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生と死についての問い
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生と死についての問い
Mark Purvis / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2013年1月11日
「死と対決することは、いかに生きるかということなんだ。そうだろう?」
ジェームズ・T・カーク船長 『スタートレック2:カーンの逆襲』より
開発部ではしばしばマジックのセットのデベロップをする時に生と死についての問いが話題に上る。近年、開発部はクリーチャーのパワーレベルを押し上げているが、それらのクリーチャーを殺す呪文へのアクセスを提供することは常に重要であり、毎回のゲームを手に追えない、そして楽しくない「勝てないシナリオ」にしないようにしている。クリーチャーと除去の間のバランスはセットを成功させるための最も重要な事柄の1つだ。
2012年の最初の何ヶ月かの間、私は開発部の奈落で時間を費やしてギルド門侵犯の「生と死の問題」をじっと見つめていた。私は頻繁には奈落で費やす時間を取れなかった。奈落はメカニズムが丹念に作られ、カードがプロのマジックのデザイナーとデベロッパーによって厳しくテストされる場所だ。私はマジックのブランド・マネージャーで、従って私がほとんどの時間を費やすのは奈落の上のフロアにあるブランド・エリアだ。そこはマーケティングのプランが作られてビジネスの過程が丹念に書かれ、そしてビジネスのプロによって厳格に実行される場所だ。
しかし開発部には未経験者が各デザインかデベロップのチームに勤め始める時の不文律があり、ギルド門侵犯においては私に適用された。しかし誤解しないで欲しい、開発部の未経験者はマジックの未経験者ではないのだ! 私の友人リーが私にマジックを教えたのは1994年の秋で、私がマジックに慣れていないなどと言うことは確かにありえないことだ。私はそれからの18年間マジックを多くプレイしたが、それは大抵フライデー・ナイト・マジックか、プレリリースか、キッチンのテーブルだった。
ほとんどのデベロップ・チームの面々はマジックのプロ・プレイヤーとしての経験があり、そして彼らの主な関心の一つはエキサイティングだがバランスの取れた競技向けのセットを作ることだ。デベロップ・チームにおいて私の仕事だと感じたことはカジュアル・プレイヤーを代表することと、全てのプレイ・スキルのレベルの人々が楽しめるセットを作るために戦うことだ。
ギルド門侵犯の仕事をするというのはつまり、プロツアー殿堂の一員デイブ・ハンフリー/Dave Humpherysがリード・デベロッパーを務めるチームで働く機会を得るということだ。私はマジックのデベロップの方法についてウィザーズ・オブ・ザ・コーストで最も優れた人物の一人から学べるだろう。彼は非常に思慮深い男で、そして彼の運用する民主主義のデベロップ・チームでは、彼が個々のメンバーからあらゆる適切な意見やあらゆる問題の定義を聞く。通常の仕事に加えてその時間の後と週末にもデベロップの作業をしている時の、貢献できているというその気持ちは重要なものだ。
また、私の好きなギルドであるボロスのカードを形作るのを助けることができることも意味していた。私はいつでも赤白のデッキがとることができる手段の多様性を愛している! 彼らは有能なクリーチャーを配備することができ、壊滅的な、場を一掃する呪文を唱えることもできる。そしてどんな種類のパーマネントもピンポイントで除去する呪文も使うことができた。
読者の皆の多くが知っているとおり、セットのデザイン・チームはそのセットのテーマとメカニズムを考え出し、デベロップ・チームは具体的なカードをそのセットがエキサイティングで楽しく、しかし構築とリミテッドの両方で合理的でバランスの取れた域にまで洗練する。我々はプレイテストし、内部投票を行い、そしてさらにプレイテストを重ねてどのカードが最も楽しいか、どのギルドが強力すぎるか、そしてどんなバランス調整がそのセットを改善する異なる特徴を作り出せるかを決定した。
デベロップ・チームもやはり結局多くの新しいカードを作ることになる。恐らくほとんどの人達が予想しているよりも多いだろう! デベロップでのメカニズムの修正は珍しいが、半数のカードがデベロップ・チームによって作られる、または変更されることは珍しいことではない。
ギルド門侵犯のデザイン・チームは興味深く、非常にフレーバーに満ちたそれぞれのギルドに対応する新しいメカニズムと共に素晴らしいセットを我々に引き渡してくれた。デベロップ・チームが引き継ぐとすぐに我々はそのセットでプレイし始め、そして受け取ったばかりのものでプレイした結果は非常に素晴らしいものだった! 適切にドラフトされたディミーアのデッキは卑怯で強力というのにふさわしかった。グルールのデッキは迅速に暴れ周り、顔面を叩き潰すことができる巨大なビーストを投げつけた。シミックのデッキは奇妙な生態の制御不能な激しい成長の力を利用した。
しかし何回かのドラフトの後、一つの出来事が私を苦しめた。除去呪文だ。これはセットのオルゾフとボロス、二つのギルドはそれらの最終的な目標のために厄介な立ちはだかる固体を容赦なく効率的に抹殺するべきだ。このセットの除去のほとんどは私が「条件付」除去呪文と呼ぶそれらの呪文が作用する前に対象にいくつかの前提条件を満たすことを要求するものだ。「条件付」除去呪文と呼ぶもののラヴニカへの回帰での完璧な例は《究極の価格》だ。これは対象が単色であるならば有能な除去だ。一方マジック2013の《殺害》は長剣を叩きつける相手の特質がどんなものであろうとも気にしない。
条件付除去呪文はセットの存在意義にとって重要で、そしてそれらの多くは(適正な状況では)かなり良いものだ。私の懸念はどれだけ多くが初期のギルド門侵犯のファイルから存続しているかだった。なぜなら、それらはいくつかの苛立たしいプレイの局面を構成し、私にとって明らかに「楽しくない」からだ。
私は初期のプレイテストのゲームで「ボロゾフ」(白黒赤、ギルド門侵犯のドラフトで私のお気に入りの3色の組み合わせ)をプレイしたことを思い起こし、そしてそれらの苛立たしい局面のひとつを見つけ出した。私のライフは5で、対戦相手の《死盟の天使》を睨んでいた。私はちょうど生き残るために最後の飛行を持ったブロッカーを使った所で、私の領空は広く開いており、奇跡を必要としていた。私のターンに、プレイテスト名を《Sniper Fire》という条件付除去呪文を引き、そしてそれは私の手札の中の3番目の条件付除去呪文だった。
1. プレイテスト名《Vigilante Justice》。これは天使を殺せるが、対象に取れるのはこのターン君にダメージを与えたクリーチャーだけだ。
2. 《究極の価格》。そう、このカードは元々はギルド門侵犯にあったのだ。そう、そしてそれでもこれは 《死盟の天使》を殺せないのだ(その当時これは実際には《Punish the Unguilded》と呼ばれていて、「2色でないクリーチャーを対象とし、それを破壊する」と書かれていた)。
3. たった今引いた《Sniper Fire》。これは攻撃かブロックしているクリーチャーにダメージを与えるが、天使を殺すのに十分なダメージはブロッカーの助けが無ければ与えられない。
《究極の価格》は天使に対しては白紙同然、彼女は白と黒の両方だからだ。《Vigilante Justice》は天使を完璧に殺してくれるだろうが、まず私は彼女から5点のダメージを受けねばならず、そして私のライフは5点だ。《Sniper Fire》は何かブロッカーとの組み合わせで上手く作用したかもしれないが、私はちょうど最後の飛行クリーチャーを前のターンにゲームの敗北から逃れるために使ってしまったのだ。
君には私の苛立ちが見えるだろう。
このような状況の撲滅を目的として、私はデベロップ・チームに除去の改善の呼びかけを始めた。デイブ・ハンフリーは私が反対運動を始める前に既にラヴニカの回帰のデベロップ・チームと連携して《究極の価格》を他の除去呪文と入れ替え、それは変化を作り出した。また私はチームへの働きかけに成功し《Vigilante Justice》から「あなたに」の条文を削り、それは今やどのクリーチャーにダメージを与えても当てることができた(《報復の矢》の今の動きに似ている)。この変更にもかかわらず、私はまだボロスには大きな除去呪文が足りないように感じられ、そしてデイブ・ハンフリーは選択肢を考え出すように私に挑んできた。
アート:Tyler Jacobson |
私は2~3週間新しい創造的な除去呪文を考えようとしていたが、どの取り組みにも全く満足していなかった。私のオルゾフのアイデアは既存のカードととても良く似ていた。私のボロスのアイデアは大抵はダメージとライフ回復のミックスされたもので、その効果の組み合わせを開発部では「Pink Bolt」と呼ばれているのを最初に聞いたのはデイブ・ガスキン/Dave Guskinが使っていた時だった。後で学んだのだがPink Boltと言うのは《稲妻のらせん》のプレイテスト名だった。ギルド門侵犯のボロスには既にいくつかのPink Bolt効果が存在し、内蔵された素敵な戦天使、《炎まといの報復者》がそうだ。
赤の動的エネルギーと生の感情に白の絶対的な命令と規律を組み合わせた場合、プレインズウォーカーは強力で、用途が広く、素晴らしい除去呪文にそのエネルギーを向けることができるはずだ。赤と白の両方の特性を持つ呪文を考え出そうと苦心した後、私は問題に別の角度からぶつかっていくことに決めた。赤と白の両方を具現化した呪文を考え出そうとする代わりに、自分自身に問いかけてみた。「都市世界の軍隊が(恐らく呪文を唱える)ラヴニカの住民の大群を制圧するのに必要とする呪文とは?」
デベロップ半ばのある日、チームは完成しなかったボロスのレア呪文を没にすることを決定した。デイブ・ハンフリーはチームにセットの穴を埋める提案について考えるように依頼し、そして私はボロス軍が求めるものは何かを考え出してからぐるぐると頭を回っているアイデアを試してみるチャンスを発見した。私が提出したアイデアは私が《Stun Ray》と呼んでいるものだ。
好きな数のクリーチャーやプレイヤーを対象とする。〔カード名〕はそれらに合計X点のダメージをあなたの好きなように割り振って与える。この方法でダメージを与えられたクリーチャーをタップする。この方法でダメージを与えられたプレイヤーは、このターンの残りの期間呪文を唱えることができない。
私はこの呪文がボロスにとって完璧な手段になるだろうと考えた。それは手に負えない住民の大群を「気絶」させるか、実際に罪人の群れに傷を与えるか、厄介な一人の敵を完全に火葬できる。さらに私はそれをとても強力であると考え、そしてデイブ・ハンフリーがプレイテストの次のラウンドのためにそれをセットに入れることを決定したときは嬉しかった。スタートレックのファンとして、それがカーク船長のフェイザーと同じく多くの「セッティング」を持っていたことは私を喜ばせた。
《Stun Ray》はその後極めて素早く進化を遂げた! FFL(フューチャー・フューチャー・リーグ)からのアドバイスに基づいて、文章はそれが打たれた後もクリーチャー呪文が唱えられるように微調整された。この他の変更では神話レアへの昇格が行われた。
ご存知の通り、マジックのセットの中の生と死を検討する時、いくつか微調整する事柄がある。一つはそのセットの中の個々の除去呪文の質で、そしてそれは増加した。他方君は生死のバランスが大きく崩れることを望まない! もし除去呪文が軽くて豊富にあれば、素晴らしいクリーチャーをプレイすることに興奮しているプレイヤー達は、クリーチャーが戦場に出るたびに軽くて多い除去呪文で除去される苛立つゲームをすることになりうる。
《Stun Ray》はこのセットの中でより壊滅的な除去呪文の一つであると証明された。レアから神話レアへの昇格によってデベロップ・チームはその処理、つまり、このカードがどれぐらいの頻度でドラフトやシールドで現れるのかに関するドアを一つ開いた。こういった呪文が神話レアであれば、8人卓でボロスをドラフトする人の思い通りに複数枚取れる可能性は低い。
デベロップの終了に向かって、ファイルはクリエイティブ・チームに引き継がれ、彼らは《Archangel's Vitriol》という代わりの名前を与えられた。チームの名前とフレーバーテキストのライターは各カードに最終的な名前を設定し、そしてそれはより明確にボロスらしく変更された。見よ!《オレリアの憤怒》を!
これらの生と死についての問いは時にはゲームを楽しくする!
その上この柔軟性に富んだボロスの呪文は他の用途もにも使える。私はドラフトで《オレリアの憤怒》を《濃霧》のような効果を生み出すために使い、対戦相手のアップキープにそのクリーチャーを麻痺させ1ターンの攻撃を軽減することで、私に勢いを回復する時間を与えることを期待できる。構築では、対戦相手のアップキープにそのプレイヤーを麻痺させることによって壊滅的なコンボのパーツになるであろうソーサリーを唱えることを防ぎ、君が別のターンに勝てる準備ができるようにする。
私は《オレリアの憤怒》が私の統率者の《巨大なるカーリア》デッキで輝くのを見るのが待ち切れない。これは天使テーマのこのデッキに完全に適応し、この呪文はいくつかの興味深いシナリオを作るだろうと考えている。4人でプレイしている統率者戦で君が卓で一番弱いポジションにいるのを想像して欲しい、しかし《オレリアの憤怒》を使ってあなたの左にいる人々のクリーチャーをそのプレイヤーのターン終了時にタップする。攻撃されないようにするにはもっと攻撃されやすい対象を作ればいいのだ!
君はどんな方法で《オレリアの憤怒》を解き放つだろうか? プレリリースの後、私はこのカードが君のマジックのゲームの生と死の問題に影響を及ぼした方法を聞きたくなるだろう。その時まで、君のフェイザー・ガンが麻痺モードにセットされていますように!
マーク・パーヴィス
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