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二重取り
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二重取り
Adam Styborski
2011年1月18日
ドアを叩く音はますます強まってきた。コツコツという小さな音から始まったノックは、今や押しつけがましいほどに響き渡る大音声になっていた。その音はどれもある一つのものを求めていた――未来の知識を。
そして、時は来た。
ミラディン包囲戦はもう目の前だ。年内の素敵な時期がやってきた。このプレビューと興奮の季節を、俺たちはみんな今か今かと苛立ちながら待ちわびていた。そして最新のカードを求めてやってきた君たちに、カードを見せながら共有したい物語がある。
まずはかなり悲観的な話から始めよう。
知っての通り、俺は青の大ファンというわけではない。俺たちはそれぞれに好きなものがあり、俺は「それ以外なら何でも」な、青以外のマジックのファンなんだ。赤緑や黒白の組み合わせた俺の部隊が戦場を縦横に翔けていると心が躍る。これにアーティファクトを加えてもいいと思っている。
青について考えるとき、それは(間もなく始まるミラディン包囲戦のプレリリースなどの)リミテッドのデッキを組むとき――と、もちろんこのコラムで紹介するときぐらいだ。
これまでの2つのセット、基本セット2011とミラディンの傷跡において、俺に青のカードを紹介させたのは別に驚くことじゃない。「どのカードがスゴイものを見せるか?」より、「どの青のカードを青『嫌いの』人に渡せるか?」に重点があったんだと思う。もう諦めてはいたが、こんなものがメールボックスに転がり込んできたときにはさすがに何事かと思った。
今でも、俺がプレビューすることになるカードを見た時の、完全に皮肉な反応を鮮やかに思い出すことが出来る。「俺の《嵐潮のリバイアサン》を沈めて《水銀のガルガンチュアン》をコピーして、また今度も青のクリーチャーかい? スフィンクスだって? スフィンクスって言うからには、飛行を持ってるだろうし、サイズもそれなりだろうな」
ざっくり見たところ、まあ、予想通りだった。その色の飛行クリーチャーが1体、リストに新しく名を連ねたわけだ。ブロックするのにちょうどいいサイズで、特に統率者戦ではいい働きをしてくれそうだなと思った。
ここで一つの質問が浮かび上がる。「他のスフィンクスにできない何をできるのか? なぜこれが特別なのか?」
メロドラマの演出のように、カードを引くところ、呪文を唱えるところ、天使たちが歌うところ、天上の光が降り注ぎ俺の周りに光の輪が描かれるところ、俺が純粋な笑顔を浮かべるところ、が一瞬の間に俺の心に流れ込んでくる。
「......これは......釣りだ。冗談だ。俺を驚かせるための夢一杯の冗談なんだ。きっと」
そんなことはなかった。《聖別されたスフィンクス》は本物で......ひどくすごいモノだった。
2枚4枚貰うよ、ありがとうな
青の特徴の一つに、他の色以上の枚数のカードを引く能力がある。カードを引いたり、あるいは数枚の中からよりよいものを選んで手札にいれたり直後に引いたりするような効果が各セットに数種類はあるものだ。
これもまた、プレイヤーに愛されている、そういった強力な小技の一つに数えられる。
《聖別されたスフィンクス》はこの発想を繰り返すクリーチャーだ。呪文を通して数枚のカードを引くのではなく、相手の力を利用して何度もカードを引くというものだ。この新しい飛行野郎に関してルール上注意すべき点がいくつか挙げられている。
- 2枚引くか、1枚も引かないかのどちらかを選ぶことが出来る。1枚だけ引くことは出来ない。
- 対戦相手が引いたカード1枚ごとに1回能力が誘発する。能力それぞれの解決時に、2枚引くかどうかを選ぶ。
- 各プレイヤーが1体ずつ《聖別されたスフィンクス》をコントロールしていた場合、どちらかのプレイヤーがカードを引かないことを選ぶまで能力がお互いに誘発し続ける。
《吠えたける鉱山》、《神話の水盤》、《寺院の鐘》は追加でカードを引くいい方法だが、これらはどれも一つケチがつく。相手もまたカードを引けるのだ。今回の《聖別されたスフィンクス》は、この境界を越えてきた初めてのカードだ。対戦相手が多ければ多いほど、《聖別されたスフィンクス》は大量のカードをもたらしてくれる。
1 《アカデミーの廃墟》 2 《ハリマーの深み》 16 《島》 3 《聖遺の塔》 1 《教議会の座席》 1 《殻船着の島》 -土地(24)- 4 《聖別されたスフィンクス》 4 《濃霧の層》 3 《板金鎧の海うろつき》 4 《ルーンの苦役者》 1 《鋼の壁》 4 《粗石の魔道士》 -クリーチャー(20)- |
2 《Arcane Denial》 1 《ダークスティールの斧》 1 《フェルドンの杖》 1 《黄金の甕》 2 《ウーナの寵愛》 4 《定業》 2 《プロパガンダ》 1 《卓越の印章》 2 《寺院の鐘》 -呪文(16)- |
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《聖別されたスフィンクス》が見て喜ぶものが2つある。複数の対戦相手と、カードを多く引く対戦相手だ。各対戦相手が毎ターン1枚カードを引くのは当然として、相手にそれ以上のカードを引かせる方法を見つけるのはどうだろう。
《寺院の鐘》や《ルーンの苦役者》で全員にカードを引かせることができるし、《ウーナの寵愛》を使えば自分でカードを引くことも、《聖別されたスフィンクス》を出した後でなら相手にカードを引かせることもできる。《ウーナの寵愛》を回顧するために土地を放ることができれば、ゲームを進めて行くにつれてそれまで以上のカードが引けるようになることだろう。
その仕掛けを作り上げるために、特に複数の対戦相手がいる世界では、《濃霧の層》や《プロパガンダ》といったカードでしばらくの間だけ攻撃を抑止する。そして飾り付けとして呪文を止める《Arcane Denial》などはどうだろう。最終的に引くカードの枚数もドカンと増えそうだ。
そして、《粗石の魔道士》とそれで持ってくるカード群を入れなければこのデッキは完成しない。
- 頑丈で軽いブロック・クリーチャー《鋼の壁》
- 序盤のクリーチャー強化に《ダークスティールの斧》、長期戦になれば《卓越の印章》
- 《教議会の座席》を入れることで土地の確保
- 《黄金の甕》でライフの回復
- 《フェルドンの杖》で墓地に落ちたカードを再びライブラリーに戻す
《聖遺の塔》や《ハリマーの深み》、《アカデミーの廃墟》が入っているのは当然として、《殻船着の島》は少し面白い選択じゃないか。カードを引きまくる構成なので、ライブラリーの枚数が少なくなる。となれば安定して《殻船着の島》の全力が引き出せることになるわけだ。
雪ほど素敵な商売はない
《聖別されたスフィンクス》は「してもよい」という文脈なので、いつでも止めることができる(《寄付》や《バザールの交易商人》を使ったデッキが成立しない理由だ。さらに《精神隷属器》を入れれば別だけど)。しかし、カードを引くのを止めなければどうだろう? 大量のカードを必要とするデッキは成立するのだろうか?
成立する。
3 《セファリッドの円形競技場》 2 《ハリマーの深み》 16 《島》 1 《海の中心、御心》 4 《聖遺の塔》 -土地(26)- 4 《セファリッドの物あさり》 4 《聖別されたスフィンクス》 4 《ディミーアのギルド魔道士》 2 《大建築家》 4 《無謀な識者》 4 《難問のスフィンクス》 -クリーチャー(22)- |
4 《吠えたける鉱山》 2 《ジェイス・ベレレン》 2 《記憶のきずな》 4 《映像のもつれ》 -呪文(12)- |
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遠い昔、俺は、FNMに持って行くような奇妙なデッキの熱心なファンだった――言い換えると、magicthegathering.comの連載「Building on a Budget」の読者だった。そしてそこで目にした構築デッキの一つが、ベン・ブライワイスの「ブルー・スノー・アグロ」だった。FNMに持って行くようなデッキではないけれど、カジュアルな対戦では大暴れする奴だ。
《難問のスフィンクス》は3マナで飛行つきの4/4という、特にヤバイクリーチャーだ。エサとして、頭が痛くなるほどの大量の手札が必要だけれど、これに新しい《聖別されたスフィンクス》を組み合わせ、相手にカードを引かせればどうにでもなる。
《吠えたける鉱山》、《映像のもつれ》、《ジェイス・ベレレン》、《海の中心、御心》......全員にカードを引かせるカードをたっぷり入れて、クリーチャー(《ディミーアのギルド魔道士》、《無謀な識者》、《セファリッドの物あさり》)と《セファリッドの円形競技場》を使えばカードを引かせるのは自由自在だ。初期の展開は、クリーチャーを並べてカードを引く時間を稼ぎ、《聖別されたスフィンクス》を引いたら戦闘開始、そこからは相手にカードを引かせる狂気の時間が始まるわけだ。
《記憶のきずな》は自分と相手がカードを引けるようにするためのリセットボタンというわけ。
カードを2対1で引いていくので、《セファリッドの物あさり》1体といってもバカにはできないほどに手札が膨れあがっていく。もちろん、相手はなんとかしてこの聖別されたゲームを終わらせようとするだろう。そのための《大建築家》、《清浄の名誉》のように働いてくれる。隠れて進めるほうが速いこともあるのだ。
仲間を怒鳴りつけること
俺の仲間には2種類いる。《怒鳴りつけ》が好きな奴と、《怒鳴りつけ》が嫌いな奴だ。俺はどっちってわけじゃないが、赤単の統率者デッキをちゃちゃっと組むときに入れてもいいとは思う。《怒鳴りつけ》は「懲罰者」メカニズムと呼ばれるやつで、対戦相手に悪いことともっと悪いことの二択を迫るものだ。
《聖別されたスフィンクス》があれば、この選択はもっと簡単になるだろう。
4 《滝の断崖》 6 《島》 4 《イゼットの煮沸場》 10 《山》 -土地(24)- 4 《聖別されたスフィンクス》 4 《ノッグルの荒らし屋》 4 《無謀なるワーム》 -クリーチャー(12)- |
4 《怒鳴りつけ》 4 《燃え立つ調査》 2 《入念な考慮》 4 《癇しゃく》 2 《ギャンブル》 2 《繁栄》 4 《煮えたぎる歌》 2 《激発》 -呪文(24)- |
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青赤はマッドネス・デッキには少し不安定だが、俺は火力呪文やドロー呪文を入れるのが好きだからしかたない。《ノッグルの荒らし屋》や《燃え立つ調査》はカードを引いたり捨てたりすることで長期戦略を潰し、タイミングを見計らって《入念な考慮》を使えば自分の手を進めることも相手に打撃を与えることもできるんだ。
《煮えたぎる歌》で加速して、必要ならでっかい《繁栄》でカードを補充。《ギャンブル》はテーマにぴったりのややこしい教示者だけれど、主役をかっさらうのは《怒鳴りつけ》だ。5点のダメージはかなり大きいけれど、《聖別されたスフィンクス》がいればまず間違いなくそっちを選んでもらえるだろう。選ばれなければ、誰かに3枚引かせる見返りに6枚引けてしまうわけだから。
悪くない取引だろ? な?
戦争は始まったばかりだ。俺が他の数枚のカードを使うことに気を向けている間に、この新しいスフィンクスを使ってどんな攻撃が出来るかを考えて貰いたいね。そして、俺が島をデッキに入れないにせよ、開戦時にはこのスフィンクスを敵に回したくはないもんだ。
次回は病気の話をしよう。
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