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「護法」の導入

Andrew Brown, Jules Robins
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2021年3月25日

 

 マジックに新たな常盤木メカニズムが導入されることは、日常茶飯事ではありません。このゲームにはすでに新規プレイヤーが学ぶべきことが多く、それをさらに増やせば習得がさらに難しくなります。ですが私たちはときどき、学ぶ労力を増やしてでも使いたいものを発見することがあります。そして今がそのときなのです。そこで、この記念すべき新たなキーワード発表を、ライター2人でお届けします。

 私(ジュールス・ロビンス/Jules Robins)は通常の文章。

 アンドリュー・ブラウン/Andrew Brownは強調表示でお送りする。

 黎明期より、クリーチャーを除去する呪文はその対象となるクリーチャーよりも効率的であり続けています。そこにはそうならざるを得なかった事情があります。除去の効率が悪いと先行するデッキに追いつくのは難しく、いったん優位になった側の優位が動かない展開になりがちなのです。しかし除去の効率を上げていくと、クリーチャー主体のデッキではそもそも盤面を築くことすらできなくなるリスクが上がっていきます。その問題をきれいに解決するのは、除去が効きにくいクリーチャーも存在させることでした。

 しかしプロテクションは、その目的を満たすには少々強引すぎます。その能力を持つカードに対して、ブロックやライフ・レースまで不利になってしまうのです。そこでデザイナーたちはほどなく、この難題に対してより対象を絞ったアプローチを模索し始めました(対象にしたんです)。そして実にシンプルな方法が導入され、それは『未来予知』で「被覆」というキーワードになりました。

 被覆はさまざまなカードに採用され活躍しましたが、問題がないわけではありませんでした。このメカニズムを初めて知ったプレイヤーの大部分が、被覆を持つ自分のクリーチャーを対象に取れると勘違いし、その機能を学んだあとも多くのプレイヤーが不満を持ちました。自分だけの怪物を作り上げるプレイは長年にわたって人気を集めているものの、除去呪文に弱すぎて現実的ではないのです。そこで私たちは再び、除去耐性の実験に取りかかりました。そして『基本セット2012』にてその結果が導入され、キーワード化しました。

 「呪禁」はこの問題を一部解消しましたが、新しい問題が生じました――これなら対戦相手が干渉できないクリーチャーに大量の強化を施すことができるのです。

 しかしマジックが一番面白くなるのは、互いの対応による一進一退の展開です。除去できないクリーチャーを持つプレイヤーは、ブロックでも太刀打ちできないようにしようとするでしょう。一見何の問題もなさそうな呪禁カードが、問題を引き起こす元になるのです。

 中でもさまざまな感情を呼び起こしたのが、《林間隠れの斥候》だ。リミテッドでは弱いカードになるか《トロール皮》との組み合わせで相手をイラつかせるカードになるかのどちらかで、いずれにせよ成功とはほど遠いものだった。構築フォーマットでは「ボーグルズ」は賛否両論のデッキだった。良いところはたくさんある。プレイパターンは独特だ。プレイは比較的簡単だ。そして、強烈な特徴があった。

 このデッキの最大の問題は、反撃の余地が足りないことから相手がイラつくところにある。とはいえサイドボードに選択肢を与えている点で、私としては「ボーグルズ」はモダンに良い影響を与えていると思う。しかし、MTGアリーナでBO1のゲームを楽しむプレイヤーが増えている中で、スタンダードに「ボーグルズ」のようなデッキが存在するのは望ましくない。そのデッキへの主な対抗手段がサイドボーディングだからだ。

 要するに、その「無力感」が面白さを損ねているのです。過去のマジックのデザインが問題を解決した方法を思い出させる教訓です。あまりに多くのクリーチャーに除去が効かないようにするのではなく、ただ除去の効率を落とす必要があります。

 クリーチャーがスタンダードで存在感を示すようにするには、通常、即座にゲームに影響を及ぼすようにする必要があるのだが、これが難しい。この話をするとき、私は、 《マラキールの解放者、ドラーナ》のことを思い浮かべる。プレイヤーとして初めてこのカードを見たとき、十分に強力そうだったので、喜び勇んでスタンダードの「同盟者」デッキに入れた。

 問題はプレイテストをしているうちに自ずと明らかになった。《マラキールの解放者、ドラーナ》はゲームに影響を与えるのが遅く、軽い除去呪文に弱すぎたのだ。もし私が時間を遡って《マラキールの解放者、ドラーナ》を編集できるなら、何かしら自身を守る軽い手段を加え、攻撃してその力を引き出せるようにするだろう。

 かつてジェリー・トンプソン/Gerry Thompsonに聞かれたことが今でも心に残っている――「点数で見たマナ・コスト(マナ総量)が3以上で、プレイしてすぐにゲームへ影響を与える手段を持たなくて、最近のスタンダードで活躍したクリーチャーはどれだけいる?」 おそらく私が予想するよりはるかに少ないだろう。その中でお気に入りを挙げるなら、《龍王オジュタイ》だ。このカードが成功した鍵は、条件付きの除去耐性にある。高コストのクリーチャーがスタンダードのデッキに見受けられるのは良いことだ。新たなメカニズムは、それを実現するための手段を増やしてくれる可能性がある。

 ここで話しているプレイパターンはすべての色に当てはまりますが、ある効果の適用範囲を広げることには、カラーパイを損ねるリスクがつきまといます。色ごとのふるまいが似通ったものになり、それぞれの個性が失われてしまうのです。すべての色に除去耐性を持つクリーチャーを用意するなら、それらの違いをどう出すかを考える必要がありました。そこで私たちは、数枚のカードで実験を始めました。

 40枚/60枚/100枚のデッキいずれにおいても、実験結果は非常に期待できるものでした。それを受けて私たちは、『ストリクスヘイヴン:魔法学院』で新たなキーワード能力の作成に少し力を入れました。そして完成したのがこれです。

護法[コスト] (このパーマネントが対戦相手がコントロールしている呪文や能力の対象になるたび、そのプレイヤーが[コスト] を支払わないかぎり、その呪文や能力を打ち消す。)

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 コストとして支払うもので最も一般的なのは、追加のマナ(白、青、緑)と追加のライフ(黒、赤)になるでしょう。2種類のコストはどちらも除去を防ぎますが、デッキの内容は異なるものが求められるでしょう。また、対戦相手は、いつ護法を乗り越えてそのクリーチャーを除去するかについて異なる判断が必要になります。今後はもっとユニークな護法コストも登場しますので、お楽しみに!

 今後も呪禁をマジックから取り除くつもりはない。護法よりも呪禁の方が良いカードはたくさんある。例えば《レインジャーの悪知恵》や《蛇皮のヴェール》のようなコンバット・トリックがそうだし、干渉しにくい大型クリーチャーが環境に良い刺激を加えることもあるだろう(《殺戮の暴君》、君のことさ)。つまり私たちはツールボックスにもう1つ道具を加え、最適なタイミングで使ってみることにしたというわけだ。

 これにより、私たちの未来に影響を与え得るクリーチャーの種類が大きく多様化することを期待しています! おっと、忘れるところでした。今日はプレビュー・カードも預かってきたんでした。

カードをクリックで別の面を表示
 

 私としては、第2面がその後にプレイされる第1面のお膳立てをしているところが好きだ。通常、高コストのインスタントやソーサリーを墓地に置くのは難しいのだが、《炎投げのソナタ》は簡単にやってのける。そしてその後に《奔流の彫刻家》をプレイすれば、巨大な戦慄大口より除去しにくい強大な脅威を繰り出せるのだ。

奔流の彫刻家》 アート: Slawomir Maniak

 『ストリクスヘイヴン:魔法学院』は4月23日発売です。カードイメージギャラリー特別版カードイメージギャラリー(ミスティカルアーカイブの一覧も掲載されています)を確認して、驚きのカードの数々をご覧ください!

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