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翻訳記事その他
イコリア統率者
2020年4月3日
これは統率者戦の全く新しい世界だ――本当に!
イコリア統率者(『イコリア:巨獣の棲処』と『統率者(2020年版)』)プレビューウィークエンドへようこそ。今年は統率者戦に関することであふれんばかりの年であり、我々はまずいきなり今年の『統率者』デッキを発売することから始める。デッキは5種類あり、過去の『統率者』デッキよりも新カードの総数は多く……さらにいくつかの古い人気カードも戻ってくるんだ。
《嵐呼びのカラマックス》 アート:Cynthia Sheppard |
これは統率者戦についての進化的な転換を意味する。統率者戦用製品の大掛かりな計画の一環であり、メインのブースター・セットと同時に『統率者』を発売するのは初めてのことだ。
統率者戦はここで本当に主流へとなだれ込む。メインセットがさらなる楽しみにつながるぞ!
これはどのようにして実現につながり、どのようにデザインされたものなのか、そして何が期待できるのだろうか? さっそく見ていこう!
統率者戦はとんでもないものになる
2011年以降、我々は年に1度、統率者戦専用の『統率者』製品を発売してきた。それらは全て、構築済みのデッキだ。そしてこの9年間で、統率者戦はマジックの遊び方の中でも最も人気のあるフォーマットの1つにまで成長した――事実上、今や統率者戦は多くのマジック・プレイヤーにとってよく見知っているフォーマットだ。新旧どちらのプレイヤーもこぞって統率者戦をプレイしている。
しかしこの人気の高まりがある一方で……発売してきた製品は全く変化していなかった! 実際、これまでずっと同じ形式を維持していた。『統率者』は我々が行っていたほかの活動すべてから切り離されていたデッキで、ただ1年に1度登場していただけだった。それは販売計画のどこにでも割り込めるぐらいの扱いで、盛り上げるのに十分な期間がないことも多かったんだ。しかし『統率者』デッキは常に好評で、年々人気は高まっている! もっと関連製品を求める声は、間違いなくあった。
その一方で、新セットを毎年販売することには多大な時間とエネルギーを費やしている。それはデザインに限らない――世界を構築し、そのための登場人物を数多く作成する。皆がそれらの世界にとても興奮し、だれもがそれらについて語り合う。
そこで、我々はひらめいた。この2つを提携してみてはどうだろうか?
《永遠の陽気もの、オツリーミ》 アート:Victor Adame Minguez |
『統率者』は今後、セットに合わせての大がかりな販売計画に加わるかもしれない。その世界についてより多くのことを披露できるし、デッキのテーマをいくつか強調することも可能だろう。
どういうことだろうか?
まあ、これまでは、メインセットの伝説カードは、セットのテーマを紹介できる統率者であるという点に重きを置く必要があった。これはいくつかの理由から問題となりうる。
- これらはそのセットのカードなので、スタンダードで使用可能になる。多くの場合、統率者戦用の伝説のクリーチャーであってもスタンダードへの影響を考えて調整する必要があるため、だれもが興奮するようなカードは登場しにくくなる。
- 常にそのための枠があるわけではない。良いものが製作できたとしても、それはそのセットのほかの素晴らしいカードを追い出すことになる。そして、とてもよくあることなのだが、我々はほかのレアのために統率者戦向けのカードをセットから取り除く必要に迫られる……
- ……そのため、ときどき、セットのテーマで統率者戦用のデッキを組もうとしても、そのテーマに伝説のクリーチャーが絡んでこない場合があるんだ! 『カラデシュ』のエネルギー、『イニストラード』の狼男など……ほかにもいろいろとある。
すべてのデッキをそのセットに深く関連付ける必要はないものの、少なくともいくつかのデッキをそうすることは可能だ。これにより、デッキを統率できるその色の他の選択肢と同様に、セットのテーマに合致した伝説の統率者を送り出すことができる。
そしてそれを『イコリア:巨獣の棲処』で行うことは、このセットが楔3色というはっきりしたテーマを持っていることでさらに大きな意味を持つことになった。我々は2016年以降見かけなかった――とても要望が多かった――楔3色デッキを、それぞれの楔に合わせて5つ、それも本当にクールなものを再び生み出すことができたんだ!
当時、我々は『統率者レジェンズ』にも取り組んでいた。そしてそれは多くの過去の登場人物を展開するのに最適な場所であることが証明された。(私が前に執筆した記事で紹介した、《Baron Sengir》のようにね!)そして、通常の『統率者』デッキへの参戦待ちになっていた大昔のキャラクターを『統率者レジェンズ』が掘り起こし始めた。セットの大部分について懐かしさを最大限感じられるようにするために開放することとなり、それが今年の『統率者(2020年版)』にいくつか新キャラクターを披露する余裕をもたらすことになった。
というわけで、決まりだ。『統率者(2020年版)』を『イコリア:巨獣の棲処』と連携させてみよう!
そうすると別の問題が浮かび上がってくる……これは実のところデザインにとってどんな意味を持ってくるのだろうか?
新しい世界のためのデザイン
これは我々にとって目新しいものとなった。私はプロジェクト全体を最初から最後まで監督する企画者となったが、幸運なことに、その仕事を任せられる素晴らしいデザイン仲間がいたんだ。いや、文字通り素晴らしい仲間さ。展望デザインは第2回グレート・デザイナー・サーチの勝者であるイーサン・フライシャー/Ethan Fleischerに渡され、これらがどう思われるかについて取り組んでもらった!
新たな世界を紹介するにあたり、『統率者』デッキを素晴らしく、愛されるものにするための中核となる要素をしっかりと維持しておきたかった。イーサンと私はいくつかの指針となる原則を見極めようとした。大きなもののうちいくつかは、こういったものだ。
- 新しいカードはイコリア次元に関連付ける。これはイコリア次元をさらにアピールするためであり、のちに紹介するいくつかのクールな方法によりうまくいった。ここで1つ失ったものがあるとすれば、古い懐かしの伝説的存在を利用できないことだが、『統率者レジェンズ』がそれを後々やってくれるので、過去セットへの回帰と新セットの拡張についてはどちらも問題ない。
- 再録はどこからでも行う。最初はイコリアにありそうなカードだけにすべきかどうかという議論もあったが、我々はかなり早い段階でその考えを放棄した。あまりにも限定的すぎたのだ。新カードはすべてイコリア次元から生み出されるが、再録カードについては制限すべきではない。
- 今まで同様、必要なメカニズムはなんでも使う。『イコリア:巨獣の棲処』のメカニズムにのみ限定すべきではない。もし必要なら、探査、フェイジング、刹那といったカードであっても制作を検討する。(これら3つのメカニズムのうち1つは実際に新カードで使われている……当ててみてくれ!)これら復活メカニズムは『統率者』デッキの売りの1つなので、魅力的でクールなデザインを作るうえでやはり必要だ。
- メインセットのカード、中でもレアと神話レアは採用しすぎないようにする。テーマを機能させるためにいくつか必要なのは間違いないものの、基本的には、所有していないであろう古いカードのほうをさらに提供できるようにしたいからだ。皆が今まさにパックを開封して手に入れたものと同じカードばかりを渡したいわけではない。もし『イコリア:巨獣の棲処』の新カードがデッキに必要ならば、入手機会はたくさんあるだろう。
- 各デッキには17枚の新カードが含まれている。過去最高の新カード数だ!
マーク・ローズウォーター/Mark Rosewaterがよく言うように、制限は創造性を育む。そしてやはり、イコリア次元に似合うカードを作るという小さな制限は、フレイバー豊かなカードを生み出す楽しいとっかかりを我々に与えてくれたんだ。イコリアに関連付ける必要性から、イーサンはすぐに楽しくてイコリアらしいデザインをいくつも思いついてくれた。
《巣守り、ガヴィ》 アート:Randy Vargas |
そしてその多くは展望デザインで生まれたのだが、それは大きな革新を伴うセットのデザイン工程を進めるため、イーサンがセットをコーリー・ボーウェン/Corey Bowenに渡した後の出来事だった。イーサンは数か月にわたって独自のアイデアと全体的なデッキ構造を見つけ出すためのハードワークをこなしていたが、それをいったん家に持ち帰るのがコーリーの役割だった。そしてある日、彼はこのセットについてのビッグ・アイデアを私に持ち込んできたのだ。
知っての通り、イコリア次元には眷者と呼ばれる人々がいる。これら眷者は特定のモンスターと強い結びつきがあるんだ。彼らは互いに協力し、共に闘い、互いに支え合う。
待てよ……特定の味方と共に闘う、だって?
コーリーはこれをデッキで表現したかったが――「~との共闘」はこれを披露するための完璧なメカニズムだった。これらは指定された相方とのみ機能しあう共闘だ。我々が『バトルボンド』でそれを初披露したとき、プレイヤーはこのメカニズムを本当に気に入ってくれた。加えて言えば、『バトルボンド』のリードを行ったのは私なので、コーリーの提案を受け入れるのはそう難しいことではなかったわけだ。
すべてのデッキに「~との共闘」を持つペアを追加することで、それらの登場人物が結束し共に闘うように感じられる、本当にクールな仲間同士の団結をデッキで表現できる。素晴らしい提案だ、コーリー!
これは追加のちょっとしたサービスでもあり、各デッキには3つではなく4つの伝説のプレミアム版カードが含まれることになる。
それらがどんなものかはまだ見せられない――しかしそれらはそれぞれの物語を伝えてくれる。そしてそこには本当に面白い組み合わせがあるんだ。
イコリア統率者デッキのテーマ
さて、イーサンの展望デザイン・チーム(そしてコーリーのセット・デザイン・チーム)はどのようにしてテーマを選び、そしてなぜそのテーマに決定したのだろうか?
ああ、上で述べたように、それらは5つの楔3色から始まった。彼らはセットのテーマについて考え、そこを出発点として内容を進化させていく。
はじめは赤白黒の人間部族デッキだ。使用できる司令官の1つに、《ジリーナ・クードロ》がある。
部族としての人間は、『イコリア:巨獣の棲処』のサブテーマだ。何しろあらゆる場所で怪物が暴れまわっているので、人間はそれを阻止するために何らかの手を打たなければならない。ここで重要となるのがチームワークなのだが、マジックの歴史には数多くの人間が存在する……にもかかわらず、それらすべてを導く有用な人間の統率者はいなかった! 一番良くて《優雅な鷺、シガルダ》あたりだ。(はいはい、《限りないもの、モロフォン》ね、知ってるよ。)
というわけで、これはセットのテーマをサポートできて、過去の多くのカードと相性のいい魅力的な統率者を作るための本当に素晴らしい機会となった。イコリアで登場する新しい人間を使いたい? ばっちりだ! 《教区の勇者》と《自警団の正義》をストレージから引っ張り出したい? それらとも完全に噛み合う。
ここでもうひとつ良いことを伝えておく。イコリア統率者のクリエイティブ工程は、メインセットである『イコリア:巨獣の棲処』と並行した。メインセットが完成してから、使われなかった不用品を回収したわけではない。ジリーナはこのセットの主役であり、そしてこのデッキの顔役だ! すごいことだ。
次は、再録メカニズムに焦点を当てた青赤白のデッキだ。何かって? サイクリングだ! サイクリングは『イコリア:巨獣の棲処』で戻ってくる。そして、人間同様、サイクリングの統率者は事実上存在していなかった。何もかもが変わるぞ!
おそらくこれまでで最もガヴィン風のカード――《巣守り、ガヴィ》だ。
このカードは私の名前に似ているという驚きがあるだけでなく、まさにサイクリング・デッキが求めるものだ。繰り返すが、『イコリア:巨獣の棲処』のあらゆるカードと組み合わせることもできるし、過去のカードともばっちり噛み合う。良い組み合わせはいくらでもある……《静寂の命令》のサイクリングが無料ってことだよね?(とはいえ、《滅殺の命令》をフリーサイクリングしたら……うーん、お仲間に何か言われても知らないよ。)
もちろん、《巣守り、ガヴィ》は統率者の1人にすぎず、このデッキのすべての統率者がサイクリング関係というわけではない。過去の『統率者』デッキと同様に、統率者を変えたデッキは同じ中身であってもそれぞれ独特の感触と個性を持つことになる。
最後に言及しておきたいことが、メインセットとのクールな繋がりがもうひとつあるということだ。《巣守り、ガヴィ》は、『イコリア:巨獣の棲処』に収録されているカードのフレイバーテキストに数多く登場する……そしてその人物が『統率者』デッキに存在するんだ! これは両方の製品を一体に感じさせるだろう。
人間とサイクリングは、過去のカードとも新しいカードとも関連付けられる、昔からのメカニズムを利用できるという優れた例だ。白黒緑のデッキは、別の方向性を提示する。これまでに存在せず、メインセットのカードだけで運用することもできないが、まさにそれを新しく機能させるためにデッキを生み出した。この、キーワード・カウンターとキーワードを重視することになるデッキは、全く新しいものだ。
その統率者はどこにいるかって? 《様相ねじり、カスリル》はこの白黒緑デッキにいる。
これは、今年のこの『統率者』デッキがなければおそらく存在しなかっただろう。このデッキの看板クリーチャーだ。そして、キーワード・カウンターを使う統率者が好みじゃなかった場合に備えて、デッキにはほかにもいくつかの手堅い選択肢が含まれている。
荒々しいメカニズムが詰め込まれたセットの中にあっても、変容メカニズムはこれまでに体験したことがないような動きをするだろう――そしてこの統率者デッキは本当に最新のものなんだ。いくつかの変容カードを用いることで、《永遠の陽気もの、オツリーミ》が機能する。
この製品を、新しくも未踏の統率者を使ってデッキを構築できる機会を与えるものとして企画できたのは、本当に素晴らしいことだ。繰り返しになるが、変容に興味をそそられないのであれば、ほかの伝説のクリーチャーがあなたの好みを刺激するだろう。そのうちの1つは、ナイトメアとハイドラだ。ああ、今後お伝えできるだろう。
そして最後に紹介するのは、緑青赤のデッキだ。ほかのデッキはある程度絞ったテーマを扱っているが、1つぐらいは何か別のものを用意したかった。これは構築方針としては新しいもので、関連する既存のカードも山ほどある。インスタント・デッキだ!
インスタントやソーサリーを求めるカードはいくつかあるが、このデッキの中核と言える統率者、《嵐呼びのカラマックス》はまさにインスタントを要求するカードだ。
このデッキを形にするのはとても楽しかった――展望デザイン・チームでこのデッキの原型を作り上げたマーク・グローバス/Mark Globusから、彼が選んだカードについての活躍ぶりをあれやこれやと聞かされたことを覚えている。《砕土》を唱えて土地を4枚引っ張り出すにせよ、突然致命的なダメージを与えるためにパンプアップ呪文を唱えるにせよ、このカードは面白いドラマをたくさん生み出したんだ。
ぴったりな再録
先ほど述べたように、デッキの新カードは『イコリア:巨獣の棲処』にふさわしいものだが、再録はどこからでも行えるようにした。これにより十分な柔軟性を獲得できた――つまりは、人気カードをいくつも再録することが可能になったんだ。
我々は『統率者(2018年版)』『統率者(2019年版)』で再録の内容をよりうまくやれるよう、意識して取り組んできた。そしてこれは、プレイヤーが通常の『統率者』デッキに期待する水準に合わせることが重要だと思うのだが、過去2年間のものと比較しても多くの良いカードとさらなる熱気がここにはあるはずだ。
『統率者』デッキへの反応について我々が対応しようとした具体的な要素のひとつは、マナベースだ。デッキにアンタップで出せる土地をもっと増やせるように、採用できる土地を丹念に調べていった。この週末のプレビューを通してそれらのお披露目ができるだろう。
そして、マナに関してはそれだけではない。他にもあることをここで初めて発表できることを嬉しく思うよ! 『エルドレインの王権』Brawl Deckで見られたものが、いま再び戻ってきた。ああ、おそらくピンときただろう……《秘儀の印鑑》によろしく言っておいてくれ!
《秘儀の印鑑》は『統率者(2020年版)』のすべてのデッキに含まれている。入手機会が増えることで、うまくいけば誰もが最先端の統率者デッキを手にすることができるだろう。
イコリアを統率する
しかしこれらは、イコリア統率者デッキのほんのさわりだ――この週末にデッキの内容が紹介されるのを期待してくれ! プレビューがたくさんあるので、それらの発表をお楽しみに。
我々は、プレイヤーがこれらをどのように楽しんでいるのかを確認するため、皆さんの感想をしっかり意識している。今年の後半には『統率者レジェンズ』があるだけでなく、『ゼンディカーの夜明け』と『統率者レジェンズ』それぞれに2つずつ統率者デッキが付随するため、今年の統率者戦界隈にはさまざまな出来事があるだろう――みんながどう思うか、楽しみで待ちきれないよ。
今週末に紹介されるカードについて、あなたの感想を聞かせてほしい! 私はいつでも皆さんの意見を求めている――それこそが統率者関連製品をより良くし続けるための方法なんだ。(訳注:英語で)Twitterで伝えてくれても、Tumblrで質問してくれても、Instagramにメッセージを送ってくれても、BeyondBasicsMagic@gmail.comにメールしてくれてもいいよ。大歓迎だ。
これらのデッキは『イコリア:巨獣の棲処』プレリリースで最速プレイが可能なので、行きつけのショップに連絡して、デッキを予約できるかどうか聞いてみよう。
それまで、『イコリア:巨獣の棲処』のプレビューを楽しんでくれ――怪物的な期間となるはずだ!
――ガヴィン
- メール:BeyondBasicsMagic@gmail.com
- Instagram: GavinVerhey
- Tumblr: GavInsight
- Twitter: @GavinVerhey
(Tr. Yuusuke "kuin" Miwa / TSV testing)
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