READING
翻訳記事その他
刺激的で魅力的な《炬火のチャンドラ》10の秘密
読み物
翻訳記事
刺激的で魅力的な《炬火のチャンドラ》10の秘密
Mike Flores
2011年6月30日
過去数年にわたって、「シャークと泳ごう」シリーズやこの「トップ・デックス」シリーズを執筆してきましたから、私は毎セット、最高の、もっとも競技向けのカードをプレビューする特権を得ているわけです。《謎めいた命令》や《稲妻のらせん》もそうですし、《水蓮のコブラ》や《獣相のシャーマン》といった2ターン目にプレイするのに最適のクリーチャーもいました。かと思えばゲームを決める《槌のコス》のようなカードもありました。そして、あの4マナの赤のプレインズウォーカーを増長させた人間として、私はこれまでプレビューしてきたどのカードに比べても《炬火のチャンドラ》こそがもっとも華々しい4マナの可能性の1つである、と断言しましょう。
彼女の近々に迫った叙勲をどう祝うべきでしょうか?
話題になるところは10個あげられます。
1. ザ・チャンス!...あるいは適材適所
数ヶ月前、人々の間で噂になっていたのは《ギデオン・ジュラ》がスタンダードで「無敵のコンボ」の一翼を担うという話でした(もう一翼もプレインズウォーカーですが、名前は伏せておきましょう)。しかし、環境が進んでマナ・カーブが下に寄ると、《ギデオン・ジュラ》はデッキから外され、ストレージの中で埃をかぶることになってしまいました。白青のクリーチャー・コントロールは加速し、《失脚》や《糾弾》が使われるようになったのです。
《ソリン・マルコフ》ははっきり言うとすごいカードです。私の娘ベラ・フローレスのお気に入りのプレインズウォーカーだということと、コンリー・ウッズ/Conley Woodsのエクステンデッド・デッキに入っていたことを除いては、競技プレイではあまり見かけられませんでした。
すばらしき例外1つ(唯一の3マナ・プレインズウォーカー)を除いては、競技に影響を及ぼすすべてのプレインズウォーカー?もちろん、スタンダードの「階級王者」を目指しているプレインズウォーカー?は4マナでした。白黒トークンの《黄金のたてがみのアジャニ》は......4マナでした。ナヤ・ライトセイバー(や、その他のデッキ)の《復讐のアジャニ》は......4マナでした。アーティファクト・グリクシスと毒デッキの《ボーラスの工作員、テゼレット》は......4マナでした。ありとあらゆるデッキで活躍したと言われている《精神を刻む者、ジェイス》は......4マナでした。
そして、驚愕の事実が。《炬火のチャンドラ》も同じコストなのです。
ようこそ栄光のクラブへ。
2. ハハッ、死んだエルフ
「野心に燃えるプレイヤーが受けるアドバイスの一片に、好きなデッキや使い慣れたデッキを常時使い続けるよりも「最強のデッキ」を使うことを学ぶべきである、というのがある。これは私にとっていい話だ。なぜかというと、どういう偶然のなせる技か私がテストすると赤単がいつでも最強のデッキだと示されるからさ。」
?ダン・パスキンズ/Dan Paskins
当時、ダン・パスキンズと彼の赤単(レッド・デッキ・ウィン)は「エルフ狩り」という別の競技をしていました。エルフを大会(本大会)全体で殺した数だけのポイントを得るというものです。第1回の優勝者はスベント・ガートセン/Svend Geertsenで、パスキンズはその後今日までの間に一日57体という最多殺戮記録を樹立しています。
彼女自身も赤デッキのファンです。《炬火のチャンドラ》は次回の「エルフ狩り」の手伝いをしようと手ぐすね引いていることでしょう。
この能力は以前の《チャンドラ・ナラー》の+1能力と全く同じだということに気づくかもしれません。ただし、対戦相手をちまっと削るだけではなく、《東屋のエルフ》や《ラノワールのエルフ》、その他のエルフを狩ることもできるのです。
一方、エルフでないクリーチャーも気をつけましょう。そこの《水蓮のコブラ》や《極楽鳥》も注意が必要ですね。
3. フェニックスのママ
まだ見ていない人たちのために、M12では、チャンドラのよく知られた(炎の)翼の下には新しいレア・クリーチャーがいるのです。その名も《チャンドラのフェニックス》。
どうです、格好いいでしょう?
《スークアタの槍騎兵》のような、ただし頭上を越えていくので側面攻撃は必要ありませんし、そして、なんと、死なないのです。
え?
《チャンドラのフェニックス》は多くのデッキで4積み必須でしょう。単純なパワーだけを見ても平均以上ですが、非常にいい呪文なのです。《電結の荒廃者》や《記憶の壺》のようなものではありません。ただ、いいカードです。
《チャンドラのフェニックス》|イラスト by アレクシー・ブリクロット/Aleksi Briclot |
《チャンドラのフェニックス》は、チャンドラママがいるときにはさらにいい働きを見せてくれます。
(《山》にダメージを与えさせる)《槌のコス》とは違い、《炬火のチャンドラ》は《チャンドラのフェニックス》を動かすことができます。実際、どのチャンドラも《チャンドラのフェニックス》を呼び覚ますことができますが、《炬火のチャンドラ》が一番自由自在にできます。
それはエルフ狩りの項目でお話ししましたよね。
+1能力を使うと、一方通行じゃなくカード・アドバンテージまで取れるのです!
4. まん中
チャンドラの2つめの能力がどうまん中かというと、......カードのまん中に書いてありますね。
この能力をどう使うか、ピンと来た人もいることでしょう。
「おお、《稲妻》で6点!」
もう一声行ってみませんか。
10点ダメージの《ゴブリンの手投げ弾》なんていかがでしょう?
ほかにも5点ダメージを与える方法は2つほどありますね。
そんな小さいことじゃだめです!
《破壊的な力》の2倍?
いいですねえ! いや、いいっていうのは、言葉のあやで。ですが、それも私にとっては一考の余地のある話です。マジックで何かを倍にするというのは合法的な大きさです。そして《炬火のチャンドラ》の場合、見た目以上に発展性があると言えます。
ひとつ奇妙なことを考えてみました。《炬火のチャンドラ》の右上には、赤マナ・シンボルが1つしかありません。それなら、なぜ赤デッキにこだわる必要があるのでしょうか? 《定業》の2倍とか、真剣に考えてみる価値がありそうです。《テゼレットの計略》を2倍にするのもよさそうです。赤を離れて、2ライフ払って4枚引いて増殖する......《炬火のチャンドラ》の上にある忠誠カウンターを増やしてみては?
うまくいくかもしれませんし、いかないかもしれません。でも、そういった可能性はこのカードに秘められています。6点の《稲妻》というのがあるいは最高の(少なくとも最多、最安定の)《炬火のチャンドラ》の使い方かもしれませんが、答えはひとつとは限らないのです。
5. 強化
今度は《チャンドラ・ナラー》と《炬火のチャンドラ》の奥義を比べてみましょう。
《炬火のチャンドラ》は(完全上位互換の)+1能力を3回起動すれば、?6能力の準備が整います。《チャンドラ・ナラー》は+1能力2回で「奥義」の準備ができるので、その点では劣っているように見えます。
しかし、《炬火のチャンドラ》は1マナ軽いので、基本的には差し引きゼロです。
ええ、《チャンドラ・ナラー》の奥義の方が(たぶん)強いです。しかし、《炬火のチャンドラ》の6点ダメージというのはより実用的で、十分な強さだと思いますよ。
6. 《槌のコス》か《炬火のチャンドラ》か
先週の禁止を考えるとおかしな主張に聞こえるかもしれませんが、《槌のコス》は史上最強の4マナ・プレインズウォーカーかもしれません。《槌のコス》と《精神を刻む者、ジェイス》の違いは、《精神を刻む者、ジェイス》はカウ・ブレードや青赤緑その他諸々のデッキに入る一方、《槌のコス》は《山》が沢山ある赤デッキにしか入らないということでしょう。
《炬火のチャンドラ》にはそのような制限はありません。マナ的に見れば、彼女のコストは《復讐のアジャニ》以上に軽く、そして《復讐のアジャニ》はかつてナヤ・ビートダウンだけではなく様々なコントロール・デッキで活躍しました。オシップ・レベドヴィッツ/Osyp Lebedowiczがエクステンデッドのプロツアー予選で勝ったときなどは、《霊体の地滑り》デッキのサイドボードで活躍したのです。
この2枚のどちらを使うかという選択があることは疑う余地もありません。どちらも赤のプレインズウォーカーで、どちらも4マナです。《槌のコス》は強烈で、赤単に最適で、そして彼そのものが《山》という文字で彩られています。
《炬火のチャンドラ》は赤デッキで優秀ですが、青デッキにタッチで入れることもできますし、4マナをプレインズウォーカーにかけることができる様々な戦略で活かされるでしょう!
7. 《槌のコス》と《炬火のチャンドラ》と
理性を吹っ飛ばしてみたいですか?
4ターン目に《槌のコス》を出し、{R}{R}{R}{R}を《槌のコス》の2つめの能力から出して、《炬火のチャンドラ》を呼びましょう。
《破壊的な力》の2倍がけという話をしましたね? それもできるし土地をばりばり並べることもできるデッキで《解放された者、カーン》を出すのはどうです?
赤単プレインズウォーカー・コントロール・デッキというのはいかがです?
8. すごくてでっかいまん中
《破壊的な力》の2倍がけという話を(2回)しましたよね。
大事なことなのでもう一回言っておきます!
9. 無限の可能性
《炬火のチャンドラ》はいかにも入りそうなデッキに入るだけでなく、ほかのほとんどの戦略に絡めることができるプレインズウォーカーです。青赤コントロールに入れるというのはもちろんいいでしょう。《詐欺師の総督》+《欠片の双子》を散らしてコンボ中心に偏りすぎないようにするのもいいですね。
エルフ狩りの《炬火のチャンドラ》が《復讐のアジャニ》に代わり、《精神を刻む者、ジェイス》を失った代わりに《ジェイス・ベレレン》を迎えた赤白青プレインズウォーカーが再びアーキタイプとして返り咲くこともあり得ます。
なぜ止めるんです?
私が赤白青プレインズウォーカーにたどり着いたのは、去年からそれ系のデッキを使っていて、そのまま強化していったらそうなったのです。《炬火のチャンドラ》はぴたりとはまるように見えました。しかし、あらゆる方向からのインパクトを与えられる無限の可能性こそが素敵なのは、皆さんご存じの通りです。
ジョニーの皆さん:いかにもなデッキに入れるだけじゃなくていいんですよ。
このチャンドラをこれから数ヶ月の間一番よく見かけるのは、おそらく大量の山に囲まれた、場合によってはゴブリンの棲むところでしょう。とはいえ、ほかの場所で活躍しているところを見かけなかったりしたら、その方が驚きです。
10. 王は崩じた、女王よ永遠なれ
《精神を刻む者、ジェイス》が禁止されるほどにすごかったのは何でしょう?
この質問を自問したことがありますか? それとも、彼は単にほかの誰よりも優れていたからだとあきらめていましたか?
《精神を刻む者、ジェイス》は《ナルコメーバ》的に公正ではありませんでした。彼は非常に強かったのですが、マジックをプレイできないようにするものではありませんでした。むしろ、彼はよりよい手を求めさせるようなものであり、多くの勝利者たちはジェイスの謎かけにそれぞれ異なった方法で答えていたのです(まあ、しばしばジェイスのもう一面を使うという手段が執られていましたが)。
一歩引いて《精神を刻む者、ジェイス》が実際にしたことを見れば、ほかの状況でも生かせる教訓が得られるでしょう。
「消術」?《精神を刻む者、ジェイス》はマナさえも使わずにあなたのリソースを否定し、大量のカットで手を止めさせました。デッキの残りの部分だけで戦わなければならなかったのです。
「渦まく知識」?《精神を刻む者、ジェイス》はカード・アドバンテージをもたらしました。
「送還」?(私が4つの中で一番好きなものです)《精神を刻む者、ジェイス》はマナの不均衡をもたらしました。対戦相手はマナを消費し、あなたはただ忠誠カウンターを動かすだけでした。《精神を刻む者、ジェイス》はデッキを削り、マナを使わずに好きなことをできる機会を提供してくれていたのです。
奥義?誰でも逆転できる最高の技でした。
《炬火のチャンドラ》は《精神を刻む者、ジェイス》と比肩できる能力を持っています。+1能力は《精神を刻む者、ジェイス》の最初の3つの能力のように特化したものではありませんが、防御にもなればマナ節約にもなり、勝利に向けてのクロックにもなります。《精神を刻む者、ジェイス》の3つめの能力を《極楽鳥》や《水蓮のコブラ》に消耗するぐらいなら、《炬火のチャンドラ》でバシッと焼いてしまえばいいのです。これだけで20点たたき出すことは難しいでしょうが、毎ターン1点だけでもほかの赤のカードを使いやすくすることはできます。結局のところ1点分強化されたことになるわけです。
(炬火のチャンドラ》|イラスト by D.アレクサンダー・グレゴリー/D. Alexander Gregory |
確かに、《炬火のチャンドラ》では《ファイレクシアの抹消者》を《精神を刻む者、ジェイス》がやったように簡単に足止めすることはできません。ですが、呪文を倍増する2つめの能力を使えば「ほかの何か」でほとんど何にでも対処できるようになるのです。実際、《精神を刻む者、ジェイス》で戻しても止められなかったタイタンへの対処は、《稲妻》を使うだけで十分です。そしてもちろん、《炬火のチャンドラ》の派手な可能性は見せ場を作ってくれることでしょう。
最後に、彼女の奥義です。《精神を刻む者、ジェイス》の奥義から逆転したより多くの人が逆転するでしょうが、それでも合計36点のダメージを与える可能性があるのです。
さらに、何度も言ってきましたが、《精神を刻む者、ジェイス》と同じようにこの第3のチャンドラは《槌のコス》の入らないようなデッキにも入り、どこでも活躍できます。
《炬火のチャンドラ》は《精神を刻む者、ジェイス》の再来になるのでしょうか? ならないと信じています! ですが、彼女には彼と同じような点が沢山あり、エキサイティングなのです。
......さて、いよいよ《炬火のチャンドラ》の戴冠の日です!
RANKING ランキング
NEWEST 最新の読み物
-
2024.11.21戦略記事
とことん!スタンダー道!難解パズルなカワウソ・コンボ(スタンダード)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
-
2024.11.20戦略記事
緑単アグロ、原初の王者の帰還!(スタンダード)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
-
2024.11.19戦略記事
ボロス・バーン:基本セットと火力の関係(スタンダード)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
-
2024.11.18戦略記事
世話人型白単コントロール、『ファウンデーションズ』の注目カードは?(スタンダード)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
-
2024.11.15戦略記事
今週のCool Deck:イゼット厄介者で機織りの季節を楽しもう(スタンダード)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
-
2024.11.15お知らせ
MTGアリーナニュース(2024年11月11日)|お知らせ
CATEGORY 読み物カテゴリー
戦略記事
コラム
読み物
BACK NUMBER 連載終了
- Beyond the Basics -上級者への道-
- Latest Developments -デベロップ最先端-
- ReConstructed -デッキ再構築-
- Daily Deck -今日のデッキ-
- Savor the Flavor
- 射場本正巳の「ブロールのススメ」
- 津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
- 浅原晃の「プレミアイベント三大チェックポイント!」
- ガフ提督の「ためになる」今日の1枚
- 射場本正巳の「統率者(2017年版)のススメ」
- かねこの!プロツアー食べ歩き!
- ロン・フォスターの統率者日記
- 射場本正巳の「統率者(2016年版)のススメ」
- マアヤのマジックほのぼの日記
- 金子と塚本の「勝てる!マジック」
- 射場本正巳の「統率者(2015年版)のススメ」
- 週刊連載インタビュー「あなたにとってマジックとは?」
- なかしゅー世界一周
- 中村修平の「デイリー・デッキ」
- 射場本正巳の「統率者(2014年版)のススメ」
- 中村修平の「ドラフトの定石!」
- 浅原晃の「プロツアー観戦ガイド」
- 鍛冶友浩の「プロツアー観戦ガイド」
- ウィザーズプレイネットワーク通信
- Formal Magic Quiz
- 週刊デッキ構築劇場
- 木曜マジック・バラエティ
- 鍛冶友浩の「デジタル・マジック通信」
- 鍛冶友浩の「今週のリプレイ!」
- 渡辺雄也の「リミテッドのススメ」
- 「明日から使える!」渡辺リミテッド・コンボ術
- 高橋優太の「このフォーマットを極めろ!」
- 高橋優太の「このデッキを使え!」
- 黒田正城の「エターナルへの招待」
- 三田村リミテッド研究室
- 新セットめった切り!
- シングルカードストラテジー
- プレインズウォーカーレビュー
- メカニズムレビュー
- その他記事