MAGIC STORY

ニクスへの旅

EPISODE 08

ブロックの構築『テーロス』編

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ブロックの構築『テーロス』編

Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru

2014年4月18日


 今日の記事で新しくご紹介するプレビュー・カードはありません。その代わり、 カード・ギャラリーで全ての画像が公開されました。しばらく時間を取ってそれを頭に入れてきてください。この記事は逃げたりしませんので。是非ご覧ください、このセットはかなり素敵なセットです。

 ご覧になりましたか? それではブロック構築の話を始めましょう。マジックの開発部がブロック構築のプレイテストをするのは、それがプロツアー(とグランプリと多くの「Magic Online」イベント)のフォーマットであるからと、我々が来年に予測するべきものに良い展望を与えてくれるから、という両方の理由があるからです。


マナの合流点》 アート:Richard Wright

 しばしば、ブロック構築は、黒の2マナ域のクリーチャーから効率的なエンチャント除去まで、以前のセットに足りなかったものについての多くを我々に教えてくれ、そしてそのブロックを改善し、次の年のスタンダードに推移するのを助ける効果をそのブロックの第3セットに入れるのに十分な時間を与えてくれます。今回、私はデベロップのある程度後期になってから『ニクスへの旅』に加えられた、ブロックの抱えている問題を解決するためのカード数枚についてお話をしようと思います。

マナの合流点

 ブロック構築で使えるデッキがほとんどなくなるほど貧弱なマナ基盤によって、たった1回のトーナメントの後で信じられないほどの膠着状態に陥っていることが発見された『イニストラード』ブロック以来、開発部はブロック構築でのマナをとても意識しています。しかしながら、そのブロックの外側では我々は単色でないアグロ・デッキが我々の期待通りの働きをするかどうかという問題を抱えていたことに気がつきました。その答えの一部は《森の女人像》ですが、それらのデッキには緑ではないマナ基盤の部分が欠落していました。

 それらの問題に対する答えは、2色のブロック構築のアグロ・デッキに最適で、スタンダードの同じデッキを助け、3色ミッドレンジやコントロールを大きく支援しない土地を入れることでした。《マナの合流点》の興味深い点は、以前あった《真鍮の都》のように、コントロール・デッキよりアグロ・デッキに向いている数少ない多色土地のデザインの1つである点です。我々はブロック構築で最強のデッキのいくつかが3色であることを発見したので(その理由の1つはアグロが環境にいないからです)、従ってそれらが追加のマナ基盤を使用するのに制限をかけたいと思いました。

 開発部は基本的にマナを出すコストにライフを支払うことを好まないのですが、私たちはこのカードを作りました。『ラヴニカ』のショックランドのような先払いのコストは記録が簡単ですが、このカードには全くしっくりきませんでした。全体的に見て、最終的にこのカードは我々の満足いく位置に納まりました。私はこれが数多くのより興味深いブロック構築のデッキを助ける大きな役割を果たし、そして上手くいけば同じデッキの多くが次の年のスタンダードに移行するための、マナの問題を改善してくれると思います。

払拭の光

 『基本セット2014』の《放逐する僧侶》のために一時的に追放する新しいテンプレートを作って以来、新しいバージョンの《忘却の輪》が求められていることは分かっていましたが、いつそうなるかは正確には決めていませんでした。我々が《放逐する僧侶》の追放のテンプレートを改訂するプランを仕上げた時には、新しい《忘却の輪》をそのセットに加えるには少し遅かったのです。また我々は『テーロス』ブロックの初期のセットでは神々に対処することを難しくしたいという目標を持っていました。我々はそれらのカードに輝く時間を与えたかったし、それらに対する簡単な回答が多すぎることは、それらのカード自身の鮮烈さを損なうことになっていたでしょう。

 我々がブロック構築をテストし始める頃には、このフォーマットに《エレボスの鞭》、《太陽の勇者、エルズペス》、《オレスコスの王、ブリマーズ》、《世界を喰らう者、ポルクラノス》全てに対処できる除去呪文が必要だということは明白になっていました。これらのうちいくつかに対処できるカードは数多くありましたが、全てに対処できるカードは存在しませんでした。我々は『ミラディン』ブロックのアーティファクト対策のように、メインデッキに入っているエンチャント対策の枚数だけに左右されるような構築になることを望んではいませんでした。幸運にも、我々はどのカードを作るべきか完全にわかっていました。

 このカードのもう1つ興味深い点は、デベロップとクリエイティブが一緒に取り組んで、《忘却の輪》が『ローウィン』の世界観特有のものではないのと同じように、『テーロス』の世界観特有ではない名前を考え出したことでした。《払拭の光》が常にスタンダードにあって欲しいというわけではありませんが、必要な環境にはそれを加えることができ、より一般的な名前を持っていることは、基本セットまで再録を待ったり、同型再版を作ったりすることなく環境に加えることを可能にします。

エレボスの代行者

 カードのバランス取りに関しては、我々はカードがどのように機能するかスタンダードを用いて測っていますので、最新のセットにどのような安全弁を入れるかの決定には、前の年に存在したカードを強く参考にすることになります。『ラヴニカへの回帰』ブロックは墓地テーマを持つ『イニストラード』ブロックの次に現れ、従って多くの墓地対策を備えています――《漁る軟泥》、《安らかなる眠り》、《死儀礼のシャーマン》、《死体焼却》があり、スタンダードの墓地対策は潤沢にありました。我々が《エレボスの鞭》を作ったとき、これらのカードのおかげで押さえられている部分が小さくない、とても強力なカードを作ったことは分かっていました。そして、ブロック構築のテストが始まると、我々はこのフォーマットに《エレボスの鞭》のパワーに対処できるカードが全くないことに気づきました。これはその効果をつけることができるカードがどこにあるかを探して考え出すことにつながりました――最終的に出来上がったのが《エレボスの代行者》です。

 このカードの目的は、新しく発生する墓地デッキを閉め出す、メインデッキに入る超強力な墓地対策カードを作ることではなく、《エレボスの鞭》デッキが強すぎたと判明したときに使える何かを与えることです。最近の「Magic Online」のブロック構築のイベントから判断すると、使われているカードには満足しています。これはこのフォーマットの多様性を維持する助けになるはずです。

 《苦悶の神、ファリカ》にどちらのプレイヤーの墓地も対象とできる能力を加えたとき、この図式に当てはまりました――黒緑の墓地利用デッキに、相手の《エレボスの鞭》に対処する同型対策カードをもたらしたのです。対戦相手がトークンを実際に得るようにしたのは、接死持ちトークンが大量に出てくると普通のクリーチャー・デッキではそれを倒すのがかなり難しいからですが、1/1の接死を持つ蛇は普通に考えれば《忌まわしき首領》や《灰燼の乗り手》よりはマシでしょう。

 我々は同型対策カードが、特にそれらがそのデッキで普通に使われるカードよりも弱い場合、マジックが存在するために重要なカードなのだと発見しました。メタゲームが自動的に調整されるようにすることのひとつの方法は、特定のデッキに対して有利になる一方で、他に対して不利になるような選択肢をデッキに十分に与えることです。強力なデッキに入る、同型対策カードを作ることによって、それらのデッキに同型対策のために割く割合を変化させる選択肢を与えます。あるデッキが環境にはびこった場合、それらは同型対策にますます時間を費やし始め、その結果より良いバランスを見つけるまで他のデッキに対する勝率が下がり始めます。これはメタゲームから発生する問題全てを解決するわけではないでしょうが、最悪の事態を回避し、フォーマットに我々が望むほどの多様性がない場合でも興味深いデッキを作ることができます。

ブロック構築を試してみる

 ご存じないかも知れませんが、今日(訳注:原文の掲載日の4/18です)は「the R&D Challenge」イベントで皆さんと開発部が「Magic Online」でプレイする日です。この記事からもお分かりの通り、我々はプロツアー『ニクスへの旅』の前により良く感じを掴むためにブロック構築をプレイします。もし時間があれば、デッキを一緒に作ってプレイしましょう。このイベントの詳細は こちらのページにあります(リンク先は英語)。

 今週はここまでです。私はプロツアー『ニクスへの旅』でプロプレイヤーたちが考えたブロック構築のデッキと、そしてそれがどれぐらい我々の予想と違ったものになるかを楽しみにしています。

 ではまた来週お会いしましょう。

 サム(@samstod) より

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