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リミテッドのプレイテストの風景
リミテッドのプレイテストの風景
Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2015年7月17日
1つのブースターを発売するために、そのセットのチームは数ヶ月間の間、週に3日、6時間ぐらい会議をします。基本的にそれらの会議の1~2回はプレイテストで、その他はその結果への対応です。プレイテストがどのようなものかについてのもっと詳しい情報を求めていた人がいたので、どのようなものかお話ししようと思います。
まず、シールドをするかドラフトをするかを決めます。ドラフトのほうが現実世界では一般的です――そして最も楽しいシナジーがたくさん見られるものです――が、プールの問題上1色だけに集中できません。一方、シールドは色のバランスの重大な問題を識別するのに適しています。ある1色が他の色よりも強い、もしくは弱い場合、シールドではカード・プールのランダム性で強さを補うことがとても困難です。『ゼンディカー』はドラフトでの各色の様々な選択肢がありましたが、シールドでは赤黒に圧倒されがちでした。
初期のプレイテストはうまくいくことも外れることもあります。時には斬新なことを試そうとして、悲惨な結果に終わります。またある時はその事柄がかなり上手くいって、セットのどこかに変更が加えられます。
以下の表は『マジック・オリジン』のデベロップ過程中の2ヶ月間シールドを行ったうち、6回目のプレイテストの意見を受け取ったデータです。プレイテスト中のカード名をそのままにしていますが、それは最終版の名前だとしばしば誤解を招くからです――これらのカードの多くは最終版のカードとの類似点が非常にわずかなのですが、我々はこのセットを全体として同じ動きをするように保とうとしたのです。
『マジック・オリジン』のプレイテストにご参加いただきありがとうございます! 以下にあなたの意見を記入してください。
我々の探しているもの:
- 楽しめましたか?
- バランスが取れていると思った色は?
- 機能していると感じた色のペアは?
- デッキ構築の面で方向性が十分に示されていると思いますか?
- 強すぎるように見えたカードは?
- 弱すぎるけど強くなればきっと楽しいと思ったカードは?
名前 | 白 | 青 | 黒 | 赤 | 緑 | ア | 土地 | レア |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ティム・A | 11 | 10 | 1 | 2 | 4 | |||
アダム・P | 8 | 13 | 2 | 4 | ||||
ダン・E | 2 | 10 | 1 | 1 | 8 | 2 | ||
ゲイリー・T | 10/1 | 12/1 | 1 | 1 | 1 | |||
アリソン・M | 7 | 11 | 4 | 2 | ||||
サム・S | 8/1 | 12/1 | 3 | 4 | 4 | |||
ショーン・M | 10/1 | 12/1 | 2 | |||||
アリ・L | 10 | 13 | 4 | |||||
スコット・V | 11 | 12 | 2 | 2 | ||||
トム | 12 | 10 | 3 | |||||
合計 | 21 | 42/1 | 42 | 55 | 54 | 11 | 9 | 28 |
悪くない数字です。白のプレイされた数は少なく、赤と緑が少し多いですが、突出した部分はありません。完全に無視されている色はありません(時々起こってしまうのです)。ここからこのセットのリードはプレイテストに参加した人全てにメールを送って、コメントをwikiに残してもらうように依頼します。その反応は以下の通りです。多くのカードがこの時点から変更されたので、いくつかのコメントが最初は分かりにくいかもしれませんがご了承ください。
《工匠の天啓》 アート:Kieran Yanner |
ティム・アーテン/Tim Aten
- 楽しめた。多くのカードがとても強力だった。
- デッキ構築の方向性はほとんどレアで決めていた。私が白緑をプレイしたり理由は《天使の散兵》と〈Recovery Angel〉と《光り葉の将帥、ドゥイネン》を引いたからで、〈Reincarnation〉のサイクルはそれらを探してくる助けになった。この色で他に引いたのは《大型化》、白いコモンの除去何枚か、《剣の壁》2枚と、マナ・カーブに沿ったクリーチャーだった。
- 《剣の壁》は心配だ。突破する十分な手段が用意されてるだろうか?
- 《ギザギザ稲妻》は明らかに大火力だ。《大型化》は《踏み荒らし》と同じぐらい強く感じる。
- 白いコモンのタッパーはいいところにいると思う。
- 〈Goblin Trailblazer〉もいい仕事をしそうだ。
ゲイリー・トンプソン/Gerry Thompson
- 《ギザギザ稲妻》2枚とナラーさんを引いたので赤をプレイした。青はそこそこのカードがあったけど、赤青は2マナ域とクリーチャーが基本的に無かった。緑はマナ・カーブを埋めるものが揃っていたので、赤緑をプレイした。
- 〈Elvish Best Friend〉と〈Goblin Basher〉に群衆整理の問題がある。《ギザギザ稲妻》と〈Generic Burn〉は5マナ域をたくさんくれた。
- ティムの言うように強いカードが多い。AとBの間が大きいように感じられる。
- 黒赤のクリーチャーは緑のクリーチャーに敵わない。
- 1枚の青緑のアーキタイプ用カード(アンコモンの〈Undo+〉)がそれを突出させているように見える。皆が『何でこれが存在するのか?』って聞いてるのを見た。これは青緑のアーキタイプが存在するかどうかがとても不明確だからだ。
アリソン・メドウィン/Allison Medwin
- 老練(注:高名)を楽しくプレイし続けられたけど、相手のクリーチャーが老練になると挽回するのがとても辛く感じた。
- 〈Stable〉はすごく強そうに見える。多分強すぎる。〈Fires〉はいいカードだった。装備品にして、誘発コストに1マナつけて、警戒を得ないようにするとか。それでもまだプレイしたいと思う。
- これは今のところ私の『マジック・オリジン』のプレイテストでのお気に入りだ。また私のデッキはまとまっていて、十分な数のクリーチャーとかがある。レアは完全に使わないかもしれないけど、それでも多分赤緑ミッドレンジをプレイしただろう。
- 飛行機械が高空(注:飛行クリーチャーだけをブロックできる飛行クリーチャー)でなく飛行なのはすごいしプレイしたい。〈Cogminster〉デッキをプレイするのは全てが《歌鳥の売り手》になった素晴らしい世界みたいだ。
- 〈Generic Burn〉と《ギザギザ稲妻》が同じコストなのは両方同じデッキに入れたいのにほとんどできないので変だと思う。
- 〈Woodrager〉はカウンターが乗らなくなっても唱えるのがエキサイティングだ。こいつの動きはレアにふさわしい。
《飛行機械技師》 アート:Steve Prescott |
ショーン・メイン/Shawn Main
- 金色のカードは素晴らしい働きをしています。自分の色とレアをじっと見て、そしてそれらは本当に近いものでした。金色のカードとそのシナジーはデッキの指針を与えてくれました。
- 選択肢として赤白老練デッキと緑青ミッドレンジもありました。私がプレイしたのは青黒の大量に墓地利用があるデッキでした。赤白は強さの面でかなり近かったのではないかと思います。
- このエルフの金色アンコモンは他のに比べてかなり時代遅れに思えます。私は接死に興味がないし、特に私のエルフのほとんどがお得なクリーチャー(《春のシャーマン》、〈Scarblade Trainee〉)であればなおさらです。
- 無色のマナ基盤が無いことには本当に満足しています。あったら金色カードを不必要に全部タッチしていたでしょう。
- 〈Jace's Cleverness〉が2枚と、 〈Painful Loss〉、〈Frostblast〉がありました。《甲冑のスカーブ》が1枚あって魔巧ボーナスが得られなかったことは1度だけでした。
- 〈Frostblast〉と《霜の壁》は相手のターンにロックしてしまって、1サイクル後のことを本当に思い出しにくくさせています(覚えている人は稀です)。ソーサリー速度のロックダウンは記憶しておくことが少ないのでもっといいと思います。
- ある長いゲームで、〈Ghoulish Assistant〉と《蘇りし者の行進》がループしました。これはつまらなくてとても退屈でした。このコンボは『テーロス』で《記憶の壁》でもありましたが、壁は死ににくいしループ中に相打ちを取ることもできませんでした。
- とは言え、私は〈Ghoulish Assistant〉好きですけどね。
- 飛行機械で過剰に停滞しているところは見かけませんでした。もしかしたら私の〈Scarblade Trainees〉が飛行機械を殺すのに向いていただけかもしれません。
- 良いサイドボードプランを取れました――〈Syphon Mages〉を、〈Frostblast〉と《メレティスの守護者》か《否認》と《強迫》にマッチアップによって変えていました。
- 基本的に私は《剣の壁》とか《霜の壁》のファンではありません。ゲームがすごく遅くなります。特に《剣の壁》に関してはもっといい選択肢があるんじゃないかと思います。
- このゲームは本当に楽しい。盛り上がりました。
アダム・プロサック/Adam Prosak
- 自分のカード・プールを見た後、緑をやるべきなのは明らかだった。《葉光らせ》4枚と、十分な数の緑の大型クリーチャーがあった。あとたくさんのマナと上手く機能する《帆凧》と 〈Nissa's Stem Sword〉もあった。その後、2色目として白が青に勝っていた。白には何枚かの老練持ちとそれを通す方法があり、さらに爆弾神話レアもあった。
- 最終的にテーマの一貫したデッキが出来上がった。マナ加速がいくつかと、大きい老練持ちと、それらを通す手段が少しあった。私のデッキの一貫性にはとても驚かされた。これは小さいコンビネーションをつなぎ合わせるような典型的なシールドデッキではなかった。
- 私のデッキは期待通りよく回った。ゲームは比較的とても早く進んだ。私のプレイしたクリーチャーは影響が大きく、ゲームがすぐに決まってしまう可能性があった。私のプレイしたどのカードもゲームに影響を与え、ゲームが長引くようには感じなかった。毎ターン本当に緊張感があって、それを楽しめた。
- これは前の点と確かに関係があるのだが、効果的な除去をプレイするのは楽しい。私が負けたゲームでは相手が2~3体の2/1を出してきて、こちらの最初のクリーチャーに軽い除去を打たれた。実のところ私は今の強い2マナ2/1には慣れていなかった。
- 戦闘は退屈ではなかったが、コンバット・トリックの欠落は明らかだった。私が見たコンバット・トリックは4マッチ中1つで、それは黒だった。装備品とソーサリー速度のものはたくさんあったが、いったん適正なサイズでブロックが成立してしまえば安全だと感じた。
- ゲームはとても楽しめた。
スコット・ヴァン・エッセン/Scott Van Essen
- 《カラデシュの火、チャンドラ》が自分のプールにあったので、赤をプレイしたいことは分かっていた。変身した彼女の[+1]能力と数枚の果敢と魔巧があって、呪文ベースのデッキが組みたいことも分かっていた。残念ながら青には魔巧も果敢クリーチャーもなく、面白そうな呪文も少ししかなかった。2色目として白か黒どちらかに絞り、最終的に黒を選んだ。その理由のほとんどは、少ないクリーチャーの数(12)を補う3枚のリアニメイト呪文があったからだ。
- 楽しかった。私のマッチはどちらも接戦だった。
- 老練は達成する難易度によってはぎこちないものになるかもしれない。なぜなら私は《死せざる怒り》のようなエンチャントが大好きで、カード・アドバンテージを失っているとはいえ老練を通して達成するよりずっと簡単だからだ。
- 魔巧がインスタントとソーサリーだけを参照して、果敢がクリーチャーでない呪文を参照することにはずっと悩まされ続けた。魔巧もクリーチャーでない呪文を参照してボーナスを考え直すか、閾値を3にするかどちらかにしたほうがずっとよくなると思う。
- 私のカード・プールだけかもしれないが、赤にはほとんど大きいクリーチャーがなかった。パワー4以上のクリーチャーは2枚しかなく、コンバット・トリックは1枚だけだった。緑の大型クリーチャーにはほとんど持ちこたえられなかった。
- チャンドラを一度変身させたが、彼女の第2面はシールドではつまらないものだった。[+1]の{R}{R}を加える能力は(それでアドバンテージを得られるようにデッキを組んだとしても)全く関係なく、彼女はただのショック・モンスター(そしてそれは全く怖くない)だった。彼女を変身させるための苦労を考えると、ちょっと期待はずれだ。スタンダードでは狂っていると確信しているので心配しすぎてはいないが、何かシールド向けのものがあればもっとクールだろう。さらに、(インスタントとソーサリーにしか使えないという制限が少しそれを緩和したとしても)マナを加える能力は実際チャンドラらしくない。
- コンバット・トリックがないのに加えて、この環境全体にコンバットトリックが欠けているように感じた。私は自信を持って大型クリーチャーをダブルブロックできて、相手のクリーチャーとマナがアンタップしていても私のデカブツがやられる心配はなかった。
- このセットの《ならず者の道》は好きだ。
さて、次のチーム会議で、私のチームはこれらの記録、別のプレイテストの記録、様々なデベロップ・チームのメンバーからのリミテッドの指摘を取り上げ、このセットの改善に取りかかりました。
《精霊信者の剣》 アート:Daniel Ljunggren |
全てのデータが白が弱すぎ赤が少し強すぎることを示していました。我々はそれを調整する必要がありました。
最も明らかな答えは、白がプレイされていないのでもっと魅力的なカードを持つようにそれらを改善することでした。我々はその点に関するコメントをよく見て、以下のような変更を考え出しました。
《茨弓の射手》が、
〈茨弓の射手〉
{2}{B}
クリーチャー ― エルフ・ならず者
他のエルフ・クリーチャーがあなたのコントロールで戦場に出るたび、各対戦相手は1点のライフを失う。
3/1
から以下のように。
〈茨弓の射手〉
{2}{B}
クリーチャー ― エルフ・ならず者
他のクリーチャー1体があなたのコントロール下で戦場に出るたび、各対戦相手はそれぞれ1点のライフを失う。
3/2
《狂暴な吸血者》はアンコモンでした。
〈狂暴な吸血者〉
クリーチャー ― 吸血鬼
飛行
老練1(これがプレイヤーに戦闘ダメージを与えたとき、これが老練でない場合、これの上に+1/+1カウンターを1個置くとともにこれは老練になる。)
{1}{B}:[カード名]を再生する。この能力は(カード名)が老練のときのみ起動できる。
3/2
再生コストが{2}{B}になりました。
《絡み爪のイトグモ》は{2}{G}2/3到達から1/4到達になりました。
《空への斉射》はコモンに格下げされました。
《結束した構築物》はブロックの助けになる能力が追加されました。
《護衛する自動機械》は3/3高名1からバニラになりました。
我々はまた新しいカードも追加しました。
《抑制する縛め》は現在のコストで作られました。
《武勇の印章》はマナ・コストが{3}、装備コストが{2}で作られました。
〈Guildpact of Ravnica〉という青のレアが追加されて、その後没になりました。
〈Collectible Armor〉は追加されてその後没になりました。
〈Collectible Armor〉
{2}{W}
エンチャント ― オーラ
エンチャント(クリーチャー)
エンチャントされたクリーチャーは戦場にあるエンチャント1つにつき+1/+1の修整を受ける。[カード名]が戦場に出たとき、あなたは[カード名]という名前のカードを望む数だけあなたのライブラリーから探してもよい。そうしたなら、それらをあなたの手札に加える。
《トゲイノシシ》は最初この名前でした。
〈キテオンの不正規軍〉
{2}{W}{W}
クリーチャー ― 人間
[カード名]が攻撃したとき、ターン終了時まで、これは+2/+0の修正を受けるとともに先制攻撃を得る。
3/3
〈Artifact-Loving Dragon〉が追加されて、その後没になりました。
〈Artifact-Loving Dragon〉
{3}{R}{R}
クリーチャー ― ドラゴン
飛行
あなたがアーティファクトをコントロールしていないとき、[カード名]を生け贄に捧げる。
7/5
再録カードも追加されました。
大量に変更されたように見えますが、これぐらいの変更はデベロップ初期に毎週起こっています。我々は材料を試してみたくて、そして物事を適正にするために多くの調整を行う必要がありました。これら全ての変更の後、我々は翌週に同じような数のさらなる変更をもたらしたプレイテストを行いました。それが何週も続き、次第に変更が少なくなります。その後我々が焦点を当てるものはより細かくなり、パワーとタフネスなどのような調整をするだけになります。
これはかなり成功したプレイテストでしたが、他のものはそうではありませんでした。例えば、これより前に我々は盤面の停滞を取り除けるかどうかを見るために、全ての飛行機械を高空にしてみました。しかしそれは全く楽しくないだけでした。それらはダメージレースの手段となり、対戦相手とのやり取りはありませんでした。そのプレイテストからの意見を受けて、このセットのデベロップ・チームは盤面の停滞を打破する別の変更を行うことになり、それは機能するように見えました。また我々は複数の週の様々なプレイテストを見渡してどの色のペアが機能していないかを見つけ出し、人々がどの色の組み合わせでも進んで行うように調整しました。
大事なことは、全てのプレイテストがそのセットを理想的な最終バージョンにしようと試みているわけではないということです。私がこのプレイテストをしている時点で、すべてを終わらせるまでに数ヶ月残されていました。したがって、物事を修正しようとするのと同じぐらい実験もしていました。我々は実験をし、データを得て、物事を改善し、それを繰り返しました。これは皆さんにこのセットを送り出す締め切りが来るまで続きます。
今週はここまでです。来週はMファイル・『マジック・オリジン』をお送りします。
それではまた来週お会いしましょう。
サムより (@samstod)
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