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感情に夢中
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感情に夢中
Zac Hill / Translated by Shin'ichiro Tachibana / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2012年1月20日
いやっほう!プレビューカードだぁ!
私は過去に以下のことをやったことがない。以下は強力に感じる。ページを開くなり、カードイメージを包み隠さず表示させ、あいた口がふさがらなくなるような奇襲で驚かせればいいかい?それとも、事細かな詳細の果てに広大なページをスロースクロールさせた上でカードを公開すればいいかい?いやいや、文章中のどこかに隠れたリンクを埋め込み、隅々まで探してもらったらいいかな?可能性は無限大だ!
ぶわっはっはっは、あは、あは、は・・・。
ゴホン。
闇の隆盛の世界を感じてもらうために、今回のプレビューカードがどのように具体化されたのか、一番最初のデザイン会議から最終の開発プレイテストまでがどのように行われたかを見ていただきたい。そのために、感じるというのがどういうことであるか、つまりそれはマジックのセットの中で感情を伝えようと努めることはどういうことか、というのを話すため、少々時間を費やしたい。感情をどのように発展させたか、私たちはどのようにそれの実行に取り掛かったかだ。この種の感情中心のアプローチは旧来のデザインや開発から抜本的な脱却が必要だったが(少なくとも私は)それに見合うだけの価値があると思っていた。
怪物マッシュ
初日からわかっていたこと:闇の隆盛では怪物たちが勝っていた。
アート:James Ryman |
イニストラードは人々をその世界へと引き込んだ。我々はイニストラードの人々を垣間見たのだ。聖戦士や僧侶たちはその居住区や教会でアンデッドの手先および考えられない不快なものの果てしない猛襲に窮地に立たされている中、純粋な意志の力を結集し耐えていた。彼らの我慢の戦いを見た。だが闇の隆盛では、不吉な出来事が起こっていた。絶望の声は大きくなり、祈りは聞こえなくなった。何世紀も保護され続けてきたその場所は唐突に揺らぎ始めていた――そして徘徊している軍勢が非常に優勢であることがそれを証明していた。それをどう伝えれば最良であるかが問題だった。
振れ、叩け、叩け、叩け
TCGで物語を紡ぐ上で障害になることの一つは、あなたは物語を展開する順序を制御できないということだ。あなたは最初に展開されるカードがどれかは知らないし、展開されるのがMOのブースタードラフトの最初のパックの開封なのか、台所のテーブルで繰り広げられるコマンダー耐久戦なのか、はたまたタンブラーからモーニングコーヒーを注いでいる時ざっと見るのかはわからない。それに加えて、あなたがあなたの物語を伝えるためにどれだけのお金を投資するのかも知らない。ブースターから14枚のカードを引っ張り出すだけなのか? それとも一つの箱を3人の友達で分けるのか? はたまたDailyMTG.comの並び替え可能なスポイラーを使ってあなたの仮説に基づいて行儀よく座っているあなたの聴衆に順番にテンポよく見させるのか? それはあなたの物語を全ての他のこれらのグループに伝えるのに不可欠で、それは人をひきつける物語であることが必須である。どういうことかというとたくさんのダーツを投げてブルかトリプルに命中するのを願うこと。全力を出して、そして気持ちが通じることを願う。
幸いにも我々は、それを手助けするいくつかの切り札を持っていた。
大と小
この貧相な男を見たことがあるかもしれない・・・
|
・・・またはこの不幸な魂・・・
|
・・・これらは製品ページ
怪物が勝っていることを伝えるのに適切な方法は、まさにその怪物が勝っている姿を見せることだ。ホラーの目的は変身することであり、あなたがそのカードを裏返したとき、人類の1人が敗北する様を目の当たりにすることになる。それは、率直で、直接的で、効果的だ。物語そのものなのだ。ゴシックホラーの心底からゾクゾクっとさせる要素の1つはミイラ取りがミイラになるところです:(つまり)犠牲者は、彼らが以前に抗っていた、まさにその力に同化するようになる。人々はこのことに恐れをなす――それは身も心も他のものの支配下になってしまうということ。人間の背面側がカードの裏だと難しかったことを、イニストラードの両面カードという考え方により我々はこの物語をカード1枚で織りなすことができるのだ。あなたは、聴衆が42枚の異なるカードを見たり、セットの隅々まで延々とゲームをプレイすることにより全体のカードを眺めたり、といったことに頼る必要はない。カードを見れば、彼らは理解できる。
とはいえ、この方法には限界がある。それ自身が物語の全体を表現できるようなデザインは数に限りがある。加えて、あなたがこの物語を一番伝えたいのだとしても、数には限りがあるのだ。生存者にもその余地を残さなければならない。それらを捕食する怪物にも余地を残さなければならない。また、この争乱が起こる内部世界を紹介する余地も残さなければならないのだ。
なぜならカード単体としての物語に加えて、非常にたくさんの構成要素が必要だからだ。このセットのカードが公開されていくにつれて、あなたは人間やそれを守護する天使が比例的にイニストラードの時よりも減っていることに気がつくだろう。それに応じて、怪物たちはよりスポットライトを得ようとする。サイクルは明らかにに不完全だ。狼男、スピリット、ゾンビ、吸血鬼は彼らの部族への忠誠から繁栄し、イニストラードの人間たちはそれに匹敵する手段を欠いているということに気が付く。まとめると、これらの戦術があなたがこのセットをある程度プレイしたあと、あなたにゾッとする感じを伝えるのだ。おっと、誤解しないで欲しい。――まだ人々は武器を捨ててはいないのだ。
しかしあなたは明らかに、パパ・ソリンが周りのあらゆるものの面倒を見ないこともないと考えるだろう。
私の生け贄
ミクロのレベルでは、それ自体が単発の物語をなすカードに対し、それを1回見るだけで何が起こっているのか大筋で理解できる。その一方で、マクロのレベルではセットの全体の「骨格」――そのセットの構造――は怪物による最悪の事態と可哀想な人間たちの排除の紹介に偏っている。しかし、間に何があるだろうか?
闇の隆盛プレビューの初日に、このちょっととっぴなカードを見たことがあるかもしれない。
このカードは2枚のカードが合体したものだ:
「あなたの墓地にあるすべてのゾンビ・クリーチャー・カードをタップ状態で戦場に戻す。」
・・・と・・・
「すべての人間を破壊する。」
デザインのかなり早い段階で、カードに「すべての人間を破壊する」というテキストを書き込む見通しに我々は興奮した。やはり、それはまさに直接的かつ明瞭にすぐさま何が起こったかを伝える:(つまり)人類の衰退だ。結局のところ、我々は「ゾンビの黙示録」が人間を破壊することが何を引き起こすのかはわかっていたが、この考えはより深い部分に根差している。人間は部族として参照されていなかったが、イニストラードに先立ち、人間というサブタイプがミラディンから設定されるようになった。イニストラードでは人間という部族は団結の力を表す?それは互いに協力しあう力。もしそれが覆ったら?
《ゾンビの黙示録》 | アート:Peter Mohrbacher |
物語中で、ソリンは文字通り全滅の危機に瀕している人類を探すために戻る。吸血鬼種の先祖の放蕩する孫として、彼に問題が提起される:もし、人類が死に絶えた場合、彼の種もまたそうなる。彼らが生命と家族と夢と未来を持った、文化的なアーティファクトを生産できる労働集約的産業などであるように、人間は感じるかもしれまない。だがそれは可愛いものだ。もっと重要なことは彼らは持続可能な食糧であるということだ。強化石でできた小屋に入れられたよく肥えた豚ってわけだ。
この考えは、理屈抜きのレベルで恐ろしい。地球における人類の歴史はこの星の他の生物に対し主張された意志力の歴史だ。人間の優位性は、私たちの唯一の普遍的な価値だ。我々は無数の種を絶滅へと追いやり、我々の継続的な繁栄を目的として星全体の力を使用してきた。まさに全知全能の覇者のようにふるまってきた。しかしながらイニストラードにおいては我々は家畜であり、木か水か砂粒かレンガかモーターみたいなものなのだ。我々はゾンビにとっての餌であり、霊体にとっての器であり、吸血鬼にとって水の入れ物なのだ。我々は征服され、自由を奪われている。ひどく気まぐれなマスターに従わされる者だ。
我々は食糧。肉。火にくべられる薪。魂は空腹を引き起こす、空腹の魔法。
こいつに身の毛がよだつかい?
彼は我々の一人?少なくともそうだった。しかしながら今、彼は彼の同胞との誓約が果たされないことを理解し、魂を悪魔へと売り渡し、反旗を翻し、我々の破滅のために呪文・秘術を行うのだ。
彼は私たち人間を使って私たちに刃向かうのだ。
闇の隆盛の開発の間、我々は人類が人類の反乱に抵抗することを記述しようと試みるいくつかのカードを作成した:保護の約束を破られたことにより裏切られ人々が略奪された町から逃走する。悪魔の王の慈悲を得るため、敗北を理解している心を売り渡した者たちは自分たちに呪文を唱える。「人間を生け贄に捧げる」というメカニズムで――セットの全体にわたって軽く引き締める――私たちは、人間性の集合的な決心の崩壊を捕らえようとした。
《スカーグダグの剥ぎ取り》 | アート:Austin Hsu |
《スカーグダグの剥ぎ取り》をどうやって活用する?
リミテッドの環境を開発する場合、私たちがしようとすることのうちの1つは、プレーヤーがある戦略を追求した場合に大きな報酬を提供する「構築環境」を作成することだ。この男は、それらのうちの1つであるように意図されている。もしあなたがあなたのカードを文字通り――あは、は、は――信者と一緒にプレイしたら対戦相手の一番のクリーチャーを毎ターン破壊できる。それは確かに弱い能力ではない。しかしその能力を最大限に活用できる方法とは? その楽しみは発見するみなさんのために残しておこう。とはいっても、イニストラードのいくつかのカードは気にせず生け贄に捧げられるだろうし、闇の隆盛でも、《高まる献身》や《スレイベンの破滅預言者》といったカードがある。
今後も目を皿にして待っていてくれ。
おぉ、人間たちよ!
先に言及した通り、闇の隆盛のデザインの初期では怪物が勝っていたということを伝えたかったのだ。我々は個別のカードの物語、セットの全体の構成、たくさんのサブテーマ(「人間を生け贄に捧げる」などのメカニズム)を通してイニストラードという次元の人々の心が自棄、絶望、人類の不可避な終焉に関する感じを直感的に作った 。最終的な目標は、イニストラードブロックの第2セットでフラクタルなゴシックホラーを伝えることを成し遂げようということだ――1番最初のパック開けてすぐでも、世界の奥底を探求し続けていても、ひいてはあなたがプレイする各マッチの間でもゾッとさせるものを。
デザインと開発チームの両方のメンバーとして――的に当たりますように!
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