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Latest Developments -デベロップ最先端-
『異界月』スタンダード総括
『異界月』スタンダード総括
Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2016年9月2日
こんにちは、そして「Latest Developments -デベロップ最先端-」にようこそ。今回はここまでの『異界月』スタンダードを振り返ってみようと思います。『イニストラードを覆う影』に関する同じような記事はこちらでご覧になれます。
私はこの記事を書いて人々に我々のスタンダードへの思考過程に関する洞察を与えることを本当に楽しんでいたのですが、書くのが早過ぎたことに気付きました。私はプロツアー『イニストラードを覆う影』の多様性について、その後のメタゲームの変化を見ずにチーム(と私自身)を少しほめすぎました。最終的に、このフォーマットはプロツアー後かなり破綻してしまいました。我々が見たあの多様性は、それが人間デッキ、白緑トークン、もしくは《集合した中隊》デッキといった白いデッキに塗りつぶされてしまいました。残念ながらプロツアーで見かけられた赤緑ゴーグルのようなクールなデッキの多くは、その後の数週間見かけられる程度の強さは持っていたとはいえ、白いデッキに遅れを取っていたのは明らかでした。
機能したもの
今回のプロツアー前のいくつかのトーナメントは『イニストラードを覆う影』前のトーナメントとどこか似たような感じでした。『異界月』のトーナメントのトップ8はもう少し多様性がありましたが、トップ16は依然としてバント・カンパニーの海でした。この結果人々はプロツアー前にこのフォーマットが解明されてしまったと嘆きました。正直なところ、私はこのプロツアー前に我々がこのフォーマットが本当に1つのデッキになってしまうのを見るのではないかとかなり恐れていましたが、しかし(またしても)トップ・プロのチームは上位デッキの一定数を知っていること、そしてそれに対して有効なメタゲームを知っていることのアドバンテージを活かしました。
プロツアー『イニストラードを覆う影』とプロツアー『異界月』のどちらも《集合した中隊》デッキが優勝しなかったことは個人的にはかなりの大事件です。両方のトップ8にはいくつかの新しいデッキがあり、多くの本当にクールなデッキがありました。『異界月』はプロツアーで《最後の望み、リリアナ》と《約束された終末、エムラクール》を単体のカードとして大きく目立たせ、さらに昂揚と現出がデッキの戦略として大きく目立っていました。このような理由から、私はこのプロツアーの結果を、大勝利であり、スタンダードがどのようになるかについての素晴らしい紹介の場だと見ています。
それだけでなく、我々はこの数週間に青黒ゾンビや青緑クラッシュ、青赤《熱錬金術師》のようなデッキで多くのとてもクールなものがスタンダードで現れるのを見てきました。私がこれらのデッキに最も満足していると思っているところはスタンダードの中で楽しく独特な動きをしているところです。
これを受けて、私は現在のスタンダードがかなり楽しいと思っています。たくさんのクールなものがあり、それはいつでもあるわけではありません。現在のスタンダードのゲームは技術のテストであり、独特なアーキタイプが複数存在します。
スタンダードの中には語るべき多くの良いことがありますが、私が明らかな問題を無視したり、このフォーマットの細かいところばかりを話すつもりだとは思ってほしくありません。この企画に望むことは率直な議論を行うことで、そしてそれはこのフォーマットの問題に触れるということです。
《焼夷流》 アート:Raymond Swanland |
そうではなかったもの
ここ数ヶ月に他のデッキが(イベントで優勝するという意味で)成功を収めましたが、人々に《集合した中隊》をプレイさせることを止めさせられたわけではありません。他のデッキがどれぐらい成功を収めたかに関わらず、《集合した中隊》が今のスタンダードで最強のデッキであることを否定するのはかなり困難です。プロツアーの時点までにこのデッキを誰も「完成」させなかったとはいえ、新しいデッキが出揃った後、人々は最初からやり直してより良いバージョンの《集合した中隊》デッキに戻ってしまいました。
現在のスタンダードのメタゲームは私が健全だと思うものではありません。人々がプレイを楽しむたくさんのデッキがあり、程々の成功を収めていますが、多くの人々は依然として《集合した中隊》をプレイしています。私は顔を赤くしてあなたにこのフォーマットの多様性についてしゃべることができますが、もしあなたが地元のイベントに出て毎回7ラウンド中3回《集合した中隊》に当たったなら、あなたは実際に存在する他のデッキを気にしなくなるかもしれません。
また《集合した中隊》はこのメタゲームに大きな足跡を残し、実際このフォーマットのアグロ・デッキと青いコントロール・デッキに被害を与えました。なのであなたが《集合した中隊》でないデッキをプレイしたいと思っても、《集合した中隊》が強すぎるせいでそのデッキをプレイすることを選ぶことになるかもしれません。良いニュースは《集合した中隊》が全面的に高い勝率ではないことです――環境の残りのデッキに対しては不利であっても、《集合した中隊》に対して有利なデッキが存在します。
スタンダードに関する我々のもう1つの大きな懸念は、このフォーマットをプレイすることの難しさです。昂揚と現出には参照する多くの情報があり、そしてエムラクールはいくつかのとても複雑な一連のプレイを生み出しました。対戦相手がいつエムラクールを唱えられるかを知り、そして盤面が最悪の事態にならないようにすることが重要です。これら全ての難しさによって、このプロツアーでは時間切れになったゲームが多く見かけられました。
一見すると、それは良いことのように見えるかもしれません。スタンダードには多くの技術を試される瞬間がありますが、それがほとんどのプレイヤーにとって難しすぎるものになった場合、多くのゲームが時間切れになることになります。これはよろしくありません。我々は満足いく決着のつくゲームを望んでいて、そして延長ターンの引き分けが起こることが理想的な決着だとは考えていません。実際、開発部メンバーが現地でプロに聞いた意見の中で最も大きかったものの1つは、スタンダードのプレイの難しさに関するものでした。これはレベルの低いプレイヤーだけのリスクではなく、トップレベルのプロにとっても深刻なリスクです。
《呪文捕らえ》 アート:Adam Paquette |
マーク・ローズウォーター/Mark Rosewaterがデザイン演説記事で言及したように、ここ数年でキーワード能力が増殖してきました。デザインは多くのメカニズムを引き渡し、そしてデベロップは新しいものを作ります。キーワード・メカニズムを作るとき、我々は基本的にそれらがスタンダードで見かけられるものにしようとします――つまりスタンダードのデッキにはブロックのキーワード・メカニズムが6つ以上使われているということになります。そして、ある程度参照したり順番を決めたりすることが必要な能力が複数ある場合、物事は本当に複雑になってしまいます。
幸い、我々はこの教訓を『戦乱のゼンディカー』ブロックと『イニストラードを覆う影』ブロックの複雑さを見た後に学んだので、『カラデシュ』では少しましになっています。やることを多くしたくないというわけではありませんが、うまく行けばスタンダードは奥深さを失うことなく、特に新しいプレイヤーにとってもう少し把握するのが単純で簡単なものに(次第に)なっていくでしょう。
私にとって、このフォーマットは我々がどのようにセットを組み立て、そしてどのようにスタンダードを調整しようとしているかについての多くの強みを見せてくれました。我々の想定していない方法でいくつか壊れた物事があり、カード中には我々の想定以上に強力なものがありましたが、このフォーマットには依然として多くの実行可能なデッキの選択肢が存在します。我々はこの週末に世界選手権で何が起こるかを目の当たりにしますが(原文執筆当時)、私は人々が皆《集合した中隊》をプレイするかどうかについては懐疑的です。多くの人々が彼らを有利にすると考える他のデッキを使うでしょう。
展望
御存知の通り、我々はおよそ1年ぐらい先のマジックのセットを作っているので、『異界月』はプロツアー『イニストラードを覆う影』の結果が出る数か月前に我々の手を離れていました。後で考えると、もし私がこのスタンダードのメタゲームの推移を正確に知っていたなら変更を加えていたであろう『異界月』のカードがあるということは驚くには当たらないでしょう。
ローテーションは間近であり、私はそれにとても興奮しています。本当に正直なことを言うと――私はスタンダードで《集合した中隊》を見なくなるのが楽しみで、みなさんのうち多くも同じ意見だと信じています。これはモダンでも素晴らしいカードですが、その位置づけにあるカードの多くと同じく、スタンダードで我々が望んだよりも強力です。
あと1か月ぐらいで、我々は新しいアーキタイプの発生と、《集合した中隊》がスタンダードからいなくなったことでプレイアブルになったいくつかのデッキを見ることになるでしょう。『カラデシュ』は多くの新しいカードをもたらし、スタンダードのローテーションとともに物事は広く開かれるはずです。私は人々が練り上げたどんなデッキがこのフォーマットで見られるか待ちきれません。
今週はここまでです。今現在、あなたはおそらく『カラデシュ』プレビューを見ていると思いますが、それはまだまだ続きます。世界選手権の模様だけでなくさらなる『カラデシュ』のカードもご覧ください。
それではまた次回お会いしましょう。
サムより (@samstod)
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