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多人数戦を踏まえたデベロップ
多人数戦を踏まえたデベロップ
Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2014年10月17日
今回は DailyMTG.comの多人数戦特集ということで、多人数戦を意識してカードをデベロップするときにセットに入るものについて、少し時間をかけてお話ししたいと思います。私は多人数戦用の製品から飛び出して2人戦では強すぎたり非常に苛立たしくなったカード(《真の名の宿敵》、あなたのことですよ)と、結果的に的外れで全く何も影響を及ぼさなかったカードの違いを分けたいと思います。ですが、それはまた別の記事でのお話です。今回は、多人数戦を意図したカードと、我々がそれらのカードでどのように成功や失敗をしたかについてお話しします。
近年の統率者戦の盛り上がりは、我々がカードを作るときに意識していなかったプレイヤーのグループを本当にはっきりと示しました。最初の『統率者』の成功は、その客層の存在だけでなく、スタンダードに関わらないカードのデザインとデベロップの空間がどれだけあったかも証明しました。これはつまり、我々がスタンダードでは大部分が立ち入ることのできなかった効果の多くを行うことができ、エターナル・フォーマットにさえも影響を与えるカードを作ることができるということです。カードがどのようにリミテッドで使われるかを心配することなく、我々は高望みをして比較的低いマナ・コストで巨大な効果を考えることができます。これは相当エキサイティングなことです。
もちろん、ひとたびその客層のためのカードをデザインしようとすれば、我々は足場を固める間にいくつかの間違いをするでしょう。私は《世界火》がその見本だと考えています――これは多人数戦で本当にエキサイティングなように見えますが、結局は唱えられたゲームでプレイヤーを際限なく苛立たせてしまいました。我々はマジックにいくらかのゲームに狂った影響を与える効果を求めましたが、《世界火》はまさにやり過ぎでした。同じように、《森林の始源体》はとてもリスキーなこと――全員に対する除去とマナ加速――が組み合わさったカードでした――それは統率者ルール委員会はやりすぎであると判断しました(リンク先は英語)。我々はこれらの間違いを教訓とし、これからのカードでそのような問題は少なくできると考えています。
我々がここしばらくで行った、多人数戦でより大きな成功を収めた変更は他にもあります。私が好きな例の1つは、より多人数戦にやさしいカード作りを可能にした「《忘却の輪》から《払拭の光》への変更」です。お気づきとは思いますが、《忘却の輪》で取り除かれたパーマネントは《忘却の輪》のオーナーが敗北したときにそのパーマネントのオーナーの元へは帰ってきません――《忘却の輪》の場を離れたときの能力が誘発しないからです。一方《払拭の光》のテキストはそのような状況でカードが戻ってこないことがないようになっています。このことは古いカードを修正はしませんが、我々に今後多人数戦にもっと適したカードを印刷することを可能にします。我々はこのような小さな変更をさらに加えることができます――それは通常のゲーム・プレイを少しだけ良くすると同時に多人数戦を支援し、我々の商品は将来もっと良くなるでしょう。
伝説のクリーチャー
我々が最近成功したと私が感じている別の分野は、楽しく興味深い伝説のクリーチャーを作り出すことです。統率者戦は最も人気のある多人数戦の環境であり、その結果、我々が最もそれに向けたデザインに時間をかけるものです。お気づきかもしれませんが、製品としての統率者の人気が上がるにつれて、我々はセットの中に多くの伝説のクリーチャーを生み出しています。そのうちのあるものはちょっとした偶然でした――カードにクリエイティブの要素を加えようと我々が努力していた時期と一致したのです――が、それは我々が依然として考えているものです。《残酷なハイソニア》のような『テーロス』のクリーチャーのいくつかは、統率者となるべく伝説のクリーチャーとして作られました。
これは我々が過去にやり過ぎていたものに明確に近いところですが、今の目標は統率者を作るために伝説のクリーチャーを作ることではありません――物語の流れを引き立てる素晴らしいカードを作るために伝説のクリーチャーを作ることです。メインの4つのセットと年間の『統率者』製品の間で、我々はほとんどのプレイヤーがそれを中心にデッキを作ることができる、より多くの統率者になり得るクリーチャーを作り出します。しかしメインの4セットで『統率者』製品の中のクリーチャーと競えるパワー・レベルの伝説のクリーチャーを作るのはかなり困難であるため、それぞれ個別の伝説のクリーチャーでそこにたどり着こうとするのはちょっと無謀なことです。我々は純粋なカード・パワーよりも、我々の作り出したキャラクターが人々にそれを中心としたデッキを作るひらめきを与える(そして我々の作ったカードの中で目立つ)ところに行き着くことを強く好んでいます。
『タルキール覇王譚』のカンを見てみると、我々は多人数戦で活躍できるカードを明確に求めていました。しかし、我々はまず第一に、その属する氏族の物語のフレーバーとゲーム・プレイの必要性をそれらに見出すことを求め、それらが多人数戦で存在できることはその次の関心事でした。それを受けて我々が向かったのは、多くのクールな伝説のクリーチャーがいるようにするが、それぞれを多人数戦向けに作るわけではない、という方向でした。我々がマジックの物語、設定、ゲームプレイの一致を改良し続けるとともに、伝説のクリーチャーを統率者デッキの中核となる必要なく最も興味深いキャラクターとして強調し続けたいと思っています。プレイヤーは簡単に《世界を喰らう者、ポルクラノス》の統率者デッキを作れますが、我々はこのカードを統率者の1つとなるべくデザインしたわけではありません。これは《龍爪のスーラク》がスタンダードで唱えて満足のいくカードになるよう意図されているのと同じように、ものすごい怪物となるよう意図されたものです。
天秤を傾ける
以前にも書きましたが、我々が依然として学び続けている部分の1つは、何が適切な拡大効果を作り、何が不適切なものを作るかを知ることです。これらの議論の多くが『テーロス』のかなり無害なコモンで起こりました――《アスフォデルの灰色商人》です。このカードはリミテッドでこれを中心にデッキを作って楽しく、またスタンダードにさえ影響を持っていましたが、我々は多くの人々からこれがどのようにイライラするかについての反響を受け取りました。問題は、多人数戦で簡単に大量の黒の信心を揃えられることではなく、その拡大された効果で大量のライフが得られることでした。そのことは何度も相手をするにはとてもイライラするカードにしてしまいました。
このカードはデベロップの中で最初は1人の対戦相手だけを対象にし、それと同じだけのライフを得ていましたが、統率者戦でより強くするために各対戦相手からライフを奪うように変更されました。多人数戦向けのカードをデザインするときに最も興味深い部分の1つは、プレイヤーの数を拡大するという、2人戦では決してプレイされないようなゲームの部分がプレイされることです。我々は、かなり楽しいものの最近のパワーレベルでは構築級にはならないカードを取り上げることができますが、それがより効果的になり、多人数戦向けカードになったときには、苛立たしいものになります。
《吸心》のようなカードの場合は、それが実際に構築フォーマットで見られるほど十分に効果的ではない(そして繰り返し使うのが簡単ではない)ので、素晴らしい働きを見せます――基本的には4マナキャントリップの手札破壊です――しかしこれが本当に輝くのは、4ターン目に簡単に4枚か5枚のカードを引ける多人数戦環境です。結果的に《アスフォデルの灰色商人》は大きく境界線を越えてしまいましたが、私は我々が境界線を作ったときにその位置を十分に把握していなかったと思います。
さらに、この多人数戦で大きな影響を与えるカードがあるようにすることは、我々があまりテストしておらず、しかしカジュアル・プレイヤーの間でとても人気がある双頭巨人戦で問題を生み出し、特にそれはプレリリースでよく見られました。私は《アスフォデルの灰色商人》のようなカードが双頭巨人戦で悪い経験を作り出すということには疑問はありませんが、我々は今後、もしくは少なくとも低いレアリティでは、それらを避けることができると期待しています。私は双頭巨人戦を大きく破裂させるようなレアがあっても問題はありませんが、コモンにそのようなカードがあると、このフォーマットは大きく歪んでしまうと考えています。
さて、我々がこの問題について妥当な理解を得ていたとして、この手の問題はセットの中でどのように発生するのでしょうか? それは複雑です。ほとんどのデベロッパーが多人数戦のテストを多くはできないので、我々は多人数戦を多くプレイする人にセットを見てもらい、不満がたまるように見えるカードや改善できるカードがあれば教えてもらうようにしました。このことは一般的にプレイヤーの数を拡大するカードの数を増やすことに繋がり、我々がこれらの多人数戦プレイヤーのグループから得ていた反響を改善させました。我々にとって時間がかかったのは、どの反響に対応するべきか、もしくはそうすべきではないかを考えることです。多くのプレイテストを経ずにより強力なカードを作ると、そのカードを強すぎるものにしてしまう危険が常にあります。デベロップ自身は、カードを多人数戦の状況で十分にプレイする能力を持っていないのです。
デベロップがカードをプレイしてバランスを取るときに多く行うことの1つは、それらを使うだけでなく相手に使われることです。プレイして楽しいカードはたくさんありますが、プレイされるとまったく悲惨なものも多くあります。勝ったゲームは楽しく、また負けたゲームは楽しくない傾向にあるので、我々は両方のプレイヤーの間に、人間的に可能な限りどちらも楽しい経験を作り出したいと思っています。《停滞》のようなカードは、勝っているプレイヤーにとっては楽しいかもしれません(しかし多分すごく楽しくはないでしょう)が、負けているプレイヤーには徹底的に悲惨です。これは我々がこの種類のカードをもう強力にしない理由の1つです――最終的に、人々にトーナメントでこのようなカードとの対戦を強いることは、トーナメントに参加したいと思う人の数を減らしてしまうからです。
多人数戦をより良いものにする
現実世界からの反響をセットに反映させるには、長い時間がかかります(何と言っても、我々は大体1年先の仕事をしているのです)。しかし我々は、人々が多人数戦で楽しいカードや楽しくないカードについて発言しているときには、それを聞いています。そしてその反響を我々の予想と比較しています。デベロップは繰り返しを何よりも基本としており、発売されたカードを見るまでに数年かかります。我々はそれらのカードから受けた反響を、将来のカードの作り方を改良するために使っています。
今週はここまでです。来週は見た目通りには見えないものについてのお話をしようと思います。
ではまた来週お会いしましょう。
サムより (@samstod)
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