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翻訳記事その他
プレインズウォーカーのための『ニューカペナの街角』案内
2022年4月28日
ニューカペナへようこそ。ここはクロームと鉄がきらめく街。進歩の象徴、疲弊した次元の灰から再生した街。奮闘と度胸と決意を要求し、そして報いる街。高く昇るほど、眺めは素晴らしく――そして落ちる距離も長くなる。若々しく、飢えた者のための街。広大な次元にただひとつ立つこの街は、誰もが夢見た姿になれる街である。
《一家の好意》 アート:Alexander Mokhov |
孤独の都市:ニューカペナの歴史
かつてのカペナ
ニューカペナの人々は、この街以前の歴史は存在しないようにふるまっている。それは誤りだ。何世紀も昔、この次元には多くの都市や王たちや文化、驚異が存在した。その中のひとつがカペナ、旧カペナ。その街は今や忘れ去られた敵との破滅的な戦いによって失われた――そしてその戦いが、そびえ立つニューカペナの創造を促した。人知れぬどこかに、文明のポケットが存在するかもしれない。だがニューカペナの人々が知る限り、この街こそが次元の全てなのだ。
《一家の契り》 アート:Andreas Zafiratos |
終焉への抵抗
ニューカペナの高みという安全は、記憶を代償とした。生きた、記録された、目撃された歴史は神話や伝説へと変えられた。侵略者は希望を喰らい、親に子を襲わせ、この次元を数千年に渡って汚染した。旧カペナの大天使とその群れの介入を得てようやく、この次元の定命は少ない勝算を手にした。神聖なる戦士たちと手を携え、旧カペナの守り手たちはごくわずかな土地をかろうじて保持し続け、包囲されたものの終焉をよしとはしなかった。
この守り手たちの中に、現在の五つの一家のルーツを見ることができる。聖騎士たちは斡旋屋に、ドルイドたちは舞台座に。武器鍛冶や職人たちは土建組に、神託者たちは常夜会に。そして彼ら全てに資金を提供した貴族階級は貴顕廊となった。
《雨ざらしの番兵》 アート:Jakub Kasper |
炎で守られた希望
侵略者の軍は旧カペナ最後の守り手たちを休むことなく攻撃した。天使と定命は持ちこたえていたが、大天使たちが見るに勝算はないことは明白だった。敵の兵力は無尽蔵だった。その騎士たちに加え、敵軍はカペナの死者をその数に加え、倒れた守り手の屍を動かしてその仲間と戦わせたのだ。旧カペナの人々をこの運命から守るため、そして完全な敗北からこの次元を守るため、大天使たちは昔からの、よく知る敵へと目を向けた――旧カペナの大悪魔たちへと。
《受難の天使》 アート:Martina Fačková |
空の要塞
旧カペナの連合軍が持ちこたえている間、大天使と大悪魔たちは輝く一本の塔を建てた。雲を貫く巨大な要塞。直ちに旧カペナの人々は安全を求めてこの要塞に急ぎ、労働を捧げてさらに高さを増し、その中を街路と公園で満たし、故郷のような大通りと建物を築き、同時にそれらは外に群れる敵への輝く抵抗の象徴となった。この場所が次元を守るのだ。要塞はひとつの街となり、人々はこの街をニューカペナと呼んだ。
《ラフィーンの塔》 アート:Elektrodeko |
次元は死んだ。次元万歳!
大天使、定命、そして大悪魔の連合軍は下層のエレベーターへとなだれ込む避難民を守った後、最後にこの街に入った。敵は決して止まらなかった。伝説いわく、最後の戦いは最終エレベーターで繰り広げられたとされている。敵が街の下部へと迫る中、連合軍の兵士たちは昇降台から敵軍を投げ捨てたという。敵は阻止され、最後のエレベーターが到着し、ニューカペナはその下の全てから隔離された。
《近代性の模範》 アート:Volkan Baga |
純粋な疑問
生き残った人々がニューカペナの内に安全を確保すると、大天使と大悪魔たちは彼らを祝うにまかせた。しかしながら、大天使たちは喜びはしなかった。彼らは暗き真実を知っていたのだ。この塔は巨大で頑丈だが、敵を止めるには不十分なのだ。固く守られ接近は困難だが、もしも敵が侵入方法を見つけ出したなら? こちらからその試みを止めることは不可能であり、そうなれば戦いは再び、遥か下ではなくここで起こる。従って、街の建築家たちは純粋な疑問に悩まされた。数であまりに圧倒される中、街とこの次元の安全をいかに保障すればよいのだろう?
《天使の探偵》 アート:Marc Simonetti |
冷酷な回答
大天使たちが悩む一方、大悪魔たちは企んでいた。戦争中、カペナの大天使たちとその群れはその存在だけで敵に惨害をもたらした。大悪魔たちはこの神聖な生得武器を研究し、結論に至った。もし天使たちを捕えてその精髄をニューカペナ全体に――あるいは旧カペナへも――撒いたなら、敵を追い払ってこの街と自分たちの民を守れるのではないかと。だが自分たちだけでこの裏切りを遂行することは不可能であり、大悪魔たちは定命の耳へと囁きかけた――力に飢えたカペナ人へと、未来への疑問に対する冷酷な回答を植え付けた。天使たちを捕え、悪魔の時代を始める。
《壊れた翼》 アート:Irina Nordsol |
悪魔の街 その1
大悪魔たちが選んだ五人の勇者は、小規模な組織の指導者や有力者、下級貴族であり、カリスマを持ち、既に熱心な支持者を集めていた。ラフィーン――自身は預言をもたらすと信じる、議論好きな占い師のスフィンクス。ザンダー卿――名ばかりの貴族一家の悩める芸術家であり、若い同胞が受ける称賛に嫉妬している。ジアトラ――若きドラゴンの狂戦士にして、力だけを夢見て戦いに生きる蛮人の長。ジェトミア――組織の禁欲主義を拒否した世捨てのドルイド。快楽主義のパーティーに耽り、決して音楽を止めさせない。この四人が、大悪魔の勇者の五人目によって集められた――聡明で妥協を知らず、極めて熱狂的な法律家、ファルコ・スパーラ。
《五者会談》 アート:Dominik Mayer |
悪魔の街 その2
権力の全てが奪われる前にニューカペナを山分けすべく、この定命たちは大悪魔たちへと身を捧げた。大天使への策略は、大悪魔たち自身の合意の上での犠牲によってのみ成し遂げられる。五人はデーモンの混種と化し、彼らに繋がる大悪魔に祝福と呪いを受け、堕落の度合いを増し、さらなる力を手に入れた。
主の大悪魔たちとともに、五人はその賛同者を率いて、不意に休止状態となった侵略軍を襲撃した――原因は定かではなく、だが何にせよ歓迎すべき事態だった――そして作戦を遂行し、最も楽観的な見積もり以上を成し遂げた。長い戦いを起こすのではなく、街を挙げての勝利の祝祭の中、大悪魔と五人は大天使たちとその群れを捕らえた。人々は、大天使たちはその身を捧げて敵を眠らせたのだと告げられた。だが五人とその組織、五つの一家は、厳めしい真実を押し殺した。大悪魔は天使たちを用いて街を守った。天使たちを捕らえて一種の休止状態にし、物理的な肉体を新時代の燃料、光素へと変えたのだった。
《集団失踪》 アート:Jokubas Uogintas |
犯罪のビジネス
現代では、五つの一家はそれぞれに適した産業を支配し、街の三層に縄張りを支配し、互いを視野に入れつつも秘密裏に活動している。名目上の、ほとんど痕跡のみの政府は街の明かりや安全な飲料水、整備された道を確かなものとしている。他の次元で法とされるようなもの――王権や行政、警察組織、厳しい規則とそれを破った者に対する罰は、ニューカペナには存在しない。あるのは五つの一家が同意した規範である。この規範はファルコが起草して五つの一家の指導者たちが同意したもので、緩い平和協定を成している。出過ぎた真似をしない限り、何をしてもいい。
《一切れの利益》 アート:Donato Giancola |
借り物の平和
取り締まる権威が存在しない中、五つの一家は自分たちを抑えねばならない。表看板、口実、秘密の事業は完全に理解された戯れとして動いている。五つの一家全てがそうであり、ルールを無視していることを隠すのが洗練された振る舞いであると、ルールが存在するという事実の確認であると理解している。柔軟性と斟酌、引立て、そして見て見ぬふりがニューカペナの鍵である。ひとつの一家が多すぎる取り分を主張しない限り、他の一家もそうはしない。そうすればニューカペナの平和は保たれる。確かに、血なまぐさい平和ではある――執行人や路上のボスたちは破壊と喧嘩を繰り返し、手下たちは死体となり、小さな荷物が行方不明となる――だが一家にとっては容認できる損失である。抗争を防ぐための出費なのだ。
《必殺の一射》 アート:Josh Hass |
犠牲
大天使に対する大悪魔の裏切りと五つの一家の権力掌握を、ニューカペナの市民のほとんどは知るよしもない。何世紀も続く侵略の中で彼らは疲弊し、怯え、心から安全を求めていた。無力な王や弱い統治者がそれを提供できないなら、この新たな統治組織が、カリスマ的指導者を抱える五つの一家がそうしてくれるだろう。天使たちは身を捧げてこの街をくれた、一家の長たちはそう言った。天使たちは身を捧げて光素を作り出し、それを街とその大気に満たした。これによって自分たちは安全と繁栄を得て、勤勉に働いてこの街をさらに高く壮大に成長させる。いつか天使たちの犠牲が完遂された時、眼下の次元に帰る日を夢見て。人々はこの提案を受け入れた。彼らは天使の犠牲に感謝し、自分たちを覆う光素の盾に身体を休め、過去を消し、そして働きに出た。
《高層の鋸術屋》 アート:Randy Vargas |
街の外では何が起こったのか?
今日、ニューカペナはざわめいて活気にあふれたひとつの巣であり、基礎の柱と錨の森から空高くへと尖塔が何マイルも伸び、ワイヤーの裾と満ち渡る光素の盾に囲まれている。光素、それは天使の精髄に他ならない。
ニューカペナの人々にとって、自分たちの祖先をこの街に追いやった脅威は遥かに遠く、ほとんど忘れ去られている。それは古い世界、「外」であり遠い昔である。時に、昔の名を持つ新参者が下方から昔のリフトに乗ってやって来ては、厳しい生活と荒野の悪夢を伝えてくれる。だが街の外に興味を抱くニューカペナの人々はほとんどいない。やがてその新たな移民もまた、気付けば街の外を忘れてしまう。街の速度がそうさせるのだ。ニューカペナは機会に満ちている。過去を忘れ、新たな運命を求めて望む未来を描く、あるいはこの新たな場所に新たな生活を築くのだ。
《集まる群衆》 アート:Randy Vargas |
ラスト・オーダー
ニューカペナに到着した時、我々は五つの一家の見せかけの平和が崩壊し始めていると知った。光素――粘ついて神聖、その魔力から需要の高い、油に似た液体――増強と治癒の力を持つそれが枯渇しかかっているのだ。
五つの一家は終わりが近づいていると察しているが、それがどのような姿で、あるいはどのような順序で来るかは知るよしもない。既に彼らはできる限り多くの光素の備蓄を始めており、行き渡る量は少ない。かつて立ち入り禁止であると、不可侵であると理解されていた場所や人々は標的となった。かつてカルダイヤの埠頭と倉庫、メッツィオの路地に限定されていた暴力は、高街の金張りの大通りにまで忍び寄っている。
次に何が起こるかは五つの一家のどれも知らないが、ひとつの事実については同意している――この街の力の均衡が揺れ動きつつあると。長く馴染んできたルールはもはやそぐわない。光素、かつて街を守った物質は、今や街に破滅をもたらそうとしている。この次元から姿を消したと思われた天使たちが、帰還し始めている。五つの一家に力を与えた大悪魔たちは、ここにはいない。パーティーはまもなく中断されるが、どの一家も自分が勘定を払わされることを望んではいない。
《輝く備蓄品》 アート:Brock Grossman |
ニューカペナ、街の現在
この次元に存在するのはニューカペナの街だけではないが、市民に尋ねてもそれを知ることはないだろう。この街は忘れられた王国の首都の瓦礫の上に築かれた、途方もなく巨大な摩天楼である。広大で何もない荒野を守る孤独な歩哨であり、この次元の人口のほとんどを有している。街は三つの層に分かれており、下から順に工業地帯のカルダイヤ、喧騒のメッツィオ、そして豪奢な高街となっている。
《島》 アート:Matteo Bassini |
カルダイヤ
カルダイヤはニューカペナでも最下層に位置し、工場や倉庫、巨大な基盤施設で満ちた工業の中心である。ニューカペナを支える構造的支柱はここで力強く立ち、カルダイヤを我が家と呼ぶ土建組の力だけがそれに勝る。高街の魅惑やメッツィオの切磋琢磨はないかもしれないが、カルダイヤは目的と忍耐、そして新進の気質に動かされている。土建組にまとめられ率いられるカルダイヤの労働者がいなければ、ニューカペナは停止してしまうだろう。
カルダイヤには人間やデビル、ヴィーアシーノ、ロウクスといった多様な種族が住んでいる。彼らはともにテラスハウスに住み、工場で働き、あるいは昇降機に乗ってメッツィオや高街のきらめく尖塔を建造しに向かう。
《山》 アート:Zbigniew M. Bielak |
カルダイヤの重要地点
カルダイヤは忙しく混み合う、ニューカペナの工業的土台である。ここを支配している一家は土建組だが、カルダイヤの密集した集合住宅に住まう労働者の数よりはずっと少ない。
カルダイヤでも最も危険な地区はヴェールである。この地区の両脇の道は取り除かれており、要塞のように集合住宅の建物が並び、地位のある土建組の組員が骨を休める。
《斡旋屋一家の潜伏先》 アート:James Paick |
メッツィオ
メッツィオは騒々しく生気があり、人口密度は高く、ニューカペナでも最大の街区となっている。街の中層であるメッツィオは決して眠らない。カルダイヤから上り高街から下る通勤客でメッツィオの街路は常にせわしなく、生気と約束と人々で賑わっている。建設と修繕が常に行われ、決して静まることも退屈することもない、メッツィオにおいては、作業着の労働者も毛皮をまとう名士も、同じく地下鉄で肩をこすり合う。貴顕廊の執行人と常夜会の神秘家が同じ道を歩く。下層の工場の炎と上層の豪華な遊び場に挟まれたメッツィオこそが「本物」のニューカペナであり、夢が育まれて財産が築かれ――そして失われる。真ん中にいるなら、昇るも落ちるもたったの一歩。舞台座、常夜会、貴顕廊がメッツィオを本拠地としている。
《平地》 アート:Olga Tereshenko |
メッツィオの重要地点
メッツィオは退廃と禁欲が出会う場所であり、折衷的で混沌として鮮やかなタペストリーへと混ざり合い、伝統が進歩とともに踊り、街を作り上げる。メッツィオは喧騒に満ち、決して眠らない。やるべきこと、見るべき人物、行くべき場所が常にある。それは興味深い食べ物であったり、音楽であったり、ショーや景色であったり――舞台座と貴顕廊がこの中層を巡って争うのはもっともである。
カルダイヤは工業の中心をうたっているが、メッツィオは文化の中心をうたっている。カルダイヤからメッツィオへと繋がる巨大駅バッサマー・ブリッジから街の不夜城であるヴェスティ広場、そしてクラウドポンテ橋に至るまで、メッツィオはニューカペナ最大の街区となっている。
《カペナ特急》 アート:Viko Menenzes |
高街
その全ての上にニューカペナの最上層、高街が座している。建物はクロームや黄金、ガラス、鋼に輝き、空にそびえて雲の上にアーチを描く。高街の上にあるのは星々の空のみ、そして高街を我が家と呼ぶ者たちはそれを心得ている。
高街の人口密度は街で最も低く、ここはニューカペナの支配者格や社長、工場の重役が本部を置いている。オペラハウス、オーケストラホール、会員制のクラブ、イベント会場、店、公園、邸宅、庭園、それらの全てが高街で見られる。カルダイヤとメッツィオの市民は軽薄とみなす――だが密かに嫉妬している――高級で華やかなあらゆるものをこの層で見ることができる。高街のあらゆる歩道は花道であり、あらゆる店はステージであり、金を支払うべき相手を知っているなら、どんなルールも破って構わないのだ。
斡旋屋が高街を本拠地としている。
《島》 アート:WFlemming Illustration |
高街の重要地点
高街はニューカペナの頂点である。強者が遊び、耽り、街そのものが彼らの意志に従う。ここは美しい場所である。起伏のある緑の公園、木々、公共の庭園、そして顔を上げた時に空だけが見えるのはここだけだ。高街の中心となるのはフェラーラ公園である。街の長老たちはここに、旧カペナの幸福な大地を模した風景を作るよう依頼した。この公園の中央の湖には旧カペナのクラーケンが持ち込まれ、棲まわされている。
《空の叫び屋》 アート:Raoul Vitale |
ニューカペナ:五つの一家
土建組
土建組は旧カペナ王国を築いた職人の末裔であり、カルダイヤの最大勢力であり、ニューカペナを築く定命であり、最大の光素の備蓄を守っている。彼らは喧嘩好きで手が早く、破壊も素早く、目的を達するためにはハンマーや爪で戦うことをいとわない。かつてのひとつの労働組合であった土建組は、当時と同じものに重きをおいている:忠節、数の力、支え合いだ。
《土建組一家の隆盛》 アート:Svetlin Velinov |
土建組はデーモン・ドラゴンのジアトラの鉤爪にしっかりと掌握されており、下層域を縄張りとしていながらもその力は街全体に及ぶ。どんな建物も、土建組の知識と専門技術なしに建たないし崩れもしない。彼らがいなければ、街は崩れ去る。ジアトラのドラゴンとしての洞察に刺激され、土建組は自分たちこそドラゴン族の後継者であると信じている。自分たちはこの街を壊して再建することができるのだ。特にその奮闘の相手が敵であるなら、この積極的な破壊と再建に携わるのを恐れたりはしない。
《焼却するもの、ジアトラ》 アート:Chris Rahn |
土建組はカルダイヤに集中しており、その工場や鉄工所で働いている。だが建物を建てる、あるいは保護金の支払いが滞った建物を壊す彼らは街のどこでも見ることができる。
《作業場の戦長》 アート:Zoltan Boros |
土建組の本拠地
土建組の本部はトレザにある。カルダイヤの港湾区域に位置する洞窟のような倉庫であり、ジアトラはここで寛ぎながら土建組のビジネスを動かしている。この広大な空間の中、ジアトラは土建組に自身の栄光の記念碑を建てさせた。それは鉄の梁とバルコニーで作られ、ドラゴンの形を成している。内部の天井は高く、融けた金属の流路がこの空間を特徴づけ、黒いガラスの床を横切っている。トレザは常に騒がしい。土建組の密輸人たちが最新の荷物を受け渡し、隠れ家の親方が新人を訓練し、そこかしこで組員は飲み騒いでいる。
トレザの奥深くに隠され、ジアトラとその腹心たちにのみ開かれた事務所がジアトラの宝物庫、黄金と光素でいっぱいの巨大な貯蔵庫である。ドラゴンに属さない、あるいは他の防護手段を持たない者にとっては極めて危険な場所だ。大気そのものがカルダイヤの工場から伝わる有毒ガスで燃えており、王国時代の宝物と黄金、そしてジアトラが溜め込む光素を守っている。
アート:Rebecca On |
常夜会
旧カペナにおいて、常夜会は魔術師の集団であった。現在の彼らは預言や占いを扱い、夢や死者の領域と難解な交わりを行う。何らかの出来事が街で起こるとしても、常夜会は既に予期しており、それを特徴的なレンズの魔法に閉じ込めて書庫に収めてある。彼らは幸運の作り手であり破壊者でもある。代価を支払いさえすれば、求める未来を手に入れることもできるし、他の誰かの未来を葬り去ることもできる。
《常夜会一家の隆盛》 アート:Igor Krstic |
常夜会を統べるのはラフィーンである。彼女は旧カペナの時代から生きるスフィンクス・デーモンであり、未来の不吉な幻視をしばしば見る。常夜会は五つの一家の均衡を保つために動いている。純然たる力で街を支配できないならば、少なくともニューカペナの情報の流れを操るのだ――票を動かし、強力な敵を脅迫し、噂を流し、騙し取り、世論を操作することで。
《策謀の予見者、ラフィーン》 アート:Johannes Voss |
常夜会はメッツィオに集中しているが、高街の洗練された店舗やカルダイヤの悪臭漂う下水でも見かける。預言や運命や幸運の運び手として――そして管理者として――街のあらゆる所にいるのは常夜会の仕事のひとつであり、温かく快適な店舗や客間以外にはいないように見せている。
常夜会の本部は雲頂という。高街の到達困難な超高層ビルであり、そこでラフィーンと高官たちが監視魔法の広範なネットワークを用いて街を監視している。
《策謀の故買人》 アート:Cristi Balanescu |
常夜会の本拠地
常夜会の活動のほとんどはメッツィオを中心としているが、この組の運営の中心にして精神と魂の在処は高街にそびえ立つ摩天楼、雲頂にある。その最上階の展望室にて、ラフィーンは常夜会でも最も敏感で強力な占いと監視の装置の中、自身の執務室を置いている。大気そのものが囁き声と幽霊のような映像に満ちている。外回りの工作員からラフィーンへと送られてくる街の現在の映像である。
雲頂の下層階には内工部があり、ここで常夜会の工作員たちは街全体の正確な縮尺の地図や歴史と、潜在的未来の一時的預言ライブラリを用いて構想や策略を練る。
アート:Jenn Ravenna Tran |
貴顕廊
旧カペナの貴族階級であった貴顕廊は、ニューカペナにおいては厳格な規範を持つ熟練の暗殺者たちである。正確であれ。プロであれ。そして徹底的であれ。自分たちは芸術家であり批評家であると彼らは考えている。絵画、彫刻、あるいは演技。貴顕廊は熱心な収集家であり、常に次の大物を探している。同時に彼らはニューカペナの過去を密かに管理しており、旧カペナの秘密を博物館の書庫や倉庫に隠している。
《貴顕廊一家の隆盛》 アート:Jodie Muir |
デーモン・ヴァンパイアのザンダー卿が率いる貴顕廊は、ニューカペナ最高の暗殺者集団である。殺人のプロフェッショナルである吸血鬼たちは、契約をビジネスとしてだけでなく芸術を披露する場として見ているのだ。彼らは自分たちの仕事について、歪んで利己的な見方を維持している。自分たちは街の救い主であり、比類なき博愛主義者であると。そして自分たちにふさわしいと信じる名声と文化的貴重品を追求するにあっては冷酷である。目的を達成するためならば彼らは悩むことなく、そして一瞬たりとも後悔せず殺すだろう。
《蒐集家、ザンダー卿》 アート:Martina Fačková |
貴顕廊はメッツィオと高街に勢力を維持している。貴顕廊の執行人や暗殺者はニューカペナでも洗練されて文化的と彼らが信じる地区を好んでおり、「博愛主義的な」追跡に携わる以外にカルダイヤで見かけるのは稀である。貴顕廊の構成員は高級な催しやラウンジで寛ぎ、同時にそれらへの御しがたい誘惑を感じる――それは吸血鬼としての性質であり、当時に好みでもある。彼らの本部は高街に位置する旧カペナ美術館であり、そこではザンダー卿が執務室を構えている。
《貴顕廊一家の新入り》 アート:Irina Nordsol |
貴顕廊の本拠地
常夜会と同じく貴顕廊もメッツィオに出没するが、本部は高街に存在する。旧カペナ博物館こそが貴顕廊の行きつけであり、ザンダー卿はその館長兼主任学芸員を務めている。博物館ではニューカペナの歴史を温かく綺麗な展示室で堪能し、芸術作品や彫刻、王国時代のアーティファクト、街の初期の歴史、幾つかの現代の作品までも見ることができる。博物館のそこかしこにふたつの施設の入り口が隠されている。ひとつは影宿、ここでは暗殺者たちが集まって秘密や契約を交換する。もうひとつはザンダーの宝物庫であり、これはザンダーの個人的なアーティファクト、武器、形見、芸術の収蔵庫である。
アート:Jenn Ravenna Tran |
舞台座
旧カペナのドルイドや楽師たちを元とする舞台座は、ニューカペナの祝祭やパーティーを焚きつけるエンジンであり、ポップカルチャーと流行を作り出して街のエリートすらも動かす。絢爛たる歓楽者として、舞台座はダンスホールやコンサート場、最高のレストランを街の全層にて運営している。扉は常に開かれており、いつも笑顔が出迎える。けれど代金を払わずに立ち去ろうなどとしないように。
《舞台座一家の隆盛》 アート:Kari Christensen |
舞台座はデーモン・キャットのジェトミアが動かしている。彼は気前の良さと、同等の妬み深さで知られている。かつてはまずまずの評判を得ていたドルイドであった彼は長いこと舞台座の実権を握り、祝祭の主という名声を確かなものとした。ニューカペナにおいて舞台座は好意、文化、そしてコインを取り扱っている。彼らのパーティーと有名人たちは誰が「あり」で誰が「なし」かを、レストランや店の成功と失敗を、誰の音楽がヒットして誰のレコードがカルダイヤのごみ捨て場に行き着くかを決める。君がニューカペナでスターや大物を目指すのであれば、まず舞台座の下働きから始めるのがいいだろう。
《宴の結節点、ジェトミア》 アート:Ryan Pancoast |
流行発信者であり流行の破壊者、文化人とクリエイターから成る舞台座はメッツィオと高街の至る所で見られる。彼らの本部はメッツィオの大規模な催し物会場であるヴァントリオーネである。そこではニューカペナの主な式典が執り行われ、偉父ジェトミアは光素の流通を決して止めはしないと保証している。
Attended Socialite アート:Drew Baker |
舞台座の本拠地
舞台座はメッツィオに生きており、その至る所にてナイトクラブやミュージックホール、ラウンジを運営している。最も有名な催し物会場がヴァントリオーネである。さまざまな娯楽のための複合施設であり、文字通りそのパーティーは終わることがない。光素は流れ続け、金を支払う限りあらゆる楽しみや好みを見つけることができる。
ヴァントリオーネは公衆へと開かれているが、この複合施設の複数の区画は特別な観客以外の入場を禁じている。ヴァントリオーネの薔薇の間はその中でも最高のものであり、このラウンジの扉は舞台座の最高幹部や今をときめくスター、そしてジェトミアが個人的に好奇心や興味を抱いた、あるいは惹かれた者にのみ開かれる。
アート:Rebecca On |
斡旋屋
斡旋屋は元々、旧カペナの聖騎士たちを集めて作られた。ニューカペナにおける彼らは利己を体現する苛烈な親切売りであるが、それでも有用であり、契約によって庇護を与える。彼らは五つの一家の平和維持に集中している。それが各一家に利益をもたらすと信じているのだ。そしてニューカペナは規則正しく秩序ある街であるという見せかけを保とうとしている。君が望むと望まざるとにかかわらず、彼らは君の安全を守るだろう。
《斡旋屋一家の隆盛》 アート:Dallas Williams |
斡旋屋を率いるのはデーモン・エイヴン、ファルコ・スパーラである。彼は斡旋屋の契約魔法の発案者でもある。ニューカペナが成長して創設の時代からかけ離れていくにつれ、かつて人々の社交的な守り手であったファルコは高街の住居へと引きこもり、そこで彼は斡旋屋を執務室から指揮しつつ、難解な法論に専念するようになった。
その行動を噂が取り囲んだ。彼はニューカペナの全てを脅かす破滅の預言を解釈しようとしており、それを防ぐのではなく斡旋屋を導き、来たる終焉において優位を得ようとしているのだと。こういった噂は古参の構成員によって速やかに黙らされた。ファルコが預言に執着することで、その最悪の恐怖が形になることを彼らは個人的に怖れたのだった。
《契約紡ぎ、ファルコ・スパーラ》 アート:Keiran Yanner |
斡旋屋は何をおいても使用人であり、上流階級の中でもさらに上流の者たちの工作員であり、砲身を向けられるよりも向けるのを好む喧嘩屋である――彼らがスーツの上に鎧をまとっているのには理由がある。
創設者が発案した独特な契約魔法を身につけ、斡旋屋は窮余の人々へと前払いなしでサービスを提供する。カルダイヤで真鍮の拳をはめたギャングに声をかけられた時も、高街にて血に飢えた貴顕廊の暗殺者に追い詰められた時も、斡旋屋は呼ばれたなら介入し、条件を提示し、クライアントのために戦うだろう。費用は常に同じだ:後で、少しの好意を。幸福のために――君の歯か、仕事か、あるいは人生か――断るのは難しい。
斡旋屋の本部はニドーの聖域である。メッツィオの中央地区に位置する、広く豪華な事務所だ。
《斡旋屋一家の古参》 アート:Lie Setiawan |
斡旋屋の本拠地
斡旋屋の幹部は高街にあるファルコの邸宅の周囲に居を構えることが多いが、彼らの主要な事務所はメッツィオにある。ニドーの聖域はメッツィオの中心部に位置する複合事務所であり、明るく清潔で設備も整っている。そこでは敷居の低い法律相談所や弁護士事務所が昼となく夜となく、公衆へと開かれている。
聖域の立ち入り禁止区域には訓練所、武器庫、弁護士と新人のための寮が含まれている。ファルコ・スパーラも、使うことは稀ながらニドーに住居を所持している。彼はむしろ、預言の文書が鉄の保管庫にしまわれている事務所へと頻繁に出入りしている。
《スパーラの本部》 アート:Kieran Yanner |
おわりに
この街を街角から見てみたいと思うなら、『ニューカペナの街角』ストーリーをチェックしてくれ!
クレジット
このセットのクレジットは英語版製品ページの最下部で見ることができる。
(Tr. Mayuko Wakatsuki / TSV Yohei Mori)
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