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ヴェンディリオン三人衆

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ヴェンディリオン三人衆

Paulo Vitor Damo da Rosa / Tr. Tetsuya Yabuki

2018年2月27日


 16,000種類を超えるマジックのカードの中で、僕には特にお気に入りの1枚がある。「好きなカードは?」と聞かれたときにいつも思い浮かぶそのカードが、今日お届けするプレビュー・カードだ!

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 今でこそ《ヴェンディリオン三人衆》が大好きだけれど、正直初めて見たときはそうでもなかった。このカードを初めて使ったのはプロツアー・ハリウッド2008(リンク先は英語)でのことで、これの採用を決めたのは大会直前だった。結果的には、以下のデッキで第8位の成績だった。

Paulo Vitor Damo da Rosa - 「青黒フェアリー」
プロツアー・ハリウッド2008 8位 / スタンダード (2008年5月23~25日)[MO] [ARENA]
4 《
4 《地底の大河
4 《人里離れた谷間
3 《涙の川
2 《沈んだ廃墟
2 《フェアリーの集会場
2 《ペンデルヘイヴン
4 《変わり谷

-土地(25)-

4 《呪文づまりのスプライト
4 《ウーナの末裔
3 《ヴェンディリオン三人衆
4 《霧縛りの徒党

-クリーチャー(15)-
4 《祖先の幻視
4 《苦花
4 《ルーンのほつれ
4 《恐怖
4 《謎めいた命令

-呪文(20)-
3 《ボトルのノーム
2 《残忍なレッドキャップ
3 《剃刀毛のマスティコア
4 《思考囲い
3 《滅び

-サイドボード(15)-

 3枚の《ヴェンディリオン三人衆》は、大会直前になって辛うじて採用された。プレイテスト中は、この枠はずっと《やっかい児》だったんだ。今思い返してみると、この2枚が枠を争っていたのは笑えるね。どう見ても《ヴェンディリオン三人衆》の方が優れたカードだし、このデッキにもぴったりじゃないか。だが登場した当時は、誰も《ヴェンディリオン三人衆》の強さがわからなかった。やがてこのカードは高い評価を受け、当時のスタンダードを通して「フェアリー」デッキが環境を支配する原動力となった。

 では、僕はどうしてこんなに《ヴェンディリオン三人衆》のことが好きなのか。その理由は3つある。

1.極めて強力だが、「壊れ」ではないこと

 《ヴェンディリオン三人衆》は、パワー・レベルの観点で完璧な1枚だ。積極的に使用したくなるくらい強力でありながらも、常に使用せざるを得なかったり、対戦相手に使われるとうんざりしたりするほどの圧倒的な強さではない。ゲームに勝つ助けにはなるが、これ1枚でゲームを支配してしまうことはない。

2.極めて多芸で、使うたびに異なるプレイ感覚を得られること

 多くのクリーチャーは、その使い方が明白だ――攻撃するか、ブロックするか。《タルモゴイフ》を唱えるタイミングや攻撃の是非などを選択する余地はあるけれど、あってもそれだけだ。プレイ・パターンに変わりはない。ところが《ヴェンディリオン三人衆》はそこが違う。


ヴェンディリオン三人衆》 アート:Willian Murai

 まず、唱えるタイミング。《ヴェンディリオン三人衆》は瞬速を持っているため、基本的にどのタイミングでも唱えられる。こちらのメイン・フェイズでも終了ステップでも、対戦相手のアップキープやドロー・ステップでも、相手が攻撃宣言した後でもブロック・クリーチャー指定後でも、相手の終了ステップでも――そしてどのタイミングにも、それぞれの理由があるんだ。

 僕が特に好きな動きは、他の呪文へのつなぎとなる「儀式」系の呪文に対応して《ヴェンディリオン三人衆》を放つことだ。「ストーム」デッキが「儀式」を2枚続けて唱えたら、そこで《ヴェンディリオン三人衆》を差し込み、《炎の中の過去》や《むかつき》を取り去ってやる。対戦相手がせっかく唱えた「儀式」は無駄になるわけだ。それから、《ヴェンディリオン三人衆》は《実物提示教育》や《裂け目の突破》のようなカードに対しても強い。相手が繰り出そうとしているものを抜き去ることができるからね。

 唱えるタイミングを選択したら、次は対象を自分にするか、対戦相手にするかの選択が待っている。手札にいらないカードがあったり何か引き込みたいカードがあったりする場合は、前者の《ヴェンディリオン三人衆》が助けになるだろう。後者の場合は、カードを抜き去るかそのまま残すかの選択だ。このようにたくさんの選択肢があり、プレイヤーによって使い方もさまざまなんだ。

3.クロックを早め、攻勢に出られること

 青のデッキは基本的に受け身だ。だから3/1飛行持ちはデッキに合わないように見える。だが《ヴェンディリオン三人衆》は瞬速と優れた能力を持つおかげで、コントロール系のデッキにとっても魅力的で、他ではできないことを可能にしてくれる。

 青のコントロール・デッキは盤石な体制を維持するものだが、常にそうとは限らない。対戦相手に十分な時間を与えてしまうと、打ち消し呪文の弾幕をも乗り越えて倒されてしまう。「トロン」のようなデッキは力押しで攻めてくるし、コンボ・デッキは《払拭》のような軽い打ち消し呪文を備えている。

 そこで《ヴェンディリオン三人衆》を使うことで、相手の手札を確認してコンボ・パーツを抜き去るだけでなく、攻勢に出ることもできるようになるんだ! 3点というダメージは決して多くないけれど、フェッチ・ランドやショック・ランドが使われるフォーマットなら十分だ。以上の理由から、《ヴェンディリオン三人衆》は相手にプレッシャーをかけたい場合に備えて人気のサイドボード・カードになっている。実際、僕もプロツアー『イクサランの相克』で採用したよ!

Paulo Vitor Damo da Rosa - 「ジェスカイ」
プロツアー『イクサランの相克』 / モダン (2018年2月2~4日)[MO] [ARENA]
3 《
1 《平地
2 《神聖なる泉
2 《蒸気孔
4 《溢れかえる岸辺
4 《沸騰する小湖
1 《霧深い雨林
3 《天界の列柱
1 《氷河の城砦
3 《硫黄の滝

-土地(24)-

4 《瞬唱の魔道士
1 《奔流の機械巨人

-クリーチャー(5)-
4 《流刑への道
3 《稲妻
3 《選択
2 《血清の幻視
3 《稲妻のらせん
3 《アズカンタの探索
2 《電解
4 《謎めいた命令
2 《至高の評決
1 《荒野の確保
4 《論理の結び目

-呪文(31)-
2 《ヴェンディリオン三人衆
3 《払拭
3 《天界の粛清
2 《否認
2 《拘留の宝球
1 《至高の評決
1 《仕組まれた爆薬
1 《太陽の勇者、エルズペス

-サイドボード(15)-

 このデッキと《ヴェンディリオン三人衆》は相性抜群だ。単体では6回か7回攻撃する必要があるところ、火力呪文の援護を受けて3回か4回の攻撃でゲームを終わらせることができる。使い勝手が良いから、サイド・インの機会が一番多かった。対戦相手にプレッシャーを与えたり動きを妨害したりするだけでなく、プレインズウォーカーを倒したり《信号の邪魔者》をブロックしたり、他にも使い道はさまざまだ。

 《ヴェンディリオン三人衆》を使う機会があるなら、ぜひ使ってみてほしい。使うたびに違うカードのように機能する《ヴェンディリオン三人衆》は、使えば使うほどたくさんの魅力が見つかるはずだ。

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