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カアド誕生
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カアド誕生
Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2013年9月20日
『テーロス』も発売され、もうこのカードをご覧になった方もおられるかと思います。
しかしこのカードは最初からこんな感じだったわけではありません。最初に作られたものと実際のブースターに入っている印刷されたものが同じカードはほとんど存在しないのです。これは1枚のカードがデザインからデベロップを通過し、そして最終的にあなたがこの週末に開けるブースターパックに入るまでの物語です。
物語は約1年半前、『テーロス』の神話レアに1枚枠が空いていたことから始まりました。デザインは絶えずそのファイルを再構成し、このセットの様々なメカニズムやテーマが固まったときにしばしば存在している何かを取り除かねばならず、そしてチームとしてその空いた枠を埋めなければなりませんでした。このカードを作ったのが誰かは詳しいことは分かりませんが、イーサン・フライシャー/Ethan Fleischerが2012年の4月5日にカードファイルに加え、トップダウンテーマであるギリシャ神話のキャラクター、テュポーンに当てはめました。
〈全ての怪物の父祖、テュポーン/Typhon, the Father of All Monsters〉
{4}{R}{R}
クリーチャー―ドラゴン
飛行
怪物化――{X}{R}{R}{R}:X個の+1/+1カウンターを[カード名]の上に置く。このターンに攻撃した全てのクリーチャーをアンタップする。このメイン・フェイズの後に追加の戦闘フェイズとメイン・フェイズを得る。この能力はゲーム中1度しか起動できない。
3/3
7月に差し掛かるころ、これのデザインについていくつかの不満が出されました。
Del 7/6:書いてあるとおりだと、怪物化の能力はいつでも起動できるのに追加の戦闘フェイズを得られるのはメイン・フェイズに起動したときだけなのね。
Mago 8/2:この能力を{R}{R}{R}で起動できるのはおかしい。
Max 8/2:3/3はドラゴンとしては小さすぎる。
エリック・ラウアー/Erik Lauerはこのカードをドラゴン枠としてデザインしました。我々はこのセットにドラゴン枠を設けることをあきらめてはいませんでしたが、このデザインは正解と言えませんでした。このカードはリミテッドの爆弾カードにふさわしい働きをしており、従って実際に問題にはされませんでした。デベロップが仕事を開始するときにまず焦点を当てるのはリミテッドであり、コモンとアンコモンの作業を完了させてリミテッドの形を整えることが優先されます。その呪文が唱えたリミテッドのゲームを必ず勝利に導くような酷すぎるものでなければ、高いレアリティの調整は後回しにされました。
8月26日、エリックと彼のチームはこんな感じのデザインを考え付きました。
〈怪物達の父祖、テュポーン/Typhon, Father of Monsters〉
{4}{R}{R}
怪物化――{6}{R}{R}:[カード名]の上に+1/+1カウンターを5個置く。このゲームの終わりまで、[カード名]は「このクリーチャーが攻撃するたび、飛行を持たない各クリーチャーと各対戦相手にそれぞれ3点のダメージを与える」を得る。この能力は各ゲームで1回だけ、ソーサリーを唱えられるときにのみ起動できる。
5/5
この時点で注目するべきは、我々は怪物化をソーサリーの速度でのみ起動できるようにしてテストしていたことです。このセットがデベロップに回ってきた時点での怪物化の疑問点の1つは、その能力の楽しさのどれぐらいがコンバット・トリックに、そしてどれぐらいが変身そのものに結びついているのかということでした。 この2つの要素がそれぞれ個別にコストの中で割合を占めているので、コンバット・トリック要素のないソーサリー速度になればコストは少し軽くなります。ソーサリー・タイミングを試したことによって得られたことはたくさんありましたが、多くのデベロッパーはインスタント・タイミングのバージョンのほうを好んでいました。案の定、怪物化と授与の両方がソーサリー・タイミングだと、このセットのあまりに多くのカードがソーサリー・タイミングになるということで、怪物化はインスタント・タイミングに戻されました。
その後このカードは最初のイラスト発注の通知が出されました。イラスト発注の流れを簡単に説明しますと、イラストの作成には時間がかかり、まず我々はアーティストにどれだけの枚数をその時点で発注できるかを交渉します。我々はそのセットを分けて、時間の制約を踏まえてそれぞれ半分づつのイラストを発注するようにします。最初の発注はそのセットがデベロップに送られて来たすぐ後に行われ、それはリード・デベロッパーの仕事であり、彼がコンセプトに十分近いと自信を持っているカード全てを通知します。これはそれらのカードの変更が効かないという意味ではありませんが、変更はそのコンセプトの中で行われなければなりません。飛行を得ることや、大幅なサイズの変更などはイラストと能力が合わなくなってしまいます。我々は大型セットでは20の基本土地や、イラストが能力に大きく反映しないプレインズウォーカーや何枚かの基本でない土地なども勘定に入れて最初の発注数を水増ししています。後の発注でカードの変更が避けられない場合ある程度余地がありますが、できるだけその資源を使うべきではありません――FFLによってカードの変更が必要な場合のために温存しておいたほうがより良いのです。
9月8日、ジェンナ・ヘランド/Jenna Hellandはカードとその名前をコンセプト欄に記入しました。クリエイティブ・チームの使命はイラストとフレーバー・テキストを通して濃密な世界観を作り出すため彼らの手腕を振るうことです。彼らはこれをそれぞれのカードが存在する世界の何かを明らかにすることで行っています。このセットがデベロップに回ってくるかなり前、クリエイティブ・チームは数ヶ月を費やし『テーロス』世界の全体的な指針に取りかかって、この世界のクリーチャーがどのような姿をしているかを大まかに決め、それにいくらかフレーバーを与えました。個別のカードのレベルでは、彼らはアーティストの仕事のためにカードの中で描いてほしいものの枠組みを文にします。
このカードのコンセプトは以下のようなものです。
色:赤のクリーチャー
配置:お任せします
内容:ギリシャ神話の全ての怪物達の父祖、テュポーンを元にした神話レア。彼は最低30フィートの体長で巨大な翼を持っていて、口(お好みで頭を複数にしても構いません)から雷を吐きます。神話の彼は長くとぐろを巻いた毒蛇の体をしていますが、そこはお任せします。彼には翼に加えて4本の足がなければなりません。多分背景は赤黒い空と黒い山脈でしょう。彼の通った跡には嵐雲が地平線を横切っていきます。
焦点:赤の神話レアのドラゴン
雰囲気:ギリシャ神話をイメージしてに全てのドラゴンの中で最も恐ろしいものにしてください。
この情報は我々が作風が最も合っていると思うアーティストに送られます。2012年の10月22日、ジェレミー・ジャーヴィス/Jeremy Jarvisはスラヴォミル・マニアク/Slawomir Maniakを担当アーティストに選びました。彼はイラストの情報や他に必要な『テーロス』ワールドガイドを送りました。
11月の初旬、我々はスラヴォミルからの最初のスケッチを受け取りました。全てが素晴らしく思えたので、彼にそれを決定稿にする許可が出されました。
《嵐の息吹のドラゴン》 アート:Slawomir Maniak |
10月にはこのセットは完全にフューチャー・フューチャー・リーグに入ってスタンダードのテストが行われていました。『テーロス』がFFLの中で成熟するとともに、我々はスタンダード環境を改善して去年のカードに対応するため、変更を加えるカードを探し始めました。この場合我々が欲しかったものは、非常にたくさんいた《スフィンクスの啓示》コントロールへの対策となるカードです――このデッキはローテーションで失うものがあまりなかったのです。我々はファイルを見渡して、他の部分で構造的に重要な働きを持っていない何かを探しました。このドラゴンは変更可能なカードとして挙げられ、そして我々はこれに我々が懸念しているカードに対して有効な能力を与えることができました。
これらはこのドラゴンの変更の中で最も大きなものへと繋がりました――対戦相手を粉砕する巨大なドラゴンから現在のより早く特化した脅威へと変貌を遂げました。
{3}{R}{R}
クリーチャー―ドラゴン
飛行、速攻、プロテクション(白)
{5}{R}{R}:怪物化3を行う。({5}{R}{R}:このクリーチャーの上に+1/+1カウンターを3個置く。この能力は一度しか起動できない。)[カード名]が怪物化したとき、対戦相手1人を対象とし、そのプレイヤーの手札1枚につき2点のダメージを与える。
4/4
これはデベロップの時に発生したプロテクションを持ったクリーチャーのサイクルの1つ「でした」。そのサイクルの中で残ったのは3枚――《嵐の息吹のドラゴン》、《霧裂きのハイドラ》、そして《波使い》です。残りの2枚――《威名の英雄》(プロテクション(黒))、《運命の工作員》(プロテクション(白))は単純に楽しくなかったためデザインの変更が行われました。このプロテクションをもつクリーチャーのサイクルのテストで我々が発見したことは、「高いマナ・コストで、ゲームの後半に焦点を当てたプロテクションを持つ、対処しにくいクリーチャー」は楽しいということでした。低コストのプロテクションを持つクリーチャーは閉鎖的なゲームになるだけで、その2つのクリーチャーに対しては、メインデッキでプレイするのに不十分なものにするか、プロテクションを削除するかのどちらかをしなければなりませんでした。我々は後者を選び、それらのカードに少し別の強化を施しました。
EVL 12/6:新しいデザインです。
ID 12/10:こいつは今や超エキサイティングなスパイク用カードになった。プレイヤー達は《雷口のヘルカイト》を楽しんでるので、これが入って《雷口のヘルカイト》が落ちても心配ないね。私はこれをFFLでいっぱいテストすると思うよ。
1月16日にこのセットのリード・エディターのケリー・ディグス/ Kelly Diggesはファイルを見て合格を出し、このカードをテンプレートに沿ったものに整えました。彼はこんなコメントを残しています。
KD 1/16:アクローマに基づいて能力の並び順を修正。
そしてカードはこのように更新されました。
{3}{R}{R}
クリーチャー―ドラゴン
飛行、速攻、プロテクション(白)
{5}{R}{R}:怪物化2を行う。({5}{R}{R}:このクリーチャーの上に+1/+1カウンターを2個置く。この能力は一度しか起動できない。) [カード名]が怪物化したとき、対戦相手1人を対象とし、そのプレイヤーの手札にあるカードの枚数の2倍のダメージを与える。
4/4
2月14日にこのカードはより優れた《スフィンクスの啓示》対策とするためにもう一度変更されました。その考えは、{5}{R}{R}は実際に能力を起動するのが難しく、他の呪文を唱えたいならなおのことだろう、というものでした。我々は《スフィンクスの啓示》デッキにより簡単に対抗できるように怪物化のコストを下げ、また以前のものはオーバーキル気味だったのでダメージも減らしました。
{3}{R}{R}
クリーチャー―ドラゴン
飛行、速攻、プロテクション(白)
{1}{R}{R}:怪物化1を行う。(このクリーチャーが怪物的でない場合、これの上に+1/+1カウンターを1個置く。これは怪物的になる。)
[カード名]が怪物的になったとき、これは各対戦相手に、それぞれそのプレイヤーの手札にあるカードの枚数に等しい点数のダメージを与える。
4/4
このバージョンは我々にいくつかのことを教えてくれました。
- 怪物化1はドラゴンに合っていない。この効果は迫力が全然足りず、楽しさに欠けるカードになってしまった。
- 手札1枚につき1点を与える効果はこのカードのバランスを取るのに良い部分だった。これはこのカードが対《スフィンクスの啓示》の手段として場に出たばかりのときよりも効果的であることを意味し、そして対戦相手を叩き潰す。
- 各対戦相手にダメージを与えるようにすることでMagic Onlineでの処理がちょっと簡単になり、そして多人数戦においても強化された。
これら全ての事柄がこのカードを最終バージョンへと導きました。
クリーチャー―ドラゴン
飛行、速攻、プロテクション(白)
{5}{R}{R}:怪物化3を行う。(このクリーチャーが怪物的でない場合、これの上に+1/+1カウンターを3個置く。これは怪物的になる。) 嵐の息吹のドラゴンが怪物的になったとき、これは各対戦相手に、それぞれそのプレイヤーの手札にあるカードの枚数に等しい点数のダメージを与える。
4/4
もちろんここで解説した以上の多くの小さな変更、話し合い、そしてプレイテストが、この記事で紹介しきれないぐらい行われました。マジックのセットのありとあらゆるカードは、それが最終的に完成するまでに多くの人の手を通して何かを加えられます。この仕事が最も分かりやすく表れるのはプレインズウォーカーのようなそのセットの派手な神話レアでが、《希望の幻霊》や《稲妻の一撃》のようなカードの成り立ちを同じように記事にするかもしれません。あるカードは他のカードよりも目立つかもしれませんが、全体的に見ればそれぞれのカードがセットの中での役割を果たしています。
ではまた来週お会いしましょう。
サムより
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