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時を止めてあなたと合体を
時を止めてあなたと合体を
Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2016年7月8日
プレビュー週間が終わり、全て揃った『異界月』のカードイメージギャラリーがこのウェブサイトで閲覧できます。少し時間を取ってこのセット全体を見てみてください――そして、そこにある多くの素晴らしいものの中から皆さんがプレイして興奮するカードを見つけてほしいと思います。
今回は、『異界月』の中で最も注目するべきもの――合体カードについてお話ししようと思います。ケン・ネーグル/Ken Nagleとマーク・ローズウォーター/Mark Rosewaterの両名はこれらがどのようにデザイン過程からやってきたかについて多くを語りました。皆さんすでにお気づきかもしれませんが、最終バージョンのこれらのカードはデザインが提案した元々のカードと大きく異なっています。これらのカードが繰り返しを経ていった過程を見ていきましょう。
ダブル・トラブル
このカードに取り組むときにデベロップが行う必要があった最初の事柄は、このセットにどれだけ合体を収録するのかを考えだすことでした。合体はエルドラージへと変身することを最も派手に表しますが、現実的には、リミテッドで通常の変身カードと同じ頻度で合体は起こりません。我々はこの派手でものすごいメカニズムを紹介したかったのですが、『異界月』『異界月』『イニストラードを覆う影』リミテッドでの1ゲームあたりの変身回数が合体のせいで減少した場合、私はイニストラードをクールで独特にしているものが損なわれてしまうと思います。
私が最初にしたことは、デザイン・チームから引き継いだアンコモンの合体カードの削除でした。このメカニズムがアンコモンにあることの問題は、ドラフトで合体できそうな雰囲気がすることでした――しかし現実的にはそれほど起こりません。確かにレアよりは多いのですが、リミテッドでレアが合体することはそう期待されていません。それらはより構築向けのものなのです。
確率で言うと、1回のドラフトごとに合体アンコモンのそれぞれを見かける枚数は1枚よりすこし少ないので、全てのドラフトの大部分で2枚のうち1枚しか見かけないということになります。仮に片方が手に入ったとしても、もう一方のカードも出てくる必要があり、さらにあなたまで回ってこないといけないのです。つまり、その2枚のうち1枚はドラフトで回ってくるぐらい十分に弱い必要があるということになります。
この組み合わせは合体を成立させるための配置としては本当にまずいやり方だと感じられました。そうするのではなく、我々はこのメカニズムをコモンかレアのどちらかにすることを選択しました。
2枚の両面カードのコモンによる合体は機能するでしょうが、それらはこのセットにおける両面カードの唯一の目標ではありません。我々は狼男や他のタイプの変身も見せたいと思いました。我々はアンコモンのほとんど全て(全てではありませんが)を埋め合わせのために狼男にできましたが、そうすると多すぎの感があります。両面カードは変身の物語を伝えるための最強の手段であり、我々はそのスロットをこのセットが必要としたエルドラージの変身を伝えるために必要としました。セットに入れる枚数が分かれば、今度は実際のカードを作る番です。
《墓ネズミ》/《夜深の死体あさり》
〈不幸な釣り人〉
{1}{U}
クリーチャー ― 人間
1/3
潜伏(このクリーチャーは、これより大きなパワーを持つクリーチャーによってはブロックされない。)
あなたが[八脚のインキー]をコントロールしているとき、それと[カード名]を追放し、それらを変身した状態で戦場に戻す。
〈八脚のインキー〉
{3}{U}
クリーチャー ― タコ
0/8
これがデザイン・チームから渡されたものです。アイデアはすでにあり、デザイナーの多くはピックが遅いコモンを組み合わせてデカブツにするというアイデアに熱中しましたが、私の中ではそれは大きな問題がありました。
まず第一に、これをクリーチャーの一番少ない色である青にするのは乱暴で、実際に一緒でないと機能しないものを取るのは困難でした。白にはすでにレアと神話レアの合体カードがあり、我々は白にそれを増やしたいとは思いませんでした。緑と赤は狼男を使うので、残ったのは黒です。それを受けて私がしたのは、この合体カードで伝わる適切な物語を考えだすことでした。
クリエイティブ・チームと話し合い、彼らが好んだ物語の1つは、調べたら今夜眠れなくなる「ネズミの王様」の話のバリエーションでした。私は片方のカードがもう片方のカードを持ってくる助けになるというアイデアに興奮しました。合体は成功させるのが難しいメカニズムであり、一緒に来るためにちょっと無理をしているカードを許容すると楽しいデザイン空間が減りますが、個々のカードはより満足できるものになっています。
これを楽しくするための仕掛けは、2枚のカードを中盤でピックされるような強さにし、組み合わせたときにそれらの個別の合計よりも強くなるようにすることでした。また我々はこの2枚の合体をリミテッドで強力なプレイにして、しかし突然そのゲームを終わらせるようなものでないようにする必要がありました。我々は最終的にこれに威迫を付け、これが単体で強力になるか、もしくは盤面の膠着を破れるようにしましたが、大きく不利な状況からこれをトップデッキしてもそれで必ず勝てるものではないようにしました。
《ハンウィアーの要塞》/《ハンウィアー守備隊》
構築で合体の組み合わせを機能させるということは、それをただ単に強力にするということだけではありません。戦略的にそれらが成功する最高のチャンスを与える方法を考えるということです。両方のカードがクリーチャーでも機能するでしょうが、片方がクリーチャーでないパーマネントなら成功する確率はもっと高くなります。
このやり方を設定して、我々は容易に戦場に居座って起動するタイミングを選び、その結果それらを最大限デッキに入れられるチャンスを増やせるものにできました。我々は装備品とクリーチャーの組み合わせや、エンチャントさえも考えました。
しかしながらこれをデザインする前に、私はクリエイティブ・チームと話し合い、そして彼らは私にハンウィアーの物語と、それがいかに私の探している理論に適合するかを語りました――土地をデッキに入れることはあらゆるパーマネントの中で最も敷居の低いことだったので、それは完璧でした。そうすればこのカードをデッキに入れるための敷居はかなり低くなります。
我々のバージョンの《ハンウィアーの要塞》はほぼ同じままでした――誘発型能力ではなく変身にマナを使うことにすれば、ゲームの早過ぎる段階で人々が合体をさせることを気にせずにバランスを取ることができます。またこれは、よく調整された強さのカードを作るための最も有用な調整箇所です。クリーチャーに速攻を与える能力は、このカードが単体でも使われる十分な強さにするよい手段です。
これらのカードの究極の目標は、2枚のうち少なくとも片方を単体でスタンダードのデッキで使われる十分な強さにすることで、そうすれば2枚を組み合わせることの価値のために2枚目を入れさせることができます。我々はまだスタンダードのトーナメントで『異界月』を見ていませんが、私はこのちょっとしたコンボが陽の目を見ると確信しています。
《折れた刃、ギセラ》/《消えゆく光、ブルーナ》
これはこのメカニズム全ての始まりとなった2枚です。コンセプト・アーティストがブルーナとギセラの恐るべき融合を描いたときにすべてが始まり、そしてケン・ネーグルが以前に何度かマジックに導入しようとした「デュエル・マスターズ」のメカニズムを試すことにつながりました。
ハンウィアーと同じように、この2枚のカードに期待されるのは、どちらか一方がデッキの主力クリーチャーとして使われ、そして合体の価値によってもう片方が時々使われることです。最も分かりやすいのは、効果的な飛行クリーチャーとしてギセラを運用し、ブルーナを1枚入れるデッキです。もしくは、ブルーナをリアニメイト手段として使い、ギセラを戻すことで最大の価値を得るデッキです。
これら2枚を適正なものにするための問題は、ギセラとブルーナの2枚が別々に戦場にあることに対して、1体のブリセラに合体させたいと思わせるのに十分な強さがあるようにすることでした。我々は戦場に出たときの誘発型能力を使わないことを選びましたが、何も試さなかったわけではありません――単に大きくして警戒と絆魂を強くしただけでなく、対戦相手の使う最も一般的な除去の多くから身を守る能力も付けました。他の合体の組み合わせと同じように、我々は、強力かつ印象的な一方で、倒すことができるものを求めました。この合体のアクションは、解決された瞬間に対戦相手がただカードを片付けたときではなく、実際に攻撃したときが最も楽しいのです。
これら全ての合体カードを最終バージョンにするのは困難を極めました。『マジック・オリジン』のプレインズウォーカーのように、これらのカードは機能させるための調整箇所を大量に持っていて、そしてこれらは未知の領域だったので、我々は完成させるための簡単な手段を何も持っていませんでした。最終的には、私はこれらの結果にとても満足していて、私がしたようにみなさんもこれの楽しさを(そして私が2倍サイズのクリーチャーで攻撃したときと同じ喜びを!)見つけてほしいと願っています。
今週はここまでです。来週は現出のメカニズムについてお話しします。
それではまた来週お会いしましょう。
サムより (@samstod)
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