MAGIC STORY

神々の軍勢

EPISODE 11

リミテッドでの色のペア・『神々の軍勢』版

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リミテッドでの色のペア・『神々の軍勢』版

Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru

2014年1月31日


 去年、私は『テーロス』における色のペアと、全てのレアリティの様々なカードを用いて我々がどのようにして『テーロス』のそれらの色のアーキタイプを推そうとしているかについての記事を2つ(パート1パート2)書きました。それらの記事を調べることもできます(そうしておくことをお勧めします)が、今回の記事の理解に必須というわけではありません。簡単に説明しますと――長期的に見てドラフトをより面白くするために、我々はセットにリミテッドの戦略に焦点を当てた特定の色のペアで強くなるカードを入れたという内容です。ではそれを踏まえて、新たなセットへと向かいましょう。

 小型セットにおけるデザイナーとデベロッパーの仕事とは、物事を同じように感じさせる一方で、新しくも感じさせることです。過去に『フィフス・ドーン』、『アラーラ再誕』、『神河救済』などのセットで我々はリミテッドに劇的な変化を作り出したことがあり、そしてそれらは軒並み不人気でした。我々はブロックのリミテッドのテーマをより良く揃え、自然な進化を感じさせる方向へと向かいました。新旧『ラヴニカ』ブロックを見てみると――変化したものはかなりありますが、その変化は人為的と言うよりもセットの一部のような感じがします。我々は将来のセットがこの調子でもっと機能してほしいと願っています。

友好色のペア

 『神々の軍勢』で登場する神々は友好色だけなので、このセットに含まれている金色のアンコモンがそれらの神々のものであることや、敵対色のカードを『ニクスへの旅』に温存したことが分かります。ドラフトの順番が新しいセットから行われるので、大型セットにある錨となるカードと似た、錨となるカードが小型セットにも入っていることが重要です。我々はまた、『テーロス』の方向性と常に同じだとは限りませんが、似たような方向へ向かうことを推したいのです。とは言え、それらがデッキを機能させ一貫させるのに十分な働きをすることは重要です。

 『神々の軍勢』版各色のペアの戦略は以下の通りです。

青白:英雄的

 このカードの狙いは青白英雄的デッキに英雄的を誘発させる方法を与えるだけでなく、それを何度も繰り返すことです。青のほとんどと白の一部の英雄的の誘発型能力は一時的に呪文の効果を与えてくれますが、それらは緑や白の+1/+1カウンターを得る能力に対してすぐに遅れを取ってしまう危険性があります。

青黒:コントロール

 青黒はコントロール・デッキですが、もう少しゲームの序盤に影響を与えるカードが必要でした。この《静寂の歌のセイレーン》は「死霊」のように動き、対戦相手へ序盤からプレッシャーを与えることができます。

赤黒:ミノタウルス

 『テーロス』では残念ながらミノタウルス、その中でも特に黒の数が求められているよりもちょっと少なかったので、『神々の軍勢』ではこのデッキを作りやすいように少し数を増やしています。

赤緑:マナ加速して怪物

 怪物化は『神々の軍勢』にはありませんが、このデッキがやることは同じ――最もデカいクリーチャーをプレイすることです。貢納はこのデッキのための多くの優秀なクリーチャーをもたらしましたが、我々はこのデッキが速い戦略に後れを取らないようにして、ゲームの後半でも強力であり続ける3マナクリーチャーを求めました。

白緑:英雄的

 もう1つの英雄的デッキは今回は他よりも大きくなることに依存していますが、我々は複数のクリーチャーの英雄的能力を1ターンに誘発する別の方法を求めました。


 我々は、このようなリミテッドにおける金色のカードを、基本的に強力、しかし爆弾ではないという範囲に収めようとします。これらは最初の数手でピックするには単色のカードよりもリスクが高く、従って同じぐらいのパワー・レベルのカードよりも少し長く卓上を回ります。これらのカードの目的は初手でピックされることではなく、すでにそのカードのうち1色をやっているかもしれない人に、2色目を決める何かを与えることです。あなたがすでに緑をやっているとして、初手に取った赤のカードから離れたくないか、たくさん流れてきている白にするか決まらないかもしれません。流れてきた《蒔かれたものの収穫》を取ることは、上手くいけばその決断をより明瞭にするでしょう。

敵対色のペア

青緑:マナ加速して呪文

 先程書いたように、『神々の軍勢』のデザインは友好色の金色カードに傾いています。実はただ1枚だけ敵対色の金色カードがアンコモンにあるのです――その名は《キオーラの追随者》。我々は《荒ぶる波濤、キオーラ》が神話レアである以外にも、何か彼女に存在感を持たせようとしていました。このカード自体の働きは第1セットの《旅するサテュロス》と非常によく似たマナ加速を可能にするものですが、クリーチャーをアンタップすることで、特に神啓と組み合わせてコンバット・トリックとして使う選択肢を与えてくれます。

数字は嘘をつかない

 我々がリミテッドのプレイテストをしていたとき、そのリミテッド環境が適正な多様性を持てるように、各テストプレイヤーがプレイした各色のカード枚数を記録しています。ドラフトよりもリミテッド環境全体が伝わるので、これを行うのが最も有効なのは間違いなくシールドです。結局のところ、ドラフトでは色の間のバランスが自然に調整されてしまいます。(あくまで例として)皆が赤と白をやりたいと思うかもしれませんが、皆ができる方法はありません。最弱の色でさえ、誰かがその色の良いカードを全て取れるがゆえにプレイする人がいるのです。シールドは全体像が適正である場合を教えてくれて、そして我々は洗練するためにドラフトを使うことができます。

 我々が『神々の軍勢』のシールドに取り組んでいるときに全てが良い感じに見えたので、我々はドラフトへと進みました。何回かドラフトをした後、我々は敵対色よりも友好色の方にとんでもなく傾いていることに気づきました。唯一青緑だけが、我々の期待通りの比率にありました。その理由は明らかで、我々は色のペアで『テーロス』と同じ戦略を取ろうとしましたが、敵対色には第1パックの中に同じレベルの錨となるカードがなかったのです――青緑を除いては。

問題を解決する

 このセットのリード・デベロッパーであるトム・ラピル/Tom LaPilleは、ちょっとした決断を迫られていました。ほとんどのイラストが発注済み(そしていくらかはすでに完成していました)であることを考えると、このセットに金色のカードを追加するのは困難で、そしてより高いレベルでは、5体の友好色の小神がこのセットの焦点になることを邪魔するかもしれませんでした。多くの議論を経て、トムはこれら5つのペアを支援するために敵対色の起動型能力を持つサイクルを試すことを決定しました。これらは友好色のカードほど強くプレイヤーを導きませんが(白緑デッキは《墓荒らし蜘蛛》を《大蜘蛛》として使えるので)、上手くいけばいくつかの敵対色のデッキをより高めるのに十分な方向性をもたらしてくれるでしょう。

 幸運にも、異なる色のペアの戦略を助けるという点でかなり近いところに来ているアンコモンがすでに存在していました。というわけで、以下のような変更が行われました。

〈オドゥノスの釣り人/Fisher of Odunos〉
{3}{B}
クリーチャー ― ゾンビ
[カード名]が戦場に出たか死亡したとき、あなたの墓地にあるクリーチャー・エンチャント・カード1枚を対象とし、それをあなたの手札に戻す。
2/2

が、こうなりました。

 『テーロス』での白黒デッキの基本戦略はよりコントロール寄りのライフ吸収デッキであり、また白と黒は授与の主要色で、コモンに追加の授与クリーチャーが収録されていました。『神々の軍勢』でのクリーチャー・エンチャントの増加に伴い、我々はこのデッキにいくつかの利益を与える機会を得ました。

〈ケラノスの嵐呼び/Stormcaller of Keranos〉
{3}{R}
クリーチャー ― 人間・ウィザード
あなたが占術を行うたび、{2}を支払ってもよい。そうしたなら、クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。[カード名]はそれに2点のダメージを与える。
3/2

 が、こうなりました。

 『テーロス』での赤青デッキの基本戦略は呪文ですが、追加の占術を探す助けになる《先見のキマイラ》のようなクリーチャーがこの2色に多くありました。占術を行う起動型能力を加えることは、呪文を中心に構築することを弱体化はさせるものの、赤青デッキをより良く支援するようになりました。

〈漁る蜘蛛/Scavenging Spider〉
{2}{G}{G}
クリーチャー ― 蜘蛛
到達
{4}{G}:[カード名]はターン終了時まであなたの墓地にあるクリーチャー・カード1枚につき+1/+1の修正を受ける。この能力は毎ターン1回のみ起動できる。
2/4

 が、こうなりました。

 『テーロス』の《神々との融和》のような墓地を肥やすカードによって、黒緑デッキはダントツで《墓荒らし蜘蛛》から最大のアドバンテージを得ることができるでしょう。

〈英雄の密集軍/Phalanx of Heroes〉
{4}{W}
クリーチャー ― 人間・兵士
警戒
{1}{W}:あなたがコントロールする+1/+1カウンターが置かれている各クリーチャーは、それぞれターン終了時まで警戒を得る。
3/5

 が、こうなりました。

 これは色のペアの戦略との適合が一番弱いものですが、遅い英雄的デッキが対戦相手の戦力を削る手段として作られたこのカードは、今や赤白の「横に並べる」戦略を支援するものへと変化しました。

さらなる質の向上を

 デベロップの過程とは繰り返すことです。時が経つにつれて我々は新しい事柄を学び、物事を行う方法を改善し、将来のセットをより良いものにします。この敵対色の起動型能力を持ったクリーチャーは少し遠回りな方法で出来上がりましたが、私はほとんどのデベロッパーと同じように、この出来映えには全体的に満足しています。しかしながらもっと大事なことは、間違いなくこれらからエキスパンションでの色のペアの支援について学んだいうことです。我々が必ずしもこのような戦略を取るとは限りませんが、今後改善のためにエキスパンションでの色のペアの支援について取り組んでいきます。

 ではまた来週お会いしましょう。

 サム (@samstod) より

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