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ファイレクシア、強くそして分かたれたもの
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ファイレクシア、強くそして分かたれたもの
Doug Beyer / Translated by Mayuko Wakatsuki
2011年1月26日
もしミラディン人達が邪悪は彼等の次元の核に潜伏していると知っていたなら、ただ一人の犠牲者も出さずに妨害するチャンスがあったかもしれない。召喚したクリーチャーで取り囲み、防御呪文をかけて、特別チームを組んで核へと送りこんだかもしれない。堕落の源を狩りたてる道を開き、一掃するために。
ウェブコミック「Scarred」Part 3より 著:Doug Beyer 作画:Steve Prescott |
事実、コス、エルズペス、ヴェンセールの3人はできると考えた。コスはメフィドロスがその境界を拡大し始めたのを見て故郷の次元ミラディンが危機にあることを知り、それを止めるべく次元の外に助けを探し求めた。エルズペスは故郷の次元がファイレクシアに侵略された少女時代に直接その邪悪にさらされており、心に残る傷跡は今日に至っても彼女を苦しめている。そしてヴェンセールはアーボーグ、ファイレクシアのドミナリア侵攻の傷跡から未だ回復の途中にある地で生まれ育ち―そして彼は個人的にミラディンとの関係を持っている。ミラディンの創造主である銀のゴーレム、カーンは、ヴェンセールのプレインズウォーカーとしての師であった。そして3人はファイレクシアの堕落の源を追跡できると信じ、いくらかの魔法と戦闘、そして幸運とで、この軍勢を次元から全て拭い去ることができると考えた。
様相が判明した時には、もう遅かった。
ウェブコミック「Scarred」Part 3より 著:Doug Beyer 作画:Steve Prescott |
覆された予想
ファイレクシアを根絶するには手際を要する。飛び散り拡散するファイレクシアの油の性質だけでなく、その全ての滴が堕落の種なのだ。敵のいかなる犠牲者をも引き込んで膨れ上がってゆく「ゾンビの数学」だけでなく、戦場でのどんな酷い勝利をも、その倍も恐ろしい集団《堕落した良心》へと変えてしまう。それはまたとても奇妙なのだが、意外なことなのだ。ファイレクシアは常にその犠牲者を驚かそうとしているように見える。マナに満ちた核の中で巣籠りしているという地の利を持っていない時でさえ。そして彼等はメムナークが通行料を課していた戦いの後、一番大切な時に飛び出した。それはファイレクシアの無慈悲と飢えが、無知なる脳にあまりにもよく合うほど広大であるかのようだった。人々は危険の程度を予測することさえしなかった。生態系全体を相手に戦争を仕掛ける者などいるはずがないと考えた。我々の身体構成要素を原材料に彼等の大工場で独特のねじれた形に作り変え、この次元の全ての生命に取って変わることを求める軍勢などない。「完全」とは死んだ組織と油に汚れた金属との統合の中にある、などという熱狂的誇大妄想のもとに築かれた文明などないと。
過小評価され続けていることは優位性を持つに等しい。そしてその優位性はファイレクシアに足がかりを得させてしまい、その感染は些細な病気ではなく、完全なパンデミックとなった。ファイレクシアは探知レーダーの下、遥か深みを飛び交い、その優位性のもとに自身の形を成すために静かに時を過ごしていた。彼等がミラディンの地表へと現れると、屍賊、ヴィダルケン、エルフ、はたまた奇妙なミラディンの害虫との最初の遭遇においてファイレクシアはその神秘性を悪用した。それらの遭遇を単発攻撃か普通のミラディンの現象であると見限るミラディン人の考え方を弄んだ。
《刃砦の英雄》 アート:Austin Hsu |
だが今ミラディン人達は、彼等が対峙しているものの全容をはっきりと理解している。コス、エルズペス、ヴェンセールは以前から、ファイレクシアと対峙するのは3人の魔術師、プレインズウォーカーだけの仕事ではないと理解していた。前提条件は変更されている。予想は予測し直されている。この争いに駆り立てられ、ミラディンの異種からなる全住民は一つの旗印を目指す。
興味深いことに、同様の動きがファイレクシア人達にも存在する。それも逆に。ミラディン人が一つになるならば、ファイレクシア人は多様化する。
分派と分割
ファイレクシアのドミナリア侵攻の際、ウルザとプレインズウォーカーの仲間達はファイレクシア次元を攻撃し、ファイレクシアの本拠地を破壊し尽くしていた。しかしその油断ならない植民地化武器、ファイレクシアの油によって、どんな壊滅的攻撃にもファイレクシアは耐えることができると保証されていた。必要なものはただ適応すべき新たな次元、感染すべき宿主となる有機体。それさえあればファイレクシアは再び興る。
《消失の命令》 アート:James Ryman |
だがこの新たな故郷候補地はそれを変えた。ファイレクシアは繁栄のためにはどんな様式であっても、常に周囲の環境へと適合する。本来のシステムにおいては、ファイレクシアは黒マナにのみ関係しており、ゆえに黒に列する屍機械の軍勢を拡大させていった。ここミラディンでは、ファイレクシアは5色のマナ全てに発展した(ミラディン包囲戦プレリリースで、君はファイレクシアの新たな色をまとった分派を目にするだろう)。
この新たな形態はファイレクシアを強くも弱くもした。5つの色へと翼を広げ、多様化し、かつてない程に適応した―ミラディン人との戦いにおいて空前の強さと融通性を得た。だがこの変化はまたファイレクシアの中枢部に分裂をもたらした。かつてヨーグモスのもと一枚岩であった脅威は今や5つの異なる派閥に分かれている。徹底的にファイレクシアの考えが貫かれているが、それぞれが少々異なる哲学体系によって組織されている。
5つのファイレクシア分派は法務官によって率いられている。それぞれの法務官は狡猾なファイレクシア人の指導者で、実践すべき計画を決定し分派の原理を体現している。それぞれの法務官はいかにしてミラディン人との戦争を行うのが最善かという点において自身の考えを持っている。他の分派の将来的な成功可能性や無価値さについて見識を持っている。そしてそれぞれの法務官は、その壊れた心でファイレクシアに勝利をもたらすことを望む銀のゴーレム、カーンに対してそれぞれの見方を持っている。カーン自身はというと、正反対の精神状態の間で揺らいでいる。時にはファイレクシアが支配する核に束縛された自身に怒り、また時には玉座にどっしりと根を下ろし(実際に、玉座は彼に融合している)、新たな機械の父祖として振舞っている。法務官達は利己的な提言を囁き、「蛇の舌のグリマ」(訳注:「指輪物語」に登場する悪役。老国王に甘言で取り入り、国を傾けさせた)となって彼の新たな政権へと参加する道や、彼の頻繁な正気の損失を悪用しようとしている。しかし法務官達は皆同意している―結束、実験、奴隷化、産業、捕食、それらが何であろうと、ファイレクシアはミラディンの支配者へと上りつめる。自由を享受するものは何もない。
《堕落した良心》 アート:Jason Chan |
ファイレクシアの多様化は最大の強みであり最大の弱点である。自身を取り巻く世界に対して最大の優位性を得て、新たな姿と残忍な魔法をもたらす―だが、団結するためのコストを必要としてしまった。ミラディン人達はファイレクシアの新たな出現に圧倒されるかもしれない、あらゆる角度から攻撃を仕掛けてくる―もしくはミラディン人は見つけるかもしれない。全ての崩壊をもたらすような、ファイレクシアの新たな派閥構成の裂け目を利用する方法を。戦争がやがてそれを告げてくれるだろう。
今週のお手紙
今日は「今週のお手紙」コーナーを少々拡大して、ファイレクシア内部で何が起こっているのかを説明しようと思う。私はミラディン包囲戦プレビューが始まる前から、読者の一人Christianからの手紙を握りしめていた。私がより完全な答えを提供できる時が来たら紹介しようと思って。今がその時だ。Christianからの手紙に、ばらばらにだけど答えよう。
親愛なるダグ・ベイアーへ
Magic Arcana(リンク先は英語)をチェックしてプレビューカード《裏切り者グリッサ》を見た後、私は好奇心をそそられ、不安を感じ、まごつき、当惑しました。プレビュー週間が近づいていますが、私はファイレクシアの主な役者達についていくつかの質問に答えて頂けることを願っています。
ミラディンがメムナークの手から自由になった後、何故グリッサはファイレクシア側につくことを選んだのでしょうか? 私は彼女の「裏切り者」という呼び名を元に、「ファイレクシア側につくことを選ぶ」という言葉を「堕落させられた」という意味に対抗するものとして使っています。ミラディン人がファイレクシアの油の堕落性を知っているのならば十中八九、彼等の偉大なる英雄を裏切り者とは呼ばないでしょう、彼等が本当に狂っていない限りは。
グリッサの物語は誤解された物証、受けるに値しない非難、地理的不運、そして究極的には、ああ、裏切りが複雑に絡み合っている―だけどたぶん、君が考えているであろう風にではない。
グリッサ・サンシーカーはオリジナルのミラディン・ブロックの英雄だった。彼女はかつて絡み森の優れた狩人だった。しかし彼女の運命はメムナーク、次元のかつての守護者の標的となったことから動き出した。メムナークはグリッサを使用してプレインズウォーカーの灯を得ることができると信じ、そのためにはどんな物でも作り上げた。グリッサはミラディン・ブロックの最後で何とかメムナークの計画を妨害し―だがそれから彼女は痕跡も残さずに姿を消してしまった。
《グリッサ・サンシーカー》 アート:Brom |
そうしている間に、グリッサのかつての仲間であった絡み森のエルフ達は、彼女はメムナークの絡み森への攻撃の中で任務を負いラディックスを破壊したのだと信じた(これが『誤解された物証』部分)。グリッサが姿を消して彼等はそれら不幸な出来事について彼女の言い分を聞くことができず、彼女の名誉は傷つけられた。時が経つにつれ、エルフ達はよりいっそう彼等に降りかかった災難を不在のグリッサが元凶であると非難するようになった。メムナークの魂の檻が作動した時、グリッサの英雄的行為を知る者のほとんどは姿を消し(その中にはトロールも一人を除いて全員が含まれている)、そしてエルフ達はこのもう一つの大惨事についてかつての英雄を非難した(これが『受けるに値しない非難』部分)。彼等は裏切り者グリッサと呼び、その名を押し付けた。
グリッサはミラディンの核へと逃げ、そこで小さな構築物の軍隊に遭遇した。彼等はグリッサを核の奥深くへと運び去った。機械達は彼女を無事に、つつがなく守った―だが彼女の意識はなかった。
そして時が流れた。
そうしている間に、ミラディンの核内に滲みていたファイレクシアの油は成長し広がっていった(これが『地理的不運』部分)。グリッサは核内にいたことで、油が接触した他の全てのものと一緒に堕落させられた。法務官ヴォリンクレックスはエルフのかつての英雄を完成へと導き、来たる包囲に向けて彼女を強力な仲間とした。時が来たならば、彼女は解き放たれるだろう。
《裏切り者グリッサ》 アート:Chris Rahn |
私は言おう。グリッサを解き放つ時は......まさに今だ。次元の救世主、一度は誤解から裏切り者グリッサと呼ばれた彼女は、今や正真正銘彼女のかつての主義を裏切った(彼女の真の裏切りだ)。グリッサはファイレクシアの緑に列する派閥の強力な、だが残忍で利己的にねじ曲げられた右腕となった。彼女は一度世界を救った。それが判明したとして、彼女は新たな暗い野心の具体化のために―もしくは新たな主人達のために、世界を救うだろう。
Christianからの手紙はまだある。
どのようにしてカーンはファイレクシア化したのでしょうか? テゼレットは? カーンはミラディンの核に囚われて、油が彼の精神に浸透し腐りゆくまま放置されていたのか、既に彼は切り替わっていたのか、そして彼の不完全な世界を完全なものにしようと動いているのでしょうか?
《法務官の相談》 アート:Daarken |
カーンは実際に核に囚われている。私の同僚Jenna Hellandが書いた物語を読んでくれたと思うが、カーンは精神的葛藤を抱えながら、ファイレクシアからの堕落の影響と、彼の創造した世界とそこに生きる無実の人々への献身との間に引き裂かれている。もし彼がファイレクシアの影響と戦うことができないならば、彼はファイレクシアの指導の手綱を受け入れ、その目的に加わるかもしれない。
テゼレットはファイレクシアの利便のために働いているのでしょうか、それとも彼は神託に従って道を見つけようとしているのでしょうか? はたまた彼は機械の父祖へと忠誠を誓ったのでしょうか?
《ボーラスの工作員、テゼレット》 アート:Aleksi Briclot |
テゼレットはファイレクシアの機械文明に魅了されたのか、また金属世界ミラディンの潜在的可能性に興味を抱いたのか。答えは実際、どちらでもない―というより、彼は相反する両方の側にいる(このブロックの他のプレインズウォーカーと同様、彼のカードにはすかし模様が入っていない)。テゼレットはここである任務に就いている―彼はミラディンの戦争へと大いに興味を抱く存在の眼や耳として仕えている。
最後にもう一つ思い出したのですが、シェオルドレッドとは何者ですか?
敬具
Christian
シェオルドレッドはファイレクシアの法務官の一人で、君はミラディンの傷跡やミラディン包囲戦のフレーバーテキストのそこかしこに引用された彼女の言葉を聞くことができる。ミラディン人とファイレクシア人の戦争の中、彼女はファイレクシア軍の将軍の一人として誠実に仕えている。
質問をありがとう、Christian!
今週末、君のお気に入りの勢力を選び、この戦争に参加する機会がある。プレリリース、君の忠誠を宣言する日を逃すな!
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