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プレビュー記事:《不浄なる者、ミケウス》
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プレビュー記事:《不浄なる者、ミケウス》
Jenna Helland / Translated by Mayuko Wakatsuki / Translation-supervised by Yohei Mori
2012年1月16日
妹へ
その火災の知らせははなはだ残念なものだった。一族代々の館を失ったのは悲しむべきことだが、それが我らが親族の手によるものだという事実は恥ずべきことだ。
ここスレイベンの情勢で君を煩わせたくはない。防護魔法の弱体化は由々しきほどに顕著だ。グールの軍勢、血の殺人、そして狼男の攻撃といった絶え間ない報告は多くの眠れぬ夜を私にもたらしている。
アヴァシンの帰還を心から祈るのだ。それまで、私はスレイベンを離れられぬ。彼女のそれに比べれば弱々しい我が力、それが我々の信心を結びつける只一本の細い糸なのだということを私は危惧している。
敬具
ミケウス
《月皇ミケウス》(細部) アート:Steve Belledin |
拝啓、ギサへ
貴女は常にイカサマをせずにはいられないのだな?
我々は行動の規則、屍戦争の五カ条に合意した筈だ。
- 自発的に覚醒したグールは使用禁止とする
- 見物人及び家畜をおびき寄せること、殺すこと、蘇らせることは禁止とする
- 戦闘員は常に前もって場所と時間を決定した上で対決させるものとする
- 戦闘員は少なくとも三本の手足を必要とする
- 本拠地には立ち入り禁止とする
貴女は戦闘の最中にグールを起こすことはできぬ! 貴女は私と落ちあうべく軍隊を谷へと送らねばならぬ。私の側面をつかないで頂こう! そして私の背後に立たないで頂こう!
脚のない胴体は戦闘員としては数えん。我がスカーブは貴女が地面から引っ張り出したちっぽけな肉袋の脚にくっきり歯型をつけてやろうではないか。ああそうだ、私の六分儀を取り戻さなければ。もう私の実験室に入ってこないでくれたまえ!
貴女は血の署名をした。つまりそれは有効ということだ。
ゲラルフ
《墓所這い》 アート:Steven Belledin |
ゲラルフへ
あんたは常に愚痴を言ってなければ気が済まないの?
同意することなど何もありません。
- 私は望む時にいつでもグールを召喚します。私は墓地から彼らを呼び起こせるというのに、あんたときたら逃げ隠れて縫物をするただのお馬鹿さんなのだから。
- 不気味な光を確認しに出て来るような愚かな農夫は、シャベルで殺されて我が下僕となるに値します。
- 場所と時刻をあらかじめ決める? 何なのそれは。お茶会?
- 「肉袋」ですって? それは能率というものの模範よ。17個もの別々の部位がなければ、貴方はスカーブを歩かせることもできないでしょうに。
- あんたの変な六分儀なんて取っていない。火災で溶けてしまったのでは?
本当に、あなたには幼児ほどの脳もないのね。
ギサ
追伸 私の血と言った覚えはないわ。
拝啓、ギサへ
貴女が屍戦争の規定を支持しないゆえに、我々のゲームを完全に台無しにさせていると私は判じた。従って、私はもはや精鋭の軍隊を戦場へと送ることはあるまい。私には遥かに遠大な計画があるのだ。
貴女の下等な標本と戯れているがいい。
ゲラルフより
ゲラルフへ
あんたの「遠大な計画」に興味はないわ。もしあんたが私の陣地を通り抜けようと計画しているのなら、その意向を知らせるよう要求せねばなりません。知っての通り、私の陣地は天使の街道から始まり、スレイベンへと続いているのだから。
ギサ
アート:Karl Kopinski |
拝啓、ギサへ
トロスタッドからのあらゆる街道で私の笑い声が聞こえるかな? 貴女の陣地は天使の街道から始まるのではない、だが貴女の間違いを指摘せずにはいられなかった。知りたいかね、我が計画はスレイベンを大地に帰すというものだ。それは月皇たる私のもと、不死者の輝かしい都市となるであろう。
出世を目指す中で、私は祝福されし眠りの性質について沈思黙考した。スカーブの精神状態は、その聖なる状態を成し遂げた者のそれと同等なのではないかと私は仮定する。つまり私は、これら哀れな羊達へとまさに彼らが最も願うものを現実に与えているということだ。
貴女からはこれまで侮辱を受けてきたが、私は招待しよう。共にこの慈悲深い冒険をしようではないか。私はスレイベン大聖堂を頂くが、都市の残りは貴女のものとしよう。
ああ、我がスカーブの将軍を紹介せねばならんな。貴女の顔に敬意を表して、彼の名はグリムグリンという。
貴女の忠実なる弟、ゲラルフより
ゲラルフへ
興味をそそるお話ですわね。我が軍勢を貴方のもとへ参じさせましょう。都市の半分、結構なことですわ。ですが同じく屍の半分も要求させて下さいませね。
ギサより
アルウィン司教殿へ
恐れながら、貴方様は事態を過小評価しておられます。ただちに月皇にお知らせ下さい、そしてあのお方に行動を求めねばなりません! これはトロスタッドの村単独のものではありません。ハンウィアー教区でも、ムーアランドでさえも。私が審問官を務めてきた15年間で、このゾンビの横行は最も恐ろしい事態です。我々の最近の人口調査では700近くの人命がこの教区内におりました。残っている者は100にも満たないと思われます。彼らは逃走したのでしょうか? それとも殺害されたのでしょうか? 私は最悪を恐れております。
恐らく貴方様はギサとゲラルフの事をお聞きになった事があるかと存じます。彼らの気味の悪い「戦争ゲーム」がこの地域を大規模に破壊しております。グリムグリンの名は初耳かと存じます。奴こそ災難、破壊の運び手です。すぐに行動に移らねばなりません、奴がスレイベンの城壁を登りきる前に。
エルゴードの審問官、隊長補佐トラケン
アート:Ryan Pancoast |
隊長補佐トラケン殿へ
確かに貴方の書状を受け取った。だが月皇を煩わせる前により多くの情報を得なければならない。恐らく貴方は住人の人口調査が可能だろうが、どれほどの数が生存している?
存じておろうが、月皇はアヴァシンの安息日に関する問題を取り扱っておいでだ。もし貴方ご自身でその状況を統制できないのであれば、ことによるとそれが可能な審問官の派遣をご希望かね?
司教アルウィン
アルウィン司教殿へ
ウェストヴェイルの道に沿って、夜明けに我々は村まるまる一つ分の切断された肉体を発見致しました。その丘の頂上に、我々自身でグリムグリンを目撃しました。人間の倍の大きさもある、そびえ立つスカーブです。鉄とばらばらの肉体で造られた巣の中、その頭は胸に埋もれていました。羊飼いの後ろの羊のように、歩く死者の軍勢がそれに続いておりました。ご存じでしょうが、私は誇張表現をする人間ではありません。そして私はこの規模をお伝えすることはできません。
私の話を直ちに月皇へとお伝え下さい。ムーアランドは殺戮の場となりつつあります。このスカーブは我々が考えたこともないような敵です。
エルゴードの審問官、隊長補佐トラケン
アート:David Rapoza |
アルウィン司教へ
おぬしは只一体のスカーブで私を悩まそうというのかね。イニストラードの全州で血が流されている。スレイベンが包囲されると? 我々全員が包囲下にあるのだ! すぐに、信仰の力が暗黒の魔術を当然の報いとして追い払うであろう、我が言葉に耳を傾けよ。私に何を望むのだ?
懸念があるならば、ロサーへと話すがよい。スレイベンの守護者として、彼は都市の周りの防護を強化するべく多くの事を行ってきた。その城壁は持ちこたえるであろう、教会の祝福があろうとなかろうと。
スレイベンの月皇、ミケウス
《忠実な聖戦士》 アート:Ryan Pancoas |
ロサーへ
古い友よ、残された時間は少なくなっています。乗り手達は実に見事なものですが、包囲戦においては無力です。貴方はもはや報告を拒めません。最初の波はまもなくスレイベンを襲うでしょう。
貴方はこの聖なる都市の守護者なのです! 城壁を掘り下げるであろうスカーブの脅威に対して、我々は防護を築かねばなりません。城壁へとより多くの弩弓隊を、鐘楼へとクロスボウを。ステンシアから兵士達を呼び戻すのです。彼らは3日のうちに我々の敷居に到達するでしょう。ケッシグの民兵を奮い起こす合図を上げるのです。彼らは5日のうちにやって来ます。
スレイベンの大城壁は決して破られてきませんでした。ですがロサー、防護魔法は失われています。それが貴方の心を打ち砕くことは知っています、ですが現実は変わりません。もし助けとなるのなら、私は常に貴方の傍にいます。
スレイベンの守護者、サリア
アート:Zoltan Boros |
拝啓、ギサへ
スレイベンの尖塔が地平線に姿を現した!まもなく我らが軍隊は岩からなる海岸の波のように城壁を打ち砕くであろう。貴女のグール達の持久力を褒めねばなるまい。速さには欠けるが、彼らはまさしく忍耐のために造られたものだ。奴らは我が戦争機械の良い歩兵となっている。
我が計画は最終段階へと移行する。私は極秘任務に乗り込まねばならん、非常に優れた我らの軍隊を担当する姉上を残して。私は屍を使用した包囲術を広範囲に渡って勉強してきた。次に挙げる交戦規則に従うがいい。
- 都市の外に続く全ての道を封鎖すること。舌のあるグールがいるならば、彼らを哨兵とするべし。
- 鐘楼を燃やすべし。だがクロスボウ持ちの腕は可能ならば残しておくこと。彼らは良質の筋肉を持つ。
- 城壁下にトンネルを掘ること。今、我が四本腕のスカーブを笑う者はおるかね?
- 岩でも肉でも何でも、手にあるもので都市を攻撃するべし。
我が秘密の任務について知るには貴女は死なねばならぬ。そのうちいずれだ、親愛なる姉上。時が来たならば。
ゲラルフ
ゲラルフへ
貴方の芝居がかった愛情表現には心からうんざりよ。予想しましょう、貴方は包囲の前に潜入して、月皇を殺そうとしているのでしょう。認めるのは嫌ですが、実際のところ貴方の先見には心から感銘を受けました。知ってます、月皇ミケウスは私達の親戚でもあるのよ? ええ、シカニ家の方の従兄。ま、それは余談。
それと貴方の交戦規則は葬っておきます。これが私のものです。彼らを城壁へと向かわせます。グリムグリンが城門を処理できますから。
ギサ
アート:Clint Cearley |
スレイベンは死体、我々の上には禿鷹が飛んでいる。天空から見たならば、不死者の軍隊は善きもの全てを貪り食い、その跡に黒い汚れを残し蟻の群れのように違いない。足元で地面が揺れている。攻撃を受け、外部城壁が崩れる音を聞いた。アヴァシンの存在無しには、千年の時を耐えてきた石も塵へと崩れ落ちるのだろう。
私には計画があるけれど、ロサーの姿はどこにも見当たらない。外部城壁が突破される前に彼の耳に入れなければいけないのに。だけどまるで小悪魔が彼の耳を塞いでいるようで、正気はもはや彼を揺さぶることはできない。
スレイベンの守護者、サリアの日誌
我が乗り手達はかろうじてその容赦ない軍勢の前へとどうにか出た。都市の守護者はその地位を捨ててしまったと思われる。成り上がり者のサリアは我々を最も正気でない仕事に割り当てた。都市全ての屋根から屋根ふき材料を取れというのだ。恐怖が彼女の精神に触れたのだろう。最高の機会だ、私はアルウィン司教を見つけ、城壁に攻撃を仕掛けているのは何者なのかを明らかにしなければならない。
隊長補佐トラケンの野帳
アート:Todd Lockwood |
ロサーの身体が滝の下の岩で発見されたという報告を受けた所だ。信仰弱き者の、なんと哀れな死か。私はスレイベンの守護者として彼の副官を任命していた。彼女が任務についても同等かどうかは定かではない。そして信仰は何の答えも生み出してはくれぬ。
手が震えている。うずく骨の中、歳ごとに感じる。私は最早、生命で脈動していない教会という骨の上に立つ、分厚いローブをまとった老人以外の何物でもない。屋根裏に隠れた天使達自身さえも、失った全てのものに対して悲嘆している。
扉を叩くかすかな音がする。ついに良い知らせがもたらされたことを祈ろう。
[月皇ミケウスの書き込みはここで終わっている]
拝啓、ギサへ
貴女の優れた進行を称賛させて頂こう! 私は城壁から煙が上がるのを見ている。街への貴女の輝かしき入城は全くもって栄光に満ちたものとなるであろう。
私がこれを月皇の私室から書いていると知ったなら、貴方はきっと満足するであろう! それは実に、全てが極めて単純な事であった。コン、コン、それは死の呼び声だ。奴は平然と扉で応じた。私は黄金の書状開封ナイフで奴を殺し、そして心臓を貴女のために取り出したのだ!
私が支配権に浸る数時間の間、貴女を玄関にただ一人残しておきたくはないな。私はどんな類の主人になれば宜しいかね? 我はまもなく絢爛たる新たな大聖堂を去り、貴女の傍へと参ろうではないか。
貴女の忠実なる弟、ゲラルフより
トラケンに正門から配下の者達を撤退させるよう言うと、彼は諦めた。我々は都市の最外環部を失うだろう。だがその犠牲は無駄にはしない。少なくとも、それこそ彼が信じねばならない事だ。
都市の守護者、サリアの日誌
《ゾンビの黙示録》 アート:Peter Mohrbache |
正門は一瞬で墜ちた。実に不快な群衆が外環部へとなだれ込んだ。奴等の悪臭はとてもきつく、兵士達に吐き気を催させた。我々は内門を保持し、グール共はその容赦のない突撃で積み重なっていった。我々の防衛がひるんだ時、私は一本のマッチをすった。
私の指からとても小さな炎がスレイベン中の屋根から取った乾燥した萱へと落ちるまで、永遠と思える長い時間がかかったように思えた。数秒で、都市外環部は炎の輪となった。松の木の小さな棒が我らの都市の救世主となった。
思った以上に多くの聖戦士を失った。炎は数か所で今もくすぶっている。だが都市のほとんどは耐えており、大聖堂は無傷だ。疲労に正気を奪われる前に、月皇へと報告に行かなければ。
都市の守護者、サリアの日誌
ゲラルフ、
何というお馬鹿で幼稚な子供なのあんたは。何からスカーブを作ったの、紙? 灯油? 少なくとも私のグール達は少々腐っているから、火口箱のようには燃えやしないわ。この大失敗はあんたのちっぽけな肩で全て負うのよ。
この役立たず、私は荒れ野に戻るわ。スレイベンの奴らがあんたを四つ裂きにして番犬のエサにすればいいのに。
ギサ
ミケウス様の死は何があろうとも極秘としなければならない。彼は月皇の墓所に封じられる。式典は行わない。教会の業務を続けなければならない。
この憎むべき犯罪を解決するために、殺人者に対して我々は最良の審問官達を任務にあてている。遺骸の大半は取り戻したが、心臓が行方不明だ。
司教アルウィン
ギサへ
我が冒険に貴女を加えるべきではなかった。貴女とその蛆虫達はまた全てを破滅させた。だが貴女を許そう、何故なら私は特別なある人物と出会ったゆえに! リリという名の、とても魅力的な娘だ。彼女は名残惜しそうに、大聖堂の外に迷子の子犬のように立っていて、その長い黒髪が燃えさかる都市の火花に照らされていた。私は心から喜んで、彼女を我が庇護の下に置くことにした。
私がいかにしてスレイベンを失ったか、人々は満足げに眺めるであろう。月皇がいかにして幸福なる永遠の眠りに、心地の良い祝福されし眠りにつくのか、彼らは声高に話すであろう。我が愛しのリリは今や亡きミケウスに並はずれた興味を抱いている。彼女は私に約束した、その永遠は全くもって長くは続かぬと。
ゲラルフ
《不浄なる者、ミケウス》 アート:Chris Rahn |
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