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開発秘話

Latest Developments -デベロップ最先端-

一問一答!

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一問一答!

Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru

2015年5月15日


 「Latest Developments」のもうひとつの特集へようこそ。今回はTwitter(@samstod)で私をフォローしている人々から寄せられた質問に答えていきたいと思います。私には寄せられた質問全てにお答えする余裕や能力はありませんが、これらの回答によってデベロップ部署が何を考えているかについてのより良い知識が伝えられることを祈っています。

 『タルキール龍紀伝』が新しい、もしくは古いブロック・フォーマットのローテーションを跨ぐセットの1つになるためにどんな問題にぶつかったの?


 セットのローテーションをするフォーマットにおいて、『タルキール龍紀伝』をその変革点のセットにすると決定したのは過程のかなり後、デベロップにかなり踏み込んでからでした。デベロップにとって大変な多くの変更がいっぺんに、全て起こりました。これらの変更が起きたことで、これからのセットのテーマにおいて重複が発生しないように、いくつかシャッフルする必要が出てきました。『タルキール龍紀伝』自体が吸収しなければならなかった中身という点では、さほどではありませんでした。私自身、最初は懐疑的でしたが、実のところ『タルキール龍紀伝』はそれ自身がスタンダードにおいて自立するために『タルキール覇王譚』や『運命再編』のサポートを多くは必要とはしなかったのです。


 反復カードで言いたかったこと。


 我々が最終的に違う効果に変えた2つのカードが《無傷の発現》と《ひずみの一撃》です。どちらも単体ではいいカードなのですが、これらを組み合わせると青白英雄的や《僧院の導師》/《沈黙の大嵐、シュー・ユン》デッキが本当に強化され、それら対して我々は神経質になっていました。とても簡単に人々を何もないところからいきなり殺したり、爆発的な果敢クリーチャーを守るのに十分な数のカードがあったので、我々はこれらのカードが適切ではないと感じたのです。

 総じて、我々がメカニズムを再録するときはそのメカニズムで人気のあったカードを取り上げ、少なくともそれらのうちいくつかを再録しようとします。しかしそのカードが前の環境にあったときは良くても、異なるスタンダード環境ではやり過ぎなことあります。その理由はそのカードの対策が環境に存在しないか、そのカードが最初にあった環境にはなかった強力な相互作用があるかのどちらかです。


 フレーバー的な理由は置いといても、《陰謀団式療法》は絶対にスタンダード/モダンでは強すぎる?


 絶対かどうかは自信がありませんが、《陰謀団式療法》は再録に関してとても注意しなければいけないカードです。これは楽しいことがたくさん書いてあり、実際に名前当てゲームはかなり楽しいのですが、多くのリスクをもたらします。トーナメントを偵察して対戦相手の正確なリストを知ることは巨大なアドバンテージになります。カードの名前当てにはいくらか技術が存在しますが、複数枚入っていることの振れ幅は多すぎます。もし手札に2枚あるカードをフラッシュバックで落とせるようになっていないならば、パッケージ全体としては有意義かもしれません。

 1つ挙げるならば、強力な1マナ手札破壊呪文の再録にとても気をつけなければならないということは、《思考囲い》のスタンダードへの復帰によって証明されたということです。これらはコントロールの最も危ないカードのいくつかを止めることができますが、多くのデッキを無効化してしまうリスクをもたらします。私は再録する前にこのカードのバリエーションが作られると思いますが、ご存知の通り、絶対と言うことはあり得ません。


 『タルキール龍紀伝』ではレアの土地サイクルは考えられなかったのですか?


 私は少し前に、プレイヤーがそのブロックにある呪文を唱えられるようにするために、我々は土地のサイクルを収録する方針へと向かっていることを述べました。『タルキール覇王譚』は『基本セット2015』の敵対色ペイン・ランド、友好色フェッチ・ランド、3色土地、そして10枚の「ゲイン・ランド」があるので、追加の支援は必要としませんでした。

 『タルキール覇王譚』『運命再編』『タルキール龍紀伝』を発展させるための多くの課題のうち1つは、『タルキール覇王譚』のスタンダードでは3色デッキを使うことが最も良く、ブロックが進んでより強力な単色や友好色のカードが出るにつれて2色デッキをプレイする選択肢が広がるようにすることでした。3色デッキはそのマナ基盤に大きな弱点を持ち、結果的に我々はまだスタンダードに新しい土地を加えようとは思いませんでした。人々のデッキが変化するチャンスが1年の間にあるならば、我々は2色をプレイするか3色をプレイするかを実際の決断にする必要があり、スタンダードにさらに土地を追加することはその目標に反しています。

 もちろん、『テーロス』がローテーション落ちしたときにスタンダードで一連の土地を調節する機会が起こるでしょう。我々は将来のブロックで人々が自分のデッキを十分唱えられるようにするための計画は持っていますが、スタンダードに与える影響の大きさのせいで、ブロック内で土地サイクルを全部入れることは少なくなるでしょう。先ほども言ったように「絶対」ではないのですが、毎回見かけるものではないでしょう。


 デベロップのいつ頃から次の年のスタンダードへの種を蒔き始めるの?


 信じられないかもしれませんが、種となるカードの多くは実際にはデザインの段階で植えられています。我々はあらかじめ各ブロックのテーマの概要の多くを持っています。我々は基本的に1年かそれより後に目立たせたい戦略を可能にするカードを収録しようとします。しばしばこれらのカードは劇的に変更されますが、もし次のセットが(例えば)マナ・シンボルにまつわるセットだと知っているなら、それから我々は多くの混成トリプル・シンボルのカードを、その前の年に支援を提供するために収録することができます。

 より具体的なカードは、伝統的にもっと後に種が蒔かれます。『基本セット2013』のようなセットを見てみると、《火打ち蹄の猪》や《遥か見》のような『ラヴニカへの回帰』への種となるカードがたくさん存在します。『ラヴニカへの回帰』に《天上の鎧》があるのは、我々が『テーロス』ブロックがエンチャントをテーマにすると知っていたからです。基本的に、将来のカードのために見える前年のカードは、実際に我々が芽が出るカードを作った後、それらのうち1つと相互作用をもたらすようにデザインされたカードです。

 スタンダードのローテーションの仕組みの変化によって、これらのような芽を出すことはやりづらくはなりますが、年2回のローテーションの形によって、我々はどのように将来のセットをデザインしなければならないかについて学び、そして将来のセットを助ける方法を見つけると、私は期待しています。


 濫用とか疾駆がヤバいし圧倒に対しても弱いのに《平和な心》をコモンにして煽るの楽しい?


 これは本当に煽りではありません。これは《粉砕》と《恐怖》が同じセットにあり、実は《粉砕》が良いカードである『ミラディン』のようなわざとらしいものではありませんでした。私はこれには居場所があると確信していますが、現在の我々はそのような人々をだますようなことは避けようとしています。だましているのではなく、リミテッドのバランス取りに達した結果、濫用や疾駆が《平和な心》に対して強いので、それならば《平和な心》をコモンにできるとわかったのです。

 我々はリミテッドでのコモンの除去の強さについての大まかなガイドラインを持っており、そして《平和な心》はそのラインの上限ギリギリです――しかし我々は『タルキール龍紀伝』のデベロップの後期に、我々が龍を龍と呼ばれるのにふさわしい強さにしたいのであれば、なおかつリミテッドのゲームが最初にドラゴンを出した人の手に渡ってしまわないようにするには、除去をもう少し強化する必要があることに気がつきました。《平和な心》は単に《破滅の刃》を白くしただけのものとは違って多くのドラゴンに対して素晴らしく、しかし他の戦略には脆弱なので、素晴らしいカードでした。


 シールドのデベロップのために何か特別なことをしましたか?


 正直なところ、シールドデッキ戦のデベロップのために我々がすることの大部分は、シールドデッキ戦をすることだけです。我々は全員が自分のデッキでプレイしたカードの記録を取っており、そのデータから人々がかなり広い多様性の色の選択をできるように試みます。それが完璧になることはないでしょうが、しかし我々は『ゼンディカー』3つのような、シールドでは赤と黒が飛び抜けて強い色になっているようなものは避けようと考えています。

 ドラフトは(全体的に)リミテッドのバランス取りにもっと有用ですが、その自分でカードを選べる性質はシールドだけで起こる問題を隠してしまいかねません。1回のドラフトが終わったときに数字を見てみたとき、1人だけがある1色をプレイしていると、その人がその色の強いカードを全て取ってしまうことになるので、問題はさらに見えにくくなるでしょう。シールドデッキではそのような問題は起こりません。赤いカードが強い場合、誰もが赤を使うことになるでしょう......そして我々はバランスを取るためにするべき仕事を知ることになります。


 どんな変わったデベロップ環境ならもう一度《ヴェールのリリアナ》をまたスタンダードで使えるようにできる? 彼女を封殺しただけなの?


 これはかなり難しい問題です。私の見立てでは、《ヴェールのリリアナ》は今までの中で2番目に強いプレインズウォーカーです。その理由のいくらかは古いフォーマットでの相互作用によるものですが、多くは単純に彼女が、本当に、本当に強いからです。《ヴェールのリリアナ》がガラクの呪いのストーリー展開に関わっていることから、我々は彼女を『基本セット2015』に入れようとしましたが、テストを行えば行うほど彼女は許容できないことが明らかになっていきました。そのいくらかは『ラヴニカへの回帰』『基本セット2015』の黒単の強さによるものでしたが、やはり彼女は『タルキール覇王譚』のスタンダードで驚異的に強かったのです。

 我々がこのフォーマットを彼女が弱い環境にするならば、その仕組みは手札を捨てることを強力に咎める呪文を多く持ったものになるでしょう。世界のあらゆる《ロクソドンの強打者》系と、そして彼女が戦場に出たときに簡単に殺せる軽い速攻クリーチャーを十分な数揃えます。もしくは3マナの黒いカードにタダで打てる打ち消し呪文さえもです。しかしそのようなものを我々が求めない理由は2つあります。1:それはリリアナと被る他の戦略の多くを駄目にするでしょう。そして、2:強力で人気のあるカードを再録することで興奮する人々がいて、足下をすくうような真似はただスタンダードを悪くするだけです。私は我々が以前のスタンダードでやってしまった(いつもわざとやっているわけではありません)ことを認め、そうすることで実際に誰かが満足したとは思っていません――ただ問題のカードを剥きたいだけの人々を除いては。

 今回はここまでですが、来週はモダンについてのお話をします。

 それではまた来週お会いしましょう。

サムより (@samstod)

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