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熟考漂いの対極

Blake Rasmussen
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2020年6月5日

 

 《悪斬の天使》系と《熟考漂い》系という2つのカテゴリーに、マジックのクリーチャーを分類し始めたのは、パトリック・チャピン/Patrick Chapinが最初でした。

 つまるところ、優位を引き寄せてくれる《悪斬の天使》や《熟考漂い》に代表されるようなマジック最高のクリーチャーは、大きく2つのカテゴリに分類されるというものです。1つは《悪斬の天使》のように、攻撃とブロックにおいて優秀なクリーチャーです。もう1つは、戦闘ではない能力から力を引き出すような、基本的には戦場に出てすぐ効果を発揮してカード・アドバンテージを提供するものです。

 この2つを分けるラインは「これがすぐに除去されたとき、それでも何かを得られるか?」という質問になるでしょう。その答えがNOであっても使うぐらいに十分な強さがあれば、それは悪斬カテゴリです。答えがYESであれば、熟考カテゴリになります。

 つまり、《タルモゴイフ》は悪斬カテゴリです。《探索する獣》は、そのキーワード能力のごった煮から見ても悪斬キャンプ地のより中心にいます。《雲先案内人》はどう見ても熟考カテゴリですね。《空を放浪するもの、ヨーリオン》は熟考する相棒です。

 一部のカードはラインをまたいでいます。《夢さらい》は、戦場に出てすぐにアドバンテージを得られるわけではなく、しかしのちのち有利になるのでほぼ悪斬カテゴリです。《発現する浅瀬》は純粋な熟考カテゴリ・クリーチャーですが、その相棒である《乱動の座、オムナス》には(ほぼ熟考側とは言えそうですが)両カテゴリの特徴が少しずつあります。《水晶壊し》は変容した際には優秀な熟考カテゴリ・クリーチャーという印象を持ちますが、そのためのコストから見ると相当な打撃力です。

 さて、私はパトリック・チャピンに謝らなければならないでしょう。以上の話は私の記憶に基づいており、何らかの点で彼の考えと齟齬があるかもしれないからです。挙げた例のいくつかについては、彼に言わせると違うかもしれません。また《乱動の座、オムナス》や《水晶壊し》のような位置づけのカードについては、大いに議論の余地があるでしょう。しかし悪斬/熟考という測定法から考えたとき、そのどちらかには100%確実に一致するカード。それが今日のプレビュー・カードです。

 スタンダードによくぞ戻ってきてくれました、《悪斬の天使》。

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 《悪斬の天使》は《探索する獣》のような能力ごった煮カードへの道を切り開いたクリーチャーで、そのすべての能力を合わせると不思議なことに戦闘ではほぼ無敵となります。(ああ、そういえば、1対1の戦闘であれば《悪斬の天使》は《探索する獣》を偶然にも返り討ちにできますね――昔からのプレイヤーなら、さらなるテクニックをご存じでしょう)

 ライフレースで勝負するですって? パワー5の攻撃は対戦相手をきわめて早く追い詰め、さらに絆魂でこちらのライフは相手の手の届かないところまで伸びていきます。ブロックする? どうぞ、先制攻撃と飛行にうまく対処できますように。同じような重量級で対抗しますか? いやあ、それができる飛行クリーチャーはだいたいドラゴンかデーモンでしょうね。

 ええ、ほとんどの除去呪文で死にますし、《丸焼き》の範囲に収まってはしまいますが、《悪斬の天使》はそういうものと戦うために使われるわけではありません。攻撃的なグルール・デッキに対してや、《獲物貫き、オボシュ》の侵攻を止めるため、あるいは対戦相手がこちらのデッキにクリーチャーがいないと考えたときに素早く決着をつけるためにあるのです。

 それは《悪斬の天使》の最初の全盛期に何度も行われたトリックの再来です――クリーチャーの入っていないメインデッキで戦い、対戦相手がサイドボード時にメインから除去を抜いたとき、その時点で事実上除去不能となるこれをサイドインしたのです。

 《悪斬の天使》が今どのように用いられるかについては、誰もが想像できるでしょう。《夢さらい》を戦闘で打ち負かすことができます。二段攻撃を持たせるあの装備品に頼っているデッキにも、間違いなくはまります。《丸焼き》を赤い速攻デッキがまた用いるようになるかもしれません。正直に言って、赤の速攻デッキはそうしないと《悪斬の天使》に対処できないでしょう。

 よく戻ってきてくれました、わが友。あなたは《熟考漂い》側ではありませんが、そこが重要なのです。

(Tr. Yuusuke "kuin" Miwa / TSV testing)

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