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成長の余地
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成長の余地
Sam Stoddard / Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru
2013年4月12日
『ドラゴンの迷路』プレビューの第1週も大詰めですが、心配ご無用です。今日もいろいろな新カードをお見せしますし、来週にももっともっと多くのカードをお見せします。『ドラゴンの迷路』は10個のギルド全てからのカードが入っている濃いエキスパンションなので、プレイヤーは大変です。新しいカードや考え方をプレイヤーに提供することこそがマジックで、だからこそ私が今までに出会ったプレイヤーはみんなプレビュー時期を楽しみにしているわけです。マジックのエキスパンションは、新しいデッキや、新しいデッキを組みたくなるような強力なカードを継続的に供給し、状況が固着しないようにすることで全ての環境のメタゲームを新鮮なものに保っているのです。
アート:Winona Nelson |
メタゲームは自ら解法を求める生命あるパズルのようなものです。メタゲームに存在するデッキが完全に均衡が取れることはありませんし、均衡が取れていないからこそ面白いのです。新セットの発売最初の週の間に、プレイヤー全体がスタンダードで最強のデッキを探すために費やす時間を合計すると、私たちデベロッパーのチームがデベロップ期間全体で費やした時間よりもずっと多くなります。私たちが最初の数週間では解かれないようなメタゲームを作るために考えているのは、カードが全体としてバランスが取れていること、そして同時にメタゲーム内の全てのデッキに時とともに変遷していく余地を与える強力なものを入れておくことです。
《死儀礼のシャーマン》はまさにこの目的にそぐうカードの一例です。そのメタゲームにおいて、墓地のカードを取り除くことがどれだけ重要かによって、メインデッキにも、サイドボードにも入りますし、入っていなくてもおかしくありません。《死儀礼のシャーマン》はリアニメイト・デッキの存在を防ぐわけではありませんが、そういったデッキはこのカードに対処することを求められます。リアニメイトが何週間か存在しなければ、《死儀礼のシャーマン》はメインデッキからもサイドボードからも消え、そのうち誰かは我慢しきれなくなってより尖ったリアニメイト・デッキを投入してイベントを席巻することでしょう。そうなると、《死儀礼のシャーマン》がサイドボードに増え、それでも残るようならメインデッキにも戻ってきます。リアニメイト・デッキはリアニメイトにさらに特化していくか、それとも《死儀礼のシャーマン》を除去する方法を入れるかのどちらかの進化を遂げるでしょう。そう変化していくことによって、メタゲーム内の他のデッキとの相性も変わっていきます。特化していったリアニメイト・デッキは、打ち消し呪文を備えた赤白青デッキに弱くなります。リアニメイト・デッキが《魂の洞窟》を入れて赤白青に強くなろうとすれば、また他のデッキに対していくらか弱くなることになります。そして、生命の輪は回っていくのです。
デベロップ中に、何枚かのカードに問題が見つかり、多くのデッキを見逃すということはわかっています。しかし私たちは、新しいセットによって新しいハードルと新しい息吹が与えられてからメタゲームが「解かれる」までの寿命が自然よりも長くなるように環境を位置づけようと努力しています。そのために、私たちはメタゲーム内に、あるデッキが支配しつつある時に別の方向に成長できる余地を作っています。単に、フォーマット内で最強になるだろうと思われるデッキに対する対策カードを入れるというのは簡単ですが、そうするとスタンダードはどの最強カードから始めるかだけで、ただサイドボードで決まる、第2ゲーム、第3ゲームだけの環境になってしまいます。そうではなく、メタゲームの変遷に伴ってメインデッキやサイドボードに出たり入ったりするような、本来の目的でも強く、特定のデッキタイプによく効くようなカードを作ることにしています。これらのカードの存在そのものがメタゲームに影響を与え、フォーマット内のあらゆるデッキのデッキ作成の幅を広げてくれるのです。
これらのカードの中には、デザイン中に作られ、デベロップ中にうまくはまるように調節されたものもありますし、デベロップ中に作られたものもあります。今日お見せするカードは、その後者に当たります。後半になってから作られたカードで、セレズニアにメタゲームを動かす力を与えるように位置づけられました。そう、成長の話をするのですから、今こそ〈復活の声〉響くときです。
〈復活の声〉はドラゴンの迷路の中で一番エレガントな文章のカードなどではありませんが、その欠点を補って余りある機能性を持ちます。メタゲームを動かす上において大きな役割を果たす可能性が詰まったカードなのです。
このカードの状況説明として、ちょうど一年前、フューチャー・フューチャー・リーグには赤か黒をタッチした白青系コントロール・デッキや、《瞬唱の魔道士》《ボーラスの占い師》《修復の天使》の入った赤白青アグロが一大勢力となっていました。それらのデッキがどれだけ強いかを時間をかけて確かめてから、ドラゴンの迷路で、メタゲームに存在する緑白のアグロやミッドレンジに、メインデッキでも有効で、しかも赤白青デッキ相手には特に輝くような強力なカードを与えようと決めました。まっとうな戦略で盤面を一掃されることは防がないまま、《神の怒り》系への防御力を持つもの、その他いくつかの条件から上のデザインができてきたのです。
それでは、〈復活の声〉がすることは一体なんでしょうか? たとえば、赤白青テンポデッキが使う奇襲的コンバット・トリックとして瞬速で《修復の天使》を唱えることの効力がぐっと落ちます。特に、攻撃した〈復活の声〉を不意打ちすることには何の旨みもありません。戦闘前にプレイすれば、《アゾリウスの魔除け》や《修復の天使》に対するプロテクションのような効果をあなたのクリーチャーに与えることになりますが、それで赤白青デッキを完全にロックして手も足も出なくするというわけではありません。赤白青デッキは《火柱》で〈復活の声〉への対処は十分できますが、そういった手数を増やすと他のデッキとの相性は当然悪くなり、毎週デッキが変わりゆくことで多様性も生まれます。
赤白青やエスパー・コントロール相手には、《神の怒り》で生き残るクリーチャーを提供し、デッキには対策手段としてただ《アゾリウスの魔除け》を入れておけばいいというのではなく《拘留の宝球》のようなカードを入れるほうがいいという圧力が生まれます。また、ソーサリー速度のカードを多く入れるようになることで、コントロール・デッキの第一の利点が削られることになるでしょう。しかし、コントロールデッキの側が〈復活の声〉に対処したいと思えば手段となるカードはいくらでもありますが、それらを入れることで他のデッキとの相性は悪くなり、メタゲームは進化し続けていくのです。
〈復活の声〉は青デッキにだけ強いわけではありません。死亡したら別のクリーチャーに変わるので、最近増えつつあるナヤ・ブリッツのような速攻デッキにも抵抗力を持ちます。クリーチャーと相打ちにできるだけでなく、その後で《火打ち蹄の猪》のようなより大きなクリーチャーと相打ちを狙えるトークンを生み出すので、相手の突撃をしのいで中盤から後半を支配していくことができるでしょう。
メタゲームの話を置いておいても、居住のあるセレズニアに新しいトークンを出す方法を与えるのは魅力的です。ドラゴンの迷路で強力なトークンを出すカードはこれだけではありませんし、居住を持つカードも数枚追加されており、必要ならデッキに加えることができます。内部で、《ドルイドの講話》《根生まれの防衛》《瞬唱の魔道士》を入れて、〈復活の声〉の作り出すエレメンタル・トークンを居住することを狙う緑白青の居住系デッキを作ってみました。このデッキがフューチャー・フューチャー・リーグを支配するということはありませんでしたが、これを軸にして競技マジックで通用するデッキを組むことができると確信しました。誰かが私たちの作ったものよりも強いこのデッキを作るのが楽しみです。
究極的には、これはマジックのデベロッパーとしてもっともエキサイティングな部分の1つです。先々も、私たちが世に放つカードがすることのアイデアを得ることになるでしょうが、実際のところがわかるわけではありません。私たちがこれまで自信を持って作り出した《ウルフィーの銀心》のようなカードがスタンダードではわずかな雑音しか残さないことも多々ありました。意図していたよりも実際はずっと強力だったカードも何枚かはあり、それが想像外の方向にメタゲームを動かすデッキに入ったこともあります。つまり、こういった複雑系を作って賢い人々に提供するときは、安全側で見なければならないということです。もし何が起こるかが完全にわかっているなら、私たちの仕事はずっと簡単になるでしょうが、ちっとも面白くはなかったでしょう。
今週はここまでです。来週は、次のプレビュー・カードをお見せしながらミラーマッチの話をします。乞うご期待!
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