエンチャントメントなど対しては《解呪》で太刀打ちする。」

 この二つの違いは、二つ目の選択肢の詳細は、どのように実際にカードを使用するつもりであるか、そして、それがたとえどんなにサイドボードにとって良い選択だとしても、するべきサイドボードの決定の背景を示しているということだ。「良いカード」だからということで安易にそのカードを使用することは、様々な落とし穴にはまってしまう場合がある。

 よりアグレッシブな白の低マナビートダウンデッキをプレイしているものとして、同種のシチュエーションを想像してほしい。もしあなたが単に「個別カード」をこれまでの経験で培ってきた知識に従えば、防御円で決まる。それは一般にバーンに対する「最良のカード」だからだ。それゆえに、防御円はあなたを変える...

 ...問題は、防御円はビートダウンデッキには全く最適ではないことだ! それは機先を制せず、最大限活用するにはマナカーブが低く、そのリスクはあなたを火力呪文で焼き尽くすのに十分な時間を稼がれてしまう。マッチアップでどのようにカードがプレイされるかの全体像を見ることが理解への近道だ。

 場合によっては、それはより複雑なものとなる。現行スタンダードで白青フラッシュのミラーマッチをしていることを例にとってみよう。それぞれのデッキは以下のようなものだとする。

シェーン・レメルト/Shane Remeltの白青フラッシュ
StarCityGamesオープントーナメント・ダラス 優勝 / スタンダード[MO] [ARENA]
9 《
4 《氷河の城砦
4 《神聖なる泉
4 《平地
2 《ムーアランドの憑依地

-土地(23)-

4 《ボーラスの占い師
4 《瞬唱の魔道士
4 《修復の天使

-クリーチャー(12)-
4 《アゾリウスの魔除け
4 《思考掃き
4 《送還
2 《中略
1 《スフィンクスの啓示
3 《熟慮
2 《雲散霧消
2 《本質の散乱
2 《ルーン唱えの長槍
1 《巻き直し

-呪文(25)-

 ミラーマッチのために思い浮かんだカードは何だろうか? 何を探せばよいのか?

 もし単純に「個別カード」の考え方を採用していたのなら、《スフィンクスの啓示》は思い浮かばなかっただろう。個別カードを経験的に考えれば意味をなさないからだ。ミラーで使われるいずれの個々のカードに対して特に「良い」と言いわけではないからだ。

 しかしながら、全体的な計画を見てほしい。あばたはゲーム序盤で多くのリソースを引き換えにし、長期戦ではより多くの燃料を見つけることが大いなるアドバンテージとなる。《スフィンクスの啓示》はそのものずばりで、長期戦で対戦相手を上回るためのカードだ。もしあなたがもう2枚の《スフィンクスの啓示》をサイドボードすれば、長期戦はあなたに追い風となる。このとき、あなたはゲームが長引くようにプレイ必要があり――可能な限り等価交換していき対戦相手のリソースを消耗させ――そして勝つ。

 もしも、あなたが対戦相手の戦略に対抗するような伝統的に選ばれる個別のカードだけ見てサイドボードを構築するのであれば、サイドボードで取りうる選択の範囲を見失いがちになり、結果として特定のカードを多く取り過ぎてしまう。

問題となるマッチアップの認識

 個別カードの方法の更なる問題点は、デッキの相性を考慮に入れないことだ! すでに優勢であるマッチアップのためにサイドボードを割くよりも、その部分には相性が悪いマッチアップ用のカードが必要となる。

 どうやってこれを決めるのか? プレイテストだ! おそらくこの言葉を聞いたことがあるだろう。しかし実際プレイテストこそが成功へのカギなのだ。一度、あなたがすべてのマッチアップに関して理解すれば、それらに対してどういった戦略がいいのかというキーポイントを知ることができる。これはそれらとの戦闘プランを確認させ――マッチアップに実際に何の手助けを必要とするかを浮き彫りにする。

 もちろん、ある重要な点を覚えておかなくてはいけない。それは、あなたの対戦相手もまたサイドボードをするということだ! あまりにも一般的なことなので、じつに多くの人々がこれを忘れがちになる。もしマッチアップがあなたにとって有利な場合、単純に対戦相手が用意したサイドボードのためのカードを用意する必要がある。あなたが相性の悪いマッチアップと同数のリソースを注ぐ必要はない一方で、良いマッチアップ同様に最適化するいくつかの道具が必要であるということは重要だ。

過剰サイドボード

 私が頻繁に見かける大きな過ちのうちの1つが過剰サイドボードだ。

 過剰サイドボードとは何か? 例示する。

 赤白青デッキでジャンドを倒そうとするとしよう。あなたはジャンドが嫌いで、ジャンドなんかに今回は勝たせないつもりだ。なので、あなたはそのデッキ用の10枚のたんまりのサイドボードを搭載した。「このたくさんのすばらしいサイドボードで、ジャンドを屠ってやる!」

 そして、第1ゲームを終える。あなたはあなたのサイドボードへと手を伸ばす。意気揚々と10枚の対策カードをメインデッキに投入し...ただちに何を削ろうかと考える。比較・検討した結果、最終的に《ミジウムの迫撃砲》や《修復の天使》といったカードを別室送りにすることを決定する。単に試合で弱いと感じた6枚のカード、それらをはずすことが心地良いと感じたからだ。

 問題点はお分かりだろうか? 結局このプレイヤーは実際にマッチアップで役に立つカードを、わずかに良くなるカードのためにカットした。メインに入っている役に立つカードを、よりアップグレードさせるサイドボードを行ったとしても、サイドボードのカードが最良の形で使われているとはいえない。この場合、他のマッチアップに対しては1~2枚のカードしか割けないので、もっと他のマッチアップのためにカード選択を考えるべきだ――ある一つのデッキをオーバーキルすべきではない。

対戦相手のサイドボードとの戦い

 最後にカバーしておきたいポイントは、あなたは対戦相手のサイドボードとも戦うということを理解することだ。先に指摘した通り、対戦相手も同様にカードを投入する。《風景の変容》/《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》コンボデッキには6枚の打ち消し呪文を投入すればいいが...それは対戦相手が3枚の《すべてを護るもの、母聖樹》が入れていなければの話だ!!

 プレイヤーは特定のマッチアップにおいて優位に立つ方法を常に探していて、サイドボードはそれらを巡る大いなる戦場だ。あなたはそれらの人々が行うことより先に立―それと戦えることを確認しなければならない。

 上の例では、《併合》を導入するということは母聖樹に対抗するということに他ならないだろうし、また代わりに《造物の学者、ヴェンセール》や《精神壊しの罠》のようなもので母聖樹に護られた《風景の変容》を対処することもできる。

 相手の計画の先に達していれば、ニッチなサイドボードカードが使える。コントロール・ミラーで、もしぶち切れデッキプランとしてあなたをビートするために4枚の《荒廃鋼の巨像》をサイドボードするとすれば、それらに対抗するため《木っ端みじん》で戦うこともできる。そこには非常に良い選択肢――サイドボードに準備するだけの十分な事前情報が必要だ。


安らかなる眠り》 アート:Terese Nielsen

 それはサイドボード勝負となり――そして《木っ端みじん》がやってくる。

汎用サイドボード指針

 いいだろう。ここまでサイドボード構築のキーポイントを見てきた。それでは、どのようにサイドボードを行うのか? 何を抜いて何を入れるのかをどう考えるのか?

 それを説明するのは非常に困難だ。それは各フォーマットにより様々なデッキがあり、それぞれに対応したサイドボード用カードがあるため、計画を端的に説明するのは難しいからだだが、それに近いことは不可能ではない。だが心配ご無用! あなたのためにカンニングペーパーを用意した。すべてのシチュエーションに完璧に対応しているわけではないが、これによりサイドボードの仕方の90%は理解できるだろう。プレイテストを通して残りの10%を用意せよ。

 ビートダウンとコントロール用の汎用サイドボード指針を示そう! ほとんどのデッキがこの2つのカテゴリーに絞り込むことができる。(もし、ミッドレンジで迷うなら――ほとんどのミッドレンジデッキはおおむねビートダウンと分布が適合しがちであると言っておこう。) 印刷し、あなたの家の冷蔵庫に貼り付け、サイドボードをどうするか考えるときに疑問があればそれを見てほしい。

ビートダウンデッキのサイドボードの仕方

 ビートダウンデッキは非常に速い動きをし、対戦相手が除去もしくはより大きなクリーチャーで妨害しなければ速やかに勝利をもたらすだろう。そのため、サイドボードの目的は、多くの場合対戦相手自身を妨害する(相手の除去やより大きなクリーチャーを打ち倒すような)ものか、サイドボードにより相手の除去、もしくはより大きなクリーチャーを避けられるようなものとなる。

ビートダウン・ミラーマッチ

 ビートダウン・ミラーでカギとなるのは最後――または最良の――脅威を戦場に立たせていることだ。これをするためには、対戦相手のクリーチャーを除去で妨害し、単体でゲームに勝てるような高マナで強力なパーマネントが必要である。それは消耗戦になるため、カードアドバンテージ――プレインズウォーカーのような――がのちに求められる。

 あなたが入れたいであろう例 :《破滅の刃》、《刃砦の英雄》、《遍歴の騎士、エルズペス

 取り除きたいカードは、序盤の性能が劣るクリーチャー、シチュエーションが限られるカード、または他のビートダウン向けには意味がない妨害だ。

 例えば《壌土のライオン》はコントロールやコンボに対する1マナの軽量クリーチャーとしては良いだろうが、Zooのミラーマッチでは1マナ2/3は他のいずれのクリーチャーに劣る。除去以外の妨害はこのマッチアップでは良くない。なぜなら、《送還》がそうであるように、それはカードアドバンテージや等価交換を備えていないからだ。それゆえ通常は除かれる。

 ミッドレンジデッキに対する時も、同じ法則が適用できる。

対コントロール

 コントロールに対して、鍵は対戦相手がゲームを安定化させる前に倒してしまうことだ。対戦相手はその道筋として除去呪文や潜在的なライフゲインを使用してくる。もしあなたが早期に脅威を生み出すことができ、それへの対応を妨害することができれば、それは良い形だ。

 ここで加えたいカードは除去をかわすようなものか、対戦相手の除去やゲームプランと戦えるものだ。加えて、プレインズウォーカーはコントロールデッキにとって扱いにくいものなので、あなたへの対応を非常に遅らせる。例としては《マナ漏出》、《思考囲い》、《最後のトロール、スラーン》、《遍歴の騎士、エルズペス》。

 取り除きたいカードはクリーチャーベースデッキ用のピンポイント除去呪文だ。数枚のブロッカー除去用の呪文だけが必要で、一般的に《流刑への道》や《破滅の刃》のようなカードを取り除くことになる。


コントロールデッキのサイドボードの仕方

 コントロールデッキは長期戦を予定しており、序盤の猛攻をしのいで生き延び、除去やドロー呪文でコントロールを得、大きなフィニッシャーでゲームを決める。負けるときは相手のビートダウンに押しつぶされてしまうか、カード・アドバンテージを取れない場合か、対戦相手の切り札である呪文を通してしまった場合だ。つまりサイドボードはこれらの穴を埋めるように構築され、多様なデッキに対応できるようなものでなくてはいけない。

対ビートダウン

 ビートダウンデッキに対するとき、あなたの目的はあなたがゲームに勝てる単品の呪文やクリーチャーが用意できるまでの間、クリーチャーを除去するか無効化することだ。あなたはビートダウンデッキが対応しようとする切り札への解答を望む。付帯的なライフゲインは有用で、脅威を準備するまでの時間を稼ぐ手助けになるだろう。

 入れたいであろう例としては、《至高の評決》、《ワームとぐろエンジン》、《台所の嫌がらせ屋》。もし、あなたの相手が戦うべき特定の切り札を持っているとき、低マナの打ち消し呪文も非常に有用となる。

 取り除きたいカードは、過剰な勝利条件用のカードと、多くのコントロールデッキとの対戦で入るカードアドバンテージ合戦用の全てだ。一般的に、唱えるのには重たくて盤上に影響を及ぼさずライフ合計を変化させないカードを数枚取り除きたい。(とはいえ、十分なドロー効果によって特定のカードを見つけ出すことができるように、リソースが整えられたコントロールデッキを作成しておくというのは重要な点である。)さらに対戦相手のキーカードに対抗するのに役に立たない妨害呪文もまた取り除きたい。

 例えば、私は《好機》、《強迫》や勝利条件(デッキ中に4枚か5枚になるまで減らす)といったカードを減らすことを考えたい。

コントロール・ミラーマッチ

 コントロール・ミラーはコンスタントな土地の供給、最大の脅威を除去させないいこと、そしてカードアドバンテージに尽きる。ディスカードや打ち消し呪文といった妨害は対戦相手の戦略を操作するためにここでは重要だ。対戦相手の脅威となる戦いづらいパーマネント――クリーチャーもプレインズウォーカーも――は入れる価値がある。

 入れたいであろう例は、《スフィンクスの啓示》、《ラクドスの復活》、《思考囲い》、《対抗呪文》、《ジェイス・ベレレン》、《遍歴の騎士、エルズペス》、追加の土地(特に基本でない便利な能力を持ったもの)、《変異種》。

 取り除くカードは除去呪文だ。通常、コントロールは多くのクリーチャーはおらず、多少の除去呪文を除けたとしても(特に盤面一掃のもの)、クリーチャーをまやかすものに対抗するものを入れるべきだ。

 《破滅の刃》や《アゾリウスの魔除け》といったカードが例となる。これらは《拘留の宝球》のような非クリーチャーのパーマネントに対してはの解答になっていないところに注目したい。コントロール同士のマッチアップでは、しばしば《ジェイス・ベレレン》や《未来予知》といった非クリーチャーのパーマネントが勝負を決めるようになるからだ。


 サイドボードは扱いにくいものだが、この記事がその裏に潜む謎を解き明かす助けになれば幸いだ。何か具体的な質問があれば、ぜひお答えしたい――ツイッターで質問を寄せてほしい!

(今週のデッキ募集はありません)

Gavin / @GavinVerhey

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