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『統率者(2015年版)』のデベロップ

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『統率者(2015年版)』のデベロップ

Ben Hayes / Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru

2015年11月2日


 やあ、私はベン・ヘイズ/Ben Hayes、マジック開発部所属のゲーム・デザイナーで、『統率者(2015年版)』のリード・デベロッパーだ。ウィザーズ・オブ・ザ・コーストに2年半ほど勤務していて、『運命再編』『モダンマスターズ(2015年版)』『戦乱のゼンディカー』でデベロップ・チームに所属していた。また、『マジック・デュエルズ・オリジン』のリーダーも務めたんだ。『マジック・デュエルズ・オリジン』のほうが先にリリースされたけれど、私の時系列的にはこの『統率者(2015年版)』が初めてのリーダー職になる。だから、私はこのセットの話をできるのが本当に嬉しいんだ。

 『統率者(2015年版)』のリード・デベロッパーとして、デザイン・チームから提示された展望を踏まえ、それを実行に移すための最も楽しく面白い方法を探すのが私の責任となる。ウィザーズ・オブ・ザ・コーストに入社する前、私は様々なデジタル・ゲームで何年もゲーム・デザイナーをしてきた。そして、90年代半ばから、家庭内からプロツアーに至るまであらゆるレベルのマジックを楽しんできたんだ。だから、マジックで働くことは夢が現実になったことで、夢の労働と言ってもいいんだ。

 それじゃ、チームを紹介させてもらうよ。

デザイン・チーム

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ダン・エモンズ/Dan Emmons (リード・デザイナー)

 ダンは昨年ウィザーズを去ったけれど、彼が『統率者(2015年版)』のリード・デザイナーを務めていた当時は彼はマジックの中核デザイナーの1人だった。このセットはダンが初めてリード・デザイナーを務めたセットで、協力して働くのは素晴らしい体験だったよ。ダンは、赤白デッキを担当していた。

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イーサン・フライシャー/Ethan Fleischer

 イーサンはグレート・デザイナー・サーチ2の優勝者で、『ニクスへの旅』『統率者(2014年版)』、それにまもなく登場する『ゲートウォッチの誓い』のリード・デザイナーだ。それから、彼は白枠限定の《黒き剣のダッコン》デッキを持っている。イーサンは、緑青デッキを担当していた。

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クリス・タラック/Chris Tulach

 クリスはウィザーズ・オブ・ザ・コーストの組織化プレイのマネージャーで、D&Dエンカウンターやダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ第5版のD&Dアドベンチャー・リーグなど、店舗内やトーナメントでのプレイ・プログラムを作る責任者だ。彼は『Scoundrels of Skullport』のデベロッパーでもあり、いくつかのD&D TRPG関連商品のデザインやデベロップにも寄与している。クリスが担当したのは白黒デッキだ。

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ジェイムズ・ハタ/James Hata

 ジェイムズは、ウィザーズが出しているもう1つのトレーディングカードゲーム、デュエルマスターズのデザイナーで、『統率者(2014年版)』のデザイン・チームにも所属していた。デュエルマスターズの開発部員の多くは統率者戦をプレイしているし、マジック開発部以外から新しい視点を受け入れることは有意義だ。ジェイムズは黒緑デッキを担当した。

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ケリー・ディグス/Kelly Digges

 ケリーは10年以上前からウィザーズにいて、様々な仕事をしている。エディット(ウェブの編集もマジックのセットのエディットも)、デザイン、デベロップ。現在はクリエイティブで、マジックの物語を手がけている。ケリーはまた、『統率者(2015年版)』のデザイン・チームとデベロップ・チームの両方に所属していて、しかもクリエイティブ・コーディネーターでもあるんだ。ケリーはデザイン中には青赤デッキを担当していて(私が引き継いだんだ)、デベロップ中には緑青デッキを担当していた。

デベロップ・チーム

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マーク・グローバス/Mark Globus

 マークはマジック開発部所属の主任ゲーム・デザイナーだ。彼は多くの役割を果たしているけれど、その1つが、エントリーセットから『Magic Online』のキューブに至るまで私たちの作るマジックの商品すべてについて考え、可能な限りマジックの顧客のためになるようにすることなんだ。彼は初代『統率者』のリード・デベロッパーで、彼の経験や専門性は初めてリード・デベロッパーを務めるに私のチームにとってかけがえのないものだったんだ。マークはデベロップ中、黒緑デッキを担当していた。

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ショーン・メイン/Shawn Main

 ショーンはマジック開発部の上席ゲーム・デザイナーだ。彼は多くのデザイン・チームやデベロップ・チームで働いていて、『コンスピラシー』や『マジック・オリジン』ではリード・デザイナーを務めた。デベロップ中に担当したのは、赤白デッキだ。

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ジェイムズ・ソーイ/James Sooy

 ジェイムズは2007年からゲーム会社で、ユーザーの体験に集中したデザイナーとして働いていた。そして、2013年に『Magic Online』のユーザー体験デザイナーとしてウィザーズに入社したんだ。『統率者(2015年版)』は彼がマジック開発部で初めて所属したゲーム・デザイン・チームで、彼が黒白デッキのデベロップに見せた情熱は私を本当に驚かせたんだ。

体験を作る

 『統率者』シリーズの各セットで、私たちは統率者戦を愛するプレイヤーたちに統率者戦を新しく楽しい形で体験してもらう方法を探し続けているんだ。昨年は、史上初めて、プレインズウォーカーを統率者として使えるようにした。その前の年は、統率領域からゲームに影響を与える統率者が登場した。『統率者(2015年版)』では、デザイン・チームは「経験カウンター」を導入したんだ。

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 各デッキのメインの統率者は、経験カウンターのメカニズムをそれぞれ独特の方法で使っている。これから見て行くとおり、《イロアスの信奉者、カレムネ》は強打者メインで、大型クリーチャーを大量に入れたデッキを使うことを推奨している、経験カウンターによる恩恵は+1/+1で、警戒や二段攻撃とすばらしいシナジーを発揮してくれるんだ。

 デザインが最初に提出してきた《イロアスの信奉者、カレムネ》は、巨人・呪文をプレイすることで経験カウンターを得るというものだった。デベロップ中に、そのデッキやカードを何度も繰り返しているうちに、プレイテスターが望むような形のデッキを組めるように、より自由度の高い現行の形にまとめたんだ。でも、このデッキには巨人部族というテーマは残っているよ。

 そう、巨人といえば......。

デザインの展望

 主流のマジックのセットにおいて、クリエイティブの指針は主に世界構築専門チームに委ねられているんだ。でも、『統率者』のセットに含まれるフレイバーは様々な場所からやってきている。この場合で言えば、経験カウンターを使う統率者は、マジック史上の特定の次元を意識してデザイン・チームが作り、その次元とメカニズム的に繋がりのある各デッキ1枚ずつのカードのサイクルを作った。このサイクルのカードで《カレムネの隊長》のデッキに登場しているのは、誰あろう彼女の隊長なんだ。

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 私たちは本当にこのデッキで大型クリーチャー・テーマを推したくて、そのための方法は何と言っても巨人。大きくなるし、面倒なアーティファクトやエンチャントを一掃できるんだ。怪物化もマナが潤沢に出せる『統率者』にはぴったりだった。『統率者(2013年版)』の《進歩の災い》は多くの緑デッキの基本になった。白デッキで《カレムネの隊長》が同じような役割を果たしても驚かないよ。

なぜそうなるのか

 マジック開発部では、私たちが手がけている全ての商品に常時レビューがおこなわれている。そのレビューの目的の1つが、各商品それぞれにある様々な目標に、必要なだけの注意が払われていることを確認することなんだ。『統率者』における様々な目標の1つが、楽しくて魅力的な体験を届けること、ただしプレイヤーが自分のプレイスタイルに合うように調整できることだ。改変するための明確な道筋を示しているのが、もう1枚の新規統率者なんだ。

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 蛇! 《大蛇の大魔導師、かせ斗》はそれ自体でも完璧で、本質的にブロックされない影なんだ(緑青デッキには、対象にするために他にも何体かの蛇が入っているよ)。でも、もし《大蛇の大魔導師、かせ斗》の能力を最大限に発揮したければ、見つかる限りの蛇をデッキに入れてやればいいのさ。

 《大蛇の大魔導師、かせ斗》はデベロップ的には難関だった。単体でも強力にしたかったし、箱から出したままのデッキでテーマに沿うようにしたかったし、別のデッキへの道案内にもしたかったんだ。

 これらのデッキを、私たちが作ったときに楽しんだのと同じように楽しんでくれたら嬉しいね。『統率者(2015年版)』に入っている新しいデッキやカードで、皆がどんな風に楽しんでくれるのか、もう待ちきれないよ。

 ここまで読んでくれてありがとう!

ベン・ヘイズ

 あっと......これらのカードのメカニズム的繋がりについて、ね。

 楽しんで!

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