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15の統率者、15の物語
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15の統率者、15の物語
Doug Beyer
2011年6月22日
もし君が全ての「マジック:ザ・ギャザリング―統率者」デッキを手にしたなら、君はその手に全員新顔の伝説のクリーチャー15体の重みを感じるだろう。ああ、もちろんそれ以外にも新しくデザインされた新カードの束と、伝説達の脇を固める粒ぞろいの精鋭達もいるが、我がヴォーソス魂を揺さぶるのはやはりこれら伝説のクリーチャー達だ。多元宇宙のあちこちからやって来た彼ら2色もしくは3色の強烈な個性の持ち主達は、何者なのだろうか? この雑多な集まりの背後にある、疑いようもなく妙ちきりんな物語とは? 何故ゲイヴは哺乳動物を憎み、そしてニンは神経終末について何を考えているのだろうか?
実を言うと我々は「マジック:ザ・ギャザリング―統率者」デッキに15体の新伝説達についての短い紹介文を書いた。君はそれらをデッキに同封されている折りたたまれた説明書に見ることができる。私は今週、ここでその全てを皆と共有したいと思う。それは手近ですぐに記事として使えるし、高解像度のアートをお見せするとてもいい理由になるからだ。新たな伝説達が彼らを取り巻く舞台や物語なしにゲームに登場するのは極めて稀だからというのもある。これらの略歴は、背景となる舞台や物語を持たない彼ら自由人達についての断片をくれる。楽しんでくれ!
そして紹介文の後には? とても楽しい今週のお便りだ。
「天空の業火」デッキの統率者: 巨大なるカーリア
《巨大なるカーリア》 イラストレーション:Michael Komarck |
巨大なるカーリアは山の礼拝堂に腰掛け、天使軍と冥界軍の兵を想いながら、破壊に覆われた過去に悩まされていた。かつて僧だったころの彼女のつつましい生活は、影のような怪物が仲間を抹殺したことで灰燼と化してしまった。彼女は何とか生き延びたが、その魂は皹だらけになり、やがてその裂け目に憎悪が忍び込んだ。そして今、正義の怒りと邪悪な報復への飢えに動かされ、カーリアは熱狂のまま大いなるその力を蓄積し、その前に立ちはだかる者に破滅を解き放とうとしている。
魂を数える者、タリエル
《魂を数える者、タリエル》 イラストレーション:Wayne Reynolds |
タリエルは知っている、運命の網目は緩いものであると。魂はどれも彼女にとっての糸であり、たやすく抜き取っては歴史のタペストリーの中に編み戻される。古えの文書には、彼女が天界の軍団から姿を消したことが書かれ、また別の巻物によれば、彼女は救世主として崇められていたが、その怒りはあまりに恐ろしく、そのとどろくような笑い声には逃げ出す者ばかりだったと言う。
戦いの熾天使、バサンドラ
《戦いの熾天使、バサンドラ》 イラストレーション:Terese Nielsen |
バサンドラは、純潔と戦いの試練を通じて真実を求める戦士の信仰の対象である。彼女は策略や陰謀を禁じ、鋼の鋭さや意思の固さや筋肉の公正さを以て良しとしている。彼女の求めに応じたものは、疑い無い狂信の下、戦場に飛び込んでいく。
「鏡の秘術」デッキの統率者: 二つ反射のリクー
《二つ反射のリクー》 イラストレーション:Izzy |
二つ反射のリクーには二つの情熱がある。魔法を研究すること、そして生命を研究することだ。この魔道士はそのどちらかを選ぶことはしなかったが、両方を修めるには時間が足りなかった。しかしあるとき、古代の幻影の呪文を調べていたとき、彼にはその解答が見つかった。彼は秘密裏に自分の身体を二つの映し身に分け、それぞれのリクーは長年にわたって各々の分野を研究してきた。そして今日、リクーはその両方の分野の研究を終えたことを感じた。そんな彼の秘密を知るものはほとんどいない。映し身は互いに付かず離れず行動し、危険が迫れば敵は両方のリクーの力を目の当たりにすることになるのだ。
精霊の魂、アニマー
《精霊の魂、アニマー》 イラストレーション:Peter Mohrbacher |
この次元の伝承によれば、アニマーはあらゆる生命の究極の根源であると言う――すべての造物がそれを種とするのだと。アニマーが存在するところ、植物は花開き獣は闊歩する。その放浪する先は、季節の移り変わりを決めるのだと言う。
トレストの密偵長、エドリック
《トレストの密偵長、エドリック》 イラストレーション:Volkan Baga |
港町トレストでは、誰もエドリックの密偵や思考の急使や使い魔の網を逃れられない。キネスタの女帝ですら、岸辺で演習を行う際は、エドリックの意見を請う。世間が言うには、四世紀も前の若き日から、彼にはたった一つだけ手に入らない秘密が残っているそうだ。
「反攻」デッキの統率者: 胞子の教祖、ゲイヴ
《胞子の教祖、ゲイヴ》 イラストレーション:James Paick |
ドラッカスの地をモンスーンが襲うとき、獣の群れは溺れ、作物は流される。そこに住む人々は食料を求めて茸の森へ向かわざるを得ないが、そこで見つける茸は、人の形をした茸と、彼らの子たる苗木たちだ。人々にとっての救いは茸にとっては虐殺であり、彼らは侵略する生物を相手に戦いを挑んできた。魔道士は胞子の化身を火と鋼で退け続けた。ただし、それも茸の英雄、胞子の教祖、ゲイヴが現れるまでの話だ。胞子の化身に謎の力を与えるゲイヴは、その手下を変化し続ける軍団に変え、森を守り続けることを誓っている。
幽霊の酋長、カラドール
《幽霊の酋長、カラドール》 イラストレーション:Todd Lockwood |
かつてネシアのケンタウルスの高位の酋長だったカラドールは、大いなる戦いに倒れた。今やカラドールは若き日を過ごした谷に憑依し、悪霊や影の王国の王に収まっている。彼は幽霊の下僕を集め、自分を殺した敵の酋長に襲い掛かっている。
血の調停者、ヴィシュ・カル
《血の調停者、ヴィシュ・カル》 イラストレーション:Michael C. Hayes |
年を経た吸血鬼のヴィシュ・カルは、不道徳な者を餌食とし、自身の基準でその不道徳さを測っている。ヴィシュ・カルの眼を逃れえたものは、触れられることなく、染み一つ無いままだ。しかし、彼が有罪とした場合、彼は裁判官であり執行人となる。その評決は、血をすべて抜き取ることだ。
「策略の傀儡」デッキの統率者: 寛大なるゼドルー
《寛大なるゼドルー》 イラストレーション:Mark Zug |
寛大なるゼドルーは戦士の一族に生まれ、父と同じようにしなやかかつ好戦的だったが、彼女が選んだ道は戦場とは別だった。彼女が若かったころ、エルランドの人々を疫病の呪いが襲い、数多の人々が命を落とした。彼女が苦悩の中で学んだのは、戦争とは剣で勝つばかりではないということだった。彼女は絶望の中で、自らの命と引き換えに人々を守ることを誓い、その献身の甲斐あって、呪いは打ち破られた。今や彼女はその忍耐と献身、そして苦労して得た知識により、人々に崇められている。
フォモーリのルーハン
《フォモーリのルーハン》 イラストレーション:Raymond Swanland |
ルーハンは、自らを束縛するあらゆる法や期待や避難に逆らい続けている。彼は生まれた時から盲目だったが、それでも戦争の人生を選んだ。彼は名高いフォモーリの剣士の教えを受けたが、自らの武器には痛烈なる大槌矛を選んだ。長老達は同盟を結んでいるが、彼の忠誠は己の気まぐれのみに向いている。
苦痛の芸術家、ニン
《苦痛の芸術家、ニン》 イラストレーション:Brad Rigney |
ニンはその名高い経歴にもかかわらず、自身を拷問官とは考えていない。彼女は"患者"の限界を超えた、より深い意識を目覚めさせようとしているだけだ。彼女は、あらゆる神経は自己認識へとつながっていると信じている。
「貪食と増強」デッキの統率者: 擬態の原形質
《擬態の原形質》イラストレーション:Svetlin Velinov |
ムラガンダの世界をうろつく奇怪な生命について、多くは知られていない。牙のドルイドは、飲み込んだあらゆるものの特徴を吸収するそれを、擬態の原形質と呼んだ。南方の蜥蜴人の戦士は、擬態の原形質を追ってあらゆる場所へと出向いている。彼はそこに謎の来世への鍵があり、死んだ恋人へつながる道を見出そうとしている。南洋のエルフはそれこそが生命の循環であり、死から生へとつながる道であると信じている。傷魔女はそれが近づくと悲鳴を上げる。それこそが世界の究極の敵だと思っているのだ。それが自然の造物なのか、邪悪な力なのか、擬態の原形質は答えを示そうとはしない。
石の賢者、ダミーア
《石の賢者、ダミーア》 イラストレーション:Steve Argyle |
ゴルゴンはその石の視線もあり、仲間がほとんどいない。しかし、多くのものがゴルゴンの賢者ダミーアを追い求める。その魔法の知識の幅広さは他の大魔道士を遥かにしのぐのだ――その分、代償も高くつくが。その秘密を吐き出させようとした者も数多くいるが、それを試みた者達の石の像が、彼女の地には満ちている。
歩く墓場、髑髏茨
《歩く墓場、髑髏茨》 イラストレーション:Nils Hamm |
髑髏茨として知られるアンデッドの怪物は、屍術士と精霊術士が邪悪な契約を結んで生まれたことで知られている。魔道士たちは草生した墓で自らの魔法を紡ぎ、永遠の生命を得ようとした。代わりに彼らが生み出したのは、無慈悲で休むことを知らぬ死の精霊、髑髏茨だった。
今週のお便り
今日紹介するお便りはTadから。
親愛なるダグ・ベイアーへ
「細菌の戦い:生体武器のフレーバー」を読ませて頂きました。
これは多分少々遅いとは思いますが、生体武器についての貴方の記事の再掲載を読みまして、私は3つのセットに渡るそれらファイレクシアの創造物について気付いた事について質問したいと思いました。アート、大きさ、フレーバーから、それぞれの生体武器はVoltron(訳注:アメリカで放映されていたTVアニメシリーズ。日本のアニメ「百獣王ゴライオン」「機甲艦隊ダイラガーXV」が元になっている)的に合体し、巨大な怪物になることができるのではないでしょうか。
《皮剥ぎの鞘》は明らかに鉤爪になり、《縒り糸歩き》は脚に、《皮羽根》はその通りに皮の羽根になります。《骨溜め》は胸郭と脊柱を構成し(より巨大な究極生体兵器となって自身へとより多くの断片を集める)、《殴打頭蓋》が頭と、《鎌切り》が尾になります。《迫撃鞘》で武装することだってできます。......《屍襲い》については確実にあてはまる物が思いつきません(多分、くちばし?)。
この創造物達を合体させるという意図はあったのでしょうか? 究極生体武器とは? それはどんな外見をしているのでしょうか?
-- Tad
Tad、ファイレクシアの生体武器全てを合体させるというほんの少しの考えは融合して私の心を小さな、静かに舞い落ちる断片に引き裂いてしまった。その提案は、そいつがどんな見た目をしているかを我々が実際に試みて明らかにするべきだというのは、無責任の極みだ。全人類の正気に対する脅威だ。
我々にまかせてくれたまえ、今すぐやろう。
私は君のリクエストメールをマジックのWeb担当チームのグラフィックデザイナー、Tom Jenkotへと転送した。しばらくして私がデスクに戻ってくると、これがあった。
また、私のアーロンチェア(訳注:ハーマンミラー社製のデスクチェア)には馬の頭が置かれていた。不気味だ。だけど諦めの主張と馬頭の脅威こそ、Web担当チームが興味を表現する方法だ。ゆえに私は強く要請し、それが通ったことを嬉しく思った。これが完成品、全てのファイレクシアの細菌の乗り物が合体して一つとなったぞっとする人工怪兵器生物だ。
画像加工:Tom Jenkot
生体武器アーティファクトのイラストレーション:Chippy、Eric Deschamps、Jason Felix、Igor Kieryluk、Cos Koniotis、Mark Zug
全人類の正気をぶち壊す手助けをありがとう、Tad!
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