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ブロールの展望
2018年5月10日
すごい。
3月の終わりにブロールを紹介してからの反響をまとめると、「すごい」のひと言だ。このわずかな期間でみんながブロールをプレイし、このフォーマットに関する活発な議論を経てフィードバックを送ってくれたことに、私は完全に圧倒された。ブロール用のデッキやゲームの様子がTwitterで流れてくるたび、私はこのフォーマットが世界中で受け入れられプレイされていることに、笑みがこぼれるのを抑えられなかったよ。
ブロールは、私たちにとっても新しい試みだった。発表した時点では、みんなにどのように受け止められるかわからなかった。でも私たちは、はっきりと耳にしたんだ――多くの人がブロールを好きになってくれたことを。そしてもちろん、多くの人がこのフォーマットについて見事な洞察を見せ、素晴らしい提案をしてくれていることも。
この前も話したけれど、私たちは今「大フィードバック時代」(リンク先は英語)のただ中にいる。ブロールの発表記事でも、私たちはみんなの意見にしっかりと耳を傾けていることを伝えた。私たちは、みんなの意見をもとに変更を加えることに積極的な姿勢でいる。すべての用意が整っている。
私たちは開発部内でブロールを注意深く観察し、みんなからのフィードバックを集め、このフォーマットを今後どうしていきたいのか何度も議論を重ねた。はじめは小さな実験だったブロールは、本格的なフォーマットに成長した――そこで私たちは、今後の展望を作ることにしたんだ。
今日は、ブロールの展望といくつかの変更をお伝えしようと思う。
準備はいいかな? 早速始めよう!
ブロールする
ブロールが考案され、私たちのもとへ持ち込まれたとき、それは多人数戦用フォーマットだった。私たちは多人数でプレイし、テストを行った。
そして君たちの多くも、多人数でプレイしている。私が受け取った写真の多くは、みんながグループでテーブルを囲みブロールしている姿が写ったものだった。本当に素敵だね! 私も多人数戦のブロールが大好きだよ。リラックスした気持ちで交流を心から楽しめて、よりカジュアルに多人数戦を味わえるから。しかも、カードのコレクションが少ない人でも始めやすい。
グランプリ・シアトル2018で、私は同僚とともにブロールの体験会を開いた。一番思い出深かったのは、金曜日に体験会に来て用意されたデッキでブロールを体験したプレイヤーたちが、土曜日か日曜日にも訪れてくれて、「とても楽しかったから今度は自分でデッキを組んで来ました。やりましょう!」と言ってくれたことだ。そういうことが何度も起きた。「百聞は一見にしかず」というわけだ。
これまで、スタンダードのカードで遊ぶカジュアルな多人数戦はしっかり整備されていなかった。しかしブロールが導入されて以来、多くの経験の浅いプレイヤーがブロールを始めて、カードのコレクションが豊富な友人と一緒に楽しく遊び、盛り上がっている姿を私は目にしている。
まさに私たちの期待通りだった。そして、同じくフォーマットとして導入しながらも、プレイヤーたちの心に響くと確信できなかったものがある――1対1のブロールだ。
《ヴラスカの侮辱》 アート:Clint Cearley |
1対1のブロールはすぐにプレイヤーたちの関心を惹いた。多人数戦より1対1での戦いを好む経験の浅いプレイヤーから、スタンダードのカードが揃っていないけど構築フォーマットを楽しみたい経験豊富なプレイヤーや、スタンダードのカードの使い道を探すドラフト好きまで、多くのプレイヤーがこのフォーマットを歓迎した。
さらに1対1のブロールは、有名プレイヤーの心も掴んだ。サム・ブラック/Sam Blackやアンドレア・メングッチ/Andrea Mengucci、ギャビー・スパーツ/Gaby Spartzといった人気ライターや配信者も、このフォーマットを題材にコンテンツを発表した。私自身も面白い場面に遭遇したよ。近所の店舗で開かれたブロール開始記念のパーティーへ足を運んだら、そこにジェリー・トンプソン/Gerry Thompsonの姿があったんだ。彼は自分で組み上げたブロールのデッキを操り、1対1のゲームに夢中になっていた。その周りにも、新規プレイヤーから経験豊富なプレイヤーまで、多くの人がブロールを楽しんでいた。
そして私も1対1のブロールをプレイし、これもすごく楽しいことがわかった! デッキへの採用枚数が1枚ずつだからデッキを作りやすく、視野を広くして革新的なアイデアに取り組めるのは、間違いなく魅力的だね。さらに、伝説のキャラクターを中心にデッキを構築する楽しさも味わえる。
(多人数戦だけでなく1対1の対戦まで)ブロールがここまで広く支持されるものになるとは、本当に驚いた。このフォーマットは、私たちの期待以上に大きく成長したのだ。
ブロールの理念
大きな反響を目の当たりにしながら、開発部はブロールのあるべき理念と目標を定めていった。本当に多くのフィードバックを精査し、それらを私たちが大切にしているものへ丁寧に落とし込んでいった。そうして完成したものを、これからみんなへ共有しよう。
発表する前に、ひとつだけ注意してもらいたい。これから発表する「ブロールの理念」は、あくまで現時点での方針であり、不変のものだと言うつもりはない。今後ブロールが進化を続けるうちに、方針を変えるほどのフィードバックが集まれば、これを再評価するつもりだ。とはいえ現時点では、これが私たちの立場とこれから向かう道筋を示している。
ブロールの理念を示す5か条は以下の通りだ。
1.ブロールには大切にすべき支持層がふたつある
先述した通り、多人数戦フォーマットから始まったブロールはふたつの遊び方が支持されるほどに発展した――多人数戦と、1対1だ。私たちにとってはそのどちらも大切であり、どちらもサポートしていくつもりだ。
どちらのグループにも、私たちが最高のサービスを提供できる方法はたくさんある。私たちは今後もブロールをサポートするために必要なことを探し続け、多人数戦と1対1のどちらのグループのニーズも満たせるよう取り組んでいく。まだ具体的なことは何も言えないけれど、取り組みの最中だということでご理解いただきたい。とはいえ、例として既存のものについて言及しておこう。私たちは、Magic Onlineで1対1のブロールをサポートし続けるのは大事なことだと考えているし、ゲーム・バランスに応じてこのフォーマットを調整していくのも大事なことだと考えている(これについては、後でもう少し詳しく話そう)。
しかしながら、多人数戦と1対1で求められるものがぶつかる場合、多人数戦が優先されるだろう。ただし、常に多人数戦を第一に考えるわけではない――例えばある伝説のクリーチャーが多人数戦では問題ないものの1対1ではあまりに強すぎる場合、それを禁止するのが妥当だと判断される可能性が高い。多人数戦と1対1のどちらかが少しだけ悪くなる代わりにもう片方が大幅に改善されるなら、大幅に改善されることを優先する。それでも、ふたつのグループで求められるものがどうしても競合する場合、基本的には多人数戦を優先するという話だ。
その理由は? ブロールというフォーマットの存在意義のひとつが、「スタンダードのカードを使ってカジュアルにリラックスした気持ちで多人数戦を楽しめること」だからだ。とりわけ新規プレイヤーや最近復帰したプレイヤーのために、カード資産的に始めやすい遊び方を多く用意しておくことが重要だ。これまでのマジックには、簡単に始められて友人たちと交流を楽しめる方法が不足しがちだった。私たちはブロールこそがその穴を埋められると信じていて、そこを妥協したくないのだ。
《荒くれ船員》 アート:Steve Prescott |
とはいえ、私たちは多人数戦と1対1を別々の遊び方ではなく、ひとつのフォーマット「ブロール」として見ている。ブロールのデッキをひとつ持っていれば、多人数戦でも1対1でも楽しめる。もちろん多人数戦の方が強いデッキも1対1の方が強いデッキもあるけれど、どちらかでしか戦えないデッキはない。それらが異なるフォーマットじゃない、ということが大切なのだ。
これは第2条にも関係する。
2.ブロールを細分化しない
こんなシナリオを想像してみてくれ。
君は行きつけのゲーム店へ足を運び、「誰かブロールで遊ぼう」と声をかけた。すると2人が「やろう!」と応えてくれた。
君たちは早速、席についてゲームを始める。しかし最初の2ターンで早くも、全員が全然違うルールのもとでデッキを構築していたことがわかった! 君はスタンダード・ブロール用のデッキ。一緒に遊んでくれた2人のうち片方はモダン・ブロール用のデッキ。そしてもう片方は『インベイジョン』ブロック・ブロール用のデッキだった……この瞬間、巨大な「言葉の壁」ができる。「ブロール」という言葉は人によって意味が異なり、同じフォーマットとして遊べなくなってしまうのだ。
「ブロール」と言うとき、それがどのフォーマットを意味するのかわかるのが大切だ。「モダン」や「統率者戦」と言うとき、大部分のプレイヤーはそれが何を意味するのかすぐにわかる。(統率者戦は1対1と多人数戦で違うけれど、単に「統率者戦」と言う場合は多人数戦フォーマットを指すことが広く浸透しているはずだ。)
とりわけ始まったばかりのブロールをさらに分け、公式で認めるのは極めて危険だ。細分化すると互換性がなくなるという問題が生まれ、プレイに必要な人数が集められなくなってしまう。ひとりがスタンダード・ブロール、ひとりがモダン・ブロール、もうひとりが『インベイジョン』ブロック・ブロールではゲームが成立しない。フォーマットが統一されているからこそ成立するのだ。
ブロールにおいては、どこへ行っても「いつでもこのデッキで遊べる」という安心感を生み出すのがとても重要だ――(よほど1対1に特化したデッキでない限り)統率者戦がそうであるように。こういったフォーマットが盛り上がる理由の大部分は、その「安心感」にある。私たちは多人数戦と1対1を両方サポートするため、厳密に言えばふたつに分けられるが、多人数戦と1対1のどちらか用にデッキを組んでも、どちらでも遊ぶことができるのだ。
では具体的にどうするのか?
ひとつは禁止カード・リストの共有だ。私たちは、1対1のブロールでだけカードを禁止し、多人数戦では引き続き使えるという状況にはしたくない。その逆もまた然りだ。つまり、君たちのデッキが想像をはるかに超えてたくさんの人に使われるようになったら、君たちも使えなくなる可能性がある。
《減衰球》 アート:Adam Paquette |
ただし、ゲームプレイにおけるルールが変わらない調整については柔軟に対応する、ということだけは言っておきたい。1対1のブロールだけゲーム開始時のライフ総量を変え、多人数戦の方は据え置きという調整はその一例だ。パラメーターが変わったところで、君たちのデッキは変わらずどちらでも使えるだろう。もちろん強さが変わるデッキもあるけれど(例えば高速アグロ・デッキはライフ総量による影響を受けるだろう)、それでも一緒に遊ぶことはできるし、十分ゲームになる。一番大事なのは、プレイヤーたちがフォーマットへの認識を共有し、一緒に卓を囲んでそれぞれのデッキをプレイできることなのだ。
おそらく最も多くの議論を呼んでいるのは、ブロールで使用できるカードの範囲についてだろう。では第3条を見ていこう。
3.ブロールではスタンダードの範囲のカードを使用する
ブロールについての議論の中でも、おそらくこれが最も多く交わされたことだろう。たくさんの議論を追いかけ、飛び出す意見を眺めるのは素晴らしい体験だったよ。
議論の中で見事なアイデアがたくさん生まれていた。長年にわたり統率者戦のような多人数戦フォーマットを楽しんでいる人たちを見てみると、「ローテーションがどのように機能するか」や「どのようなデッキが実現できるか」、そして「このフォーマットの目標は何か」といったさまざまな内容で議論を交わしていた。
正しい道はどこにあるのだろう?
それを見つけるのは、針に糸を通すようなものだ。ブロールのデッキを組んでも、いずれローテーションを迎える。カジュアル・フォーマットは普通ローテーションしないし、そこで辞めるきっかけになり得るだろう。しかし同様に、使えるカードがどんどん積み重なっていくと、「新規プレイヤーやドラフト好きが始めやすい」というアイデンティティを失う。時間が経てば結局、統率者戦のように広大なカード・プールのフォーマットになってしまうのだ。
それらの間を取る方法もあるにはある。例えば、過去にブロールで使用可能だったデッキはそのまま使えるという案だ。しかしながら、これはより強力なセットを含む時期がそれ以外の選択肢を狭めてしまうだろう。また、使えるカードはスタンダードの範囲だが、歴代の伝説の統率者をどれでも使えるようにするという案。これも、スタンダードのカード・パワーを逸脱した強力な統率者ばかり何度も目にする結果になるだろう。
さらに私たちは、デッキが組みやすいカジュアル・フォーマットを歓迎する声を本当にたくさん受け取っている。特筆すべきは、それらのフィードバックには古いカードを相手に競い合う必要を感じずに持っているカードで遊べることへの感謝の言葉が綴られていたことだ。そう感じている人は多くいて、彼らの意見も大切なのだ。
結論を言うと、あらゆる方面から寄せられた大量のフィードバックを精査した私たちは、ブロールで使用できるカードをスタンダードの範囲に留める決断を下した。パワー・レベルの点や、新規プレイヤーやドラフト好き、コレクションの少ない人が始めやすい点、そしてローテーションにより新鮮さが保たれる点……ブロールの今後の展開が楽しみになる要素に満ちているのだ。
とはいえ、この議題に関する議論はかなり活発で、他にも根強い意見があるのは私も認識している。引き続き、みんなの反応や探求の様子を観察したい。私たちは今後も、新鮮なフォーマットの重要性について学び続けるつもりだ。特に秋にはローテーションを迎えるからね。だが現時点では、ブロールで使用できるカードはスタンダードの範囲に留め、経過を見守ることにする。
4.ブロールの楽しさを守る
フォーマットの未来のことを論じていると、いたって単純なことをつい忘れてしまいがちだ――ブロールは楽しいんだ! それこそ私たち全員がブロールに注目する理由だ。そのことをしっかりと理念に盛り込み、見失わないようにするのが大切だろう。
ブロールの楽しさは主に以下の点にある。
- シングルトンであるがゆえの多様性! 毎回、まったく異なるカードの組み合わせでゲームを楽しめる。
- キャラクターを中心に構築できること。特定のカードをいつでも使えるというのは、スタンダードでは味わえない本当に面白い点だ。その上で、デッキの他のカードの選択肢は広大であるというのも魅力だね。「毎ゲーム[特定のカード]を引けるなら超強いよ」と言えるデッキはたくさんある。ブロールはそれを実現してくれるのだ! さらに、通常のプレインズウォーカーを統率者として使えるのは、このフォーマットだけだ。
- 普通の構築フォーマットでは使われないカードが活躍できること。スタンダードも楽しいけれど、同じようなカードが採用され、似たようなデッキばかりになりがちだ。その点ブロールはシングルトン・ルールと固有色の制限により、スタンダードのデッキでは決して採用されないようなカードも活躍できる。それがまた、楽しいのだ!
- 始めやすいこと。ブロールのデッキを組んでプレイするのに必要なものは少なく、本当に気軽に始められる。普段からドラフトを楽しんでいる人なら、さらに簡単にブロールのデッキを組めるだろう。
もちろん、これですべてではないけれど、鍵となる重要な部分は押さえてあると思う。今後もブロールの発展にあわせて、私たちはこのフォーマットを傷つけるのではなくより素晴らしいものになるよう、常にさまざまな要素をサポートしていくつもりだ。(例をひとつ挙げよう。もし私たちがブロールでどのカードも2枚ずつ使えるようにしたら、シングルトンであるがゆえの楽しさを傷つけることになるだろう。)
《多勢の兜》 アート:Igor Kieryluk |
では第5条に移ろう。最後になったけれど、もちろん重要度が低いわけじゃない。むしろ、私が特に強く思うことだ……
5.ブロールはウィザーズが支えるべきフォーマットである
ブロールが始まったときに私たちが行ったのは、ルールを発表してMagic Onlineでのイベント開催を約束しただけだった。いわば車を組み立て、微調整しただけだ。その車を動かすのに、君たちの助けを求めた。
それから数か月あまりのことだ。君たちの後押しを受けてスタートしたこの車は、一気にトップ・スピードに乗った。なんてすごいんだ! ブロールは、私たちができる限りのあらゆる方法でサポートするべきフォーマットであることを証明したのだ。
私のもとには多くの要望が寄せられた。ブロール用のプロモ、特別なブロールのイベント、ブロールの構築済みデッキ、定期的な禁止制限告知……本当にたくさん! 現時点ではまだ結論を発表することはできないけれど、社内でさまざまな議論が行われているということは知らせておきたい。
開発部は今後のセットにおいて、ブロールで使って楽しい伝説のクリーチャーやプレインズウォーカーを各色バランスよく用意できるよう試みるつもりだ。現在のブロールでは、(《永遠の大魔道師、ジョダー》を除いて)統率者となるカードがない色がある一方で、赤緑白や青黒赤など複数の統率者候補がある色もあり、その点をはっきりと指摘する声が多く寄せられている。私たちはその問題に取り組み、どの2色の組み合わせにも選択肢を用意できるようにしていきたい。また、すべてを網羅しないにしても、3色の組み合わせについてもできるだけ多くの選択肢を用意したい。(つまり、多くのプレイヤーにとって素敵な伝説のカードが登場するということだ。)
どれも実現に時間はかかるかもしれないが、私たちの計画に入っているよ。
オーライ。以上がブロールの理念だ。では具体的にどうなるのか?
いくつかの変更を行うときだ。
無色の導入
最初は、構造的な部分の(そしてブロールのユニークさを高める)変更だ――ブロールで無色の統率者が使えるようになる。ここ数か月で集まったフィードバックの中で、実に多くのプレイヤーが《ギラプールの希望》のような無色の統率者をもっと使いやすくしてほしいと声を上げていた。
オーケー、オーケー。それから《ウルザの後継、カーン》もね。
しかし現在のスタンダードにある土地では、それは実現不可能だ。無色の統率者では、色マナ・シンボルが書かれた土地を使えない……基本土地も含めて! 無色の統率者でデッキを組めるようにするのは、私たちも絶対に実現したいと考えていた。
私たちはさまざまな選択肢を吟味し、以下のルール変更を決めた:無色の統率者の場合は、基本土地をどれか1種類使用できるようになる。
これにより、みんなが持っているカードでデッキを組みやすくなるはずだ。《荒地》を使用可能にするという案もあったが、スタンダードで使用できないカードを使用できるようにすることの違和感が拭えなかった。さらに、この案では『ゲートウォッチの誓い』のカードを集める必要があり、今後時間が経つにつれて難しくなっていくだろう。基本土地をどれか1種類使用できるという変更は、綺麗な解決案だと思う。Magic Onlineへの実装も簡単で、私たちの求める方針に合致している。
以下に、マット・タバック/Matt Tabakによる専門的で丁寧な解説をお送りしよう。
- あなたが統率者に指定したカードがマナ・コストおよびルール・テキストに色マナ・シンボルを含まない場合、5種類の基本土地(《平地》、《島》、《沼》、《山》、《森》)から1つを選び、デッキに選んだ基本土地を望む枚数入れることができます。
- 例えば、ブロールにおける《ウルザの後継、カーン》デッキは、《平地》20枚や《森》20枚を採用できます。ただし、《平地》と《森》の両方を入れることはできません。
- 基本でない土地を含め、デッキに入れるその他のカードに関しては、元々のルールが適用されます。「あなたが統率者に指定したカードのマナ・コストまたはルール・テキストに含まれない色マナ・シンボルを、マナ・コストまたはルール・テキストに含むカードは、デッキに入れられない」
今すぐ《ウルザの後継、カーン》デッキを組み始めよう!
《ウルザの後継、カーン》 アート:Chase Stone |
ブロールのプレイ・デザイン
ブロールの人気が高まり世界中のプレイヤーに歓迎されたことを受けて、私はプレイ・デザイン・チームと話をして彼らの観点から助けを得た。プレイ・デザインはマジックの各フォーマットをより良くするために結成された比較的新しいグループで、環境を把握することに長けている。そして幸運なことに、プレイ・デザイン内にもブロールのファンがいる!
私はプレイ・デザインに、このフォーマットを掘り下げるよう依頼した。数多の議論と調査を経て、彼らはいくつかの見解と変更案を届けてくれた。以下に、イアン・デューク/Ian Dukeによるプレイ・デザインの考えとブロールに加える変更についてお送りしよう。
イアン、よろしく!
ブロールにおける禁止・制限リストの変更
プレイ・デザインは、他の開発部グループとともに新しく導入されたブロール・フォーマットの歩みを注意深く観察してきました。このフォーマットを受け入れたプレイヤーたちの盛り上がりに私たちは心躍る思いを感じていますが、その一方で、ブロールを可能な限り楽しいものにするためにはバランス調整が必要であることもはっきりしました。
ブロールに加える変更をお話しする前に、もう一度ガヴィンの言葉を借りてお伝えしたいと思います。開発部は、ブロールのことをさまざまなタイプのプレイヤーに向けたフォーマットだと捉えています。多人数戦と1対1のブロールはそれぞれに別の楽しみがあり、さらにそれらをカジュアルに遊ぶことも競技として遊ぶこともできるようにしたいのです。したがって、ブロールのバランス調整においては、すべての遊び方を考慮し、さまざまなプレイヤーからのフィードバックをもとに決められます。
それを念頭に置いた上で、開発部はブロールのデッキ構築・ルールを統一することが重要だと感じています。プレイヤーの皆さんにそれぞれの禁止カード・リストを作成してもらうというのは難しく、また多人数戦や1対1、あるいはカジュアルに遊ぶ場合と競技として遊ぶ場合で使用可能なカードが異なるというのは、それによる欠点が利点を上回ってしまいます。そこで本日お伝えするバランス調整は、すべての遊び方に適用します。今後も定期的に、ブロールのすべての遊び方を対象に変更を行っていきます。
まず、ブロールの禁止カード・リストとスタンダードの禁止カード・リストの共有をやめ、ブロール独自の禁止カード・リストを制定します。カード・プールは今後もスタンダードで使用可能なセットで構成されますが、禁止カードはブロールとスタンダードで異なる内容になります。こうすることで、私たちはそれぞれのフォーマットに集中して、ルールやメタゲームに合わせたバランス調整に取り組むことができます。
禁止解除:《霊気池の驚異》、《守護フェリダー》、《霊気との調和》、《ならず者の精製屋》、《暴れ回るフェロキドン》、《ラムナプの遺跡》
ブロールの禁止カード・リストでは、スタンダードの禁止カード・リストからいくつかのカードを禁止解除します。ブロールにはシングルトン・ルールが適用されるため、これらのカードはスタンダードより問題になりにくいと私たちは考えています。これらがスタンダードで猛威を振るった要因の一部は、複数枚採用することでデッキの効率や安定性を高めすぎていたことなのです。
《守護フェリダー》の禁止解除については、《サヒーリ・ライ》との即勝利コンボがあるため検討を重ねました。結論として、最大で1枚ずつしか使えないことや統率者も限られることから、ブロールにおける《守護フェリダー》は《サヒーリ・ライ》とのコンボだけでなくさまざまなカードとの相互作用を生み出し、より楽しくなるのではないかと私たちは考えました。
なお《密輸人の回転翼機》は禁止解除されません。《密輸人の回転翼機》を禁止解除した場合、無色であり「搭乗」の条件も簡単なこのカードは大抵のデッキに採用されることでしょう。《密輸人の回転翼機》は低コストでブロックしにくく、対戦相手のライフを脅かすのと当時にカードの流れも良くするため、1枚採用されたこのカードを引き込めるかどうかに左右されるゲームが多すぎるのです。とりわけブロールでは、《密輸人の回転翼機》に対する解答も1枚に制限されてしまうという点が大きな問題です。その使いやすさとゲーム展開が代わり映えしないものになる懸念から、《密輸人の回転翼機》はブロールの禁止カード・リストにも残すことにしました。
禁止:《遵法長、バラル》、《魔術遠眼鏡》
《遵法長、バラル》は、Magic Onlineの1対1ブロールで最も人気を集め、最も勝利している統率者です。導入直後の数週間にわたり、《遵法長、バラル》デッキはメタゲームの35%以上を占め、勝率も65%に迫る勢いでした。直近に行われたふたつの「Magic Online one-on-one Brawl Challenge」でも、上位32デッキの大半(1回目が24デッキ、2回目が23デッキ)を《遵法長、バラル》デッキが占めました。
加えて、《遵法長、バラル》が推し進める打ち消し呪文中心のプレイ・パターンは、多くのデッキの可能性を強烈に潰し、ブロールの楽しさを損なっているというフィードバックも多くいただいています。1対1ブロールのファンからも多人数戦ブロールの支持者からも、同じ内容の意見が寄せられているのです。メタゲームのデータとプレイヤーからのフィードバックを精査した結果、《遵法長、バラル》はブロールにて禁止となります。
《遵法長、バラル》を統率者として使用することだけ禁止し、デッキに入れるのは許可するという案も検討しました。しかし他の統率者による青のコントロール・デッキもまた、すでに強力な戦略として活躍を見せています。私たちが持つデータから見える統率者《遵法長、バラル》の圧倒的強さを鑑みるに、デッキに入れた《遵法長、バラル》を引き込めたプレイヤーは圧倒的優位を手にするものと思われます。そのため私たちは、《遵法長、バラル》を統率者としてもデッキに入れるカードとしても、禁止する決定を下しました。将来的には、問題ある統率者を統率者として使用することだけ禁止し、デッキに入れるのは許可するということもあり得ますが、現時点では、デッキ構築のルールをシンプルにしてわかりやすく覚えやすいものにすることを重視します。
今回はもう1枚、《魔術遠眼鏡》も禁止カード・リストへ加えます。この決断は、1対1ブロールのメタゲーム・データよりも、プレイヤーの皆さんから寄せられたフィードバックとブロールの精神を重視した結果です。《魔術遠眼鏡》は色マナが必要なく低コストで使えるため、どのデッキにも採用され、とりわけ多人数戦において嫌われています。ブロールならではの愛される特徴は、プレインズウォーカーも統率者として指定できることです。《魔術遠眼鏡》はいともたやすく、プレインズウォーカーの統率者が戦場に出る間もなくそれを封じてしまうのです。
《ギデオンの介入》や《不滅の太陽》についても、同じく特定の統率者を封じてしまうため、私たちは禁止する可能性も含め検討しました。しかしこれらはその効果に相応のコストが設定されているため、設置する頃にはこれらを除去したり対処したりする手段を用意できるか、こちらも強力なカードで対抗できる状態になっていると期待できます。実際に、《ギデオンの介入》は白のカードであるため、《魔術遠眼鏡》と比較して使用率は大幅に少なくなっています。私たちは引き続き、これらを含め特定の統率者を無力化してしまうカードについてのフィードバックに耳を傾けていきます。
初期ライフの変更(1対1ブロールのみ)
本日最後のバランス調整は、1対1ブロールにおける初期ライフの変更です。1対1スタンダードに合わせ、1対1ブロールの初期ライフは20点とします。この変更が議論を呼ぶことは承知しています。理由を詳しくお話ししましょう。
Magic Onlineにおける1対1ブロールのメタゲームを調査する中で、私たちは強力な戦略の多くが30点という多めの初期ライフを序盤の緩衝材として使い、ドローを進めたりライブラリーを整えたりするのに注力しているのをたびたび目にしました。またライフが多いことで、コントロール・デッキはアグロ対策を控えめにしてよりゲーム後半に力を入れることができます。
スタンダードのカードは、1対1で戦うことに加えて初期ライフ20点、初期手札7枚であることをもとにバランス調整されています。そのため初期ライフが多くなれば、ドローを増やし除去や打ち消しで対戦相手の脅威に対処するコントロール・デッキが、基本的には有利になるのです。私たちは、1対1ブロールの初期ライフが多い限り、カードの禁止でバランスを取りつつロング・ゲームを見据えた戦略の多様性を保つことは、不可能とまでは言わないにしても極めて難しい、という結論を出しました。
《模範となる者、ダニサ・キャパシェン》 アート:Chris Rallis |
ブロールのようなフォーマットは、ゲームがゆっくり進み、さまざまな展開を見せ、そして重く派手なカードが輝くところが魅力だとおっしゃるプレイヤーもいるでしょう。私たちもそう思います! デッキ構築のルールがシングルトンである時点で、メタゲームがそのように動くのは自然なことです。問題は、初期ライフが多いことで青いコントロール・デッキに有利になりすぎている点なのです。この状況では全体的に、優れたドロー手段や打ち消し呪文を持たない青以外の遅いデッキが不利になっています。今回の変更で私たちが目指しているのは、純コントロール・デッキが常に環境を支配することなく、スタンダードより遅いゲーム・スピードとさまざまなゲーム展開を実現することなのです。
今回の変更は1対1ブロールに大きな変化をもたらし、間違いなくメタゲームに大きな影響を与えるでしょう。私たちは引き続き、皆さんのプレイ・データと皆さんから寄せられるフィードバックを注視していきます。現時点では、初期ライフをスタンダードに合わせることが1対1ブロールの健全さを長期的に維持するために最適な手段だと、私たちは信じています。
今後のプラン
まったく新しいフォーマットであるブロールには、早い段階で細かくバランス調整を重ねる必要があると私たちは見込んでいます。ただしバランス調整は、プレイヤーの皆さんから寄せられるフィードバックを精査し、このフォーマットにおいて最も守るべき要素を理解し、「カード・プールを広げる(禁止カードが少ない)」方針と「プレイ体験を管理する(楽しくないカードを減らし、バランスの取れた1対1ブロールのメタゲームを目指す)」方針に対するそれぞれの評価を把握した上で行います。最終目標は、プレイヤーの皆さんが心から楽しめる面白い環境を作ることです。私たちも積極的に、競技の舞台が用意されているフォーマットとは異なる目線でブロールに取り組んでいきます。
今回お話しした件についてのフィードバックは心から歓迎します。ぜひ今後も、ソーシャルメディアを通して(英語で)皆さんの意見を共有してください。近日また、計画の更新をお伝えできればと思います。
イアン、ありがとう! プレイ・デザインがブロールをかなり掘り下げてくれているから、本当に助かっているよ。
これも、私の言う「ブロールはウィザーズが支えるべきフォーマットである」という理念に則った例だ。このフォーマットを可能な限り素晴らしいものにするため、私たちは時間もリソースも惜しまない。イアンが言った通り、プレイ・デザインから見たブロールの今後についての続報をお楽しみに。
この先へ
今日は一度に大量の情報が飛び出したね。みんながブロールの理念と今回の変更を見て、今後を楽しみにしてくれたら嬉しい!
さて、各変更の適用日を伝えよう。
今回の変更はすべて、紙のマジックでは直ちに適用される! 今すぐ始まるものをまとめると、以下の通りだ。
- ブロールの禁止カードは、《遵法長、バラル》、《魔術遠眼鏡》、《密輸人の回転翼機》のみとなる。
- つまり《霊気池の驚異》および《霊気との調和》、《守護フェリダー》、《暴れ回るフェロキドン》、《ラムナプの遺跡》、《ならず者の精製屋》は禁止解除される。
- 1対1ブロールの初期ライフが20点になる。(多人数戦は変わらず30点だ!)
- (《ウルザの後継、カーン》のような)無色の統率者を使用する場合、基本土地を1種類だけ複数枚デッキに入れられるようになる。
Magic Onlineへの実装は少しだけ時間がかかるけれど、以上の変更を可能な限り早く適用するつもりだ。Magic Onlineでのブロールにもちゃんと目を向けているから、安心してくれ。
禁止と禁止解除、それから1対1での初期ライフ変更は、5月30日からMagic Onlineにて適用される予定だ。それまでの間、大きな変更を控える中でイベントを開催し続ける意味はあまりなく、改善が必要だと結論づけたプレイ環境を今後も長い期間君たちに提供し続けたくない。なのでMagic Onlineへの実装が可能になるまで、5月16日をもって「Brawl League」や「one-on-one queue」、そして「Brawl Challenge」も、すでに予定されているものを含めて一時的に停止させていただく。もちろんその間も、多人数戦ブロールはMagic Onlineで楽しめるぞ。(加えて言うなら、カジュアル・プレイで1対1ブロールも遊べる。)
無色の統率者を使用する場合、基本土地を1種類だけデッキに入れられるようになる変更については、さらに時間を要する。『基本セット2019』の導入に合わせて実装される予定だ。
私がそうであるように、君たちも生まれ変わったブロールの世界を楽しみにしてくれると嬉しい!
今回の記事をひと言でまとめるなら、最初の紹介記事で書いたことの繰り返しになる。今回も幾度となく言ったけれど、「ブロールは挑戦と進化の最中だ」。私たちはこのフォーマットを観察し続け、みんなから寄せられたフィードバックをすべて読み、変更を決めていく。
君はどう思っているかな? 今日の記事で疑問に思ったことは? 変更についてはどうだった? ぜひ聞かせてくれ! TwitterでもTumblrでも、BeyondBasicsMagic@gmail.comまで(英語で)メールを送ってくれても構わない。必ず読むよ。
このフォーマットが始まって以来、みんなから信じられないほどの量のフィードバックやお便りをもらった。この場を借りて改めて、感謝の気持ちを伝えたい! こうしてみんなのフィードバックや意見発信、ゲームについての議論やアイデアを見ていると、いかにマジック・コミュニティが素晴らしいものなのか、思い知らされるよ。ブロールがこれからどうなっていくのか、楽しみでしかたがない。
ブロールの未来は、ここから始まるんだ!
Gavin / @GavinVerhey / GavInsight
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BACK NUMBER 連載終了
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- 津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
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