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プレインズウォーカーのための『ローウィンの昏明』案内

Neale LaPlante Johnson,DK Billins,Laurel Pratt
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2025年9月26日

 

 大変長らくお待たせ致しました。双次元ローウィン/シャドウムーアが『ローウィンの昏明』にて帰還です。とはいえ前回の訪問から年月を経て多くが変化し、新しく発見すべき物事も沢山あります。ローウィンとシャドウムーアには、そして両者が出会う奇妙な場所には何が隠れているのでしょうか。先日、このセットのカードを幾つかとブースター・ファンの概要を公開しました。そしてこの記事では、ローウィン/シャドウムーアの地名や住民たちについてより深く知ることができます。

 『ローウィンの昏明』は2026年1月23日に全世界同時発売、お近くのゲーム店Amazon などのオンライン小売店、その他マジック製品を取り扱う店舗で今すぐご予約いただけます。前置きはここまで。早速『ローウィンの昏明』の内側を覗いてみましょう。


 光と影の次元へおかえりなさい。

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アート:Alayna Danner

 かつてローウィン/シャドウムーアは、およそ300年の周期でふたつの相を繰り返す次元だった。この現象は「大オーロラ」として知られていた。「ローウィン」は昼の相に与えられた名前である。こちらは太陽が完全に沈むことはなく、終わらない夏が続く。「シャドウムーア」は夜の相に与えられた名前であり、涼やかな夜を月が永遠に巡る。前回この次元を訪れた時、すべての妖精の女王であるウーナは打倒されて滅ぼされ、彼女が支配していた昼夜のサイクルは終わった。だがその統治の時代に、女王はこの次元の根本的な何かを壊してしまっていた。あるいは、長らく壊れていた何かが女王の終焉によって修復されたのかもしれない――管の詰まりが解消されたり、車輪に油が差されたりするように。

 この次元のふたつの相が互いへの流出を開始した。昼から夜へ、夜から昼へと。ふたつはこすれ合い、削り合い、大地を覆っていった。白と黒が無限に渦巻くマーブルケーキのように色を与えていった。ローウィン/シャドウムーアの歴史において初めて、住民たちはこの次元のもう一つの相と、異質でありながらも馴染み深い相と隣り合って暮らすことになった。彼らはローウィンでは、太陽に照らされ曲がりくねる道が、先の見通せない闇に取って代わられる様を目にした。シャドウムーアでは、月明かりに照らされた棘の茨が、花を咲かせた鮮やかな緑の茂みへと変貌する様を目にした。

 ローウィン/シャドウムーアは二重性の世界である。境界を越えたなら、歪んだ過去の記憶と認識できない人格を持つ別人になるかもしれない場所だ。最大の危険は肉体ではなく、精神に対してのものかもしれない。「私は一体どちらなのか?」と自問自答しなければならない。そして「両方」と答えて満足することになる。

ローウィン

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アート:Iris Compiet

 夜なきローウィンは、のどかな草原と緑豊かな森の世界だ。太陽は一日のほとんどの間を空高く昇り、低くはなっても決して姿を消すことはない。田舎には質素な農場が点在し、村々では様々な種族の交流が育まれている。ローウィンでもよく知られ、拓かれた広大な地域は歴史的に「祝福の国」と知られていた。この名はかつてその地を支配していたとされるエルフの祝福階級にちなんだものだったが、振り子の年が到来すると用いられなくなっていった。その先の地域は「原初の彼方」として知られている。

シャドウムーア

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アート:Adam Paquette

 永遠の夜に塗り潰されたシャドウムーアは、暗く謎めいた森と茨の地だ。まるで真夜中のような風景の中、月が空を巡る。苔に覆われた巨大な石造建築には遥か昔に滅びた文明の象徴が刻まれている。常に炎を上げる灼熱の沼地は何も知らない旅人をその深淵へ溺れさせる。危険に満ち溢れているものの、この地に潜む謎は最も用心深い者さえも魅了する。シャドウムーアには恐怖がはびこっているが、過酷で不気味な環境に取り囲まれて生命が瑞々しく花開く。あらゆる暗い小道や影深い谷は、力とエネルギーを秘めた豊穣の角のように、溢れんばかりの魔法に満ちているのだ。

 このエネルギーは「荒魔法」として知られている。荒魔法はシャドウムーアの地にのみ存在し、力を秘めた深い源泉であり、誰でも引き出すことができる。この力は混沌として不安定であり、使用には術者と周囲の環境を破壊するほどの壊滅的な反動を伴う危険性がある。

ローウィン/シャドウムーアの平衡関係

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アート:Mark Poole

 ローウィン/シャドウムーア次元は、ふたつの異なる次元的面が存在するという点で、他の次元とは際立って異なる。昼の相であるローウィンと夜の相であるシャドウムーアは、分かたれ隔てられている。ウーナの時代には大オーロラによって、現代では(「大」ではない)オーロラによって。オーロラを介してふたつの相は直接隣り合って存在している。この境界線はゆっくりと移動し、昼と夜のバランスを保っている。だが稀に、ある程度の範囲の土地が突然変化し、その内にあるすべてのものが瞬時に変容することがある。一般大衆はこの変化の原因を突き止めることはできないが、エイルドゥとイシルーの気まぐれと足音がその源のひとつとなっている。

 ローウィンでは、この次元は永遠の昼の中にある。太陽は常に見え、空を横切りながらも地平線の下に沈むことはない。

 シャドウムーアでは、この次元は永遠の夜に包まれている。月は空に浮かび、行き来しながらも決して消えることはない。月の相は満月と新月の間を巡り続ける。

オーロラと潮流

 ウーナの時代には、次元全体がローウィンとシャドウムーアを行き来していた。妖精の女王自身が仕掛けた魔法的収斂、大オーロラによるものである。現在では、ローウィン/シャドウムーア次元は常に衝突している。広大な土地がローウィンの光とシャドウムーアの闇に覆われ、その境界は無数の奇妙な状況と未知の影響によって満ち引きを繰り返している。時には、特定の地塊内における死や誕生によって、ローウィンあるいはシャドウムーアの面積が拡大・縮小することもある。エイルドゥやイシルーの足跡の影響によって境界が変化することもある。そしてさらに頻繁に、次元の力や影響や規模の不均衡を自然に修正する手段として、境界が周期も理由もなく拡大したり縮小したりする。近年では境界は以前よりも安定し、比較的永続的な境界もそれなりに存在する。それでも不意に変化する危険性はあり、依然として境界の近くにいる住民たちを脅かしている。

 境界が移動すると、その内部にあるすべてのものが変化する。クリーチャーやあらゆる生命体も例外ではない。この変化を抑制する手段は存在するが希少であり、変化への抵抗を持つクリーチャーやその他の物体はさらに稀だ。ローウィンとシャドウムーアの境界が接する場所では、現在の相の先にもう一方の相を見ることができる。自分自身のひとつの相から踏み出してもう一方に踏み込むことは、境界を越えた者に即座の変化をもたらす。

 この次元に生まれたクリーチャーは、ローウィンの姿とシャドウムーアの姿というふたつの形態を持つ。オーロラが発生してローウィンがシャドウムーアになるか、またはその逆になると、その地域内のすべてのクリーチャーと地形は大規模な変化を被る。ローウィンからシャドウムーアへ渡ることをイーブンタイド、シャドウムーアからローウィンへ渡ることをモーニングタイドと呼ぶ。クリーチャーは種族こそ変化しないものの、肉体的にも精神的にも様変わりする。もう一方の相にいた頃の記憶は、心の奥底に残って届かない痒みのように濁って曖昧なものになる。性格の劇的な変化を被ることもある。全体的に見て、ローウィンの住民は社会的で秩序立っており、シャドウムーアの住民は個人主義的で混沌としている。片方の相が善で片方の相が悪というわけではない。置かれた状況によって、誰もが英雄にも悪役にもなり得るのだ。

 別の相へと足を踏み入れた者は、ローウィンあるいはシャドウムーアにおける自身の姿へと変身する。それまでの生涯の記憶が暗く反映された、不正確で奇妙に歪んだ姿である。そして再び境界を越えることで、ローウィンあるいはシャドウムーアにおける真の記憶を取り戻す。生涯における最後の10年間をシャドウムーアで過ごしたキスキンは、境界を踏み越えることでローウィンにおける自身の姿へと変貌し、幼少期にはローウィンで生きていたことを思い出すかもしれない。そしてその心はシャドウムーアでの生活を曖昧な記憶へと歪め、実際にはローウィンで生涯を過ごしたと思い込ませるのだ。

 だが、こういった記憶の変化は記録されていないわけではない。多くの種族は、境界を越えることの危険性とそれに伴う痛みを理解している。たとえもうひとりの自分を知りたいと願っても、その過程で自分が知っている生涯を失うことになるのだ。

蝕界

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アート:Alayna Danner

 ローウィンとシャドウムーアの境界がこすれ合う場所には、そのどちらでもない環境の断片が出現する。この断片は「蝕界」と呼ばれている。この次元が取りうる、光でも影でもない第三の状態だ。これらの場所は異なる広がりの軸を用いてローウィンとシャドウムーアの鏡像関係を解決しようと試み、結果として世界は認識不可能な何かへと変容する。

 この次元の他の領域と比べても、蝕界は奇妙で別世界的な様相を呈している。蝕界は相の境界に沿って存在し、ごく細く現れるものもあれば広大な土地を覆うものもある。蝕界では、太陽と月の両方が空高く浮かんでその場から動かない。それらは不動の鏡として、隣り合う相の永遠の昼と夜を映し出している。あらゆる影の中に光の標があり、あらゆる陽光の中に深い闇の淵がある。

蝕甚化したクリーチャー

 蝕界の中では、ローウィン/シャドウムーアの住民が即座に自身の別の相へと変化するわけではない。彼らは蝕界の外での記憶をすべて保持しており、別の相で過ごした記憶も次第に取り戻していく。だが蝕界に留まれば、ゆっくりと変化していく。そしてその変化は永続的なものである。ひとつの相の記憶が別の相の記憶と融合しようとするが、それらの間の矛盾は完全には解消されない。蝕甚化したクリーチャーは欲望や感情や外の世界との繋がりを失い、最終的には完全に動きを止めた抜け殻と化す。そこに至ったものは石灰化したクリーチャー、あるいは単に石灰の姿と呼ばれる。

光と闇の化身

 ウーナが打倒された結果、ローウィンとシャドウムーアの相はもはや隔てられなくなった。相が融合するにつれ、ふたつの偉大な存在が次元の上層から目覚めた――太陽の化身エイルドゥと月の化身イシルーである。その出現は当初混乱を引き起こしたものの、やがて両者はローウィン/シャドウムーアの住民の生活にも、互いにも全く興味を持っていないことが明白となった。

 巨大なこれらの存在はローウィン/シャドウムーアを放浪しており、その足跡によって大地は変化していく。片方が目覚めてこの次元の光と闇の均衡を保つ間、もう片方は眠る。このふたつの存在が何を意味するのかはわかっていない。この次元の住民に対して無関心であるように見えるものの、多くの住民がこの二体を神として崇拝している。

エイルドゥ

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アート:Lucas Graciano

 エイルドゥはローウィンの生ける化身、太陽の象徴である。その存在は柔らかな微風と春の穏やかな暖気のようだ。エイルドゥの傍にいれば心身ともに若返り、生きることそのものへの満足感を得る。今のところ、エイルドゥは身を守る必要を持たない。だが脅威にさらされたなら消えない光の柱を放ち、太陽の破壊的な熱を敵に浴びせることができる。

太陽の信奉者

 エイルドゥの崇拝者たちはローウィン/シャドウムーア全土の所有権を主張し、次元全体をローウィンに転換させようとしている。彼らは太陽光線の模様と翼をあしらった鎧を身にまとっている。これらはエイルドゥの身体から取り入れた象徴だ。

 エイルドゥの崇拝者たちは太陽の光がさほど輝かない寒い日に集合し、牧歌光の祭典にて聖餐を執り行う。古代の列石の中心に、あるいは周囲に立石がない場合は集落の中心に薪が積み上げられる。エイルドゥの姿を模した偶像崇拝用の衣装がエレメンタルの上に置かれ、崇拝者たちは薪が燃え尽きるまで円陣をねり歩く。薪が燃える間、崇拝者たちは作物や貴重な家宝をその炎に捧げて儀式の時間を引き延ばす。エレメンタルが疲労して倒れるか、供物が尽きたなら儀式が終わる。

イシルー

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アート:Lucas Graciano

 イシルーはシャドウムーアの生ける化身、月の象徴である。その存在は穏やかな静寂と秋の柔らかな冷気を感じさせる。イシルーの傍にいる者は理解に満たされ、これまで決して知らなかった疑問への答えを求めて彼方を見つめる。今のところ、イシルーは身を守る必要を持たない。だが脅威にさらされたなら最も暗い夜を引き起こし、いかなる光も貫くことすらできない闇で世界を覆い、虚空の中にいる者たちの生きる意志を枯らす。

月の信奉者

 イシルーの崇拝者たちはローウィン/シャドウムーア全土の所有権を主張し、次元全体をシャドウムーアへ転換させようとしている。彼らは月の紋様をあしらった鎧と雲を模した頭飾りを身に着けている。これらはイシルーの身体から取り入れた象徴だ。

 月の信奉者たちは、次元各地に点在する巨大な石造建築の奥深くに埋葬された死者たちを偲んで夜通しの祈りを捧げる。種族や信条や好みに関わらずこれらの墓所は聖地とされており、暴力を振るってはならない。入り口にはイシルーを模した衣装をまとうエレメンタルが見張りに立っており、内部で神聖な儀式が執り行われていることを示している。

払暁と黄昏の聖遺

 ローウィンとシャドウムーアの民にとって、変化は避けられないことのように思えるかもしれない。だがかつては「モーニングタイドの三日月」と呼ばれる古代の遺物が存在した。これは大エレメンタルの力を受けたもので、変化することなく相の間を渡ることができた。同様に、ローウィン/シャドウムーアの住民たちは昼と夜の化身の断片から聖遺を作り上げてきた。

 聖遺は異なる相の間でも肉体と記憶を保持させてくれるもので、エイルドゥとイシルーの欠片から作られている。これらの品々は希少で、しばしば神聖なものとされ、ローウィンまたはシャドウムーアの精髄を凝縮したものを表している。イーブンタイドに抵抗するにはエイルドゥの欠片から作られた払暁の聖遺を、モーニングタイドに抵抗するにはイシルーの欠片から作られた黄昏の聖遺を携行する必要がある。両方を所持することで、無変化のまま蝕界を旅することができると言われている。

 聖遺は様々な形をとりうるが、多くは道を照らしたり影を落としたりするランタンや首飾りとして作られる。その形状はしばしば、素材となるエイルドゥまたはイシルーの部位に依存する。例えば羽根はブローチになり、輝く鱗はガラスの中に入れられてランタンに加工される。

歴史

ウーナの時代
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アート:Adam Rex

 何千年もの昔、すべての妖精の女王にして母であるウーナは、大オーロラを用いて相のサイクルの間も自身の記憶と肉体を保ち、次元の支配権を握っていた。300年ごとに次元は別の相へと移行していたが、この状態は40年以上前に「大修復」によってサイクルが中断されるまで続いた。この大修復とは、蓄積された時の裂け目によって生じた多元宇宙全体の傷が修復された出来事である。数千年を生きてきて初めて、ウーナは大オーロラの影響を受けるのではないかと恐れた。女王は自らの化身を作り出したが反抗された。次に彼女は朝の歌のエルフ、マラレンの複製を作り出し、自身の魂の一部を注入することで記憶を保とうとした。だがマラレンの複製は自意識を獲得し、ローウィン各地から集まった仲間たちと共にウーナ自身とその策略を調査した。大オーロラが発生して次元がシャドウムーアに変化すると、ウーナはマラレンの勢力に打倒された。エルフのライズ、キスキンのブリジッド、メロウのシグ、炎族のアシュリング、そしてツリーフォークの若木であるコルフェノールがその面々だった。ウーナは敗北し、肉体は破壊されたものの、その意識は隠されたままだった。そして玉座を取り戻す手段を探しながら、秘密裏にゆっくりと力を取り戻していった。ウーナの統治の終わりに続いて次元は融合を開始し、振り子の年を引き起こした。マラレンは妖精の女王の称号を受け継ぎ、ライズと死の契約を交わした――もしウーナが復活する兆しが少しでも表れたなら、ライズはマラレンを殺さなければならない。その日まで、ライズは決して死ぬことはできないのだ。

振り子の年

 シャドウムーアの至る所で、闇の中に小さなローウィンが突然現れた。次元は混乱に陥った――あらゆる民や場所が一瞬にして変貌することもあった。村はふたつに分断され、新たな境界線を越えた者は例外なく瞬時に様変わりした。農民は農地から切り離され、あるいは商売を完全に忘れ去った。共同体同士は疎遠となり、新たな境界線の先とは一切の接触ができなくなった。時には、他の次元の昼夜のサイクルを模倣する期間さえあった。昼から夜へ、そしてまた昼へ。

 だがやがてこうした変化は鈍化していった。境界線は安定したように見え、荒ぶる波ではなく穏やかな潮流のようにゆっくりとした前進を始めた。そして遥か彼方、地平線に沿って歩くようなふたつの巨大な存在が見えるようになった――ローウィンの化身エイルドゥと、シャドウムーアの化身イシルーである。次元のオーロラの満ち引きを管理するため、双つの世界魂が再び現れたのだ。

 その後40年間、この次元はふたつの化身の存在によって平和を享受していた。時折、遠く離れた村から驚くべき話が届いた――隣人たちや家々が光と闇の狭間に捕われ、光と闇の両方でありながらどちらでもない何かに屈したと。そのような領域は蝕界と呼ばれるようになった。

ファイレクシアの侵略
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アート:Dan Murayama Scott

 ファイレクシアの侵略はこの次元の脆い力関係を破壊し、各種族はこれまで考えたこともなかったような形で協力せざるを得なくなった。特に、かつてローウィンの民を恐怖に陥れていたローウィンのエルフはほぼ壊滅状態に陥り、その次元支配はそのままファイレクシアの権力網へと変化した。完成化されたエルフはその残酷さと偏見を最大限に活用した。他種族への振る舞いは油があろうとなかろうと、ほとんど変化しなかった。

 汚染を免れたエルフたちは劣勢に立たされ、ローウィンの他種族と同盟を結ぶという必死の賭けに出た。その奮闘の中で彼らはやがて勢力を伸ばし、リス・アラナで抵抗を続けた。ファイレクシア人も新たな戦術に出た。キスキンを感染させ、思考の糸を用いて同胞の精神を毒したり、感染したフェアリーを送り込んで密かに水源を汚染させたりした。

 シャドウムーアでは各種族が思い思いの方法で侵略者へと攻撃を仕掛け、混沌が支配した。彼らの散開的な攻撃はローウィンの統一戦線ほど効果的ではなかったが、結果として損失ははるかに少なかった。侵略者に対して勇敢に立ち向かったのはボガートとキスキンだけだった。ボガートは先鋒となり、騎兵隊で敵陣に突入して内側から壊滅させた。自分たちで予想した通り、彼らは甚大な損害を被った。

 光素が多元宇宙を満たす中、侵略者を滅ぼす最後の突撃を率いたのは、孤立主義を貫くシャドウムーアのキスキンだった。次元の同胞に対して抱く以上の排他主義に突き動かされた彼らはファイレクシア人の軍勢を粉砕し、踏みにじった。その後キスキンたちの外への恐怖は顕在化し、数年を経ても彼らは家に閉じこもって訪問者には会いたがらない。

現在

 現在のローウィン/シャドウムーアは脆弱な平和の時代である。すべての変化が予測可能というわけではない――村々は一瞬にして様変わりし、住民たちはそれまで別の生涯を送っていたことに気づかないかもしれない。謎めいた蝕界の出現は、ローウィン/シャドウムーアの民をさらなる混乱に陥れようとしている。彼らは今、世界にまたも不可知の変化が訪れるのではと警戒している。

 政治的な面では、ローウィンのエルフ帝国は勢力を失った。そのため他種族はかつて拒まれていた世界に足場を築くようになった。他種族同士を対立させていたウーナがいなくなったため交易と商業は活性化し、各種族が独自の才能を活かして新たな繁栄を遂げている。

ローウィン/シャドウムーアのクリーチャー

 ローウィン/シャドウムーア生まれの人間はいない。代わりに主としてキスキン、ボガート、エルフ、メロウ、人型のエレメンタル(炎族、凍炎族、燃えがら)が暮らしている。数の少ない知的種族としては巨人、ツリーフォーク、変わり身、ノッグルなどがいる。この次元には大エレメンタルと呼ばれる巨大な獣も生息している。彼らは概念や思想を体現する存在であり、時に魅力的、時に恐ろしい。ローウィン/シャドウムーア生まれのクリーチャーが境界を越えたなら、意図の有無にかかわらず本来とは正反対の姿に変身するが、種族は変化しない。

キスキン

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アート:Sam Guay

 キスキンは小柄な人型生物であり、共同社会を大切にして質素な生活を送っている。彼らの共同体はローウィンでは小村、シャドウムーアでは矮村と呼ばれている。キスキンは多くが牧畜農家を営んでいるが、危険に直面したなら英雄的な偉業を成し遂げることもある。彼らは魔法的な「思考の糸」によって精神的に結びついている。

思考の糸

 思考の糸はすべてのキスキンの精神を繋ぐ共感の網だ。この糸を通して、近くのキスキン同士は感情や思考を共有することができる。思考の糸は集団意識とは異なる。個々は互いの感情に同調するが、自身の思考や感情の制御は保たれている。ローウィンにおいてはこの繋がりが友情と開放性を促進し、健全な共同体を育んでいる。個人主義は集団主義へと移行し、すべてのキスキンや次元のあらゆる場所に住む仲間たちの幸福を追求する。一方シャドウムーアでは、この網は裏切りへの偏執的な恐怖をあおり立て、矮村内や次元全体における均一性を促す。思考の糸の中では、他者に対して秘密を抱くことはできない。自身の思考をごまかそうとする者は共同体から追放されるかそれ以上の罰を受ける。シャドウムーアのキスキンの間では、思考の糸は心糸と呼ばれることもある。だがキスキンたちはふたつの相の境界すら越えて均一性を求めているため、この呼び名の使用は次第に好まれなくなってきている。

ローウィン
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アート:Edgar Sánchez Hidalgo

 ローウィンのキスキンは共同体を大切にする牧畜の民だ。控えめで平和主義的な性格の持ち主だが、故郷と同胞を守る誇り高き守護者でもある。キスキンの社会はローウィンの他種族との間に強固な交易路を確立しており、新たな仲間たちに喜んで穀物や農産物を提供しては鉄の道具や瓶詰めの呪文、住家を飾る芸術品などを手に入れている。

歴史

 ウーナの時代には、ローウィンのキスキンは生涯の大半をエルフの支配下で過ごしていた。とはいえエルフの残忍さがキスキンに向けられることは頻繁ではなかった。エルフの暴虐の主要な対象ではなかったものの、キスキンはエルフの暴力の脅威なき生活を切望していた。ウーナが倒されると、キスキンはその後の混乱の中でも可能な限り平和に暮らした。彼らの持つ安定性が繁栄をもたらした……エルフがその領域内で許す限りにおいて。

 ファイレクシアの侵略の間、ローウィンのキスキンは思考の糸を強力な武器として用いた。それは頼もしい通信手段となったのだ。孤立したキスキンの村でも即座に遠くへと援軍を要請することができ、ファイレクシア人は状況を理解する前にしばしば包囲攻撃を受けた。だがやがてファイレクシア人は思考の糸を巧みに利用し、キスキンの士気や思考を、そして性格を変質させた。きらめく油がひとりのキスキンに染み入ると、他のキスキンも機械の母やかつての同胞たちの声に晒され、完成へと誘われた。多くのキスキンは苦しみに耐えるよりはと思考の糸を完全に断ち切った。

社会

 ローウィンのキスキンのほとんどは緊密な共同体で暮らしているが、他の種族と共に生きることを選択する者も増えている。小村は新たな戦略として他種族との一体化を掲げているが、依然としてキスキンが大半を占める共同体は多い。キスキンの町や村が他種族を受け入れて拡大するにつれ、彼らの文化遺産を集大成した書物である「キスキンの書」は更新され、定期的に新しい章が追加されている。

 ローウィンのキスキンは生まれつき迷信深く、ありふれた出来事を吉兆あるいは凶兆と捉えたがる。熊手の向きが逆だったり、鋤の車輪が外れたりするのは、不幸の兆しとも大いなる幸運の前兆とも考えられる。彼らの迷信の多くはローウィンの大エレメンタルに関するものであり、その姿や行動は良きにつけ悪しきにつけ、前兆の中でも最大のものとされる。キスキンの占い師はこれらの振る舞いを見抜き、整合的な解釈をする重要な役職である。

放浪のキスキン

 ローウィンのキスキンでも思考の糸からの断絶を選んだ者たちは、ファイレクシアの侵略が終わると自分たちが小村での生活に馴染まないことを悟った。共同体に戻ろうと試みるも、完成された同胞たちの叫び声がやがて残響として届き、また彼らの苦痛が思考の糸を通して伝わってきた。こうしたキスキンたちは共同体を離れ、同じ苦痛を味わった者たちと共に放浪の集団を形成することを選んだ。彼らは今、戦後の仕事と意味のある生き方を探して次元をさまよっている。

シャドウムーア
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アート:Edgar Sánchez Hidalgo

 シャドウムーアのキスキンは閉鎖的で偏執的だ。錬鉄製の門と石の壁で囲まれた村に閉じこもり、外界から隔絶されることを好む。彼らは他者を犠牲にして身内を守ることを選び、身内を守るために精巧な防衛設備を築き上げている。

歴史

 キスキンはシャドウムーアにおける最も強大な種族ではなかったが、それでもこの次元で最も組織化された種族のひとつだった。緊密に結束した彼らの共同体は、よそ者からは難攻不落に見えた。彼らは次元に幾らかの秩序をもたらすためにエルフと協力したが、そのような休戦はごく稀なものだった。ウーナが打倒された後も、シャドウムーアのキスキンにとってはほとんど何も変わらなかった。彼らにとって、シャドウムーアの双子として出現したローウィンは、外の世界が危険で不可知であることの証明だった。

 ファイレクシアの侵略の間、シャドウムーアのキスキンたちはよそ者嫌いを脇に置いて他種族と束の間の共同戦線を張った。態度こそ友好的ではなかったものの、彼らの助けは最後の最後にファイレクシア人を撃退する際に大きな力となった。中でも「鋸折りの猟犬」と呼ばれる若きキスキンの女性は、スプリングジャックに騎乗して戦場に赴いた。彼女は同胞たちの信念と偏執を背負い、侵略樹の枝を跳躍しながら、たった独りで槍をドミヌスの身体に突き立て、首から膝までを串刺しにした。その行動は英雄的だったものの、侵略戦争はキスキンの偏執狂を更にかき立てた。今では彼らは、攻撃を防ぐ時以外は矮村の壁から決して出ようとはしない。

社会

 シャドウムーアのキスキンの社会的階層は長所や業績に基づくものではない。よそ者に対しては排他的な態度を取るものの、彼らの内は平等主義である。村では翌月までの指導者を決めるための会議が毎月開かれる。この選考過程では個人の行いや秘密が厳しく暴露されるが、彼らは喜んでそれを提供する。会議で選出された者は民の目を意味する「スール」と呼ばれる。彼らは村を見渡せる塔へと連れて行かれ、中に閉じ込められる。こういった塔は周囲のすべてを見渡すことができ、「インスリンター」と呼ばれる。スールの目が自分たちに向けられ、犯罪や裏切りの兆候を探しているのかもしれない。だがそれは誰にもわからない。

 矮村に災難が降りかかると、シャドウムーアのキスキンは門を開けるよりも同胞のひとりを危険にさらす方を選びたがる。彼らの中から英雄が選ばれ、共同体全体の信念を与えられ、思考の糸を通して通常のキスキンの力を超えた力を得る。そういった英雄は50体のボガートに挑んで生き残り、その物語を語り継ぐことができると言われている。

カカシ

 カカシはキスキン製の構築物であり、通常は死んだツリーフォークの木材から作られている。カカシは知性も存在意義も持たず、製作者の意図を模倣することに満足している。カカシは頻繁に製作者を惨殺してしまうが、それにもかかわらず定期的に製作され続けている。村の繁栄のためには他種族と同盟を結ぶ方がはるかに安全なのだが、シャドウムーアのキスキンは極度のよそ者嫌いであるため、こうした危険性の少ない手段を追求することができないのだ。

主要地点
ローウィン
  • ブレンタン:鍛冶屋と瓶詰めの炎で知られる小村。背骨岩の小山の近くに位置し、近隣の炎族と交易を行っている。シャドウムーアではバレントンと呼ばれている。
  • キンズベイル:ローウィン全土で最大の小村であり、「お話し祭り」の開催地でもある。シャドウムーアではキンザーという名で知られている。こちらはウーナによって全滅させられたが、その後再興しつつある。
  • ゴールドメドウ:民兵たちが野原で訓練を行う小さな農村。シャドウムーアではミストメドウという名で知られている。
  • ダンドゥーリン:ダンドゥーリンは学者や賢者で知られている。かつては壮麗な鐘楼を備えていたが、遠い昔に崩壊したことは有名だ。
  • ロングレイクの小村:小さな汽水湖沿いに位置する小村。造船業と、キスキンの中で最も優れた泳ぎ手を輩出していることで知られている。
シャドウムーア
  • バリーノック:周囲すべてを牧草地に囲まれたキスキンの矮村。狩猟者や罠師が多く住むことで知られる。ローウィンではバリラシュと呼ばれている。
  • 鋸折り:シャドウムーアでも最も暴力的な矮村であり、「鋸折りの猟犬」の故郷。キスキンの間ですら、鋸折りは危険な場所とみなされている。

ボガート

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アート:Iris Compiet

 ボガートはゴブリンの一種であり、新たな感覚や経験を追い求めたがっている。彼らはしばしば獣じみて野性的で、軽率に暴力を振るう。とはいえ許容される暴力の種類は村によって、そしてローウィンとシャドウムーアでも異なる。ボガートの村はしばしば「巣穴」と呼ばれる。彼らの社会階層構造は緩やかなものだが、最も崇拝されるボガートは「婆」、魔法を用いて不可能を可能にする女主人たちである。

ボガートの魔法

 ボガートの体内には自然に魔力が蓄えられる。年を重ねるごとにその魔力は蓄積され、最も年を経たボガートが最も強くなる。ボガートが死ぬとその遺体は沼地に埋められ、生態系に組み込まれる。そういった沼地は溢れんばかりの魔力に満ちており、そこに生息する動植物も同様だ。沼地で採取された様々なものが魔法のための焦点具となる。親族の骨、亡くなった使い魔の亀の甲羅、あるいはとても格好いい棒きれなどだ。

 ローウィンにおけるボガートの魔法は、儀式的かつ体系化された形をとる。儀式は寓話や詩の朗唱を伴い、複雑で恣意的な複数の段階で構成される。有名な例としては「蜘蛛の恵み」がある。これは以下の手順で構成される:まず蜘蛛を一匹捕らえ、新月の下で物語を囁きかける。次にその蜘蛛の脚をもぎ取り、中をくり抜いたどんぐりにその身体と自分の血を入れる。そしてそのどんぐりを首にかけて着用すれば、悪い呪いから身を守ることができる。

 シャドウムーアでは、ボガートの体内に蓄積される魔力は混沌として原始的である。魔力が増すほど、彼らはより不安定で危険になる。シャドウムーアのボガートの共同体では、死体はその魔力を求める同胞たちによって完全に食い尽くされる。シャドウムーアのボガートは呪いをかけるのを好み、そのためにはしばしば残酷な構成要素や方法を伴う。例として、呪いをかけるにはヤマアラシの針をヤギの心臓に刺したり、自分のオタマジャクシを飲み込んだヒキガエルの腸を煮たりするといった手順が必要となる。

ローウィン
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アート:Ioannis Fiore

 ローウィンのボガートたちは混沌として遊び好きであり、婆の指導力のもとで小さな巣穴に住まう。彼らは新たな経験を求めて次元をはるばる旅し、生き延びたなら巣穴に戻ってその経験を共同体にもたらす。そしてそれが他のボガートたちの外の世界への冒険意欲をかき立てるのだ。彼らは特別用心深くはなく、冒険を追い求める中で肢を失ったり命を落としたりすることもある。

歴史

 ウーナの時代が終わってファイレクシアの侵略が始まるまで、エルフはしばしば娯楽としてボガートを残酷に虐殺していた。エルフはボガートを「眼腐り」、醜悪で嫌悪すべき生物とみなしていたのである。ボガートの個体数は大幅に減少し、幾つかの共同体は消滅に追い込まれた。これによって残存する共同体は分裂し、奇妙な食材を中心とした豪華な祝祭「ボガートの饗宴」は終焉を迎えた。同じくこの大量虐殺にとって彼らの口伝も途切れ、過去のボガートとの繋がりはほぼ断ち切られてしまった。

 ファイレクシアの侵略は、ローウィンのボガートにとってはまたとない好機となった。エルフは正面からファイレクシア人と戦い、その傲慢さから大きな損失を被った。一方でボガートたちは棲家である沼地に篭り、地の利を活かした魔法とゲリラ戦術でファイレクシア人を押し留めた。侵略が終結すると、彼らはその後の動乱に乗じて沼地に自分たちと社会を再建した。

 その後、ローウィンのボガートたちは再び宴を開き物語を語り合うようになった。すると生き延びた古い寓話の多くが分岐し、進化していることに気づいたのである。彼らは共同で新たな魔法を開発し、原始的な象形文字を用いてそれらを書き記すことを始めた。元々この言語は樹皮や石に刻まれ、「危険」「安全」「資源あり」、あるいは最も一般的なものとして「冒険が待っている」といった単純なメッセージを伝えるために使われていたものである。

社会

 ローウィンのボガートは長く生きられるが、慎重さの欠如からそれが叶わないことも多い。長生きしたボガートは体内に膨大な魔力を蓄積する。最も魔力が多く、最年長のボガートが「婆」である。彼女たちは巣穴の長にして柱である。婆たちは絶大な権力を振るい、敬意を集め、喧嘩を止めさせることができる(ただし友好的な噛みつきは許されている)。

 ローウィンのボガートは、歴史と共同体を守るための努力こそ惜しまないものの、本質的には無秩序で衝動的である。そのため、体制や法は必須のものというよりはむしろ提案に過ぎない。ボガートは依然として溜め込み屋でいたずら好きであり、早死にする傾向にある。だが彼らにとって死は恐れるべきものでも、悼まれるべきものでもない。たとえ愚かな死であっても、新たな経験を求めてのものであれば、それは祝福されてしかるべきなのだ。

シャドウムーア
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アート:Ioannis Fiore

 かつてシャドウムーアのボガートは、飢えと暴力に突き動かされる単純な存在だった。だがウーナの滅亡、エルフの暴虐、そしてファイレクシアの侵略によってその破壊的で無思慮な生き方は維持不可能になった。以来彼らは用心深さを学んだが、貪欲さは衰えていない。シャドウムーアのボガートの多くは放浪生活を捨て、縄張りを築くことを選んだ。彼らは強力で不安定な魔法を身につけており、それを駆使して混沌とした気まぐれを実現する。

歴史

 シャドウムーアのボガートは自分たちの行いを記録したことがない。代わりに彼らは破壊的な衝動に身を任せ、終わりのない戦いの中で自らも滅びる。ボガートの巣穴で一世代以上の期間を生き延びたものはない。この次元の他種族もボガートの歴史を記録してはおらず、できる限りこの略奪者たちを無視する方を好んでいる。

 ファイレクシアの侵略の間も、シャドウムーアのボガートは依然として無秩序で混沌としていた。それでもなお、彼らの戦闘力は脅威であり続けた。一部のボガートは古来の習慣に固執し、貪欲な渇望をファイレクシア人の殲滅へと向けた。そうでないボガートは生き方を変えるのではなく、完成化へと身を委ねた。数が減少するにつれて多くのボガートは集団での避難を余儀なくされ、到達困難な場所に防御力の高い縄張りを築いた。多くは沼地だったがそうではない場所も少数あった。

 ファイレクシアの侵略が終わった時、汚れのない土地はほとんど残っていなかった。かつてのように襲撃し、貪り食うことはできなくなった。以前の生活様式が廃れ、彼らは衝動を向ける別の方向を見つけなければならなくなった。沼地の中やその周辺にボガートの小さな共同体が形成されていることがある。ローウィンのそれよりも規模はずっと小さいものの、結束は強く秘密主義で、厳重に防御されている。単独の放浪者として、熱心に復讐を追い求めるボガートや単に新たな目的を探すボガートもいる。

社会

 シャドウムーアのボガートはシャドウムーアの他種族から孤立して暮らしており、交流はおおむね暴力を用いたものに限られる。彼らの巣穴は小さく簡素で、純粋に実用的な構造である。社会階層構造は存在するが限定的なもので、魔法であれ武力であれ力によって支えられている。武勲を立てたボガートの戦士は、襲撃で見つけた粗雑な鉄板を身体に貼り付け、釘を骨に直接打ち込む。ボガート同士が戦う際には、勝者は敗者の身体からこの鉄板を剥がして自身に取り付ける。

 シャドウムーアのボガートの間でも最年長であり最も権力を持つ婆たちは、多くが共同体内には留まらない。その野望は巣穴の外にまで及ぶためだ。こういった婆たちは放浪の民であり、孤独を好む。そして気まぐれで風変わりで残酷だ。怒りやすく、ひとつの恨みを永遠に持ち続けることもある。他種族にとってシャドウムーアの婆との遭遇は悪夢に等しい。彼女たちは身勝手で奇妙な試練を犠牲者に課すことで知られており、しかもそれにはしばしば正解などない。犠牲者の反応が気に入らない場合は、皮肉的かつ不穏な方法で呪いをかける。だが寛大な気分の時は強力な贈り物や恩恵を与えることもある。出会った婆が有害か有益かを予測することは誰にもできないが、後者は比較的稀だ。

主要地点
ローウィン
  • 泥デコの巣穴:最も混沌として騒々しい巣穴として知られている。この巣穴のボガートたちは楽しい時間を過ごすのが大好きだが、目覚めると片足や友達が見当たらなくなっていることも少なくない。
  • 爪先濡れのぬかるみ:ここの水はボガートの薬師によるあらゆる薬作りに利用されている。このぬかるみは屍や植物を分解し、奇妙な性質を持つ液体を生み出すのだ。
シャドウムーア
  • つつき沼:ほとんどの生物はこの沼地を動き回ると何らかの疫病に感染する。だがこの場所を故郷とするボガートは沼地の特性に免疫があり、それどころか毒を持っている。
  • ぼんくら詰めの巣穴:戦闘に耐えられないほど弱いと判断されたボガートは、ここで死ぬために送り込まれる。この場所での試練を生き延びたボガートは「ぼんくら」と呼ばれ、死ぬために再び送り込まれる――ただし戦闘へと。
  • 腐れ沼の巣穴:シャドウムーアで最も平穏で安定した巣穴のひとつ。ボガートたちが原始的な手段で巨大な一本の塔を築き上げたが、頻繁にぐらつくことからそのずさんな造りが露呈している。

メロウ

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アート:Margaret Organ-Kean

 メロウはマーフォークの一種であり、多くは商人や運び屋、そして他種族間の仲介役として働いている。次元を横断する川や地下のトンネル、通称「メロウの通廊」を彼らは支配しており、交易を通して共同体同士を繋ぐことに長けている。陸上での移動には困難を伴うものの、他にないその能力に他種族は頼っており、彼らはローウィン/シャドウムーアに不可欠な存在となっている。

幻触術

 メロウは外見と声を変える魔法「幻触術」を用いる。これは視覚的には自分自身の色を変え、変装したり相手を惹きつけたりすることができる。一方で声の幻触術は操りの戦術としてだけではなく、意思疎通の補助的な手段としても用いられる。時にメロウは陸生種族に対しても声の幻触術を使用し、感情に微妙な影響を与えたり交渉や物々交換に役立てたりする。こういった幻触術は他のメロウには容易に認識され、効果はない。そのため同族間では言葉に感情的な意味を加えるために用いられる――メロウだけが認識できるコミュニケーションの層だ。

 シャドウムーアのメロウは幻触術をほぼ詐欺にのみ利用する。彼らは声を変化させて意志の弱い者を誘惑したり操ったりする。また幻影を作り出して嘘を売りつける、不正行為を隠蔽するなどもある。これらの幻影は水魔法から派生したもので、よく見ると色とりどりの霧のような外観をしている。

ローウィン
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アート:John Tedrick

 ローウィンのメロウは、公正な交易に支えられた上品な共同社会を標榜している。商人として歴史を持つが、その中立的な社交の手腕と幻触術によって交易人や特使としても優れた能力を発揮する。彼らは商才に長けて外交的で、とらえどころがなく、公平さと規則に固執する――その中には、自分たち自身が恣意的に定めて背負うものもある。

歴史

 ウーナの時代、ローウィンのメロウは他種族よりもエルフの暴虐を巧みに逃れていた。エルフは渋々ながらも彼らを交易の相手とみなし、安全と引き換えにメロウ独自の長所を帝国の連携に役立てていた。だが時折エルフ社会は欺瞞の疑いのある商人へと力を見せつけるために、残忍に殺戮することもあった。

 ファイレクシア人が襲来した時、ローウィンのメロウは水中にいれば安全だと傲慢にも信じていた。だがそうではなかった。彼らは適切な防御手段を持たず、気がつけばファイレクシア人のなすがままにされた。多くのメロウがワンダーワインの最深部へと逃げざるを得なかった。

 ローウィンのメロウは今や小規模な共同体となり、それとともに特権階級意識を強めている。彼らは自分たちの再興に力を尽くしている――故郷を再建し、再び数を増やし、ファイレクシアの侵略以前に維持していた生態的地位に戻ろうとしている。

社会

 ローウィンのメロウは「群れ」と呼ばれる大規模で独立した徒党を組んでいる。各群れは独自の体裁や慣習、そして幻触術を擁し、大きな誇りを持ってそれらを維持している。群れの内には精鋭あるいは王族という概念があるが、それは血統ではなく美徳の実践と指導力に基づいている。彼らは商取引、交易、水運といった特定の分野を独占するために他の群れや他種族と競い合う。富は成功の証とみなされるが、彼らは公正な取引にも大きく重きを置いており、詐欺行為で金を手に入れようとする者を敬うことはない。

 ローウィンのメロウは川岸に小さな店を構え、それらは他種族が立ち寄って商売をする場所となっている。店はしばしば飾り立てられて厳重に警備され、幻触術と信頼性で顧客を引き付けようとしている。

 どういうわけか、ローウィンのメロウは傲慢でありながらどこまでも丁寧な態度を貫いている。何事も遠回しで繊細であり、同じメロウ以外がその二枚舌を看破することは不可能に等しい。それは彼ら自身の文化に深く根ざしているだけでなく、読み取りにくい表現によってぼかされ、かつ水中での生活という文脈を含むためだ。彼らはしばしば陸生種族のために物事を平易に説明する必要性を感じるが、互いの間では、特に競争相手の群れのメロウに対しては何もはばからない。競い合う精鋭同士の会話は、傍観者からは礼儀正しいお喋りにしか聞こえないかもしれない。だが事情を知る者にとっては、悪意のヴェールをまとう極めて個人的な侮辱の応酬なのだ。

シャドウムーア
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アート:John Tedrick

 シャドウムーアのメロウは日和見主義だ。彼らは詐欺と不正で悪名高く、罠や巧妙な策略を駆使して思い通りに物事を運ぶ。この次元で腕力や権力が最も強い種族ではないが、最も賢いことを誇りとしており、それを用いて自分たちの利益とすることに何のためらいもない。

歴史

 ウーナの時代、シャドウムーアのメロウは容赦なき腐肉食獣といえた。彼らは陸の住民を溺れさせ、時には陸上を這いずり回って盗み、殺すことで知られていた。他者の富への嫉妬に苛まれ、どんな策略を使ってでもそれらを手に入れたいという深い欲望に突き動かされていた。

 ファイレクシアの侵略の間、シャドウムーアのメロウは他種族と同様に苦難を被った。彼らの策略、誘い込み、そして幻触術はファイレクシア人には全く通用しなかったのである。根っからの臆病者であった彼らは次元の地下深くに掘られた水路である「闇うねり」に逃れ、侵略が終わる時を水面下で待った。時が経つにつれ、シャドウムーアのメロウの身体は闇うねりの環境に適応するように変化していった――多くのメロウは新たな食物によって、体内に生物発光や毒すらも持つようになった。

 侵略の後、シャドウムーアの民は絶望に陥っていた。そのためシャドウムーアのメロウたちは、そのわずかな富や資源をだまし取るのがかつてないほど容易だと気づいた。だが同時に、次元における縄張りが縮小したことでシャドウムーアのメロウたちの標的は減り、メロウ同士の繋がりもかつてないほど薄れている。

社会

 シャドウムーアのメロウの多くは群れで活動し、詐欺を働いて共に富を蓄えている。多くの場合で彼らは略奪物を持って逃走するが、機会があれば犠牲者を水底へと誘い込んで溺れさせることもある。効果的な詐欺の手段を見つけると彼らは各地を巡り、地上の住民に悟られるまでそれを実行し続ける。

 シャドウムーアのメロウは様々な詐欺を働く。よくある詐欺は、増やして返すと約束して金をせしめ、持ち逃げするというものだ。偽物を売りつけて「強力な魔力を持つ」と主張するというのも一般的である。これは幻影魔法に支えられた嘘であり、買い手が視界から去るや否や消えてしまう。彼らが得意とする詐欺のひとつは、ボガートの装身具の模造品を作って「ボガート特有の悪意は全くない」ながらも同じ魔力を持つと主張することだ。特別意志の弱い陸生者を見つけたなら彼らはその者を魅了し、偽客として詐欺に協力させたり、直接盗みをさせたりする。そして詐欺が終わると、水に身を投げて溺死するよう命じるのだ。

 シャドウムーアのメロウの中でも、最も貪欲で強欲な者たちは富を独占するために単独で旅をする。無頼の悪漢から強迫観念的な蓄財家まで、彼らの性格は様々だ。こうした単独の放浪者たちは旅の達人でもある――川を飛び越え、闇うねりでも一切迷わず、井戸から飛び出すことさえ知られている。彼らは行く先々でもめ事を引き起こし、富を手に入れるのも失うのもたやすく、そして機転だけでかろうじて難を逃れる。

主要地点
ローウィン
  • ワンダーワイン川:ローウィンを横断する、曲がりくねった大河。川沿いにはメロウが交易や物資の貯蔵を行う拠点が散在する。シャドウムーアではワンダーブライン川として知られている。
  • ポリンジャー盆地:かつてはポリンジャー渓谷だったが、洪水に見舞われたことでメロウが流入し、保育所として再利用されるようになった。
シャドウムーア
  • 闇うねり:シャドウムーアのメロウが頻繁に探索する地下水路。一部はローウィンにも存在するが、こちらのメロウは絶対に必要な場合を除いて入ることはない。
  • ドルイム・カラド:シャドウムーア唯一の大きな地上港。メロウの交易の大半はここで行われているが、しばしばそれらは台無しになるため水は赤く染まっていると言われている。

エルフ

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アート:Sam Guay

 ローウィン/シャドウムーアのエルフは美を愛する理想主義者たちだ。自身の美だけでなく、周囲の世界の美も愛している。彼らはその短い生涯を、何か意義深いことを成し遂げるために捧げるという意識を持って過ごす。エルフはこの次元で最も影響力のある種族であり、自らの理想のために他種族の生活にも介入する。

ツキノテブクロとツキノヒカリ

 ローウィンのエルフたちは有毒植物ツキノテブクロを栽培しており、それを蒸留してツキノヒカリと呼ばれる毒を作り出す。これは少量でも巨人を倒してしまうほどの猛毒である。現在、暁光の宮殿に住まう完全者たちはツキノテブクロを栽培するとともにこの花へと宗教的な意味を与えている。ツキノテブクロは王家の衣装に取り入れられることもある。エルフの帝国は衰退したものの、彼らの刃は今なお極めて危険であることを示すさりげない行為だ。

アケノテブクロとアケノヒカリ

 アケノヒカリはシャドウムーアにおけるツキノヒカリの鏡映しであり、元々はシャドウムーアの最も暗い場所の奥深くでしか見られなかった。アケノテブクロはシャドウムーアのエルフにとって美の頂点とみなされ、蒸留されてアケノヒカリと呼ばれる薬になる。アケノヒカリは死そのものも含めたほぼあらゆる病を治すことができるものの、シャドウムーアのエルフたちはこの貴重な花の花弁一枚すら使おうとは考えていない――その途方もない美しさゆえに。生きているアケノヒカリは他の植物と同様にオーロラによって変化するが、摘み取ったならその姿を保持する。そのためローウィンにおいては非常に希少かつ貴重な素材となっている。

ローウィン
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アート:Evyn Fong

 ローウィンのエルフは概して残酷な優生学信者であり、劣等とみなす者たちを滅ぼすことで美の追求を目指している。彼らの現在の帝国は、領土と勢力の両方でかつての面影はないとはいえ、依然として強大な権力を維持している。一部のエルフは融和を模索しているが、大半は自分たちの望むようにローウィンを統治すべきだと主張している。彼らは依然として、秘密裏にではあるものの、かつて通りの価値観を抱き続けている。多くのエルフはその憎悪を隠すとともにシャドウムーアの民に向けている。自分たちの指導力の下で影の相が滅ぼされたなら、すぐに支配力を取り戻せると期待してのことだ。

歴史

 ウーナが破滅するまで、エルフはローウィンにける事実上の支配権を握っていた。だが生き残ったエルフは、ライズを除いて誰もその時代を覚えていない。かつて彼らは様々な氏族に分かれてこの次元を支配し、それぞれが独自の残虐性を持っていた。特にしばしばボガートを襲撃した。「足の底の饗宴」の際に起こったそれは有名なひとつである。振り子の年にローウィンとシャドウムーアが融合するとエルフ社会は分断され、彼らは暗闇を貫くことができなくなった。それでも、数え切れないほどの年月に渡って他種族から略奪をしてきたエルフたちは、莫大な資源と残酷な手段を用いて権力を維持した。

 ファイレクシアの侵略はエルフの帝国の支配へと他に類のない被害を与えた。それまでの40年間でエルフの権威は衰えつつあったとはいえ、ファイレクシア人はローウィンにおける力の不均衡を支えてきた基盤の多くを破壊した。エルフの権力が空白となったことで他種族は勢力を拡大し、先祖代々の土地を奪還し、自分たちの主権を取り戻した。次元全体の力の均衡が回復を始めるとローウィンのエルフたちはうわべの体面を維持し、壊滅的な損失の影響を軽減するために団結した。そしてそのために、彼らの広大な影響力のネットワークが犠牲となった。

 現在、エルフの封建的支配は主に儀礼的なものと化しており、生存の手段として光り葉の森と結びついている。内心では、ほとんどのエルフは今なお古き理想に固執している。だが贅沢な生活を維持するために近隣との協力が不可欠となったため、公然と残虐な行為に出ることはできない。彼らはローウィンの住民と戦うのではなく、新たな目標を見出した。エルフの指導者である高位完全者モーカントは、エルフの権威の下に民を結集してシャドウムーアの存在を終わらせようとしている。

社会

 かつてローウィンのエルフ社会は肉体的美しさを、つまり傷のない美を非常に重視していた。これは彼らの階級制度に反映されており、最も完璧な肉体を持つ者だけが権力の座についた。だがファイレクシア人がもたらした社会の荒廃は、この階級制度を名ばかりのものへと崩壊させた。現在ではその理想と社会秩序の停滞を反映するように、彼らの地位は世襲制となっている。エルフは封建領主の下に組織され、各領地の長は高位完全者モーカントに貢物を納めることが期待されている。次元がローウィンとシャドウムーアに分かれたことで各領地に独自の規則や慣習が生まれ、時には密かにエルフの王権を主張するようになった。それでもなお、美を重んじた古の階級制度の多くの用語は生き残っており、かつての秩序に固執する者たちは再び統治できる機会を待っている。

用語
  • 眼腐り:エルフが醜いとみなす者を指す言葉。元々は容貌の醜いエルフやエルフ以外の者を指していた。エルフの権力が衰えるにつれてこの言葉は用いられなくなり、今では復活派の間で密かに囁かれるのみとなっている。
  • 無欠者:元々は美しいエルフの最下層を指す用語。現在では他種族の名士に対しても限定的に用いられる。そのためエルフ社会においてこの言葉は意味をほとんど失い、高い地位に達していないエルフの同胞を指す中立的な言葉とみなされている。
  • 清廉者:エルフ社会において、清廉者は新たな秩序における表向きの顔である。使者にして高官であり、指導者たちの今なお傲慢で差別的な性質を覆い隠す役割を担っている。
  • 至極者:かつては猟団の長を務めていた少人数の集団。現在では小さな土地を支配し、森の中の宮殿でわずかに残る配下を指揮している。狩猟の歴史は今も生き続けており、実際、彼らの家族は娯楽として獲物を狩っている。とはいえ他種族の駆除は終わりを迎えた――少なくとも公的には。
  • 完全者:エルフ社会における最高の栄誉。現在では特に重要な権力を継承した者のみが持つ称号。光り葉の宮殿の君主たちとその最高位の配偶者や役人が含まれる。
シャドウムーア
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アート:Evyn Fong

 無関心と悪意に取り囲まれながらも、シャドウムーアのエルフは美と自然界の守護者である。彼らの役割はウーナの時代から変わっていないものの、見守る領域は著しく縮小してしまった。シャドウムーアのエルフは美を記録している。だが彼らの美の稜堡たる安寧砦は極めて数が少なく、その活動はかつてないほどの危険にさらされている。それでもこの苦境は彼らの士気をくじくのではなく、むしろその決意を強めている。ある地域がローウィンからシャドウムーアへ移ると、エルフたちはどんな危険を冒してもその地域に美を探し求めることを自らに課す。

歴史

 ウーナの時代、シャドウムーアのエルフたちは、骨董品や美しいものを探し求めて次元を彷徨うことに満足していた。英雄たちがウーナとその陰謀に終止符を打とうとする時には、シャドウムーアのエルフたちもまた立ち上がった。ウーナの没落における彼らの役割は明白だった。マラレンとライズの両名が重要な役割を果たしたのである。元々ウーナの分身であったマラレンは、ウーナの後任として妖精の女王となった。だがウーナが復活する兆候が少しでも表れたなら、猛毒のツキノヒカリで自分を殺して欲しいと彼女はライズに願った。

 ファイレクシアの侵略における猛攻の間、シャドウムーアのエルフたちは容赦ないゲリラ戦術を用いて安寧砦が陥落するまで勇敢に戦い、故郷をファイレクシア人から守り抜いた。エルフたちには次元の各地から収集してきた膨大な数の美しく強力な魔法の品々があった。領土こそ失われたものの、それらの力によって彼らは民の命を守ることができた。今、エルフたちは再び支配権を確立しようとしている。

 侵略以来、シャドウムーアのエルフたちは混沌の中で安定した社会を築き上げている。安寧砦の数は少ないものの物資は豊富で、彼らの都市はシャドウムーアで最もよく保たれている。

社会

 シャドウムーアのエルフたちは複雑な社会階層を重視していない。その者の価値は、美の維持に向けた努力と献身によって決まるのだ。実際、エルフたちは英雄的行為そのものを美しいとみなしている。ローウィンの存在を知ると、エルフたちは次第に興味を増していった。光と影の境界の先にはどのような美があるのだろう?

 ローウィンの土地と文化を研究する者たちは「花の探求者」と呼ばれている。これは宗教的な地位に近く、彼らはオーロラの彼方にある美の物語で安寧砦の聴衆を魅了する。また彼らは黄昏の聖遺を携行することを許された唯一の存在であり、変化することなくオーロラを渡ることができる。美しいものを求めてシャドウムーアを旅するエルフ、守美者とともに花の探求者は最も信頼され崇拝されるエルフである。

 シャドウムーアのエルフは他種族を蔑視してはいない。それでも自分たちは道徳的に優れた存在であり、他よりも崇高な使命を帯びていると考えている。この態度はローウィンのエルフにも向けられており、偏見のせいで決して潜在能力を発揮できない、悲しく失望させられる存在として見ている。

主要地点
ローウィン
  • 暁光の宮殿:エルフ最後の宮殿。光り葉の森の奥深くにひっそりと建つエルフの都リス・アラナに残っている。高位完全者モーカントがここを統治し、帝国の復興を企てている。シャドウムーアではカエ・ウリオスとして知られている。
  • ナースの墓所:残忍なエルフの狩人ナースはライズに殺され、その遺体はとある木立に埋葬された。その木立は荒れ果て、あらゆる猛毒植物が生い茂っている。伝説によるとナースの魂は今も復讐に燃えているという。
シャドウムーア
  • カエ・フルー:シャドウムーア最大の安寧砦であり、軋み森の中にある。ウーナの滅亡後、あらゆる氏族のエルフがこの安寧砦の建設に協力した。
  • アケノテブクロの木立:軋み森の奥深くにはアケノテブクロの木立がある。氏族を問わず、シャドウムーアのエルフでも最高の精鋭たちによって常に守られている。

炎族

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アート:Iris Compiet

 炎族は炎と生ける石でできた情熱的なエレメンタルであり、この次元との強い繋がりを持つ。彼らは自己実現を深く重んじ、大エレメンタルと意思疎通を行うこともできる。炎族は共同体を形成し、また共同体に参加することもある。だが独自の道を切り開くことを好む傾向があり、しばしば放浪するか根無し草のように生きる。彼らは知識と理解を追い求めている。それは周囲の世界とそこに秘められた神秘に触発された欲求である。

凍炎族と燃えがら

 凍炎族はファイレクシア侵略の恐怖から現れた。感情が熱くなりすぎた炎族から生まれたのだ。炎を抑えられなかった彼らは自分自身を抑え込み、内省し、熱を消し去り、冷徹な論理へと意識を向けた――まるで星々が内へと自壊するように。そして熱のない転置体と化した。彼らはしばしば世界の現状と、それを変えうる方法に焦点を向けている。また凍炎族は他にない力に恵まれており、炎族の同胞と共に作り出す武器には、炎族の鉄さえも凍らせる氷の魔法が込められている。

 ローウィンにも凍炎族は存在するが、シャドウムーアこそが彼らの真の故郷である。歴史的に、シャドウムーアの炎族は「燃えがら」として知られていた。彼らは煙を上げる骨のような存在であり、炎はほとんど保つことができない。侵略後、その数は著しく減少してしまった。ファイレクシア人は彼らの存在に対する現実的な脅威であり、そのため多くの燃えがらが虚無主義的な自身の生き方に疑問を抱いたためである。

ローウィン
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アート:Pete Venters

 ローウィンの炎族は自己実現と発見という理念に深く心を砕き、情熱を傾けている。彼らはしばしば次元を旅し、原初の彼方へと足を踏み入れる者すらいる。戦士や魔術師の中には「炎の道」を歩む巡礼者もいる。これは理解を探求する究極的な献身の形である。

歴史

 炎族の社会が記憶する限り、彼らはエレメンタルとの繋がりを共有し、自然界の代弁者を務めてきた。にもかかわらず、エルフたちは炎族が森や草原を焼き尽くすと恐れて彼らを忌み嫌っていた。エルフの征服によって炎族は徐々に次元の隅へと追いやられていった。

 ファイレクシアの侵略では多くの炎族が侵略軍によって命を落とした。彼らは逃亡して自身を失うよりも、栄光の中で燃え尽きることを選んだのである。侵略によって大地が汚染されると多くの炎族は次元の各地から呼び声を感じ、炎をまとって素早く前線へと向かった。だが戦況が深刻化するにつれ、多くが地の底へと姿を消した。

 侵略が終結しても、多くの炎族は冬眠状態のままだった。だが彼らはゆっくりと再燃しつつある。長い眠りの後、大地との繋がりが強まった状態で目覚めた炎族もおり、その約半数は凍炎族となって戻ってきた。冬眠が彼らの姿を変化させたのである。だが地中で眠りに閉じ込められたまま行方不明の者も多い。

社会

 炎族は「ゆらめき」と呼ばれる小さくも変化に富んだ町に集まる。彼らには放浪癖があるため、この町が大きくなりすぎることはない。代わりに彼らは祝祭や儀式のような大規模な催しに集まり、交流を確認したり知識を共有したりするのを楽しむ。これらはカルデラや焼け落ちた陥没穴、エレメンタルの揺らぎや次元の変化が起こる場所で行われることが多い。炎族は大地との繋がりによって自然とそこに呼び寄せられるのだ。

 炎族はその多くが鍛冶師、伝令、そして捜査員といった役割を担う。彼らの家々は巨大な鍛冶場のようで、ローウィンの民のために鉄の武器や鎧や道具を生産する。彼らは大エレメンタルとの仲介役を務め、また大地を荒らそうとする者たちと戦う。まだ冬眠から目覚めていない行方不明の炎族を探して、この次元の変化を探索・調査する者もいる。

炎の道

 炎の道は炎族にとって極めて重要な過程、肉体的かつ精神的な自己発見の道である。炎族にとって自己実現の探求は生き方そのものなのだ。それは内省と魂の探求から始まり、そこから旅と世俗的な知識へと導かれ、最終的に赤、黄、白の炎として物理的に顕現する。炎の道には3つの形態があり、「焼却者」「業炎態」「魂炊き」と呼ばれている。ある状態から次の状態への移行には、世俗的な知啓や自身の感情への理解以上のものが求められる。内なる炎とより深く交わるために、瞑想に時間を費やすことも必要とされる。かつては第四の道が存在するという噂もあった。だが現代の多くの炎族は、凍炎族こそかつて知られていなかった第四の道だと考えている。

シャドウムーア
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アート:Aurore Folny

 シャドウムーアの本来の炎族は「燃えがら」だった――燃え尽きた炎族の残骸であり、骨だけで不気味な、炎を保てない存在だった。だが現代において、シャドウムーアはこの次元の凍炎族の多くの住処となっている。彼らはローウィンの炎族と同様に自己実現を追い求めているが、自らの悲嘆を癒す形に自身と周囲の世界を積極的に作り変えることでそれを実現している。彼らは物事のありのままを理解することよりも、世界を自分たちの未来像に合うように変えることに重きを置いている。この過程は時に残酷であり、しばしば復讐の悪循環を生む。だがシャドウムーアの炎族はそこに到達する手段よりも、個人的な目標を重視している。

歴史

 自分たちの炎は遥か昔に「鎮火」と呼ばれる出来事によって失われた、シャドウムーアの炎族はそう信じている。それは深い絶望と悲嘆の源であり、この出来事によって彼らは「悲しみの道」へと突き落とされた。この道は、自らの炎を再点火しようと躍起になる中で自滅へと向かう悪循環である。ウーナが破滅し、ローウィンとシャドウムーアが融合した後も、多くがこの悪循環から抜け出せずにいた。

 ファイレクシアの侵略は、これらの燃えがらたちを否が応でも自らの存在と向き合わせた。侵略は恐ろしく破壊的なものであったが、同時に彼らへと自らの存在を省みる機会を与えた。燃えがらたちは戦いに嗜虐的な喜びを見出し、怒りを武器としてファイレクシア人を滅ぼしながら、自らの目的意識を取り戻した。絶望に浸るのではなく、望む世界を形作るために自身の力を使うことができるのだと多くの者が気づいた。

 侵略が終わりに近づくにつれ、この変化によってもたらされた新たな炎に満足し、凍炎族へと変化する者たちが現れた。そうでない者はローウィンへと帰還し、温かな炎を取り戻すための長く困難な過程を開始した。

社会

 シャドウムーアの炎族はローウィンの炎族よりも大規模な集落に集まり、旅をする機会は少ない。彼らはシャドウムーアの社会と地形を自分たちの欲求に合うように作り変えようと意気込んでいる。ファイレクシアの侵略は大地に深刻な被害をもたらしたため、新たに設立された集落はその混沌の中に何らかの意味を見出そうとするようになった。

 ローウィンの片割れ以上に、シャドウムーアの炎族は鍛冶師である。彼らは主に武器を製造してはシャドウムーアの隅々まで送り出している。これはシャドウムーアの未来を方向づけ、民が炎族に依存するような道へといざなうための試みである。その未来が訪れるまで、シャドウムーアの炎族は市場の民のために喜んで武器を製造するのだ。

主要地点
ローウィン
  • タヌフェル山:ローウィンにおけるすべての炎族の誕生の地にして帰るべき場所。雪をかぶった山頂は凍炎族の住処であり、ワンダーワイン川の水源でもある。シャドウムーアではクルラス山がこれに相当する。
  • 背骨岩の小山:ブレンタンの小村に隣接する丘。自身もドラゴンに生まれ変わることを願うドラゴン崇拝者たちが住む。
シャドウムーア
  • ビロウラス:追放された炎族の村。ここでは終末論のカルトが預言を行っている――クルラス山がやがて噴火し、渦巻く灰の雲によって世界が終わるのだと。
  • 北方の尾根:侵略樹の枝が大地を破壊して形成された凍てつく断崖。崖の縁に点在する家々には凍炎族の群れが住み着いている。

フェアリー

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アート:Omar Rayyan

 フェアリーは謎めいた悪戯者だ。気まぐれで茶目っ気があり、取るに足らない悪だくみに生きている。彼らは夢に魅了されており、幻影の魔法を振るう。すべてのフェアリーは元々、女王ウーナから生まれた。ローウィン/シャドウムーアでも最古にして全知、他種族が目にしたことのない存在である。フェアリーたちは眠っている生物の精神から秘密や「夢の材料」を引き出してウーナに力を与え、支えていた。歴史を通して、フェアリーたちはエレンドラ谷と呼ばれる山間の峡谷に住んでいる。この谷は女王の強力な幻触術によって守られており、フェアリー以外の者が見つけることは不可能に近い。

 フェアリーはローウィンとシャドウムーアでほとんど変化はなく、外見と悪ふざけの残酷さだけが異なる。フェアリーたちは両方の相で共通する歴史と文化を持ち、ウーナによってオーロラの影響から大体は守られている。

歴史

 かつてローウィン/シャドウムーアを秘密裏に支配していた大妖精、ウーナの歴史についてはほとんど知られていない。この次元は数々の破滅的な出来事に見舞われてきたが、フェアリーたちは時を経てもほとんど変わっていない。大オーロラの時代でさえ、彼らの悪ふざけは相変わらずだった。

 だがマラレンが――自意識を得たウーナの化身が創造されると、フェアリーとその社会の安定は崩れ始めた。マラレンはウーナに逆らい、最終的に女王を殺害して自身がその座についた。ウーナが死んだと思われた瞬間、その魂は砕かれて大地に投げ出された。そして後に「オーロラの女王の木立」となる場所が形成された。

社会

 マラレンは新たな大妖精として、エレンドラ谷を拠点にこの次元を管理している。下級のフェイはすべて花から生まれ、平均寿命は3年ほどだ。ローウィンのフェアリーの多くはアウラ女王を崇拝している。アウラ女王はウーナを模倣し、フェイたちの集合的な信仰によって力を獲得することで自らは女王であると宣言した。マラレンはこの成り上がり者を排除することを躊躇している――そうしたなら自身もウーナのようになってしまうためだ。フェアリーは仕事のような愚昧な物事には関心がなく、夢の材料と情報のやり取りで生きている。どれほどいたずら好きで気ままなフェアリーでも仲間から離れると苛立ち、完全に切り離されたなら次第に絶望へと陥る。

フェイの魔法

 フェアリーの魔法は幻影と誘惑を中心としている。彼らの幻触術は罠や逃走、あるいは単に楽しみのためなどあらゆる目的に用いられる。

  • 幻影の幻触術:幻影の幻触術は生物や同じフェアリーへと施すものだ。フェアリーは幻影を用いて相手を騙し、間違った相手に恋をさせたり、崖から落下させたりすることができる。彼ら自身も、周囲や衣服を美しく見せるためにしばしば幻触術を用いる。
  • 睡眠の幻触術:眠りをもたらす魔法はフェアリーの得意技だ。睡眠の幻触術は生物に眠気を与え、しばらくの間一種の夢遊病状態に陥らせた後で完全な眠りに落とす。相手が適切に罠にかけられて眠気を催すと、他の状況では明かさないような情報をフェアリーは聞き出すことができる。眠りに落ちる前にこの眠気から抜け出すには強靭な意志が必要とされる。
  • 妖精の輪:毒キノコ、花、あるいは珍しい岩でできた小さな輪。他の種族には知られておらず、瞬間移動の中継地点として機能する。一度使用するごとに回復のために数分間を要する。歴史的には、全知全能の女王の監視下でフェアリーたちによって維持されてきた。
  • 夢の材料:フェアリーたちは女王から授かった古く強力な幻触術を用いて、夢からきらめくエネルギーを抽出する。そして蜂が花粉を運ぶようにそれを持ち運ぶ。フェアリーはこの魔法を用いて女王と彼ら自身を支え、力づけている。
主要地点
ローウィン
  • プリゼイル谷:偽りの女王アウラとその支持者たちの居城。
  • ウェアリーワインドの大枝:とある滝の下にひっそりと佇む、ローウィンのフェアリーたちの集いの場。大小様々な陰謀がここで企てられている。
シャドウムーア
  • エレンドラ谷:かつてのウーナの安息所であり、現在はマラレンが居住している。その美を破壊しようとするシャドウムーアの民から守るために幻触術が施されている。
  • オーロラの女王の森:花咲く木々の奇妙な森。軋み森の奥深くに埋葬されたウーナの花の残骸から育った。

巨人

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アート:Aaron Miller

 巨人は巨体の人型生物であり、ほとんどの時間を睡眠と休息に費やしている。彼らはこの次元の他種族とはほとんど関わりを持たない。その進路を横切ることは、彼らがこちらに気づいていようといまいと極めて危険である。

ローウィン

 ローウィンの巨人たちは冷淡で、この次元の他種族の日常生活には無頓着である。他種族と繋がりを持つのは好奇心を満たすための短い交流の時のみだ。一箇所に定住すると決めたなら強い縄張り意識を持ち、一時的な住処に侵入する者には襲いかかる。とはいえ、遊牧の民や探検家として世界を放浪する巨人も増えてきた。そのような旅をしてきた彼らは賢明であるとみなされ、他種族はその知識や次元中から収集した貴重な品々を求めて彼らを探し回る。巨人たちは計り知れないほど老齢であり、その年齢はツリーフォークに次ぐ。

名の眠り

 ローウィンの巨人の眠りは「名の眠り」として知られている。これはトラウマや充溢といった、生涯における不意の変化によって引き起こされる。年若い巨人たちはこの眠りによって姓を得るため、この現象は名の眠りと呼ばれている。この時に見る夢は巨人に方向性と目的を与え、夢の中での経験に基づいて新たな生涯を歩み始めることもある。目覚めた時に新たな姓を受け入れる巨人もいれば、名の眠りで得た姓を秘密にしたまま家族や一族の姓を選び続ける者もいる。

巨岩

 ローウィンの巨人の休息地は巨岩の存在で認識できる。これは遠くからでも見える巨大な石の門だ。彼らの縄張りの証であり、その地をさまよう者が不用意に巨人の怒りに遭わないようにという彼らの厚意でもある。巨岩は巨人がそこを去っても取り除かれることはない。つまりそこには生きている巨人がいるか、かつて巨人の住処であったことを示す。後者にはしばしば素晴らしい宝物が眠っている。

シャドウムーア

 シャドウムーアの巨人は冬眠者であり、何週間も続く眠りによってその身体は苔や植物に覆われている。ローウィンの巨人とは異なってシャドウムーアの巨人は悪意よりも怠惰が勝り、極限まで追い詰められない限りは戦わない。彼らは物事にひどく無頓着であり、進行方向に村を見つけても一歩たりとも避けようとはしない。同時にシャドウムーアの巨人は自然との繋がりが非常に深く、他の生物が畏敬の念を抱くような方法で荒魔法を操ることがしばしばある。

冬眠

 シャドウムーアの巨人たちは眠りを好むため、その身体は歳月とともに萎縮していく。筋肉は魔法によって保たれるが、皮膚は縮んで筋肉が目立つようになる。

ツリーフォーク

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アート:Vincent Christiaens

 ローウィン/シャドウムーアのツリーフォークは人型の特徴を持つ知性を持つ樹木だ。彼らはこの次元に生息する最古の生物でもある。ツリーフォークはごく普通の樹木として生を開始するが、「目覚めの時」と呼ばれる出来事を通じて知性と移動力を獲得する。

ローウィン

 ローウィンのツリーフォークは、若いうちは故郷の森に留まる。彼らは木々や他のツリーフォークの世話をし、年長者から学ぶ。そして成長すると外の世界へと旅立ち、導きを必要とする者を探し求める。とはいえすべてのツリーフォークが親切というわけではない。過去には彼らは暴君としてこの次元を支配し、知啓と伝統をもつ自分たちは、より劣る生を送る者たちを支配する権利があるとみなしていた。

 ローウィンのツリーフォークには様々な種類が存在し、樹木の種類に応じて異なる性格を持つ。

  • トネリコのツリーフォーク:戦士にして守護者。トネリコのツリーフォークはローウィンの森と民を守る。最も英雄的で高貴なツリーフォークであるが、その怒りは恐れられている。
  • 黒ポプラのツリーフォーク:癒し手にして被虐愛者。彼らは他のツリーフォークの苦痛を吸収し、次第にその経験を歪んだ形で渇望するようになる。
  • ナナカマドのツリーフォーク:機械技術を嫌う祟り師と呪詛術師の一団。彼らはあらゆる形態の金属を断固として嫌っており、その怒りをファイレクシア人にぶつけて幾つもの軍勢を滅ぼした。中でも「朝焼けの茂み」知られる一団は、かつてウーナの居場所の発見に尽力した。女王が破滅してからというもの、彼らはあらゆる技術の破壊にますます執念を燃やしている。
  • イチイのツリーフォーク:最も希少なツリーフォーク。ウーナの時代の終わりには、コルフェノールという名のイチイのツリーフォークが一体だけ存在していた。そしてその唯一の若木もウーナを倒した際に滅ぼされた。現在では絶滅したと噂されているが、ローウィンの大森林にて新たなイチイのツリーフォークが目撃されている。
シャドウムーア

 ローウィンとは異なり、シャドウムーアのツリーフォークは庇護者として他種族と関わることはない。こちらの相における彼らは復讐心に燃える守護者であり、シャドウムーアの住民がもたらす荒廃から自然を守る。彼らの多くは顔を失っており、人型の特徴はわずかに残るのみだ。また彼らはローウィンのツリーフォークのような明確な社会秩序も持たず、一体一体が孤独な生活を送っている。樹木の種類は様々だが、暴力的な生き方へと傾倒する中でそれぞれに特有の差異の多くは失われてしまった。

大エレメンタル

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アート:Ryan Pancoast

 大エレメンタルは思想や概念の体現だ。彼らはしばしば奇妙で気まぐれ、あるいは恐ろしい存在である。通常はこの次元の多くの生物よりも遥かに巨大だが、望めば小さな姿を取ることもある。彼らは自然世界の力であり、原始的で制御はできない。また定命の道徳観念を超越した存在であり、善でも悪でもない。炎族は大エレメンタルと特別な繋がりを持っているが、その意思疎通はしばしば本能と憶測が混じったものである。

ローウィン

 ローウィンの大エレメンタルは抽象的な概念が具現化した存在だ。彼らは一見して、様々な動物が何の脈絡もなく無秩序に繋がったような姿をしている。

シャドウムーア

 シャドウムーアの大エレメンタルは不穏な思想が具現化したもので、恐ろしい姿をとる。しばしば悪夢のようで、シャドウムーアの過酷な環境が生み出した大いなる恐怖を模倣しているようでもある。彼らは冷淡で意思疎通をしようとはせず、他種族の存在にも動じず、自らを生んだ大地の奔放な支配者としてふるまっている。

変わり身

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アート:Ilse Gort

 多相の生物、変わり身は自分の思うままにクリーチャーや植物の姿へと変身することができる。水晶の洞窟ヴェリズ・ヴェルで生まれた彼らは、実のところ変装は上手ではない――乳白色をした半透明の皮膚はそのままのため、すぐに見破られてしまうのだ。それでもその姿のおかげで彼らはローウィンの他種族と融和し、絆を結ぶことができる。変わり身に対する見方は種族ごとに異なるが、友好的な多相生物の彼らを軽蔑する者はエルフを除いて存在しない。変わり身はファイレクシア人との戦いで頼もしい味方となり、今では彼らは幸運の使者と言われている。シャドウムーアに足を踏み入れた変わり身はミミックと化す。犠牲者が愛する者の姿を真似てその命を奪う残酷な生物だ。だがウーナが破滅した後は、変わり身たちは望まない理由でシャドウムーアに追いやられない限りはローウィンに留まっている。

その他のクリーチャー

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アート:Daren Bader

 ノッグル、ボーグル、アウフ、デュルガー、ハッグ、インプ、トロールなど、ローウィン/シャドウムーアには多種多様なクリーチャーが生息している。そのほとんどはシャドウムーアの奥地で見られるが、相の変化とともにこれら奇妙なクリーチャーがローウィンにも現れるという噂が流れている。

 エイルドゥとイシルーの出現により、石人と呼ばれる石のクリーチャーが大地を彷徨うようになった。彼らはこの次元を守護するエレメンタルに神秘的な手段で仕えており、道を切り開き、手の込んだ尽力でローウィンとシャドウムーアの境界を管理している。


 ローウィン/シャドウムーアの知識を身につけたなら、『ローウィンの昏明』でこの次元の謎に踏み込む時に備えましょう。このセットのメインストーリーは12月8日からMTGStory.comで公開されます。

 『ローウィンの昏明』はお近くのゲーム店Amazonなどのオンライン小売店、その他マジック製品を取り扱う店舗で今すぐご予約いただけます。案内にご参加いただき、ありがとうございました。この次元の奇妙で素晴らしいものすべてを紹介できて光栄です。それでは、向こうの相でお会いしましょう!

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