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マジックは決断の連続だ
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マジックは決断の連続だ
Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2013年9月13日
「奈落」ではおよそ6ヶ月に1度、何によってゲームと単純作業が区別されているか、という議論が行われます。この話は奈落の人々が望むと望まざるとに関わらず発生します――単にここで働くことの職業病だと私は思います。これの要点をまとめると、ゲームは意味のある決定を必要としますが、単純作業は必要としません。例えば「蛇と梯子」というゲームでは、プレイヤーは何も決めることがありません。ただダイスを振ってその結果を見るだけ――単純作業です。また既に必勝法の確立されたゲーム(例えば三目並べのような)は、必勝法を学んだ人が「正確な」手順を行うことで必ず勝ってしまうので、ゲームの分類から取り除かれて単純作業の分類に移されます。
《骨読み》 アート: Lars Grant-West |
マジックをゲームたらしめているものの1つは、その数万を超えるカードと、その何兆倍もの組み合わせによるデッキ(数を盛ったりなんかしていません、誓いますとも)には、面白さを維持するのに十分な不完全情報があるということです。これに特有のランダム性を組み合わせてこのゲームをプレイすることは、常に正確な手順がないことを意味します。もしあったとしても、そのプレイヤーが手に入れられない情報が分かるような人にしかわからないでしょう。代わりに、プレイヤー達は彼らの入手可能な限られた情報を、可能な限り最善の決定をするために使うことを要求されます。あなたが2/3をコントロールしているのに対して対戦相手が2体の2/2で攻撃してきた場合、あなたは対戦相手が何故そうしてきたかを判断しなければいけません。相手はコンバットトリックを持ってる? 単にダメージレースを仕掛けてきた? 全体除去を引いたのでついでにダメージを稼ぐために攻撃してきたかも? 普通はこんな風にクリーチャーを無駄死にさせたりしないので、明らかに何かあるのです。それともこれはブラフでしょうか? どうすることが最善のプレイなのでしょうか?
私はこのような決断は何度も繰り返されると確信しています。なぜならば、これらの決断が我々に異なるゲームと異なる結果を与え続け、そして我々は新しく興味深い事柄を体験し続けるからです。全てが答えが出せるようにならないようにするために、いくつかの隠された情報やランダム性の存在は重要で、この数年に渡って我々が「教示者」効果や強力な「ルーター」効果のマナ・コストを重くしていった理由のひとつです――それが多少であれば良いことですが、その効果が強すぎる場合、そういうゲームは毎回似たようなやり方でプレイされ始めます。あなたが何を引くかの推測に従ってプレイするのが問題なのではなく、次の数ターンがどのようにプレイされるかを正確に知ることが問題なのです。我々はこのゲームでの意味ある決断の数を増やすため、対戦相手の手札だけでなくあなたのライブラリーの上も不完全情報にしたいと考えています。
私が意味ある決断と言う場合、誰か1人が間違うまで複雑な手順を続けることだけではなく、プレイヤーの戦略的な決定が可能な限りゲームを左右することも含まれます。マジックの手順は大事ですが、このゲームが我々にもたらすより興味深い決断を乱すべきではありません。これを起こすために、時間をかけて我々は(何度か)戦闘の合理化や、カードのテンプレートの整理、そしてペナルティ・ガイドラインの書き直しなどをしてきました。確かにある意味では、それはこのゲームからある種の技術を取り除きましたが、実際に取り除かれたものの多くは本来戦略的なものではありませんでした。我々は戦略的決断からくるプレイング技術に焦点を当てることが最善だと信じており、そしてその大部分は不完全な情報に基づいた推測ができるということです。
マジックはチェスのような全ての情報が公開されているゲームと対照的に不完全情報ゲームであり、プレイヤーはその情報を行動する前に常に少しづつ処理することができます。マジックでは、戦場の状態は明らかにされていますが、手札とライブラリーの状態はどちらも隠されており、従ってプレイヤーは彼らの知っている情報に基づいて推測することを強いられます。あなたが5枚の異なるカードから選んで正確にプレイしても、相手にそれの対策カードを引かれただけで負けてしまうゲームはかなりの数あるでしょう。あなたが正しいプレイをしても負けることや、間違ったプレイをしても勝つこともあります。もちろん正しいプレイをすれば勝率は上がりますが、情報の不完全さが勝利を不確実なものにしています。またこのゲームが最も機能するのは、いくつかギブアンドテイクがある場合です――《燃え立つ大地》のようなカードは、基本でない土地を使うプレイヤーを単純にすぐ倒すわけではありませんが、彼らが生き残るのは困難です。
初期バージョンの《復活の声》を例に挙げると、今と同じように対戦相手があなたのターンに呪文を唱えたとき誘発する能力を持っていましたが、それは「その唱えた呪文のコントロールを得て、新たな対象を取ることができる」というものでした。この能力の意図はあなたのターンに呪文を唱えることを対価の大きなものにすることで、ミスを残忍な方法で罰することではなかったので、すぐに変更がなされました。ほとんどの場合で、この文章は「あなたの対戦相手はあなたのターンに呪文を唱えられない」と書いてあるのとほぼ同じで、何かしないのであればその対戦相手はおおむねゲームに負けてしまいます。我々はこれを扱いやすいレベルにしたいと考え、その結果、対戦相手が少なくともこのようなカードに対してある程度呪文を唱えるかどうかの決断の余地があるようにしました。もちろん相手に*/*のエレメンタル・トークンを与えるのは嫌ですが、時にはそれに見合うだけの価値がある場合もあります。インスタントを唱えることがエレメンタルを対戦相手に与えたとしても、そうすることでそのプレイヤーが勝てる状況があるのは良いことで、相手のターンに呪文を唱えることが常に間違いではないという事実はこの手のカードを興味深いものにしています。対戦相手にエレメンタルを与えることが常に不正解なら、我々はこのカードのために何か違う能力を探していたでしょう。私はこの能力が今のままでも興味深さを維持するのに十分だと思っています。
本日のプレビュー・カードは我々がゲーム中の駆け引きを促進させようとしている取り組みのもうひとつの例であり、プレイヤーにゲームのプレイに影響を与える興味深い決断を可能にしています。ではご紹介しましょう、新型の《嘘か真か》こと、《蒸気占い》です。
ゲームのプレイの観点から見れば、私はこれを正にアップグレードされた《嘘か真か》だと考えています。全体的に少し弱くなっていますが、私はこれをプレイするもっと楽しい方法を見つけ、そして《嘘か真か》では成しえなかった多数の楽しい「ジェダイの心理操作」を可能にしました。そして実際に《嘘か真か》は単体で十分すぎるほど強力でしたが、少し弱くなったとしても、まだスタンダードや、モダンでさえもプレイされる可能性はあります。
《嘘か真か》の問題点の1つは、呪文を解決することで興味深いゲームにするように導こうとして、実際にはほとんどそうならないことでした。《嘘か真か》を唱えたプレイヤーは隠された情報を全て持っており、判断材料がほとんどない状況で対戦相手に最初に一番大事な選択を迫るのでブラフは存在しないように見えました。《嘘か真か》を唱えることは、実際には対戦相手を技術で出し抜く絶好のチャンスではなく、相手のミスに付け入るだけでした。
《蒸気占い》では、一般的にこの呪文を唱えたプレイヤーが一番難しい決断をしますが、それには興味深いカードの分け方や、対戦相手が手札を知らないことを活かして欲しい方の束を選ばせる能力が伴います。手札に握っている《至高の評決》をあなたの次のターンに唱えるつもりですか? もうお分かりでしょうが対戦相手のターンの終わりに《蒸気占い》を唱えてもう一枚《至高の評決》が見えた場合、それをエサにして束を分け、《至高の評決》以外のカードを選ばせてアドバンテージを得ることができます。この時点で、「もう持ってたんだぜ!」と《至高の評決》を唱えてこのゲームをリードすることができるでしょう。
《蒸気占い》 アート:Dave Kendall |
私は不完全情報ゲームであることがマジックを全体として楽しくすると確信しています。対戦相手の知らないことを知っている場合、その相手と駆け引きをすることはとても楽しいことです。さらに駆け引きのいくらかが戦場にあるものだけでなく、対戦相手の手札の中身を推測して動く場合、もっと楽しくなります。
ではまた来週お会いしましょう。
サムより
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