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翻訳記事その他
プレインズウォーカーのためのドミナリア案内
2022年8月22日
(編注:ロイ・グレアム/Roy Grahamとイーサン・フライシャー/Ethan Fleischerに加えて、ジェンナ・ヘランド/Jenna Hellandとジェリット・ターナー/Gerritt Turnerもウィザーズ・オブ・ザ・コースト社から離れる前にこの「プレインズウォーカーのためのドミナリア案内」に貢献してくれた。)
ドミナリアへおかえりなさい!
ドミナリアは古き次元であり、その土のそこかしこには古くからの争い、忘れられた遺跡、祖先の墓所が残されているように思われる。自然災害、凄まじい呪文、時空の裂け目にまでも叩きのめされながら、この地はこれまでにない強さで立ち上がっている。我々が帰還するドミナリアは、再生と若返りの時代にある――活力に溢れ、人々の腹は満たされ、動植物は繁栄している。侵略者候補にとってはそそる宝、だがドミナリアの住民たちはその力の極地にあり、刃や牙や呪文を用いて故郷を守る構えができている。
鮮やかな再生
環境が最悪であった頃のドミナリアは塩の平原や酸の湖、稲妻の嵐、黄塵、その他さらに悪いものに覆われ、ほぼ人が居住できるような場所ではなかった。創意工夫や呪文術でその中を生き延びてきた者たちの文化的遺産は、日々の必死の奮闘の中にほとんど忘れ去られてしまった。
そして複数のプレインズウォーカーの英雄的犠牲によって「大修復」が起こり、ドミナリアの傷は癒された。生命力が再び流れ、大地は超自然的な速度で回復していった。環境、社会、国家は修復された。多くの街が再建され、交易路が復旧した。数十年のうちに、ドミナリアはこの数世紀でも最も健全な状態となった。
ベナリア
ベナリアは自然と建築の美を誇る地である。陽光を浴びる広大な穀物畑の中を川がうねり、白い石灰岩の塔と鮮やかなステンドグラスの街が点在する。ほんの一世紀にも満たない昔、この偉大な国家は崩壊の危機にあり、人々は散り散りになり、輝ける首都は塩にむせる廃墟と化していたとはにわかには信じがたいだろう。今日ではベナリアの七侯家が今一度、ドミナリアでも最も繁栄する強大な国家のひとつを統べている。新たなベナリアは揺籃期にあり、千年の歴史を誇る英雄的な祖先と勇敢な物語を生かし続けねばならない、ベナリア人はそれを鋭く自覚している。だが彼らは同時に、誇り高き人々でもある――自分たちはその任務を受けるにふさわしいと思うほどに。
七侯家
ベナリアは七つの貴族一家で構成される議会が統べており、その権限は年周期で定期的に入れ替わる。ベナリアの有力一家はどれも往時の英雄へとその血統を遡ることができる――例えばキャパシェン家の祖先には古のシオールタンの貴族や、ファイレクシアの指導者ヨーグモスを打倒した英雄ジェラードがいる。キャパシェン家は敬虔なセラ信者のアロン・キャパシェンを長としている。彼はまた若く大胆な騎士ダニサ・キャパシェンと、かの有名な飛翔艦ウェザーライト号の航海士と魔道士を務めるラフ・キャパシェンの父親でもある。
セラ教会
優雅に湾曲した塔が黄金の空に浮かび、その静謐さには重力ですら触れることは叶わない。敬虔な司祭らが美しい聖歌をうたう。翼を広げた天使たちが宙を駆け、弱者には優しき安らぎを、暴虐には速やかな正義をもたらす。これがセラ教会、その女神の記憶と模範を称える慈悲深き教団である。
神聖なる祝福
教会名の由来であるセラは正確には神ではなく、プレインズウォーカーであった――とはいえ当時、プレインズウォーカーと神は実質的にほとんど同じであった。天使たちを、天使たちの世界そのものを――セラの聖域として知られる人工次元を――創造したのは、プレインズウォーカーとしてのセラの力であった。セラは約八百年前に死亡したが、その際にサーシの大地へと自らの精髄を散りばめた。その精髄は今もサーシのセラ大聖堂を守っており、時折そこには新たな天使が姿を成すことすらある。
新アルガイヴ
新アルガイヴの大きな島はヤヴィマヤ、ラト=ナム、アルマーズ、ガルメニーとともにテリシアの群島を形成している。テリシアはかつてひとつの大陸であったが、兄弟戦争を終わらせたウルザの酒杯の爆発に砕かれ河期には氷河に削られ、洪水の時代には水浸しになった。テリシアには移民が何度も定住したため、アルガイヴ人は多様な人々で構成されている。人間、ドワーフ、コー、エイヴン、その全員がこの地を故郷と呼び、命をかけて守ることをいとわない。
アーギヴィーア
新アルガイヴ国家の首都アーギヴィーアは実のところ、その名を戴く二つめの都市である。元のアーギヴィーアは数百年前にファイレクシア軍によって破壊された。住民は皆殺しにされ、建物は全て破壊され、そして学術国家として最も悲劇的なことに、全ての書物が燃やされた――「スランの隆盛と崩落」ただ一冊を残して。やがて侵略の恐怖から十分に回復すると、アルガイヴ人たちはドミナリア全土でも最も要塞化した都市として故郷を再建した。今日、アーギヴィーアは城壁と銃眼の一大システムに取り囲まれている。それらは機械仕掛けとパワーストーンによって稼働し、想定されるあらゆる脅威に対して動き、対応することができる。
バルデュヴィア大草原
肥沃な土が広がるバルデュヴィア大草原は新アルガイヴの穀倉地帯である。この地域の住人のほとんどは農業か牧畜を営んでいるが、その慎ましい生活の裏には全てのアルガイヴ人が所持する高度な技術がある。ここでは最も慎ましい家でも、通常少なくともひとつのパワーストーンの破片が組み込まれており、鍛冶屋の炉や粉挽きの臼、農場の撹乳器といった商売道具の動力源として使用されている。
工匠
アルガイヴ人は歴史と、古のアーティファクトが明かす昔の人々の生き様に魅了されている。多くの考古学者たちが、兄弟戦争やファイレクシアの侵略時代の遺品を修復して動かせるようにすることに喜びを見出している。もっと前向きに考え、ウルザやミシュラやタウノスやアシュノッドといった革新者の足跡をたどる工匠たちもいる。工匠たちはパワーストーンに込められているエネルギーを用いて機械の像に命を吹き込み、強いエネルギーの光線を発射し、機体を宙に浮かび上がらせる。
構築物
アルガイヴ人たちは古代スランの構築物を幾つか修復して動かせるようにしており、また野心的な工匠たちは新たな設計を生み出してきた。沿岸部の都市バク=ファルはひとつの巨大な構築物の上に築かれており、津波の際には街を安全な場所へと運ぶ。新アルガイヴの空には有人と無人の羽ばたき飛行機械が飛び交っている。
トレイリアのアカデミー
トレイリアのアカデミーに属する魔道士や学者にとって、魔法というのは科学の一分野である。彼らの書物には不気味なルーンとともに複雑な方程式が書かれ、魔法のゴーレムだけでなく複雑な構築物を用いている。スズに含まれる青銅を製錬後に鉄に変換したなら、スズはどうなる? 電荷を導入したなら、水晶球の占術性能は向上するだろうか? トレイリアの人々にとって、これらの疑問は何ら奇妙なものではなく、分野が異なるものですらない――両者の答えが「爆発する」であるとたやすく判明したとしても。不老の大魔道士ジョダーは、他の問題に従事していない時にはしばしばアカデミーの広大な教室のどれかにて講義を行っている。
秘密の学派
トレイリアの学者たちの間には、影の中で活動する秘密の学派があるという噂が流れている。ミシュラこそが兄弟戦争における正義の側であると信じるミシュラ一派、そして遠い昔にドミナリアを滅ぼしかけたファイレクシアの悪魔ギックスを崇拝するギックス一派だ。彼らはファイレクシアの同調者たちであり、遺伝的および人工的に身体を改良することで人類を究極の神格化へ導くと信じている。だがトレイリアのアカデミーの高官たちは、そういった噂は怪談の類に過ぎないとして何ら真剣に受け止めてはいない。
ヴォーデイリア
ドミナリアには多くの大陸が、そして多くの異なる種族や国家が存在している。だが世界のほとんどは海に覆われており、白波の下の広大な領土はマーフォークのものである。秘密主義かつ誇り高い彼らは唯一の世界帝国を支配しており、部族と州の連合政府が貿易と共通の遺産によって結ばれている。この社会の中心はエローナ沖のヴォーダ海、ヴォーデイリア帝国にある。
水上の好機、深淵の敵
ヴォーデイリアのマーフォークたちはおおむね、地上の存在を自分たちの敵とはみなしていない。地上の住人が自分たちに害を成すのは可能ではあるが難しく、必要とあればヴォーデイリア人たちは海上交通を完全に封鎖することで報復できるためである。現在、ヴォーデイリア人は自分たちの海を平穏に航行するよう要求しているが、地上社会の政争には何ら関与していない。対照的に、マーフォークは他の水棲種族との何世代にも渡る抗争を繰り広げている――特に、冷たい水を好む謎めいた甲殻類種族ホマリッドと。
アーボーグ
アーボーグの島々はこの次元で最も穢れた場所のひとつである。広大な沼地はファイレクシア兵の残骸に満ちており、殺害された悪魔ベルゼンロックの要塞がそれを見下ろしている。アーボーグの足元の土もまた休むことはなく、灰の山やガスの噴出、時折の火山性の噴気孔が風景に点在している。このような場所であっても、ドミナリアには新たな生命がある――正確には「新たな」ではないが、少なくとも死後の生命が。眠れぬ死者の霊と、残るわずかな生者たちは、彼ら特有のやり方で、この世界の他の場所と同じくらいの活発さで、アーボーグの沼地にひとつの共同体を築いている。
不思議な住人たち
アーボーグに住まう霊のクリーチャーとわずかに残る生者たちは、異様な魅力を持つ集団である。彼らの多くはある意味、ただこの世界に生きようとする平凡な人々なのだ。彼らは市場や家々を、歩道や小舟を作っている。ただ彼らのほとんどは死んでおり、少々不気味というだけなのだ。だが他は、沼に棲む真の恐怖である――それら奇妙な死者たちのベッドの下で物音を立てる怪物たちだ。
ケルド
遥か北方の大陸アイスへイヴン、過酷な不毛の大地ケルド出身の荒々しいケルド人は、灰色の肌をした大柄な人間である。彼らはしばしば乱暴者の群れと、考えなしの蛮族と、あらゆる形の文明への脅威であると考えられている。だが実のところ、彼らには何世紀も昔に遡る深く豊かな文化があるのだ。大規模な荒廃に耐え、予言の黙示録を生き抜いてきた今日のケルド人は、輝かしい祖先や過酷な故郷のために、そして最強の勇者の名のもとに戦う。
大将軍ラーダ
ファイレクシアの侵略と大修復の結果として、ケルドは新たな青年期へと突入した。有力な指導者ラーダは英雄的な将軍とひとりのスカイシュラウド・エルフとの孫娘であり、ドミナリアの回復という新たな背景のもと、ケルドであることの意味を繋ぎ合わせ理解しようとしている。自分たちは無敵ではないとケルドは気付いており、今や彼らはケルドの炎に現代ドミナリアの力としての栄光を取り戻すための燃料を見つけねばならない。
シヴ
孤立した島大陸シヴは火山の熱に焼かれ、地熱の力によって常に形を変えている。シヴはドラゴンたちで知られており、彼らはその溶岩流や火山噴火、鋭く尖った峰をまさしく我が家としている。シヴのドラゴンたちの翼の影が投げかける影の下には様々な爬虫類種族やとりわけ賢いゴブリンの部族、そして遊牧的な文化を営む紅蓮術師と戦士の人間部族ギトゥが生きている。
マナ・リグ
マナ・リグは古代スラン帝国が築いた巨大な設備である。元はパワーストーン工場の原型として築かれ、後に工匠ジョイラが修復して自身の工房をそこに立ち上げた。ジョイラはマナ・リグ内部の仕組みについてドミナリアの誰よりも熟知しており、必要とあらばそれを用いて並外れた力を持つアーティファクトを作成できるだろう。
ラノワール
原生林が千フィートの高くにそびえる、広大で古いラノワールの森にあえて足を踏み入れようというよそ者は少ない。その木々の中には獰猛なラノワールのエルフたちが住んでおり、その野蛮な外見とよそ者嫌いの評判は、ほとんどの侵入者を森の影からも遠ざけている。だが実のところ、ラノワールのエルフは隠遁的な人々であり、慎重な訪問者は森に入ってもその住人を見ることなく立ち去ることができる。ラノワールのエルフが目撃されるのは、彼らが目撃されることを望んだ時である――しばしば、侵入者を怯えさせるために。
カヴー
カヴーは爬虫類に似た生物であり、非常に古い種と比較的最近作り出されたものの両方がドミナリアに存在する。彼らが最初に現れたのは数世紀前のファイレクシアの侵略時であり、ドミナリアのあらゆる自然が脅かされた時、突然この次元の生態系に組み込まれた。ファイレクシア兵にとって、カヴーはこの次元の他の野生生物よりも遥かに手強いものだった。現在ラノワールのエルフたちは、カヴーは女神ガイアがドミナリア防衛のために差し出してくれた手段と信じ、それらを繁殖させて様々な役割を担わせている。エルフとカヴーとの緊密な関係は、常にガイアの慈悲を思い出させるものとなっている。
ヤヴィマヤ
ヤヴィマヤの島は美しいが、人間の生活には全く向いていない。その規模はとてつもなく、古の木々は三千フィートの高さに及ぶ。移動する根に覆われた地面を歩いて進むことは不可能と言っていい。ここでは築かれたもの、組み立てられたものは何もなく、すべてが森の意志に導かれて成長あるいは進化したものである。森は生命に満ちているが、植物も動物もその一つ一つが臓器に等しい――ヤヴィマヤという生きた有機的組織体の一部なのだ。
流浪の民
ヤヴィマヤのエルフたちは古く長命であり、近年まで森と完璧に調和して生きてきた。かつて、エルフたちはヤヴィマヤの設計者であった。彼らは島を守る同心円状の生きた防御機構を考案し、すべてのヤヴィマヤ人に敵の存在を知らせる目印と合図の昆虫を想定した。だが怒れるエレメンタルのムルタニによって退去を余儀なくされ、ヤヴィマヤのエルフたちは故郷以上のものを失った――自分たちの一部をも失ったのだった。ヤヴィマヤの難民集団がドミナリア各地に散らばっているが、最大のものはメリアに率いられている。彼女たちはヤヴィマヤの外れ、クルーグの遺跡近くに住まい、近いうちに代々の土地に再び足を踏み入れることを許されるという信念にすがっている。
侵略者の勢力
ファイレクシア人は肉体と機械部品のおぞましい融合体である。彼らは多元宇宙最悪の厄災のひとつであり、病気のように次元から次元へと広がり、人々を殺戮し、新たなファイレクシア人へと作り変える。彼らの前任者は既にドミナリアの人々に対して自らを試した――そして今、恐るべき法務官シェオルドレッドが新たな侵略を率いており、自分たちこそは成功させると決意している。ファイレクシアが最初に侵略した際、この次元の住人たちは種族、人々、国家にまたがる同盟である「連合」を組んで立ち向かった。ドミナリアの住人たちが再びこのような形で団結できるか否か、それはまだわからない。
潜伏工作員
シェオルドレッドは暴力だけでドミナリアを侵略しようとしているのではない。次元の全土にて、彼女の工作員たちは何百という人々を誘拐し、身体と脳を外科的に改造している。ひとたび完成化させられた彼らは、何が起こったのかもわからぬまま元いた場所へと帰される。そして特別な合図を受け取ると、脳内に埋め込まれたファイレクシアの装置が起動し、主の悪しき意志に従った行動を強いるのだ。歪んだ補充手段というだけでなく、この戦略は敵の間に強い疑念と恐怖をまいている――何といっても、誰が工作員なのかは全くわからないのだから。
おわりに
今はここまでだ――この古き次元の運命を更に知りたいのであれば、『団結のドミナリア』の物語を読んでいただきたい!
(Tr. Mayuko Wakatsuki / TSV Yohei Mori)
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