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ゼロからのデッキ構築:スタンダードで勝つ方法
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ゼロからのデッキ構築:スタンダードで勝つ方法
Gavin Verhey / Tr. Yuusuke "kuin" Miwa / TSV Takanori Nakamura
2012年8月7日
スタンダードというフォーマットは遊び始めるには易しいが、完全に解明するのは難しい。現在世界中で行われている数多くのトーナメントがスタンダードであるということは、このフォーマットが常に変化し続けているということであり――成功するためには、常に最先端にいなければならないことを意味する。
何でも実行可能で何年も同じデッキを使い続けることが出来るモダンやレガシーとは異なり、スタンダードにはより多くの順応力が求められる。新しいセットが発売されると程なくして各デッキはそれらの最も強力なバージョンをすばやく繰り返し模索し始めて、新しいデッキが毎週成功を収めてメタゲームが移り変わることがトーナメントシーズン中ずっと続く。その週のトップのデッキが次の週では犬のエサということも――そしてそれは多くの場合――ありえる。どうすればこのようなフォーマットで最前線に立ち続けられるだろうか?
答えは、このフォーマットで戦うための秘訣を知ることだ。
単に毎週好成績を収めたスタンダードのデッキリストを紹介することも可能だが、今週は......いや、やはり好成績を収めたスタンダードのデッキリストは紹介しておこう。そして、その紹介の過程においては、このフォーマットにおける弱点を解明して、それらに対処する方法を伝えるつもりだ。その結果、ある週のスタンダードがどのような環境であっても、その対処法で対応する力を持てるようになる。この戦術は、あなたが通う店のイベントからプロツアー予選会場まで何でも通用するだろう。
用意はいいか? その秘訣を手に入れよう!
《索引》 アート:Kev Walker |
ステップ1―特定
まず第一にあなたが実際に打倒したいのはどんなデッキなのかを理解すべきだ! これはポピュラーな《秘密を掘り下げる者》デッキから、あなたが通う店でいつもフライデー・ナイト・マジックを勝ち抜くやつが使う《触れられざる者フェイジ》ビートダウンまで何でもありえる。
これはおそらくこの作業過程においてもっとも簡単な部分だ。どんなデッキとよく対戦するだろうか? それを把握するために個人の経験とイベントの結果を利用できる。どこから始めればいいかわからない場合は、スタンダードのグランプリの結果や、マジックオンラインの勝利デッキリスト、そしてStarCityGamesオープンの結果を調べてくれ。それら3つの一次資料を通して見れば、いくつかのデッキの流行に気づける――あるいは少なくとも打倒したいデッキをいくつか見つけることはできるに違いない。
注意すべき点は、見たデッキすべてに勝てるようにするのは現実的ではないということだ。打倒するべきデッキの一覧には現実性がなければならない――目をつけたデッキリストの中から本当に打倒したい2、3デッキに焦点を合わせて選択しよう。打倒したいデッキに対してゲームを勝利する上での重要なポイントを確立できれば、次に他のマッチアップを安定させようと試みることができ、そしてサイドボードを行うことでそれらとも戦えるようになる。しかし、真っ先に行うべきなのは、それらを打ちのめそうと狙うべき主要な敵デッキを特定することだ。
今日、私が打倒に挑戦する3つのデッキは具体的には白青デルバー・デッキ、《出産の殻》デッキ、そしてゾンビ・デッキだ。スタンダードフォーマットを調査するとそれら3つのデッキはいずれも使用頻度が高い。そのうちデルバー・デッキと殻デッキが最も流行しているようなのでそれらに焦点を合わせようと思う。しかしながら、ゾンビ・デッキも倒せるならばそれにこしたことはないのは明白なので、それらの次に優先されるだろう。
《闇滑りの岸》 アート:Charles Urbach |
ステップ2―分析
いったんどのデッキと戦おうとするかを確定したならば、次のステップはそれらを調べて何がそのデッキをそれほど強くするのか――そして排熱口がどこかを確認することだ。各デッキを作動させているのは何なのかを特定すれば、デッキの皮膚を切り裂いてその下の作動部分を外科的摘出してしまう方法を色々と考えられる。
どうやってそれを行うのか? デルバー・デッキを見ることで実際にやってみよう。
9 《島》 4 《金属海の沿岸》 3 《氷河の城砦》 2 《ムーアランドの憑依地》 -土地(18)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《瞬唱の魔道士》 3 《ボーラスの占い師》 2 《幻影の像》 3 《空召喚士ターランド》 -クリーチャー(16)- |
2 《精神的つまづき》 2 《はらわた撃ち》 2 《変異原性の成長》 4 《思案》 4 《思考掃き》 4 《蒸気の絡みつき》 2 《マナ漏出》 1 《饗宴と飢餓の剣》 1 《戦争と平和の剣》 -呪文(22)- |
2 《幻影の像》 4 《修復の天使》 1 《はらわた撃ち》 2 《鋼の妨害》 2 《否認》 2 《四肢切断》 1 《雲散霧消》 1 《魂の洞窟》 -サイドボード(15)- |
8 《島》 4 《氷河の城砦》 4 《金属海の沿岸》 1 《魂の洞窟》 2 《ムーアランドの憑依地》 -土地(19)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《瞬唱の魔道士》 2 《幻影の像》 4 《聖トラフトの霊》 4 《修復の天使》 -クリーチャー(18)- |
3 《はらわた撃ち》 4 《思案》 2 《思考掃き》 4 《蒸気の絡みつき》 4 《マナ漏出》 2 《ルーン唱えの長槍》 -呪文(19)- |
2 《幻影の像》 3 《刃砦の英雄》 1 《精神的つまづき》 1 《神への捧げ物》 3 《天界の粛清》 2 《雲散霧消》 2 《月の賢者タミヨウ》 1 《魂の洞窟》 -サイドボード(15)- |
長所
デッキの強さがどこにあるのかを見るときは、それの典型的な勝ちパターンがどんなものか、それが使うキーカードがどのようなものか、また劣勢をどのように覆すかについて考えたい。これについて考えるための別の方法は、「対戦したとき、そのデッキは自分のデッキをどう倒すのか?」というものだ。
デルバー・デッキを使うか使われるかした人なら誰でもそのデッキがどれほど万能かを知っている。ある1ゲームでは序盤に出た複数の《秘密を掘り下げる者》が翼を得ることで押しつぶされ、そして次のゲームでは長期戦となり長引いたところで《瞬唱の魔道士》と装備品で打ち倒される。その万能性は確かにこのデッキの主要な強さの1つだ。
その万能性の推進力となっているのは何だろう? 多くのサポートカードがこのデッキで素晴らしい仕事をこなす。例えば、《マナ漏出》は長期戦でのコントロール・プレイを支援するか、早いゲームにおけるテンポ・アドバンテージを維持する助けとなる。《蒸気の絡みつき》も同様の作用で、攻撃クリーチャーを押し通し、対戦相手の攻撃を遅らせ、さらに消耗戦において自分のクリーチャーを守るために自らバウンスできる。
このデッキにおいてはすべてがいつでも活躍することができる。数枚の《蒸気の絡みつき》が打たれたのち、時機を見て《瞬唱の魔道士》が登場し、そして《ムーアランドの憑依地》がトークンを生み出す。その後は《ルーン唱えの長槍》の打撃の射程圏内に入るか、それとも《聖トラフトの霊》と天使の同時攻撃がゲームを終わらせに来るかだ。ブロッカーを出そうと試みても、《蒸気の絡みつき》で処理される。小さな効果一つ一つは単体では重要ではないが、結局それらが相手を倒してしまう。
デッキの別の重要な強さは、防御から攻撃へ、またはその逆へと転じられる力で、すべてはこれが用いるクリーチャーによるものだ。《修復の天使》は防御のために使えるし、さらに安全ならば3点パンチにいける。《幻影の像》は対戦相手の最良クリーチャーをコピーして相打ちを誘う――こちらのブロッカーに《蒸気の絡みつき》を使ってコピーした脅威で攻撃してくるまでは。
マジック基本セット2013もまたそれに新たな趣向を加えている。新顔の《空召喚士ターランド》はデッキに強烈な後押しを加え、《蒸気の絡みつき》のような防御的なカードを使い続けながら圧力をかけていくことができる。一度2/2のドレイクを数体生み出せば、相手はおそらく安全なうちに攻撃しようなどとは思わないだろう。それは1回か2回の攻撃で相手を倒せるだけのドレイクが十分に集まるのはもはや時間の問題だからだ。《ボーラスの占い師》は必要に応じて短期戦あるいは長期戦を行う助けとなってデッキに一貫性を提供する。
短所
デッキの弱点を見つけるにあたって、このデッキが負ける場合の引きやよく考えられる弱い引き、あるいはあなたが見てきた中で対抗手段を前にしてどう受け戦ったかなどについて考えたいところだ。
デルバー側がどんなカードを引けばよいのかわからないのならば、対策は困難となる。しかし最重要の主題がある。出たクリーチャーを処理していくことだ。デルバー・デッキが攻撃的であっても防御的であっても、装備品による強化かターランドや《修復の天使》のような最高品質のクリーチャーが機能する必要がある。
クリーチャーがいない場合にデルバー・デッキは最も弱くなる。その状態では、脅威となるカードがないので相手をすばやく倒す能力は持たない。それでいて、ゆっくりダメージを蓄積しつつ切り札で勝利をつかみに行くこともできないため、時間を長引かせるという主要な戦法もやはりうまく働かない。
さて、デルバー・デッキのクリーチャーをすべて退治するのは言うは易く行うは難し。《ムーアランドの憑依地》たった1つでそれは非常に困難になる。しかし、序盤の《秘密を掘り下げる者》と後半の《空召喚士ターランド》と《修復の天使》を倒せる十分に用途の広い除去があれば、対戦相手より優位に立つことができる。
続いて――《出産の殻》だ!
8 《森》 1 《島》 1 《平地》 4 《内陸の湾港》 4 《剃刀境の茂み》 2 《金属海の沿岸》 1 《氷河の城砦》 2 《ガヴォニーの居住区》 -土地(23)- 4 《極楽鳥》 3 《アヴァシンの巡礼者》 4 《エルフの幻想家》 2 《幻影の像》 3 《刃の接合者》 2 《国境地帯のレインジャー》 1 《悪鬼の狩人》 1 《ファイレクシアの変形者》 1 《真面目な身代わり》 3 《修復の天使》 1 《石角の高官》 2 《酸のスライム》 2 《スラーグ牙》 1 《狙い澄ましの航海士》 1 《霜のタイタン》 1 《太陽のタイタン》 -クリーチャー(32)- |
4 《出産の殻》 1 《滞留者ヴェンセール》 -呪文(5)- |
1 《スレイベンの守護者、サリア》 1 《棘投げの蜘蛛》 1 《ワームとぐろエンジン》 1 《聖別されたスフィンクス》 1 《大修道士、エリシュ・ノーン》 2 《外科的摘出》 2 《漸増爆弾》 3 《天界の粛清》 2 《存在の破棄》 1 《押し潰す蔦》 -サイドボード(15)- |
5 《森》 1 《山》 1 《平地》 4 《銅線の地溝》 1 《根縛りの岩山》 4 《剃刀境の茂み》 2 《陽花弁の木立ち》 4 《魂の洞窟》 2 《ガヴォニーの居住区》 -土地(24)- 4 《アヴァシンの巡礼者》 4 《極楽鳥》 2 《エルフの幻想家》 1 《スレイベンの守護者、サリア》 3 《刃の接合者》 2 《国境地帯のレインジャー》 1 《悪鬼の狩人》 1 《躁の蛮人》 1 《ファイレクシアの変形者》 1 《高原の狩りの達人》 1 《荘厳な大天使》 3 《修復の天使》 1 《酸のスライム》 1 《スラーグ牙》 1 《士気溢れる徴集兵》 1 《ウルフィーの銀心》 1 《業火のタイタン》 -クリーチャー(29)- |
2 《電弧の痕跡》 3 《出産の殻》 2 《忌むべき者のかがり火》 -呪文(7)- |
1 《スレイベンの守護者、サリア》 1 《夜明けのレインジャー》 1 《自然の伝令、イェヴァ》 1 《棘投げの蜘蛛》 1 《スラーグ牙》 1 《ウルフィーの銀心》 1 《士気溢れる徴集兵》 1 《ワームとぐろエンジン》 1 《栄光の目覚めの天使》 1 《大修道士、エリシュ・ノーン》 1 《古えの遺恨》 1 《天界の粛清》 1 《押し潰す蔦》 1 《忌むべき者のかがり火》 1 《戦争と平和の剣》 -サイドボード(15)- |
長所
デルバー・デッキのように、《出産の殻》デッキには様々な角度からの攻撃手段がある。デルバー・デッキとは異なるとはいえ、多くのゲーム展開に対応でき、いくつもの大きな脅威と、たった1枚で成立するきわめて強力なゲームに勝てるエンジンを持っている。
最初に《出産の殻》に関して調査すべきなのは、それがどれくらい早く登場するのかについてだ。7、8体のマナ・エルフが通常より数ターン早く脅威となるカードを戦場に出すことを可能にし、受身のデッキを素早く切迫した状況に置く助けとなる。
またそれらすべての加速装置は2ターン目にはもう《出産の殻》を出せる。《出産の殻》はデッキ名になっているだけの理由がある。2ターン目に《出産の殻》が出たなら、多くのデッキにとってはゲームが基本的に終わったことになるからだ。すべてのクリーチャーが脅威となるためコントロール・デッキが能動的な殻デッキを打破するのは容易ではなく、またもしビートダウン・デッキの出足が遅れたなら殻デッキは先んじるだろう。
しかしこのデッキは殻に依存しているなどと考えてはいけない。殻を封じている間はこのデッキの万能性が著しく低下するものの、デッキにはまだ良いカードがふんだんにある。《出産の殻》の起動型能力を無しにしたとしても、戦場に出たときの能力を連鎖的に誘発させていく《霜のタイタン》やら《高原の狩りの達人》やら《スラーグ牙》やら《修復の天使》やら......またはその他の何もかもで依然として容易にあなたを押しつぶせる。むしろ3マナでゲームに勝てるカードを備えた中速デッキというのが他のどんなデッキ表現よりも近い。
このデッキの多くのクリーチャーが戦場に出ることで何らかの効果を発揮するので、単にクリーチャーをすべて破壊するだけでは十分ではない。独自にいくつものカード・アドバンテージをかき集める準備をする必要がある。
短所
このデッキの主要な強さの1つはその加速力にある――だがその速度が押さえ込まれた場合、《出産の殻》が出てくるのは遅くなるだろう。相手が2ターン目の殻を出す当てとしている1ターン目の《極楽鳥》を除去すればその結果対戦相手が殻をプレイするターンは遅れるが、それよりも、相手が他に軽いクリーチャーを持っていなかったならさらに殻を用いるターンが遅れるかもしれない。殻デッキの初動と進行を遅らせることができれば、殻は対戦相手の救いになるとは限らない。
もう一つの方法として、相手を遅らせるのではなく殻よりも先に展開するというのもまた考えられる。特に序盤に殻を出して起動する時にファイレクシア・マナをライフで支払うため、最初の数ターンで多くのダメージを与えることが可能な超アグレッシブデッキは《出産の殻》に問題を提起する。殻に入っているクリーチャーが提供する無数の能力を利用する時間を与えなければ、いい感じだろう。
このデッキには《出産の殻》なしで動く強力な別のプランもあるが、どちらも殻と一貫性のある現時点の脅威双方に対処できるデッキによって圧倒することが可能だ。限定的な状況に対処するカードは一貫して《出産の殻》に依存するので、殻を停止することは、殻デッキが状況に最適なカードを何度も引き続けるのでないかぎりタイタンのようなカード1、2枚で殻デッキを粉砕できることを意味する。《出産の殻》に中速で挑んではいけない――《出産の殻》にとってはそれがベストな状況だ。
最後に、ゾンビ・デッキを見よう!
12 《沼》 4 《黒割れの崖》 4 《竜髑髏の山頂》 3 《魂の洞窟》 -土地(23)- 4 《戦墓のグール》 4 《墓所這い》 2 《煙霧吐き》 4 《名門のグール》 3 《血の芸術家》 4 《ゲラルフの伝書使》 1 《ファイレクシアの変形者》 3 《ファルケンラスの貴種》 -クリーチャー(25)- |
3 《悲劇的な過ち》 1 《破滅の刃》 1 《四肢切断》 4 《硫黄の流弾》 1 《忌むべき者のかがり火》 2 《迫撃鞘》 -呪文(12)- |
1 《ファイレクシアの変形者》 2 《外科的摘出》 2 《強迫》 2 《溶解》 2 《虚無の呪文爆弾》 2 《ゲスの評決》 1 《喉首狙い》 1 《攻撃的な行動》 2 《ヴェールのリリアナ》 -サイドボード(15)- |
9 《沼》 4 《闇滑りの岸》 4 《水没した地下墓地》 3 《魂の洞窟》 -土地(20)- 4 《戦墓のグール》 4 《墓所這い》 2 《煙霧吐き》 4 《血の芸術家》 4 《幻影の像》 2 《血の座の吸血鬼》 4 《ゲラルフの伝書使》 4 《戦墓の隊長》 1 《ボーラスの信奉者》 -クリーチャー(29)- |
3 《悲劇的な過ち》 4 《血の署名》 2 《殺戮の波》 2 《迫撃鞘》 -呪文(11)- |
2 《吸血鬼の夜鷲》 2 《鋼の妨害》 2 《不快な再誕》 2 《虚無の呪文爆弾》 2 《否認》 2 《漸増爆弾》 2 《居すくみ》 1 《殺戮の波》 -サイドボード(15)- |
長所
ゾンビ・デッキはビートダウン・デッキだ――それもとびきり有能な。おそらくは(まっとうに)スタンダードに対してひたむきであるならば、スタンダードで最もプレイされているビートダウン・デッキとしてあなたを攻撃する可能性が高い。
8体の1マナパワー2クリーチャーがデッキから飛び出すので、2ターン目にパワーの合計が6になるのも珍しくない! そんな展開に《戦墓の隊長》が続いたなら、さらにめちゃくちゃだ。
絶対に早い段階でゾンビ・デッキのクリーチャーを対処するか、あるいは展開を遅らせるかしなければならない。《墓所這い》と《ゲラルフの伝書使》はゾンビ・デッキに全体除去からの復帰というよい能力を与え、また《ファルケンラスの貴種》、《血の芸術家》、そして《戦墓の隊長》のようなカードが対戦相手のライフを狙う大量の手段を提供する。これらすべてが大量の除去と組み合わさることで迅速に防御することが不可能になる。
短所
ほとんどのビートダウン・デッキ同様、除去はクリーチャーの大群を払いのける妥当なやり方だ。しかしながら、ゾンビは死から蘇る傾向がある――そしてそれは《ゲラルフの伝書使》や《墓所這い》のようなカードとして確実に登場する。それらのクリーチャーを追放する除去はただの破壊とは大きな違いを生み出すので、したがって《火柱》のようなカードはゾンビ・デッキにとって大きな問題となる。
大型ブロッカーはもっと楽ちんにゾンビ・デッキの脅威を阻んでくれる。《墓所這い》が除去の後追いを受けて延々殴って来るような状況において、《ボーラスの占い師》はそれをかなりうまく退ける。《クラーケンの幼子》でさえ1マナパワー2どもや《ゲラルフの伝書使》を同様に退けるという意外な働きをこなす。
確かに、ゾンビ・デッキは結構な量の除去を持つ――しかし相手がこちらのブロッカーに除去を費やしているとなれば、結果として時間を稼ぎつつあなたの切り札に対する除去を1枚減らしているのは間違いない。
ステップ3―応戦
いったん敵の調査を終えたなら、逆襲の時だ。
強みと弱みを分析し、反撃するためのカードと戦略を狙い定めるためにうまく活用しよう。中国の戦略家孫子が言うように、「敵を知り己を知れば、百戦危うからず」だ。今敵を知ったのだから、次は己を知るときだ。
最初に見つけ出したいのは、ターゲットとしているデッキすべてに共通する弱点だ。そうすることで構築したいデッキの骨組みに当たりをつけることができる。一番基本的な方針をそれぞれについて書きだすと、以下のようになる。
対デルバー:クリーチャーをすばやく除去し、しかるのち勝つためにその展開の遅さを有効に活用する。あるいは、より早く動いて強引に押し切る。
対《出産の殻》:速度で上回るかなんとかして《出産の殻》を使えなくするかのどちらか。速度を落とすためにマナ・クリーチャーは即座に対処する。中速戦にはしない。
対ゾンビ:ゾンビ・デッキの序盤の攻勢をやり過ごし、その後攻撃。
これらのデッキすべてに通じている弱点はクリーチャーに比重がかかっているということで、軽い除去がそれらの戦略に対して有効となる。さらに、それらの序盤の動きを封じた後に、脅威となる立場に移行しなければならない。
しかしながら、いくつかの興味深い制限がここにある。今のような説明を聞けば、自然と中速デッキに向かいたくなる――しかし《出産の殻》相手に中速勝負を持ちかけるのは無駄な行為だ。さらに、この制限は3つのデッキそれぞれの強さを見ることによって複雑になる。
デルバーの長所:万能性、とても便利なカード、《蒸気の絡みつき》でクリーチャーを戻す行動、攻撃から防御への移行力。
《出産の殻》の長所:迅速さ、最適な答えである3マナのカード、多目的に使えるクリーチャーの多さ。
ゾンビの長所:素早く攻撃的な立ち上がり、回復力、ブロッカーに対しての除去の多さ。
ターゲットになっている3つのデッキのうち2つはアグレッシブかつ迅速だが、それらは前述した「除去を鍵」とした戦略によるものだ。しかしながら、これら3つのデッキのうち2つはこちらが序盤にゲームの主導権を握ってからクリーチャーを出すことを許すほど親切ではない。それらは手札に抱えているすべての除去を使うのを待ちわびている。
そうすると、どうやって攻めればいいだろうか? ここで行うべきこととは? どんなデッキを構築すればいい?
そうだな、私は2つの強力なアプローチがあると考えている。ひとつは速攻を選択することだ。長期戦を視野に入れた相手に対して攻め続ける試みは、ゾンビがある種の問題となるかもしれないが、デルバーと殻に効果的に働く。先週ぐらいに話したゴブリン・デッキのようなものならば、メインの《電弧の痕跡》によっておそらくはうまくはまるのではないかと思う。
代わりに、今回は別のアプローチを取ってみようと思う。もっとコントロール寄りのデッキだ。対処カードで満たされたデッキでしかも長期戦から利益を得ることができればすぐにコントロールデッキにはなる――しかし、特に上記のデッキと戦うのを支援するいくつかの独自性を持たせるつもりだ。
使いたい除去呪文をまず見ていこう。これらすべてに共通する一番の趣旨とは除去が重要であること、特に《秘密を掘り下げる者》、《墓所這い》、そして《極楽鳥》を同様に追い払える軽い除去であることだ。私が明確に用いたいカードは効果的に《墓所這い》を倒す《火柱》、そしてビートダウン・デッキなどに素晴らしい対策となる《電弧の痕跡》だ。いつでも《電弧の痕跡》は早い段階でマナ・エルフ2体を焼けて、そのゲームで優位に立てる。
しかしながら、それに加えてさらに、《修復の天使》や《太陽のタイタン》のようなデルバーや殻デッキのエンドカードなどへインスタント速度で解答を持つことが重要となる。《四肢切断》が《修復の天使》を早い段階で倒す少々の補充弾を与えてくれ、その上《喉首狙い》が天使もタイタンも同様に倒す重要な手段を提供してくれる。
しかしどうやって戦場に出たとき効果を山ほど持つ中速デッキ相手にカード・アドバンテージを獲得していこうか? 長期戦での《ムーアランドの憑依地》や《墓所這い》にどう対処すればいい? 《死の支配の呪い》というハンマーは1マナのマナ生成クリーチャーから裏返ってない掘り下げる者まで3つのデッキすべての多くのカードを叩き潰す。これらのマッチアップではこの呪いが出ている間が最高だ。
除去については大体決まったところで、それぞれのデッキ特有の問題点に取り掛かるとしよう。
《出産の殻》デッキに対するとき、コントロール・デッキは《出産の殻》を完全に封じる方法を絶対に必要とする。ゲームが後半になっても優勢を維持するために青のカード・アドバンテージを選択する必要があるため――グリクシスとして知られている――青黒赤のデッキになるだろう。私が使いたいカードは《墓掘りの檻》で――そしてデッキが青いので、《粗石の魔道士》を用いてそれを見つけることができる! これで殻デッキ用に《粗石の魔道士》とオマケをセットにしたパッケージを持てるようになる。《墓掘りの檻》はこのデッキがやりたいことを阻害するが、《出産の殻》デッキと十分に戦えるという点で引き換えにする価値はある。
デルバーに対してはどうだろう? デルバー・デッキに対して《清純のタリスマン》は意外なほどよいカードだ。このようなデッキはいくらかのマナ加速を必要とするし――すぐに詳細を述べるが――《清純のタリスマン》がデルバーに対して与える影響は大きい。
デルバー・デッキは継続して殴り勝つため小さなアドバンテージに依存し、そしてタリスマンはそのアドバンテージをゆっくり押し返す。私はパトリック・チャピンとデルバー対グリクシスのテストプレイをしていたときのことを、そして彼がこのマッチアップのためにやはりまずタリスマンを加えたことを思い出した。
《聖トラフトの霊》はこのデッキにおける最も猛々しい伝統的なカードの1つだ。しかし《粗石の魔道士》と《瞬唱の魔道士》のどちらでもそれをブロックできるし、《黒の太陽の頂点》はこいつを始末する掃除屋だ。それを完全には(複数でないかぎり)殺せないものの《死の支配の呪い》はトラフトからのダメージを1ターン4点にまで減らし、タリスマンのライフ回復とあわせて解答を見つけ出す時間を稼ぐ見込みを与えてくれる。
ゾンビ・デッキだが、すでに多くの軽い除去を用意しているし、まあこれは対抗するデッキとしての優先順位も3番目なので、それらに対してどう戦えそうかという点については満足している。
さて、ゲームにどうやって勝とうか?
このデッキに関して独特なのは、ゲームに勝つためにクリーチャーに頼ることはしたくないという点だ。《瞬唱の魔道士》も《粗石の魔道士》も(《蒸気の絡みつき》されたらハッピーだが)使い捨てで、かといって《墓所のタイタン》や《聖別されたスフィンクス》を当てにするには負担が大きい。代わりに、プレインズウォーカーで倒すのはどうか。
それが高コストであるとしても、青黒赤のコントロール・デッキにちょうどぴったりな強力なプレインズウォーカーで、どんなパーマネントにも対処できて、そして単独でゲームに勝てるのであれば究極のカードだ。そんなカードがスタンダードにあれば素晴らしいのだが。そいつがもし伝説のカードとして過去に非プレインズウォーカー・バージョンで登場していてマジックのストーリー上で語り継がれているようなやつだったりするとさらに素敵なんだが......
もう今は、みんな私が何のカードについて話しているかは当然気づいているよな。
このサイドボードはいったい何があったのかと思うかもしれない。ところで、3つの特定のデッキと戦うためのデッキを構築する場合、それらのデッキが行ってくるサイドボードへの対策と、それら以外のデッキと戦えるようにするのが重要だ。例えば、《強迫》はあまり準備できていないコントロール・デッキとの対戦を助ける。
《雷口のヘルカイト》の置かれている場所が気になるだろう――だが、これは素晴らしい転換カードだ。第1ゲームにおいて、対戦相手はこちらがコントロール・デッキであることに気づき、第2ゲームに向けて上で述べてきたような除去をサイドアウトしてくるだろう――そこにクリーチャーを持ち込むことで完全に裏をかくというわけだ!
《解放された者、カーン》を入れ替えることでほとんどのデッキに対してタップアウト《解放された者、カーン》デッキからタップアウト雷口デッキへと変化できる。《雷口のヘルカイト》と《幻影の像》を並べる連動は相手にとって致命的で、対戦相手はあなたの「コントロール・デッキ」によってたった2ターンで倒されることになる。
そこでだが、このデッキは狙った3つのデッキが相手のときはどのように対策を強化するだろうか?
殻デッキに対しては、《出産の殻》を撃退するために《溶解》、追加の檻、そして《倦怠の宝珠》を投入する。《倦怠の宝珠》は殻デッキに対して強力で、ほかの対策カードが残りの《出産の殻》の問題点に対処する間に、殻デッキのクリーチャーの戦場に出たとき能力をすべて締め出す。
デルバーに対しては、《聖トラフトの霊》に対処するために常に《幻影の像》は投入しよう。《蒸気の絡みつき》を外してくると思うなら、飛行クリーチャーを恐怖に陥れる雷口も同様に加える。もしクリーチャーではない呪文を多めに用いていたら、呪文を捨てさせるために《強迫》も使える。
ゾンビに対しては、雷口形に変化するプラン以外にはこの対戦のための入れ替えは特に無いが、メインデッキはゾンビに対してかなり良い形になっている。クリーチャーを除去ってねじ伏せろ!
狙った3つのデッキに対してのサイドボードは慎重に行い、そして全マッチにおいて優位に立ち続けろ!
《解放された者、カーン》 アート:Jason Chan |
(編訳注:今週のデッキ募集はありません。)
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