READING

読み物

翻訳記事その他

『Secret Lair』発表

Mark Heggen
authorpic_markheggen.jpg

2019年11月25日

 

 1993年、『ベータ版』が発売された頃、私は小学5年生でした。私は友だちと一緒にお小遣いの許す限りスターター・デッキを買い求めましたが、その結果、自分で使うデッキでは使わないカードがたくさん手に入りました。私たちはそれぞれ使う色を決めて、それ以外のカードはすべて交換し合いました。最終的に私の手持ちはすべて緑のカード、親友のポール/Paulはすべて青のカード、という風に分かれました。事件が起きたのは、あるお泊り会での夜のことでした。私たちはそれぞれのコレクションを慎重に仕分けて床に広げていきました。そこで立ち上がった拍子に、私は倒してしまったのです……ピッチャーいっぱいの……レモネードを。そのときの恐ろしい瞬間は、今でも目を閉じるとスローモーションで蘇ります。ポールのカードがすべて、黄色の波にさらわれる瞬間が。

 その場の全員の同意のもと、私が持つ緑のカードをすべてポールにあげて、青の担当は私が引き継ぐことに決まりました。次の日、私は新たに手にしたベタベタのカード・コレクションを1枚ずつはがし、綺麗に伸ばす作業に取りかかりました(経験豊富な者からのヒント:シワになった《幻影獣》にいくら姉のドライヤーの風を当てても、元通りにはなりません)。そこで私は出会ったのです。思わずその場で作業を止めてしまうほどのカードに……

 そう、《停滞》です。

 え、何このカード? どういうアート? 誰が描いたんだろう?……不意打ちでしたね。私は《停滞》にすっかりやられました。

 それまで私は、《奈落の王》のような古典的なファンタジーのアートや《赤の防御円》のような型にはまったアートが大好きでした。しかし《停滞》のアートを初めて見た瞬間、私はその絵に教えられました――マジックというゲームは、私が知るよりはるかに大きく、風変わりで、奥深いのだと。《停滞》のアートに居場所があるゲームなら、私にも居場所があるに違いないと感じました。

 以上の話のポイントは2つです。1つは、他の多くのカードでは真似できない/するべきでないクリエイティブ面やアート面に特化したごく一部のカードは、マジックにおいて本当に重要な役割を担っていること。もう1つは、レモネードを置く場所には注意することです。

実験の場

 ここウィザーズ本社では、過去のカードを新たに面白い形で世に出そうと、毎日さまざまなアイデアが飛び交っています。アートを活かしたギャグやポップカルチャーの表現、クリエイティブ面のテーマ、だじゃれ、前例にとらわれないスタイルのアートなど、多種多様なアイデアが議論されているのです。中にはひどいアイデアもありますが(私の「写真みたいな壁画」コレクションをお披露目していいかな?)、素晴らしいアイデアも生まれます。そして素晴らしいアイデアが生まれると、次はだいたいこうなります――「いいね、でもどこで実現させる?」

 マジックのカードの大半は、セットの一部として作られて世に出ます。セットに収録される多くのカードが組み合わさることで、まとまりがあり物語性豊かで丁寧に手作りされた世界が描かれるのです。広大な世界を作り上げ、それをビジュアルで表現するのは、ウィザーズ・オブ・ザ・コーストによるクリエイティブ面での努力の中でも特に重要なことです。独創的で一貫した世界観は、マジックの心臓部なのです。しかしそれでも、「セットの世界観からは離れるものの、一部のプレイヤーに愛されることを想定したカード」というものは存在します。それらは、私たちが皆さんにお届けしたいクリエイティブ面の要素とは大きく異なり、一様に揃ったそのセットの他のカードとは一線を画し、アートのスタイルも描かれた世界に没入できる他のカードと比べるとクセがあり、フォーマットでの適性など、そのセットが目指すところには向かいません。

 それから、『Signature Spellbook』や近日登場する『Commander Collection』といったセット外の製品もありますし、特別なイベントやプログラム向けに作成しているプロモカードもあります。それらはクリエイティブ面に特化したカードを収録する絶好の場なのですが、そこでも製品としての目標やクリエイティブ面のテーマは設定されており、うまく合わないことが多いのです。

 私たちは一部のマジック・プレイヤーに愛されそうな製品を作るのが大好きです。そこで、まったく新しい製品を作ることにしました。既存のカードを、普段は実現できない一風変わった予想外の形でお届けしやすい製品を。

 『Secret Lair』へようこそ。

V28pO3oDii.png

 『Secret Lair』は、私たちの実験や探究の場として立ち上げられたマジックの新たな「サブ・ブランド」です。この製品は、これまでのマジックのカードとは一線を画す新たなスタイルのアートのための居場所です。(はっきりさせておきますが、この製品に収録されるものは本当に変わったものばかりです。あなたの大好きな1枚に出会えるかもしれませんし、嫌悪感を受けるものもあるかもしれません――それでいいのです。)また製造工程も、これまでにない方法になる予定です。

 そして早速ですが、12月2日(日本時間12月3日)からすべてが始まります。1週間にわたって、『Secret Lair』の各ドロップが華々しくデビューするのです。

3hwfeKTon4.jpg

『Secret Lair』ドロップ・シリーズ

 『Secret Lair』ドロップ・シリーズは、『Secret Lair』の最初の製品ラインナップです。ドロップ・シリーズはそれぞれ内容の異なる「ドロップ」と呼ばれる独立製品で構成されており、各ドロップには特定のテーマにもとづいて厳選された少数のカード(通常3~5枚)が収録されます。収録カードには新規アートが用意され(中には本当に斬新なアートもあります)、特製のコレクション・ボックスに封入されます。

 ドロップ・シリーズは、「お客さまに直接お届け」できるからこそ実現できる最高にエキサイティングな製品です。そのため、私たちのウェブサイトで直接販売します。

 そしてドロップ・シリーズの発売を記念して、12月2~9日(日本時間12月3〜10日)の1週間で最初の7製品を一気に展開します。

 各ドロップの内容や購入方法の詳細については、こちらをご確認ください。

数量限定生産品への新たなアプローチ

 私たちにとって重要なのは、『Secret Lair』のカードに皆さんが欲しがるような特別感とコレクション性を与えることです。多くの場合、それを実現するための最適な方法は数量を限定し素早く売り切ることです。しかし『Secret Lair』ドロップ・シリーズに取り組むうちに、この製品には適さない方法だと私たちは感じるようになりました。各ドロップは、いわばマジック・ファンの皆さんへのラブレターです。ご紹介したドロップを楽しみに発売日当日に来た方が、早く来なかったからというだけで製品が手に入らないのは、私たちの望むことではありません。

 そこで私たちは、『Secret Lair』ドロップ・シリーズを新たな方法で販売することにしました――期間限定の受注生産です。12月に始まるこの販売方式は、以下のように機能します。

 各ドロップは、各日午前9時(PST)より24時間限定で注文を受け付けます。受付期間中に特設サイトへアクセスし、現在販売中のドロップをお買い求めください。本当にお気に入りのカードがありましたら、複数購入することもできます(最大10個まで)。他にどれだけ売れていても(あるいは売れていなくても)、24時間の間なら確実にご購入いただけます――その日のうちに行けば、必ず手に入るのです。

 ただし受付期間にはお気をつけください! 24時間の受付期間が終了したら、入口は閉まり製品の購入はできなくなります。それでおしまいです。

 この方法なら各ドロップに特別感を持たせられ、それらを手に入れるべく努力した筋金入りのマジック・ファンの皆さまに報いるものになると私たちは思っています。さらに、時間帯や睡眠パターン、インターネット接続の速度など、皆さんの実生活の違いにも対応できる方法だと思います。(なお、これもはっきりさせておきますが、私たちは今後もときどき、素早く売り切ることを想定した数量限定生産のマジック製品を作る予定です。今回のような「期間限定」の方法は『Secret Lair』ドロップ・シリーズだからこそできるものであり、他の製品では必ずしも効果的ではないのです。)

価格

 価格と内容については、これから時間をかけてさまざまな設定を試してみようと思います。2019年の『Secret Lair』ドロップ・シリーズでは、29.99ドルと39.99ドルのものが発売されます。

『Secret Lair』の今後

 この新製品がこれからどうなっていくかは私たちも予想できず、楽しみにしています。今は最初のシリーズを成功させるべく注力していきますが、2020年以降の計画についてもすでに着手しています。

さらなるドロップ

 2020年版の新たなドロップ・シリーズは現在鋭意制作中です。それらは最初の7製品とコンセプトは同じながらも、さらなる楽しさやクリエイティブ面の方向性をもたらすでしょう。2020年版のドロップは、今回のように一度に展開するのではなく、1年を通して発売していく予定です。

 2020年版のドロップでは新たなクリエイティブ面へのアプローチに加えて、それらの発表や製品展開、販売の方法についてもいくつかの実験を始めようと思っています。例えば、来年発売されるドロップのうち少なくとも1つは、発売日当日にサプライズ・パーティーの形で内容を発表するつもりです。

 2020年版のドロップに収録されるカードについては、今は詳しくお話しできません。なので代わりに、私が初期のラフスケッチをいくつか見て、描かれているものをお伝えします。

  • 爆発する岩の前に立つ勇敢な者
  • とってもいい子
  • 印象的な空を切り裂くように飛ぶ有名な鳥
  • 友人たちと囲む温かい食事
  • ベレー帽

 詳細は来年お話しします。今は、さらなるドロップがやって来ることだけお約束します。

製品は変わるの?

 現時点で確定していることはありませんが、『Secret Lair』の理念と熱意にもとづく新製品のアイデアも検討中です。また、価格やクリエイティブ面、パッケージ、製品の展開方法なども異なるものを試しています。それらのアイデアが前に進み、このサブ・ブランドの新製品として世に出る場合は、『Secret Lair』の関連製品であることをしっかり示すために「『Secret Lair』○○」という製品名でリリースします。私たちは、『Secret Lair』が今後どのように展開されていくのか見守ります。皆さんも2020年の更新にご注目ください。

さらなる楽しさ

 最後になりましたが、『Secret Lair』の本質は「楽しさ」にあり、私たちが愛するマジックという素晴らしいゲームをお祝いするものです。来年は皆さんのためにさらなる楽しさと驚きを計画していますので、どうか楽しみにしていてください。衝撃を受けるものもあれば、困惑するものもあるでしょう。その中で1つか2つでも、まさかカードでこんな表現ができるなんて、と思われるものがあれば幸いです。

 いつもマジックを支えてくださり、ありがとうございます。私たちが始めたこの新たな実験を見てくれる皆さんに感謝しています。

 さあシートベルトを締めてください。間もなく、これまでにないことが起こりますよ。

 『Secret Lair』へようこそ。

  • この記事をシェアする

RANKING

NEWEST

CATEGORY

コラム

BACK NUMBER