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ギルド門侵犯のデベロップ
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ギルド門侵犯のデベロップ
Dave Humpherys / Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru
2013年1月7日
ギルド門侵犯を仕上げたメンバーをデベロップの側からざっと紹介する前に、ここで、このセットの計画においてはより大きな流れの中に大量の仕事が存在したことを記させてください。ザック・ヒル/Zac Hillとマーク・グローバス/Mark Globusは、このブロックのセットだけのためのアーキテクチャ・チームを立ち上げるために働きました。彼らは通常のセットがデベロップに入る時までは普通は追求されない多くの問題の解決を助けました。また、彼らは、このブロックまでは私たちがこれほど重視したことのなかった方法で、このセットを過去や未来のセットやブロックと繋ぐような質問にも答えたのです。
同様に、このブロックの構造の性質から、私はラヴニカへの回帰でなされた仕事に非常に助けられました。エリック・ラウアー/Erik Lauerとケン・ネーグル/Ken Nagleは、アーキテクチャ・チーム、デザインおよびデベロップ・チームとともに、ギルド門侵犯の大枠をも決めるような始点の多くを見つけ出しました。出るマナの色をどの程度安定化させるべきなのか? リミテッドを最適化するには、単色と多色のカード・パワーの割り振りはどうしたらいいのか? このような問題の解決には多大な時間がかかります。私は自分のチームでリーダーを務めるにあたって、同じような過程を経てすでに得られている結論を利用することができました。私たちはギルド門侵犯のあるべき姿を探すための素晴らしい始点を受け取ることができたのです。
前書きを踏まえて、ギルド門侵犯のデベロップ・チームをご紹介します。
デイブ・ハンフリー/Dave Humpherys (リーダー)
再利用可能なクローンの専門家です。私はデベロップに没頭していて、最近ではもっともよくデベロップ・チームに参加している人間となっています。ギルド門侵犯を数えると、過去7つのセットのうち6つのデベロップ・チームに所属していたことになります。通常、デベロップ・チームのリーダーはデザイン・チームには関わりませんが、私はリーダーであるにもかかわらず、ギルド門侵犯のデザイン・チームにも参加していました。
マーク・グローバス/Mark Globus
あらゆる意味ですごい男です。そして、すでに言ったかも知れませんが、私の上司でもあります。マークはマジックの上席プロデューサーで、第1回グレート・デザイナー・サーチ(リンク先は英語)からずっと在籍しています。マークはマジック2012のデザインのリーダーであり、また、マジック:ザ・ギャザリング ― 統率者のデベロップのリーダーも務めました。彼は必要に応じて役目に就き、実際、毎年1?2回デザイン・チームやデベロップ・チームに名を連ねます。マークは、比較的経験の浅いデベロップ・チームに知恵を授け、大局観に基づいて私たちに助言してくれました。
ザック・ヒル/Zac Hill
ザックはマジック2013のリード・デベロッパーで、皆さんは近いうちに彼のドラゴンの迷路のリード・デベロッパーとしての成果物を見ることになるでしょう。ザックはデザインについて、特にブロックの全体像を踏まえて議論するうえで強力な仲間でした。私は、彼がセットのデベロップ・チームのリーダーを務めたことによって得られた知見を求めて、彼の知恵を借りました。
マックス・マッコール/Max McCall
マックスは今回が2度目のデベロップ・チーム入りです。1回目はマジック2013でした。マックスはマジック開発部のデジタル側、特にデュエルズ・オブ・ザ・プレインズウォーカーズの仕事をするために多くの時間をかけています。また、彼はマジック・オンラインのキューブのデベロップ・リーダーであり、その重要人物です。マックスはドラフトでのバランスの悪さを初期に発見し、そして私たちが修正の必要を実感するよう、何度も勝てるようになるまでそのバランスの悪い部分を突き詰めていくのです。
マーク・パーヴィス/Mark Purvis
マークはマジックの上席ブランド・マネージャーです。ギルド門侵犯のチームにマークを集めよう計画だけでなく、彼は開発部以外からの視点を確保する役目も担っていました。私はマークをチームに迎えることを喜んだのは、以前から彼と良く組んでいたから、そして彼が開発部とブランド部の展望を組み合わせて新しい商品や新しい体験を生み出すことに熱烈に協力しているのを知っていたからです。また彼自身熱心なプレイヤーでもあり、かつてはマジック2013のデザイン・チームやミラディンの傷跡のデベロップ・チームなどのチームに在籍していたこともあるということも助けになります。マークはカードが充分ティミー向けでないと感じたときに、即指摘してくれました。
ガヴィン・ヴァーヘイ/Gavin Verhey
ガヴィンについて皆さんが知っているのは、このサイトに掲載されているReConstructedのコラムを通じてでしょう。ガヴィンはKaijudoの仕事にもかなりの時間を費やしています。ガヴィンがマジックのデベロップ・チームに入ったのはこれが初めてで、つまり彼の中には発揮できるときを待っている新しいアイデアが渦巻いていたということです。私はそれらのアイデアの中からいくつも素晴らしいものをすくい取り、このセットに入れました。ガヴィンはチームに強烈な興奮と、ディミーアをプレイさせようという優しさをもたらしました。
アート:Clint Cearley |
メカニズム的道具
デザインからデベロップに移行する時点で、デザインの序盤からあまり変更なく存在していた進化と大隊についてはすでに大量のプレイテストを済ませていました。どちらも社内で評判がよく、ギルドのイメージにもよく合っていました。デベロップの段階では、できたばかりのメカニズム2つの調整と、ギルド・カードやそのメカニズムがそのギルド内だけでなく、ラヴニカへの回帰で出てきたものも含む他のギルドと組み合わせてきちんと働くようにしなければなりませんでした。様々な部分を調整して、組み合わせてうまく動くようにするわけです。
湧血は、デザイン段階でほぼ固まっていたメカニズムでした。私たちはより利点だけを取り上げた亜種を試してみましたが、それらは必要なマナが多くなり、必要なほどアグロ向きにはなりませんでした。私は、湧血が赤と緑のどちらにもとてもよく合っているので、湧血の大支援者でした。湧血は、進化や大隊のもっとも多い不満点、すなわちデッキに充分なクリーチャーを入れていなければ充分なクリーチャーを引かないということを救済し、安定化させる役目を果たせます。デッキにクリーチャーばかりが入っていれば、つまらないにらみ合いになって楽しいゲームとは言えなくなります。幸いにして、湧血はこの両方の懸念を解決できるのです。
シミックのデッキに湧血クリーチャーを混ぜ、強化呪文として使うこともできます。強化効果の多様性をもたらすため、湧血には大小様々な値が用いられています。これはシミックが戦場に出すクリーチャーのために必要としているものそのものです。ボロスに関しては、湧血クリーチャーはさらにふさわしいものです。白赤のクリーチャーはより大きなクリーチャーを打ち倒すために何らかの補助が必要になることがよくあります。強化呪文はまさにこれです。言うまでもなく、強化「呪文」でありながら大隊を成立させるための3体目のクリーチャーにもなり得るのです。
ラヴニカへの回帰でそうだったように、各ギルドにはそれぞれ攻撃的戦略と防御的戦略の両方の戦略が準備されています。湧血クリーチャーは明らかに攻撃的戦略にふさわしいものです。次のメカニズムもまた、直接的に攻撃する動機を与えるものですので、このセット内の防御的戦略を強化することはデベロップが進める補強戦略の領域になりました。
次のメカニズムは暗号でした。暗号は最初に見せたときに非常に食いつきがよかったのです。何度も何度も使える、反復に似たメカニズムでした。これは、このセットの方向性を大きく変えました。元のディミーアのメカニズムはライブラリー破壊だったのです。それらのカード・デザインの多くを(キーワード抜きで)そのまま残しましたが、それがギルドの中心を占めるメカニズムに必要な要件を満たせるようになるとは思っていませんでした。これは、ドラゴンの迷路ではより多く見られるようになるギルド間の相互作用について考えたらより顕著でした。シナジーはそのギルドの中だけである必要はありませんが、例えば超過/ライブラリー破壊/解鎖の三位一体は目標がバラバラになっています。ライブラリー破壊は活用と組み合わせると面白いことが起こりますが、他のギルドとの組み合わせでは使えると言えるものではありませんでした。
こうして、ディミーアのライブラリー破壊は明らかに主流ではなくなりました。しかし、ライブラリー破壊はライブラリーを完全に枯渇させるだけのものではありません。他のカードから進化したプレイを導くような軸に沿っての前進をもたらす様々な方向の探求でもあります。暗号は、その適用に関してより柔軟で、アグロでもコントロールでもどちらの戦略においても良く働くことができます。暗号と進化はそれほど自然に組み合わさりはしませんが、多くの場合、クリーチャーの陣営を組み上げようというとき、《雲ヒレの猛禽》のような軽い進化クリーチャーは、一度ぐらいは進化できることを前提に、すぐ暗号の対象にできます。一方、《束縛の手》のような軽い暗号カードは陣営を揃える時間を稼いでくれることでしょう。
暗号はバランスをとるのが最も難しいメカニズムでしたが、後にプレビュー・カードでご紹介するように、私はそれにさらに取り組んでいきました。そして、暗号は最終的に採用したメカニズムである強請と相性がよかったのです。暗号で呪文を唱えながら、強請を誘発させ続けることができます。どちらのメカニズムも、様々なデッキ・タイプで組み合わせることができました。
オルゾフのメカニズムを作るためのアイデアを出し合う小チームのリーダーを務めたとき、私はそのグループのためのウィッシュ・リストに様々なことを記していました。強請はその全てを満たしていましたし、その強請をショーン・メイン/Shawn Mainが思いついてくれたことを嬉しく思います。このメカニズム・パズルの最後のピースとして、ラヴニカへの回帰で活用がそうだったように、このセットにもゲームが長引いたときにさらなることをできるマナ消費先が必要だと考えていました。マナを活用するメカニズムはギルドと同じように重要性の高いもので、このメカニズムは完璧にそれを満たしていました。攻撃に関係するキーワードはすでに3つあったので、それ以外にしたいという条件もありました。一見したときには強請はそれほどインパクトはありませんでしたし、白単色にはふさわしくないようにも思いましたが、私はそれをすぐに、そしてどんどん、気に入っていきました。試してみると、攻撃的デッキでも防御的デッキでも本当に良い働きを見せてくれました。色を共有する他のギルドとの組み合わせにおいても、すでに述べたとおり、暗号とも相性が良く、便利だったのです。
このセットの最後の部品をボロスと組み合わせてみると、強請はやはりエキサイティングでした。ボロスに飛び道具を与え、対戦相手の最後の1点を削りきる働きを見せたのです。そして、クリーチャーが多いので、強請は大隊を成立させる上でさらなる柔軟性を与えることになりました。
これが、ギルド間のシナジーをどれほど重要視するかということであり、穴を埋めるということなのです。
大失敗
最初、私たちはリミテッド環境をラヴニカへの回帰よりも少し速くすることに意識を向けていました。これには、続くドラゴンの迷路で想定される通常より遅い環境、より多色を要求されるであろうデッキとの間で、対照を形作る意味がありました。
しかしながら、攻撃的なメカニズムがたくさん含まれており、序盤の優位が雪だるまのようにふくれあがってしまう危険性を秘めているので注意が必要でした。つまり、序盤の優位を打ち破るための方法を充分用意し、また、陣営を整えていくことを助けるようなメカニズムを配置しなければならないということを意味します。出遅れたプレイヤーにとってより有利になるようにしたカード、特に除去が複数存在します。また、一時的に、あるいは奇襲的に、大隊を揃えたり暗号化されたクリーチャーを出す手段も複数存在し、それらの状況を完全に安定したものにしないようにしています。
《破壊的な逸脱者》 アート:Karl Kopinski |
暗号は特に難問で、恐ろしい揺らぎを秘めていました。新世界秩序という内部文書に、「レッド・フラッグ(訳注:要注意事項のこと)」として列記されている複雑さにどう取り組むかの概要がまとめられていますが、今回、新世界秩序に定められた優先目標のいくつかに抵触するような問題を起こす種類のカードがあります。
列記されている最初の項目は何でしょうか?
「再利用可能な効果」
再利用可能な効果に関するこの節のメモには、盤面の複雑さを確認し、「楽しさ」を守れ、とあります。このメカニズムをコモンで使う場合、例えば、再利用可能な「除去」になるものや対処しにくいパーマネントを作るようなものにならないように特に注意しなければならないのです。また、制御不能になって戦場を泥沼にするような効果を作ってしまうこともあり得るということも意味しています。私たちは、他の効果や他のマナなどを使うことなく、カード・アドバンテージその他の克服できないように思えるアドバンテージをもたらすエンジンに簡単に繋がるようなものにならないように注意しなければなりません。
私たちはリミテッドで使える暗号を使ったちょっとしたコンボを準備するために、いくつかの輪を作りました。スタンダードでは、プレイヤーの皆さんがすぐに気付いてしまうので、私たちは様々な初期のカード・デザインについて《不可視の忍び寄り》を主軸にしたデッキで試す必要がありました。それらのデッキは、暗号で何ができて何ができないのかという実際上のテスト場となったのです。
そのメモを踏まえて、私たちが暗号でやっても大丈夫だと判断したことの一つをお目にかけましょう。
その前に、あなたの好きなクリーチャーを思い浮かべてください。伝説のクリーチャーでないほうがいいです。さて、それがどう繋がると思いますか?
このプレビューを楽しんで頂ければ幸いです!
ご清聴ありがとうございました。
デイブ・ハンフリー
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